あと若干モモンガさんがヤンデレします。
そういうのが苦手な方は回避お願いします。
「此処デ待テバ、御方々カラノ迎エガ来ル手筈ニナッテイル」
「そうかい。感謝しているよ、百年の揺り返しを確認するための協力をしてもらって」
「貴殿ハ優レタ戦士ダ。我ハ戦士トシテノ貴殿ヲ信ジテ、ナーベラルヲ通ジテ御方々トノ繋ギヲ取ッタノダ。間違ッテモ御方々ヲ世界ヲ穢ス者ナドト言ワヌ事ダ」
「それは気を付けるよ……初めてそれを言った時の君からの倶利伽羅剣は恐ろしい威力だったからね……」
「ならばそのまま恐れて引っ込んでいれば良かったのよ。カメムシが」
「ナーベラル、抑エロ。未ダニオ前ガツァーニ怒リヲ向ケル理由ハ解ルガ。我々ハ狂犬デハナイ。統制ノ取レタモモンガ様ノ猟犬トシテ噛ミツクベキ相手ハ見極メロ。オ前デハ無理ダ」
「ちっ……力の足りない我が身が恨めしいわ……」
「仕方アルマイ……プレアデスニ与エラレタ力ハ至高ノ御方々ガソノ程度デ用ヲ成ストオ考エニ成ラレタ結果ダ」
「だけどコキュートス、御方々のためにより強い力を求めるのは間違っているかしら?」
「ソレハ難シイ問題ダ。ダガ唯一ツ確カナ事ガアル。至高ノ御方々ノ為ニハ全身全霊ヲ尽クス。ソレダケダ」
「……そうね。私も忍法微塵隠れの精進をします」
「ウム。ダガナーベラルノ微塵隠レハ煙幕玉ヲ併用シタ次元ノ移動ダロウ」
「わ、私にとっては忍法微塵隠れなんです!二式炎雷様の忍術メイドというコンセプトは守らなければなりません!」
「ソウダナ。連鎖スル龍雷ハ雷遁双龍撃ダナ」
「それは他の姉妹達には秘密ですよ」
「ウム……」
緊張感のないコキュートスとナーベラル・ガンマのやりとりを見て、白銀の鎧は首を振り肩をすくめる。
「二人の仲がいいのは良い事だけどね。本当に迎えは来るのかい?」
「ム?ソウ言エバ遅イナ……ダガ、丁度来タ様ダゾ」
ある意味ジャストタイミングと言えばいいのか、ゲートを開いてデミウルゴスを伴ったシャルティアが現れる。
「どうも。ツァーといったかね。至高の御方々に拝謁する栄誉に浴する光栄を噛み締め給えよ」
「デミウルゴス、何故オ前ガ」
「ああ、一応シャルティアの抑え役だよ。モモンガ様の客人に失礼があってはナザリックの沽券に関わるからね。例えナザリックの事を世界を穢すなどと評する相手だろうとね」
「それは……申し訳ないが、ぷれいやーは大昔にこの世界を支配していた法則を歪めた存在なんだ。この事について譲るつもりはないよ」
「正直、今すぐにでもこの空っぽの鎧をばらばらにしてやりたいでありんすが。モモンガ様の命でありんす。丁重に送らせていただくでありんすよ」
しかし言葉とは裏腹にシャルティアは紅い鎧の完全武装状態であり、敵意を無暗に発散しないようにか、ツァーからは視線を外している。
「さ、ここで空気を悪くしてもモモンガ様に益はないからね。ゲートを頼むよシャルティア」
「解っていんす。さぁ、ナザリック地下大墳墓に足を踏み入れてその威容に跪きなさい」
「威容、ね。どんなものか解らないけれど楽しみにさせてもらうよ」
「ツァーヨ。御方ハ寛大ダガ奥方ニ関シテハ迂闊ナ事ヲ言ウナヨ。モモンガ様ハアヴェ様ヲ真ニ慈シンデ居ラレルノダ」
「解った。心に留めておくよ。忠告ありがとうコキュートス。有難く受け取らせてもらおう」
「いい加減にしなんし。モモンガ様が御待ちでありんすよ。とっととゲートにはいりなんし」
「うん、ちょっと雑談が過ぎたね。じゃあ、お邪魔します」
ツァーがゲートを潜るとその後についてシャルティアとデミウルゴスが続く。
玉座の間の前、右に女神左に悪魔の彫刻が施された巨大な扉の前に出る。
「ふむ。君達が誇るだけの事はある、壮麗な造りの建造物だね。この扉の中に入ればいいのかい?」
「まぁお待ちください。モモンガ様!お客人をお連れ致しました」
デミウルゴスが扉越しに伺いを立てると、ややあってセバスが玉座の間を開く。
「どうぞお入りください。モモンガ様が御待ちです」
それを見てツァーは改めて思う。
今回のぷれいやーは彼らにとって真に王たるものなのだね、と。
そんなわけで輝く白に包まれた玉座の間を進むツァーを、ある一点。
玉座の前の階段の下でデミウルゴスが囁く。
「このあたりで止まるのが招かれた者の礼儀だと思うがね。それ以上は近すぎる」
「……そうだね。後ろの怖いお嬢さんを刺激したくないからここで止まらせてもらうよ」
「その通りだ。では『ひざま……』」
「良いよデミウルゴス。未だ敵か味方か解らない以上警戒は必要だけど、今日は客として来てもらったんだ。跪いてもらう必要はないよ」
一面の白を基調とした壁面に金細工で飾られた部屋の最奥に存在する、漆黒よりもなお昏い暗黒の主。
そんな邪悪そのものと言う印象のアンデッドがその印象とは大きくかけ離れた柔らかな口調でデミウルゴスを制止する。
「はっ。申し訳ございませんモモンガ様。出過ぎた真似を致しまして」
「すまないねツァーさん。部下が失礼をしまして」
「あ、ああ。それはいいんだ。それより早速話し合いをしないかい?ぷれいやー」
「うん。実を言うと俺達もこの世界におけるプレイヤーの立ち位置と言うのを計りかねていてね。スレイン法国という国にはプレイヤー級の人材がいるにも関わらず、俺達だけ「世界を穢すもの」と言われる。その辺りの詳しい話をね、直接聞きたいんだ」
モモンガの眼窩に灯る火がわずかに絞られた気がする。
一方でツァーは戦慄して居た。
恐ろしいほどの汚染魔法を行使する魔力を迸らせるアンデッド。
こんな存在が百年の揺り返しからずっと大人しくしていたというのが信じ難い。
「では説明させてもらうけれど。そもそも君達ぷれいやーが何故世界を穢すもの、と僕達竜王の間で呼ばれているかの謂れだ……」
そこで語られるのは六大神と、八欲王の伝説。
世界の法則を捻じ曲げたそれらと、世界を一部とはいえ変えてしまえる力を持っていた十三英雄を伴った、実体験の話。
それらをモモンガはじっと聞き取っていた。
そしてすべてを聞き終えて、モモンガはカッカッカッカと顎を鳴らすように笑う。
「つまりは、君は世界を守護する竜王として俺達ナザリック大墳墓に所属するものが世界を変えるのを危惧しているわけだね」
「その通り。もし君達がそのような行動に出るというなら、僕にも覚悟がある」
「ふむふむ。なら何の心配もしなくていい。俺達はナザリック地下大墳墓を維持し、愛する人と共に在れればそれで満足なんだ」
「その言葉を信じろ、と?」
「信じてもらうしかないね。これは俺の本当の気持ちだから……だから、こそだ」
「……?」
「もし世界の穢れだというだけで理由なく我がナザリックに敵対し、潰そうとした時は我々の全力をもって世界を穢し尽してやる!天に、地に、海に!たとえ神だろうと癒せない傷を刻んでやるぞ!良いな!」
言葉が放たれた刹那、モモンガから絶望のオーラⅤが放たれる。
その波動は分体であるツァーの鎧越しにもモモンガの激情を感じさせるに十分だった。
ツァーは思う、このアンデッドは本気だ。
本気で安寧を願い、それを破る者には容赦しない。
この会談の結果得られた判断は……藪をつつかないに越したことはない、という事だった。
「では君達は自発的には世界に広がろうとしないんだね?」
「多少は外界とつながりを持つためにコキュートスにさせているような活動は行うかもしれない。でも、それ以上はしない。だから君の様な存在とは相互不可侵で居たいと願う」
「……解ったよ。僕は君たちに安易な手出しはしない。だが、アルゼリシア山脈に住む竜王の一体を倒したことについては説明を求めたい。あれはなぜ死ななければならなかった?」
「う……ん。それを言われると弱いな……」
直前まで覇気に満ちていたモモンガが若干居心地悪そうに委縮するのをツァーは感じた。
もしや彼のフロストドラゴンの竜王を倒したことに罪悪感を感じているのか?と思うほどに。
「ツァーさん、君はプレイヤーとはどんな存在か詳しくしっているかい?」
「いや、異世界から突然やってきて世界を歪めるものとしか……」
「実はプレイヤーというのはゲーム……仮想の世界で冒険し、モンスターを打ち倒す遊戯にふける者のことなんだ」
「なんだって?じゃあ彼の竜王を倒したのは遊び半分だったと……?」
「率直に言えばそういう事になる。その詫び、になるかわからないが君が望むなら竜王の蘇生を行おう。あの時はまだ俺達は仮想のつもりで……ゲームのハンティングのつもりだったんだ」
「……はぁ。竜狩りがハンティング、か。つくづく君達ぷれいやーは規格外だ。あの地域にはもう他のフロストドラゴンによって新たな秩序が形成されている。そこに前竜王を復活させても混乱の種にしかならない。故にその件については無用に願うよ」
「そうか……本当に申し訳ない事をした」
モモンガが頭を下げる。
形としては壇上から椅子から立って頭を下げる、という上から目線な行為にあたるが、ツァーの横に居るデミウルゴスと背後にいるシャルテイアが我らが主に頭を下げさせるとは!という雰囲気を発していては何も言えない。
それに、モモンガの精一杯の誠意はツァーにも通じた。
「解った。では僕と君達ナザリックは理由なき以上お互いを不可侵とする。それでいいよ」
「そういってくれるとありがたいですね。そろそろお帰りになられますか?」
「ああ、うん。もうこうなったら無用に長居をする必要もなさそうだしね」
「では……シャルティア、玉座の間の前からコキュートスの所にツァーさんをお送りして。デミウルゴスも頼むよ」
「はっ、畏まりましたモモンガ様」
「承知いたしましたモモンガ様。ほら鎧男。行くわよ」
「あ、ああ」
「シャルティア。お客人はお客人のまま帰るのだから敬意を払い給え」
「むぅ……こちらにいらしてくださいまし。お・客・様」
デミウルゴスとシャルティアの伴われて玉座の間を出たツァーはその後何事もなく、コキュートス達が待つ竜王国付近に送還された。
何はともあれナザリックと白金の竜王の接触は無難に行われたのだった。
「モモンガさん、本当に私は同席しなくてよかったんですか?」
「いいんですよアヴェさん。相手はコキュートスと互角……あるいはそれ以上の強さをもっていたんですから」
「そうはいってもナザリックの……モモンガさんの妻として私もお客様を迎えた方が良かったんじゃ」
「いいんです。もし相手がトチ狂ってアヴェさんに何かしたら」
『俺もこの世界に何をしたかわかりませんでしたから』
モモンガの世界は今、アヴェを中心に回っている。
一先ず書きたいことは粗方書き切った感がありますので。
今後の更新はアイディア次第となります。
今までの様な毎日更新などは厳しくなると思いますので、お含みおきください。