咲の世界にジョセフのようなキャラクターをオリ主として登場させてみた 作:橆諳髃
「ったく調子に乗りやがって……まぁそんな事よりも皆待たせたな! こっから7話の始まりだぜ‼︎」
あれから何分だった事やら分からねぇ……でも、その間もずっと俺の事を見守ってくれた子がいる。そもそも俺がこうなったのはこの子をからかっちまったのが原因だが……さんでも、この子は俺から離れずに、それで温かく見守ってくれた。
俺も……男がこんな道の往来で泣くなんて事が恥ずかしい事だって分かっている。でも俺はそんな中で泣いちまってる。
だけども……それが恥ずかしいだなんて思っちゃあいないぜ。なんでかなんて……そんな理由は俺にも分かりっこねぇよ。
けどこれだけは言える……昔と違って、泣いている俺の周りに誰もいないなんて事はねぇ。泣いている時に、冷たさなんて事はねぇ。なんったって……
「星条くん、もう泣き止んだすか? まだ泣きたいなら、泣いていても大丈夫。私が受け止めてあげるっすから」
今俺の側には……こんなにも良い子がいるのだから。
(あぁ……昔からだと考えられねぇな)
さて……もう俺も結構泣いただろ? そろそろよ……お礼とか言わねぇとな。
「東横……ありがとう」
まずはその一言を言って、こっちからも東横を抱きしめる。
「は、はわわわ⁉︎ ほ、星条くん⁉︎」
俺と東横の身長差は結構ある。なにせ東横の頭が俺の胸あたりに来るくらいだからな……しかもガタイもどちらかと言えば良い方だし……そんな大男がこんな往来で泣くなんて事は……多分俺が初めてだ。それも女の子の前で……そして女の子に慰められる様な形で……だが恥ずかしくはない。
「俺さ……もし東横が俺から離れちまったらどうしようって、正直考えてたんだ。昔……それも小さい時によ……俺のせいで大切な人達が離れちまったんだ。だから今回も……そんな事になっちまうんじゃないかって……」
「そうだったんすね。それが辛くて泣いてたんすね」
「あぁ……でも、側に東横がいてくれたから、ずっと悲しかった訳じゃない。体の内が……心が温まった感じがしたんだ。だから……感謝してるんだ」
「感謝なんていらないっすよ? でも、もし感謝してるって言うなら……さっき私が言った様にいつもの調子で巫山戯て私の事を笑わせて下さい。それか……いつもの様な貴方の笑顔を見せて下さい」
「はは……すぐには無理だって」
「なら、そうしてくれるまで私はこうしてるっすからね?」
「い、いや……それはちょっと……」
「……いや?」
「そ、そんな訳ねぇじゃねぇか⁉︎ 嫌なもんかよ!」
「なら良いっすよね?」
俺はそれ以上は何も言えなかった。まさか俺が泣いた後にこんなに言いくるめられるなんて……思う訳がない。なにせこんなに泣いたのはあの時以来だ。
「よーしよーし……いい子いい子」
それでさっきから東横はこの調子で俺の背中をさすっている。まるでお母さんか……もしくは姉の様な振る舞いといっても過言じゃねぇ。
そんで俺は未だに東横を笑わす事も笑みを見せれる事も出来ずで……東横に感謝の言葉は述べたものの、抱きしめたまま何も出来てないし……
(って……今更だがこの状況なんだよ⁉︎)
あぁもう……分かんなくなってきちまったじゃねぇかぁ‼︎ 何なんだよ本当に‼︎ 誰だよこんな訳わからん状況作り出した奴はぁ⁉︎ はい俺でしたねぇ!
まぁともかくとして……頭の中がそんな訳の分からん状況だったから、なんかさっき抱いていた辛い昔とか云々かんぬんがどうでもよくなってきた……
だからこそ……こんな状況も何故か笑えてきた訳よぉ!
「あっ……やっと笑ってくれた……」
「あぁ……なんかよ……頭の中が訳わからなくなっちまったからか、今のこの状況がなぁ〜んか面白く見えちまってよ……だから思わずな」
「それでも、さっきより元気にはなってくれたっすか?」
「あぁ、おかげさまでな。それで何だが……東横はいつまでこうしてるつもりなんだ?」
「えっ? 私はいつまでもこうしていて良いとは思っているっすよ?」
……この子コミュニケーション捨ててきたって言ってたけど嘘だろ⁉︎ 捨ててきた人がこんな事を、しかも人の往来でずっとしていても良いとかっていうはずねぇよな⁉︎ まぁでもぉ? 本人がそう言うなら別にこの状況のままでもありっちゃありだしぃ?
「そうか……東横が今の状況でも別に構わねぇって言うんだったら、俺もそれに甘えるかねぇ?」
「えっ⁉︎ 私に甘えてくれるっすか⁉︎」
「東横が良いって言うんならな。それで? 東横的には今の状況って、俺のお母さん的ポジ? それとも姉?」
「えっ⁉︎ そ、それは考えてなかったっすけど……でも強いて言うなら姉ポジションっすかね? 星条くんとの年齢的にも……母親って感じでは無いっす」
「そうか……因みに生まれは何月よ?」
「えぇっと……7月26日っすよ」
「へぇ、俺の4ヶ月先か! なら、普通に俺の姉ポジやってけるな‼︎」
「ほ、本気っすか⁉︎」
「Exactry! マジだぜ?」
「そ、そそそそんな⁉︎ 私が星条くんのお姉さんになんて……」
「なれる訳ないって? いやいや! 東横にはその素質が十分にあり得るぜ! なんったって、今のこの状況がまさにそれだろ? だからいけるって‼︎」
「うぅ……そんなの絶対嘘っす! 今まで人とのコミュニケーションを諦めて来た私がなれる訳ないっす‼︎」
「東横……それは違うぜ?」
「な、何が違うっすか?」
「それは、相手との距離感だ。友達とか親友で一緒にいる時は確かに楽しい。だがな……それはさっき東横が言った様にコミュニケーションがないと中々難しい。だがな……姉や母親というのは、別にコミュニケーションが下手でもやっていけると俺は思うんだ。相手が楽しいと思っていたらそれを分かち合って、相手が悲しいとか辛いとかって思ってる時は、相手の側に寄り添う。そこに言葉とかなんていらねぇ。ただ相手の事を思う気持ちがあればそれだけで十分だって……俺は思うぜ?」
俺はそう静かに語りかける様に言った。東横は俺の顔を見上げながらそれを聞いてた。まぁ半分冗談で、それで半分は本気でこの話をした。冗談のところは勿論、東横の事をからかうつもりで言った。
だがよ……こうも思った。この状況は結構落ち着くってな。それが東横だからなのかは分からねぇが……でも落ち着いた事に変わりは無い。
俺は小1までの記憶が朧げにしか残ってない。特に、抱きしめられたりとかそういうの……あまり覚えてない。
いや、覚えてないよりもあまりされなかった記憶があるな。なに前世の記憶を引き継いでいるから、それなりの事は自分でやってた記憶もあるし……危ない事もやっては来なかった。
だから親からは……それなりにしっかり者として見られてた感じはする。それに……俺の方からも抱っことか甘えた記憶は無いかもな。
前世での記憶はあるってのに……それでも昔抱いてた感情云々は……日が経っているからから思い出しにくいと思う。母親に甘えた時の感触や匂いも……
それでこっちに転生してからは甘えるなんて事はまず無かった。だからかな……東横にこんなにされて嬉しいって思って、まだまだ甘えていたいと思っちまうのはよ……
「さてっと……そろそろ時間も時間だしよ。帰るか」
「そ、そうっすね……」
そんで俺達は互いに離れた。東横は俺が言ったさっきの言葉に影響されてか少し考え込んだはいたが……まぁ明日になれば元どおりだろうよ。そんで俺も気分は晴れたし、今日は良い夢見れそうだぜ!
また明日っつって俺と東横はそれぞれの帰路へ……
「あっ……今日の夕食と明日の弁当何にすっかな」
俺はそう思いながら帰った。
翌日
いつものように朝早起きして、筋トレとランニングした後朝食兼弁当の中身を作る。それから諸々の事を済ませていつものように登校していた。
それで昨日も東横と帰り道に別れた所に差し掛かった。すると誰かがそこで待っていたわけよ。まぁ東横だって事は一目瞭然で分かったんだがな?
「よぅ、東横! 今日もいい天気だな‼︎」
だいたいそんな感じで挨拶をした。俺の声で東横も俺が来た事に気付いたようで、顔をこちらに向けて来た。
だがなんだろうなぁ……まだ会って2日ぐらいしか経っていねぇが、何だか様子がおかしい。そんな疑問を頭の中で巡らしてたらよ……
「ふふ、おはよう星条くん。今日も元気なようで、お姉ちゃんも嬉しいっすよ。それじゃあ、今日も一緒に行こう?」
……あれ? 様子がおかしいのは俺の気のせいか? 大体いつもと同じような受け返しだった。あぁ〜……でもなんだ? この歯がグラつくように浮く感じ……
「昨日はあんな事があったっすけど……1人でちゃんと眠れたっすか?」
「と、唐突だな……まぁなんだ? あれは俺の自業自得ってやつでもあるし……それに東横からは元気もらったからな。だからいつも通り眠れたぜ?」
「そう……それなら良かったっす。お姉ちゃんの方は、星条くんがあの後また辛くなって眠れなくなってたらどうしようって不安だったっすよ?」
「い、いやぁ……なんつぅーか……俺そこまでメンタルの方は弱くないと思ってる方だしぃ〜……」
「嘘はいけないっすよ星条くん? 昨日周りに人がいなかったとはいえ、道の真ん中で泣いていたっす」
「うっ……ま、まぁなぁ〜……仰る通りです」
「ふふ、星条くんのその正直な所、お姉ちゃんは嬉しいっす。でも……また悲しかったり辛くなったりしたら、お姉ちゃんにすぐ言うっすよ? その時はまた慰めてあげるから」
「えっ? あ、あぁ……うん」
……やっぱりおかしかった。というか最初の時点で気付くべきだったな。
(いつのまにか東横の一人称がお姉ちゃんに変わってやがる……それも、最後にすをつける癖は変わっていないが、どこかしら一般論で姉が話すような話し方をしているし、それでこう感じるのは変だが……お淑やかさまで感じちまってる)
こうなった原因を作ったのは誰だ⁉︎ はぁ〜い俺でしたねチクショウ‼︎ 俺が昨日東横に姉ポジいけんじゃね? って半分冗談半分本気で言っちまったから本人もマジで捉えてやがる……
(こ、これはどうみたって俺の所為だよな? 別に今の東横が変って訳じゃあないが……)
でもここで直さないと後々大変な目にあう気がする……
「な、なぁ東横……さっきから気にはなっていたんだけどよ……」
「ん? 何っすか星条くん?」
「その……さっきから東横の話し方が気になるなーって思ってんだが……」
ここはいっその事ストレートに聞いてみるぜ!
「なぁーんだ、そんな事っすね?」
「そんな事って……」
「お姉ちゃんね……あの時星条くんを抱きしめていたら、ずっとこうしていたいって正直に思ったっす。それであの後、星条くんが私の事を、母親か姉のようだって言って、私に姉の素質があるって言ってくれた時ふと思った。嘘の関係でも、星条くんの姉になれるんじゃないかって」
「で、でもあれは……」
「勿論、星条くんがいつものように私をからかっているって事は分かっていたっす。でも、それでも半分は本気で星条くんが言ってるような気がしたっすよ。だから……私は今日から貴方のお姉ちゃんになるっす。貴方があの時、私に声をかけてくれた。それで貴方の顔を見たら、太陽のような笑みを浮かべてくれた。私の事を初めて照らしてくれた太陽だって思ったっす。私にとって星条くんはそんな存在で、まだ2日しか付き合いはないっすけど、それでもそう思ってしまった。だから……」
東横が近づいてきて、俺の首に両腕を回して抱き締める形をとった。つま先立ちをしてまで、俺と同じ顔の高さに東横も顔を置こうとする。そして東横の顔が俺の真横に来た時だ。
「私も……貴方にとってお姉ちゃんの様な存在になりたい。太陽の様な笑顔を持つ貴方を傍で見守れる、そんな優しいお姉ちゃんになりたい」
……なんだろこの感情? つぅかさ……なんで最近、俺の心はこんなにも揺れ動いちまうんだ? 1人暮らしは苦じゃなかった。でも……なんでか物足りなかった。
そんな時にこんな言葉投げかけられて……元は冗談半分で言った事なのに……この子はそれを本気で捉えて、それでこんないい加減な奴の側にいたいと言い出して……そんなん急に言われて……
(でもその東横の言葉が……俺にとっては嬉しい)
「……バカ野郎」
「ふふ、星条くんにそう言われても、お姉ちゃんはなんとも思わないっすよ。寧ろばっちこいっす」
「はは……優しいぜ……東横はよ。本当にコミュニケーション絶って来た奴には見えないぜ……でも」
「ありがとな。俺は今……側にそう言ってくれる人がいてくれて嬉しい」
俺も、東横を抱きしめ返した。この心に響く東横の言葉をもっと聴きたいと。そして……
(もう俺は……大切な存在を手放しはしねぇ‼︎)
この時、俺は新しい人生をやっと踏み出せた気がしたんだ。
to be continue →
「な、なぁ東横?」
「ん? 何っすか?」
「これ……マジで東横が俺の姉ポジなの?」
「星条くんの目は節穴っすか? そんなの作品の中にもちゃんと書いてあるっすよ? もう1回見直したらどうっすか?」
「えぇ……いやなんつぅか……恥ずかしいんだよなぁ……」
「ふふ、でも慣れるっすから心配しなくて大丈夫っすから」
「でもなぁ……」
まぁまぁ心配しなくていいです。という事でまた!
「作者いつのまに⁉︎」