モモンガさんと異形の母   作:belgdol

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山河社稷図は隔離空間を設立する。
隔離空間の形成者を被隔離者が捕まえるor時間経過で所有権が被隔離者に移る。
という効果でいいのでしょうか。
勘違いしていたらすいません。


その後の雑多なお話
番外編1・ほのぼの山河社稷図


「山河社稷図にこんな使い方があったなんて盲点でしたね、ももんがさん」

「これも味方に対するフレンドリーファイア解禁されてたのでもしや、とは思ったんですけどね」

「今回の空間隔離役は……」

「はいはい!私アウラ・ベラ・フィオーレが務めさせていただきました!アヴェ様!」

「う、受け取り役の隔離対象の中心は僕、マーレ・ベロ・フィオーラが務めさせていただきます」

「ああ、アウラとマーレが今回のおつきなのね?ありがとうね二人とも」

「そそそ、そんな!もったいないお言葉です!」

「えへへ、普段お役に立てる機会がないから嬉しいです。アヴェ様!」

 

 タダでさえ垂れている耳をさらにへんにょりさせているマーレ(弟)と、にこにこ笑顔のアウラという本当に物おじしない姉のコンビ。

 それを見て良い事を思いついた、というようにアヴェがアウラとマーレを手招きする。

 

「はい、なんでしょうかアヴェ様」

「ふぇっ、な、なんですかアヴェ様」

「ちょっと失礼するわね」

 

 アウラとマーレを左右三本ずつの腕で優しく抱きかかえる。

 

「ふ、ふあぁ!?アヴェ様」

「ふえええぇ!アヴェ様!?」

「ふふ、良い子良い子。マーレがアウラに触れると山河社稷図が解除されてしまうから気を付けてね」

「!はい!」

「は、はいぃ……」

「どうしたんですか?アヴェさん。急に二人を抱っこなんかして」

「それは日々の待機でうっぷんが溜まっている二人をねぎらうのと……モモンガさん、私の横に並んでくださいな」

「?こうですか」

 

 疑問を抱きつつもモモンガはゆったりとアヴェの横に並ぶ。

 そんなモモンガに珍しくアヴェはさらに注文を付ける。

 

「もっとくっつく感じでお願いしますわ」

「んん…?こんな感じですかね?」

「肩に腕を回してくださいな」

「あ、はい。でもこれが一体……」

「親子ーなんちゃって?」

「あああ、アヴェさん!……ふぅ……ちぇ、沈静化が働いちゃったなぁ」

「お、親子って!モモンガ様とアヴェ様の子供ってことですか!?私達が」

「う、ううぇええええ!?それはさすがに不敬だよお姉ちゃん!」

「ふふ、不敬だなんて思わなくていいのよマーレ。アウラもね。他のギルドメンバーの皆さんが居ない今、ナザリックのNPCは皆私達の子供の様なものなのですから」

「……そうですね。そうですよアヴェさん。よーし、アウラ、マーレ。どちらか俺におんぶされてみないか?」

「えええ!いいんですか!?」

「ちょっ、お姉ちゃん!」

「はははは、良いよ良いよ。さぁ、どっちがおんぶされる?二人ともまだまだ子供なんだから遠慮することはないぞ」

「じゃ、じゃあ私がしてほしいです!えへへ……私の生みの親はぶくぶく茶釜様だけど、お父さんがいたらこんな感じなのかなぁ……」

「そうだな……さ、アヴェさん、アウラをこちらに」

「はい、お任せしますあなた」

 

 蛇身が這いずる姿勢ならモモンガより低い体高も、とぐろを巻いていればモモンガより上半身が上に来るのがアヴェの身体だ。

 右腕に抱えていたアウラを優しくモモンガの肩の上に移すと、モモンガの漆黒のローブのショルダーアーマーの上にアウラが乗る形になる。

 

「うん……?なんか違うような気がするけどこれでいいのかな」

「うわぁー!モモンガ様の肩の上、とっても高いです!フェンもクアドラシルも乗る時は姿勢が低いから地面がもっと近いのにモモンガ様の肩の上は見通しがいいですね!」

「ははは、そうかそうか。思う存分乗ってていいぞー」

「ふふ、ご機嫌ですねモモンガさん」

「お、お姉ちゃんも楽しそうですね、アヴェ様」

「マーレはどう?楽しい?」

「あの、その……とっても落ち着きます……」

「あらあら、瞼が下がってきているわよ?」

 

 笑み交じりにアヴェが指摘するとマーレはぶるると顔を振って精一杯きりっとした表情を作る。

 

「ね、寝ませんよ!仕事中ですから!」

「山河社稷図の効果が切れるまでだったら眠ってもいいと思うのだけれど……」

「こ、これでも護衛も兼ねていますから!」

「そうね……それじゃあどんな風に護衛するのかみせてくださる?小さな騎士さん」

「あ、あのー……僕は騎士じゃなくてドルイドなんですけど」

「マーレ、こういう時の騎士様は男の子が女性をどんなふうにエスコートするのか聞いているのよ?騎士さんというのは様式美のようなものよ」

「そうなんですか?すいません。僕そういう事に疎くって……」

「良いのよ。少しずつ覚えていきましょうね。それにしても」

「?」

「あの人とアウラは本当に楽しそうね」

「そ、そうですね……いいなぁ、お姉ちゃん」

「あら、マーレもおんぶしてもらいたい?」

「そんな不敬な事!」

「不敬だなんてことないわ。貴方達ナザリックの子らはみな私達の子供……養子……?の様なもの。セバスみたいに外見がお爺ちゃんだとさすがにモモンガさんも躊躇うかもしれないけれど、今のマーレならモモンガさんも喜んでおんぶしてくれるわ」

「そうでしょうか……」

「間違いないわ。さ、おんぶしてほしいなら勇気を出して」

「は、はい!モモンガ様ー!」

 

 アヴェの腕の中を抜け出してモモンガの方へふぇっふぇっとなよっとした走り方で向かうマーレ。

 若干モモンガの肩の上の姉に意地悪(まだ替わらないよーなど)されたようだが、そのうち無事入れ替わってモモンガの肩の上に乗る。

 「ふぁー!すごーい!」と感嘆しつづけのマーレはさておいて、アヴェはアウラを呼び寄せる。

 

「どうでしたアウラ、あの人の背中は」

「はい!とっても大きくてさすが至高の御方だと思いました!世界で一番のおんぶですよ!」

 

 きらきらした笑顔でいうアウラの柔らかな金髪をくしゃり、と撫でるアヴェ。

 

「そうでしょう、そうでしょう。モモンガさんの御背中は世界で一番頼りがいがあるの。見た目以上に大きくて、そこに色んなものを乗せているわ」

「えーと、それはナザリックとか……?」

「そうよ。何時いかなる時も、モモンガさんはナザリックを背負っているの……私と半分こで、ね」

「うわー!それすっごく素敵です!」

「その素敵の一端をアウラたちも担っているのよ?」

「へ?どういうことですか?」

「ナザリックの一員であるという自覚がある、それだけでその者はナザリックの一端を担っているの。最高責任者のモモンガさんと私のように半分こ、というわけにはいかないけれど、確かに貴女もナザリックをその肩に乗せているのよ。アウラ」

「……アヴェ様……光栄です!」

「あら、そんな涙ぐまなくても……あらあら……」

 

 感極まる、というようにぐしぐしと目元を擦り続けるアウラにアヴェが困っていると、周囲を一周してきたモモンガがアヴェを揶揄う。

 

「あ、アヴェさんアウラを泣かせてどうしたんですかー?いじめたりしたんですか?」

「酷いですよモモンガさん。そんなことするわけないじゃないですか」

「お、お姉ちゃん!どうしたの!?どこか痛いの!?回復魔法いる!?」

「違うわよバカ。アヴェ様にね、私達しもべもその肩にナザリックを乗せているっていわれて感激しちゃっただけ!」

「そ、そっか……えへへ、でも光栄だね。僕達もモモンガ様やアヴェ様を助けてナザリックを背負っているっていうと……」

「そうでしょ!だから別に回復魔法なんていらないの!」

「あ、泣き止んだみたいですね」

「もう、人の悪い事は言いっこなしですよモモンガさん」

「ははは、すいませんアヴェさん。にしても」

「はい?」

「聞こえてましたよ。ナザリックを半分こで背負う……俺にはアヴェさんが居てくれて本当に良かった」

「……私もですよ、モモンガさん」

 

 改めて、モモンガとアヴェ二人寄り添う。

 そうこうしているうちに山河社稷図のタイムリミットがやってくる。

 それは隔離空間への外出の終わり。

 山河社稷図を展開していたアウラから対象者のマーレにアイテムが移動し、アヴェはナザリックに素早く入っていく。

 これはそんな平和なある一日。


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