こんな仕事はさっさとやめてやるーっ! 作:第501機動対戦車中隊
なあ。
あんたどう思うよ?
サバゲ終えて帰ろうとしたら小惑星LV426の破片が直撃するんだぞ。
挙げ句神様が「無休無給で管理してんだボケナス」とか言い出すんすよ。
と言うわけで「せめて国救ってから死んでみたい」と言った適当さで前線送りっすよ。
まじでくそだわ。
ー
薄い青色の基調とした、現実ならニヴェル攻勢辺りのフランス軍みたいな服装をした私は元日本人の一般人。
名前は八嶋はつせ、性別女性の24歳。
現在の祖国はガリアって言うバルト三国みたいな感じのクッソ弱そうな小国です。
例えて言うならスカンジナビアと朝鮮を足したくらいにはデンジャラスです。
回りの国はドイツもこいつもファシストと資本主義者っすよ。
挙げ句内政は正直林銑十郎内閣みたいです。
もういよいよやばいよ。
でも徴兵国家なんで私も兵隊です。
お仕事は突撃兵って言うらしいです。
どうやらガリアは金は有るらしいんで、日本軍より装備良いです。
半自動小銃と短機関銃が合ってカービンもあります。
わーい!
「はつせさん!配給ですよー!」
重たそうな、と言うかとても重い弾薬箱を盛ったロン毛したりしてる女の子。
スージーと言う名家育ちで美人です、ブルジョアって奴です。
文字通り虫も殺せぬ兵隊としてよく合格できたねと言いたい人です。
衛生兵辺りが適任そうって言ったら「血を見ると卒倒するんです」と言われお手上げとしか思えません。
でも頭良いです、顔も気立ても心も良いです。
実際今私に閃光手榴弾と破片手榴弾くれました。
よく先輩たちにからかわれたり弄ばれていますが民間人、特に子供相手にはとても有能です。
「はつせ、拳銃はヒモつけておきなよ」
私の階級は曹待遇伍長です、お陰で拳銃持ってます、自費だがな!!。
義務教育って言う正直意味わからない政策は私を助けてくれました。
学力はいいぞ、ほんとに。
そんな私を心配しているのか、赤い髪をして男勝りな同僚がアドバイスをくれた。
言われた通りにすると、ロージーと言う女性の突撃兵は笑って言います。
「両手が楽になるんだ、覚えとくと良いよ」
「先任の意見は尊重しますよ」
「はは、上手いじゃん」
そんな馬鹿話をしてると、乗っていたトラックは停車し降車!と声が聞こえます。
ここで私の隊を紹介しましょう、まず小隊の下に分隊があります。
偵察を専門とする第一分隊、私を含む鉄砲玉の第二分隊、戦車ガン掘りのナイスガイ達第三分隊。
これが第七小隊です。
小隊本部としてエーデルワイスと言う戦車を含めた本部分隊もあります。
「あー、あー。
よし」
首元を少し緩めて、小隊長にしてバカと天才の詰め合わせ第七小隊最大の奇人ことウェルキン小隊長が喋りだします。
なんか親は英雄らしいんですが、信長とかの息子さんも秀吉の息子さんも皆死んでるしそこを考えるに正直怖いです。
見た目はイケメンですが虫と自然以外脳ミソ入っていない疑惑さえあります。
...どうしてこうなった?。
「現在ガリア戦線は決定力に欠けた帝国と、ガリアの余力の無さにより膠着しつつある。
そしてこのラジミン市はヴィスワ・ヴェーゼルの両河川に跨がる都市であり、中洲を基点に戦線が形成されている。
我々の仕事は中洲を越えて進撃し、正規軍と共にラジミンのバカらしい消耗戦を終わらせることだ。
無駄な兵力の損耗は自然にも国力にもよろしくないしね」
最後の一文の前半以外本音ではないのでは?。
そう思いつつ短機関銃を手に取る。
トンプソンとグリースガンを悪魔合体させた見た目をしているこの短機関銃、弾倉は30発。
まさかのセミオート無しのフルオート或いはセーフティーだけ!
スターリングラードみたいに抱擁戦を主眼においた短機関銃だ。
「八嶋さん」
「ハッ?なんでしょうか」
赤いスカーフを髪止めにした、アリシアと言う小隊の副官が声をかけてくる。
「貴方の班は戦車と共同で動いてもらいます」
「え、死にたくないですよ。
戦車の巻き添えなんかいやです」
戦車は色々なものに狙われる。
火炎瓶とかロケットとか戦車とか。
壁に対戦車砲あり障子に対戦車ライフルありな位で正直巻き添えくらいそうだ。
「嫌じゃない、やりなさい」
「了解」
畜生!いつか殺してやる!
そう思いつつ短機関銃を握りしめ、班を呼ぶ。
班は5人編成だ。
班長が私、リィンと言う突撃兵仲間、ターリスと言うレズ疑惑支援兵(弾薬持ち)、ヨーコと言う肝っ玉対戦車母ちゃん、アイカと言う小学生偵察兵。
全員女性なのは班毎に宿舎を決めるので、そこら辺の都合だ。
「えー諸君、戦車随伴歩兵引きました。
死なないようにどうにかしようね」
「エーッ、やだなあ」
アイカはぶー垂れている。
まあ仕方ない、上からの命令に服従しなきゃ軍隊は暴力装置なんだ。
悲しいけどこれ戦争なのよね。
「何してる早くすすめ、置いてかれるぞ!」
ラルゴと言う筋肉で身体を構成する対戦車隊員が急かす。
歩兵は苦手な彼らは私らが歩兵をピーしてやんないと進めないからだ。
正規軍の迫撃砲中隊の支援砲撃、それを合図に進撃を開始する。
ー
進撃は動いた瞬間から猛烈に銃撃を受けて即刻停止した。
機関銃が据え付けられた対岸からの猛攻と、度々飛んでくる対戦車攻撃で戦車が動けない。
挙げ句奴さん、いつのまにかベトンブンカー据え付けて撃ってるんで迫撃砲が効いていないご様子。
「うーん、もしかしなくても失敗してるなあ」
一街区後退して穴がないか見てみるが、このまま行くと山も川も大体死ぬよ203高地だ。
ウチの小隊長にご意見を聞いてみるべく、後ろからエーデルワイスに近づく。
車体下にある脱出口から戦車に入ると、ウェルキンは地図を見ている。
「やばいよ。
歩兵進めませんし戦車を強引に進めます?」
「それじゃ歩兵に蜜蜂の熱球されるだけだよ、ところで、近くのマンホールの方に班を偵察しにいってくれないかい?
近接戦闘専門の君たちが必要だ」
下水道とかぜってぇやだ!
そう言いたいが仕方ない。
正規軍もバカじゃないから、当然なんかあるだろうけど。
ー
「地下下水道に行きたいかー!」
「いやです」
「嫌でも行くんだよ!!」
即答したリィンを掴んでレッツ地下下水道。
機能としては殆どしていないらしく、案外臭いはひどくない。
ライトは恐いから、撃たれない所からこっそりやる。
「ガリア兵だ!!」
帝国語と共に暗い下水道にマズルフラッシュが煌めく。
ライトはあっという間に砕かれ、危うく私の手もフランス第三共和制のごとくブレイクしかけた。
少しすると銃撃が止み、アイカに耳打ちする。
アイカは「バカじゃねーの!?でも面白そうだからやる!」と言わんばかりの顔をして、三数えておっ始める。
「カンッコンッ!!!」
小学生の高音で金属が跳ね返る音を響かせ、その間に身を乗り出して閃光手榴弾を投擲する。
帝国の兵士たちは「グラナータァッ!!!」と悲鳴を上げ、閃光手榴弾は炸裂した。
失明に近い状態の帝国兵を短機関銃が襲い、フルオート高レートの9mm拳銃弾は帝国兵をミンチにしていく。
そして私は、とっさに伏せた先は下水の溜まった...(以下検閲)。
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正規軍将兵は万歳三唱して占領したブンカーの上に立っている。
ウェルキンは八嶋が居ないのを気付き、奥でひっそりと体育座りしている八嶋から異臭がすることに気づいた。
「さんくすこまんだぁ、キスミーマイアァス!」
中指を立ててそう言うと、ウェルキンは察した顔をして立ち去った。
その後から愛称がクソヤローになったのは言うまでもないし、今の私を表現すると、カレーが食えなくなる。
わかるだろ?わかれよ!。
ちくしょーっ!!こんな仕事はさっさとやめてやるーっ!!!
元ネタ解説。
ラジミンはソビエト・ポーランド戦争に於いて五回の争奪戦を繰り広げた激戦地です。
ヴィスワ川の奇跡で奪還され、今もポーランド領です。
ワルシャワに近いのでご旅行のさいはぜひどうぞ。