リヒテンラーデの孫   作:kuraisu

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原作キャラは名前の横に●をつけている。


登場人物一覧(新帝国暦一年終了時点)

秘密組織

ゲオルグが警察時代に利用していた個人的な情報網を基礎に改変したもの。

大量の組織が複雑に結合しているような組織構造で、中には自覚すらない構成員もいる。

こうした構造により、組織の一部が官憲によって潰されたとしても上層部の安全が保たれている。

現在は復権のための前準備として、旧王朝時代の貴族官僚を中央に復帰させることを当面の目標としている。

 

+ゲオルグ・フォン・リヒテンラーデ

本作の主人公にして、社会秩序維持局を除いた全帝国の警察組織の頂点に君臨した元警視総監にして、前帝国宰相クラウス・フォン・リヒテンラーデの嫡孫。警察としての仕事中、さんざん憲兵に邪魔されたことから、大の憲兵嫌い。

全体的に貴族らしい価値観の持ち主ではあるが、なにかが激しくズレている。

ラインハルト派によるリヒテンラーデ派粛清で、帝国政府から指名手配犯として追われている身だが、幼少から自分の命を叔父に狙われる環境で育ったので、追っ手の恐怖に怯えることはない(もしくは幼少期からの経験のせいでその辺の感情が麻痺してる)。

かなり複雑怪奇な内面を有しており、重用した者が裏切ると怖ろしい残忍性を発揮する一方、信頼した部下にたいしてはやや過大評価してしまう傾向があり、時たま彼らに弱みとなる本音らしきことを吐くことさえある。

変装・演技・弁舌スキルも高く、民間に溶け込むことに苦を感じていない。

趣味は芸術鑑賞・読書・獣狩り等々、実に貴族らしい趣味の持ち主である。

現在は旧帝国首都アルデバラン星系テオリアに潜伏し、同地の公的機関をほぼ掌握している。

 

+エドゥアルト・ヘルマン・シュヴァルツァー

警察総局特殊対策部長を務めた元警視長。ゲオルグの側近の中で逃亡後、唯一合流できた。

どちらかというと現場の人なので、今の陰謀の糸を張り巡らしたり、デスクワークに忙殺される環境に不満がある。平民階級の生まれではあるが、ゲオルグに対する忠誠心は高い。

 

+アルトゥール・ハイデリヒ

元社会秩序維持局保安中尉。仕事時とそうでない時の差が激しく、オフ時は職務上の上司でも遠慮はない。貴族連合残党組織に出向していたが、ヴァルプルギス作戦実施の際に同組織を見限ったゲオルグのはからいにより、作戦実施前にテオリアに戻された。

 

+シルビア・ベリーニ

元フェザーンの工作員。亡命政府の一件でゲオルグを巻き込もうとして接触してきたが、情勢の変化に伴って自ら秘密組織に鞍替えした。組織内では非帝国的な視点から意見を述べることが多い。

 

+ハインツ・ブレーメ

アルデバラン星系総督府商務局長官。ラインハルトの権力掌握による成り上がりへの追い風に乗っかって出世し、更なる立身栄達のために秘密組織に参画した。

 

+院長

孤児院の院長。ゲオルグとは警察時代からの知り合いで、彼の情報網を預かっていた。

クラウゼとの連絡役を務めている。

 

+フリッツ・クラウゼ

内国安全保障局次長。秘密組織にとっては体制側に潜伏している重要人物である。

ヴァルプルギス作戦時に功績をたて、それを橋頭保にして内国安全保障局の影響力拡大に奔走する。

 

ローエングラム朝銀河帝国

ゴールデンバウム王朝最後の女帝カザリン・ケートヘンから帝位が臣下のラインハルトに譲位される形で成立した新帝国。良くも悪くもラインハルト個人のカリスマ性でまとまっているところがある。貴族連合残党によるヴァルプルギス作戦により、開明派の勢力が物理的に縮小したため、穴埋めをどうするかという問題をかかえている。

 

中心人物

+ラインハルト・フォン・ローエングラム●

原作主人公の片割れ。ローエングラム王朝初代皇帝として全権力を掌握している。

堂々とした戦いを好み、最近国内で頻発しているテロリズムに苛立っている。

ゲオルグのことも多少気にかけているが、オーベルシュタインほどではない。

 

+ジークフリート・キルヒアイス●

ラインハルトの亡き親友。ガイエスブルク要塞でおきたラインハルト暗殺未遂事件において彼を庇い、四八八年に死亡。死後、元帥号が追贈され、生前に遡って帝国軍三長官と大公号を与えられた。彼の墓はオーディンにあり、碑銘には「我が友(マイン・フロイント)」とだけ刻まれている。

 

+ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ●

通称ヒルダ。皇帝首席秘書官としてラインハルトの側に仕える英明な女性。

女性らしさがほとんどない人物であり、その点を父親から心配されている。

帝都のクーデター騒ぎにもかかわらず、遠征継続をはかる皇帝の決断に不安を覚えている。

 

+パウル・フォン・オーベルシュタイン●

軍務尚書。ラインハルトの側近の一人で、陰謀や政略面における参謀役。

ゲオルグのことに漫然とした警戒心を抱いているが、優先事項が多すぎて後回しになっている。

しかし彼のために、ゲオルグは計画を幾度か修正させられている。

 

+オスカー・フォン・ロイエンタール●

統帥本部総長。ラインハルトの側近の一人で、軍事・政治にも長けた優秀な才人。

まだほとんど登場していないが、ゲオルグの元側近の一人と諍いを起こした過去があったり、リヒテンラーデ一族の処刑の指揮をとっていたりとなにげに因縁があり、ゲオルグには機会主義者的な面があると思われている。

 

+ウォルフガング・ミッターマイヤー●

宇宙艦隊司令長官。ラインハルトの側近の一人で、ロイエンタールの親友で彼に匹敵する名将。

高速の艦隊運動から疾風ウォルフと呼ばれ、フェザーン進駐の時に予想より早すぎてクラウゼを慌てさせた。

ロイエンタールとあわせて“帝国軍の双璧”と評されている。

 

+ウルリッヒ・ケスラー●

帝都防衛司令官兼憲兵総監。憲兵の綱紀粛正と効率化を行なっている。

ヴァルプルギス作戦時に爆殺されかけたが奇跡的に生命をとりとめ、事態の収拾にあたった。

しかしあまりにもの不祥事であったため、その責任をとらせるために皇帝が帰還次第、最低でも帝都防衛司令官を解任させられることが確定している。

 

+アウグスト・ザムエル・ワーレン●

帝国軍の主要提督の一人であるが、本作では地球教本部→貴族連合残党というテロ組織と地上での戦いを強いられることになった。堂々と艦隊率いて戦いたいと内心で思っている模様。

 

+エルネスト・メックリンガー●

統帥本部次長。芸術提督の異名を持ち、新王朝の軍高官の中では珍しく芸術方面に造詣が深い。

皇帝の意を受け、旧王朝における軍事力の中央偏在を改めて軍管区制を導入する軍制改革を担当している。

 

+フランツ・フォン・マリーンドルフ●

国務尚書。マリーンドルフ伯爵家当主にしてヒルダの父。温厚な紳士として昔から知られる貴族である。

時代の変化を理解しているが、基本的な価値観は大多数の貴族と変わらない。

そのため没落貴族に同情してささやかな支援をしており、彼らからも慕われている。

 

+オスマイヤー●

内務尚書。小心者で社会秩序維持局に協力していた過去がある。

ゲオルグにその弱みで脅されている上、劇的な開明政策が自分の首を絞める可能性があることを知ってからは開明改革に懐疑的になって中立のスタンスをとる。ヴァルプルギス作戦ではクラウゼと一緒になってクーデター鎮圧に貢献した。

 

+ゼ―フェルト●

学芸尚書。『ゴールデンバウム王朝全史』などを執筆したことによって、貴族連合残党から憎悪され、ヴァルプルギス作戦時に拘束された時についでにマールブルク政治犯収容所で処刑される。

 

+ハイドリッヒ・ラング●

元社会秩序維持局長官で、現内国安全保障局長官。

旧体制下の官界において警察総局のゲオルグとは同盟関係にあった。

 

+カウフマン

ラングによって抜擢された内国安全保障局幹部。元社会秩序維持局職員。

空気の読めなさから他の職員に秘密警察官としての適性を疑問視されているが、尋問にかけては優秀。

 

開明派

開明政策を実施している官僚グループ。旧帝国時代は潜在的危険分子と見做されていたが、新帝国では体制の中枢に位置している。しかしヴァルプルギス作戦時に貴族連合残党によって少なくない構成員が粛清されてしまった。

 

+カール・ブラッケ●

民政尚書。開明派の二大巨頭の一人で、筋金入りの理想家にして頑固者。

ヴァルプルギス作戦時に貴族連合残党によってマールブルク政治犯収容所で処刑される。

 

+オイゲン・リヒター●

財務尚書。開明派の二大巨頭の一人で、現実に即した柔軟性を持っている。

ヴァルプルギス作戦時は出張していたため、事なきを得た。

 

+ユリウス・エルスハイマー●

民政次官。短い期間ではあるが、内務次官をしていたこともある。

ブラッケの死に伴い、民政尚書の仕事を代行することとなる。

 

共和派

旧帝国において共和主義革命を目指したテロ集団の内、新体制に順応した者達の派閥。

便宜上、元のテロ集団である共和主義地下組織のメンバーもここで述べる。

 

+ペーター・ゲッベルス

共和主義地下組織三代目指導者。いろいろとフリーダムな組織文化は彼が築き上げた。

ローエングラム体制成立後に政治犯収容所に収容され、獄中で食事を拒んで餓死した。

 

+ザシャ・バルク

共和主義地下組織副指導者。ペーターが逮捕された後、彼が組織を率いていた。

豪商出身という、恵まれた平民に過ぎず、それほど帝国の体制に不満をいだいていたわけではなかったが、フェザーンに駐在武官として勤務して帝国以外の世界を知り、徐々に共和主義に感化されていった。

ターナーと意見対立を起こし、過激派を率い混狂の夜(カオスズラーズライ・ナハト)事件を起こすも失敗。自爆して身命に決着をつける。

 

+ホルスト・フォン・ターナー

共和主義地下組織元幹部。新帝国に順応して内部からの共和主義浸透路線を掲げて過激派と対立し袂をわかってからは共和派の盟主となっている。ザシャら過激派の混狂の夜(カオスズラーズライ・ナハト)で散華したことを気にしており、彼らの無念を晴らすためにも共和主義体制を敷くためには手段を選ばぬ覚悟を決めている。

いろいろあって旧同盟元首トリューニヒトに価値を見出し、協力関係にある。

 

+ヨブ・トリューニヒト●

元自由惑星同盟最高評議会議長。祖国を帝国に売り渡して帝都で優雅に暮らしている。

帝都に移住してからは民間人となっているが、新王朝の繁栄に少なからず貢献する一方、厚顔にも猟官運動を展開しているが、上層部から嫌われ白眼視されているのでまだ無位無官の身。現在はヴァルプルギス作戦時の功績を橋頭保とし、ケスラーを通じて皇帝に自分を売り込もうとしている。

 

+ベイ●

元同盟軍少将。同盟時代からトリューニヒト派の一員であり、トリューニヒトが売国行為を行った後もなぜかトリューニヒトに付き従い、協力をしている。ヴァルプルギス作戦では憲兵くずれを統率していた。

 

 

それ以外

上記以外の帝国人で活躍していた者達。

 

+グスタフ・フォン・ブルヴィッツ

リップシュタット戦役で戦死したブルヴィッツ侯爵家最後の当主の忘れ形見。

時代の変化を悟り、内心を押し殺して元領民たちが暴発して無駄死にせぬように宥めていたのだが、カザリン・ケートヘンという誰の目にもわかる傀儡皇帝をラインハルトがたてたことで、ここまで帝室が侮辱されて黙っていられる奴は帝国貴族ではないと領民たちと運命をともにする決意して叛乱の指導者となる。

敗滅の際においても部下を思いやりのある言葉をかけ、滅びの美学に殉じた。

 

+クレメント

帝国軍少佐。世の理不尽を粉砕し続けているラインハルトを強く崇拝していた。植民星人としてブルヴィッツ家から惨い仕打ちを受けてきたことに対する復讐心から引き起こしたブルヴィッツの虐殺の中で銃殺される。死後は責任者として戦死扱いされず、階級剥奪処分を受けた。

しかし悲惨すぎる過去や理想的な軍人として戦友から慕われていた人柄から、民間の間ではかなり同情されている人物であり、帝都郊外に立派な墓を建てられている。また反貴族主義過激派からは英雄扱いされてすらいる。

 

+ルムリッヒ・クム

帝国軍中佐。クレメント共に民間の被害など気にせずに地上戦を行うことを主張した戦争狂。しかし、あまりにも軍が民間人虐殺に熱狂していることを憂い、地上戦突入後は良識的判断に終始していた。

 

+エルンスト・フライハルト・マティアス・アーブラハム・ジルバーバウアー

事なかれ主義の権化のような官僚。平民の身分であることを気にしすぎていたため、自分から決断することを極度に恐れているが、命令されて動く分にはかなりの有能である。

アルデバラン星系総督をしていたが、混狂の夜(カオスズラーズライ・ナハト)事件後に責任が追及され、総督付下級秘書官に降格される。

 

+ノルン・フォン・エーベルハルト

帝都第一防衛旅団司令部幕僚。小なりとは領主貴族家の出身だが、領地は既に返上済み。

少尉時代、クレメントの部下だったこともあって、彼を慕う気持ちが強い。いっぽうで、貴族意識からクレメントが憎んだブルヴィッツ家のことを羨む心もある。しかしそうした感慨は時代遅れの感傷に過ぎず、変わらなくてはならないのだという意識もある。

既にして名ばかり貴族と化しているが、従者ノイマンだけが変わらず彼に仕えている。

 

+モルト中将●

先代近衛司令官。エルウィン・ヨーゼフ二世誘拐の責任を感じて自決した。

本作では息子にヴェルンヘーア・レオ・フォン・モルトがいる。

 

+ヴァイトリング

近衛司令官。前司令官のモルト中将とは親友であり、彼の息子であるレオとも親しくしていた。そのため、彼の不穏な動きに気づき、止められなかったことに深い慚愧の念を覚えながら、ヴァルプルギス作戦後に責任をとって辞任した。

 

+マテウス・ブロンナー

帝国軍大佐。両目両腕を失っており、義眼と義手で補っている。

家族を同盟軍との戦闘や共和主義地下組織のテロ活動で全滅させられていることから、共和主義に対する憎悪が強く、共和主義者この宇宙から消し去ることを願っている。

開明派も共和主義を容認する害悪であると嫌悪しており、なぜ敬愛するラインハルトが彼らが権力を握っていることを認めているのを不思議がっている。

 

+クラーゼン●

原作だと存在感がほぼない帝国軍元帥。実は言うとプロットの段階ではミュッケンベルガーを出そうと思っていたのだが、退役したなら実家の領地に帰って帝都にいないのではと思い、急遽こいつがまだ現役で元帥をやっているということにした。

それで現役元帥で在り続けられた理由からキャラ像を作った結果、閑職でもさほどは不満はなく、保身と既得権保持を優先し、危険を侵さずに権益拡大できそうな状況になれば、曖昧な言動をして言い逃れできるように保険をはった上で動くという、なんとも老獪さに溢れるキャラになった。

 

+アンネローゼ・フォン・グリューネワルト●

ラインハルトの姉。旧姓はミューゼルであり、グリューネワルトは第三六代皇帝フリードリヒ四世の愛妾になってから伯爵号とともに与えられた。

ラインハルトにとっては姉を公権力で強引に奪われたことがゴールデンバウム王朝打倒を目的にした最大の動機であり、時の皇帝がロリコン趣味の猟色家でなかったならば、歴史の流れは大きく変わっていたことであろう。

現在はオーディンのフロイデン地方で隠居しており、弟が皇帝になってからは形式的な問題で伯爵夫人から大公妃に爵位が昇格した。

 

+ルドルフ・フォン・ゴールデンバウム●

腐敗しきっていた銀河連邦末期に、海賊討伐の英雄として名を馳せた後、政界に転じてからは民衆の圧倒的支持を背景に独裁的手法による国家改革に着手し、最終的に銀河帝国を創設した人類史上初の人類統一国家における専制君主。

原作ではローエングラム王朝成立してから帝国臣民はルドルフをどう思っていたのか描写がないのでよくわからないが、本作においてはローエングラム王朝時代であっても偉大な君主として帝国民からは素朴な崇敬が向けられている。

ゲオルグもルドルフを偉大な人物であると尊敬しているが、盲信しているというわけではなく、彼の唱えた遺伝子理論を信じていないし、必要とあれば彼の銅像を破壊することも躊躇わない。

 

 

地球教

人類発祥の地である地球を聖地と崇める宗教団体。表向きは慈愛に満ちた反戦平和的な教義を掲げているが、内実は狂気と倒錯によって支配されたおぞましい団体である。地球教本部が壊滅してからはいくつかのグループに分裂した。

 

+地球教総大主教●

先祖代々続いてきた成功するまでに十世代以上かかりそうな陰謀事業を引き継いでいる老人。他の地球教徒と比べて達観しているようなところがあり、地球教の浸透より地球が人類社会の支配権を握る事を優先していて、そのためド・ヴィリエのような俗物をも側近に据えている。

本作においても描写はないが、原作通り地球教本部の崩落に巻き込まれて生死不明である。

 

+ド・ヴィリエ●

地球教団総書記代理の地位にある人物であり、宗教的信仰心が皆無であるにもかかわらず、謀略方面の才能を総大主教に評価され、若くして大主教の地位を得て、最高幹部の一員に名を連ねていた。

地球教本部襲撃後は、最高幹部の唯一の生存者として地球教内部での地位を高め、テロ組織として地球教の再編に取り組んでいる。

 

+フランシス・シオン

ヌーヴォ・ダージリンの都市長。いまだ青年団にいてもおかしくない若さにもかかわらず、いざという時に自分を匿ってくれるだろうというド・ヴィリエの打算により主教の地位にある。

個人としては善良であるが、どこまでも地球以外の世界で巻き起こる出来事に無関心であり、地球教本部がサイオキシン麻薬を使って異星人を洗脳していたと聞いても「だからなに?」という感想しかない。

現在は地球教本部喪失の混乱を最小限に抑えるため、帝国軍の占領統治に協力しつつ、地球教の弾圧に帝国軍が走らないよう牽制している。

 

+イザーク・フォン・ヴェッセル

元帝国警察官房長であり、ゲオルグの側近だった人物。過去の挫折を救われた経験から、地球教の信徒となっており、ラインハルトが帝国を掌握したときにも救いを求めて地球教に身を寄せたが、醜悪な現実に絶望していた。

地球を訪れたユリアンとささやかな交流をして打ち解け、おのれの鬱屈をぶつけるような告解をした後、地球教本部の崩落に巻き込まれて生死不明となる。

運命の女神に嫌われているのか、悲運に見舞われ続ける作中屈指の苦労人である。

 

+聖ジャムシード

地球教の開祖。血で血を洗う凄惨な争いが繰り広げられていた時代に孤児として誕生し、戦争を憎悪して反戦運動を繰り広げ、戦乱に終止符を打った偉人。地球教の聖典によれば、地球教を誕生させたのも長い辛苦の末にようやく築き上げた平和を尊ぶ精神を、子々孫々に伝えるためのものに過ぎなかったらしい。

 

+レイチェル・エルデナ

地球統一政府末期の財務次官。無念の平和主義者と地球教徒からみられているが、ただ地球の敗北を予測して保身に走っていただけである。

一応の郷土愛があり、自分の死後の地球の繁栄を願って統一政府の遺産を残したが、四〇〇年ほど前に地球教徒達によって発掘され、皮肉にも地球教から聖女扱いされ、昔日の栄光を取り戻さんと星外に謀略の糸を張り巡らす切欠となった。

 

 

貴族連合残党組織

貴族連合の盟主であったブラウンシュヴァイク公の臣下であったジーベック中佐が、公爵の遺児であるエリザベートを象徴として推戴する形で誕生した組織。エリザベートを女帝として即位させる形でのゴールデンバウム王朝の復活を目的としている。

便宜上、ヴァルプルギス作戦で彼らに協力した近衛将校たちもここに記す。

 

+エリザベート・フォン・ブラウンシュヴァイク●

貴族連合の盟主ブラウンシュヴァイク公の遺児。貴族連合残党に所属する幹部たちにとっては忠誠の対象とされているが、ほとんどの人物からお飾りにすぎないと看破されている。

 

+アドルフ・フォン・ジーベック

元ブラウンシュヴァイク公の家臣で、貴族の血を引いているとはいえ、妾の子にもかかわらず自分を重用してくれた公爵に対して深い恩義を感じている。忠誠心も強く、その強さたるや、公爵の命令に従ってヴェスターラントに核攻撃に苦言を呈しこそすれ、唯々諾々と従うほどである。

貴族連合残党組織を構築するにあたり、元同僚たちがラインハルトに鞍替えして深く重用されたことによる人材流出で、ろくな人材がいなかったため幹部さえ満足のいく人選ができておらず、頭を悩ませている。

元同僚のフェルナーから「真面目な人柄で、戦術家、謀略家として非凡な才能があるが、やや近視眼的なところがあり、自分が実施している作戦に集中しすぎて大局を誤る傾向がある。だれかに手綱を引かれているならよいが、自分から主体的に行動すると問題を起こすタイプの人物」という中々にシビアな評価をされている。

ヴァルプルギス作戦後はラーセンとともに帝都を脱出し、根拠地ラナビアへ帰還しようとしている。

 

+ゲルトルート・フォン・レーデル

元帝国軍少佐にして、ラナビア矯正区警備司令。没落した名門貴族家出身というコンプレックスから平民への残虐性と出世意欲が異常に強い。かつて警備司令としての権限を悪用して収容者を酷使し、リッテンハイム侯爵に軍需品を格安で提供し、その功績で男爵位を得た経歴から“死の惑星領主”と綽名された。

ヴァルプルギス作戦時は旧軍務省を占拠し、通信妨害を行うという重役を任されていたが、その防衛のために人質を盾にしたり、人質を爆弾扱いして利用したりする外道戦法をまったくためらうことなく用いた。

旧軍務省を守り切れないと判断した時点で逃亡をはかったが、カウフマンに追跡されて捕まる。

その後は内国安全保障局で熱烈的な大歓迎を受けている。

 

+サルバドール・サダト

元帝国軍准尉。ラナビア矯正区警備部隊に所属していた頃、反抗的な収容者を処刑していく任務に従事していたため、“ラナビアの絞刑吏”と綽名された。

とにかく他人の幸せをぶち壊すのが大好きという超がつくレベルの危険人物であり、貴族連合残党の大義にまったくといっていいほど共感しておらず、内心では馬鹿にしている。

ヴァルプルギス作戦時には憲兵将校アインザッツ少佐を名乗り、マールブルク政治犯収容所で開明派官僚の処刑を担当。その後、逃亡中に拾ったオットーと共に謎の勢力に保護された。

 

+テオ・ラーセン

元社会秩序維持局保安少佐。ゴールデンバウム王朝に対する絶対の忠誠心を植え付けるエーリューズニル矯正区の出身者で、思想犯狩りや亡命者狩りで多大な功績をあげた人物。

前後矛盾など気にしない言動が多く、しかもそれに無自覚というなかなかに凄まじい思考をしているが、それでもひたすらゴールデンバウム王朝に反する者には死をという方針だけは一貫している。

ヴァルプルギス作戦後はジーベックと一緒に逃亡。

 

+クリス・オットー

元帝国軍少佐。もともとラインハルトの部下であり崇拝者であったらしいが、なんらかの理由で彼を激しく憎悪することになり、リップシュタット戦役の時には貴族連合側に属していた。しかし散々な結果に終わって途方にくれていたところを、ゲオルグに見いだされて秘密組織に所属することとなる。

だが、ゲオルグからは鉄砲玉扱いされており、ラインハルト暗殺が下策であると考えるようになってからは扱い道に困り、ハイデリヒと交代する形で貴族連合残党に捨て駒扱いで派遣された。

ヴァルプルギス作戦時にはワーレンの暗殺を担当したが失敗し、重傷を負いながらも逃亡していたところをサダトによって救出される。

 

+ワイツ●

クラウス・フォン・リヒテンラーデの補佐をしていた下級貴族。ラインハルトの改革によって地位を失い、貴族連合残党に身を寄せ、没落貴族の支援組織である髑髏団の運営責任者というカヴァーで帝都での工作活動を統括してるが、工作資金を着服して私腹を肥やしていた。

特権階級相手にしょうもないことを直言をしても、なぜか嫌われない独特なユーモアの持ち主であり、ゲオルグ曰く「会話をしているとなぜだか温泉に浸かっているような気分になる」とのこと。

ちゃんと活躍させるつもりで登場させたんだけど読み直したら、作者の力量不足によって、ひたすらジーベックやラーセンから怒鳴られ続け、何の見せ場もなく私腹を肥やした罪でラーセンに処刑されてしまっている。

 

+ヴェルンヘーア・レオ・フォン・モルト

近衛第七中隊長。ラーセンから父親の死がラインハルトの陰謀によるものであると教えられ、独自の調査でその裏付けもとれてしまったため、ラインハルトへの叛逆を決意する。部下からは非常に面倒見がいい上官として心酔されている。

近衛参謀長ノイラートを抱き込んだことを筆頭に、貴族連合が帝都で大事件を起こせる下地を作ることに多大な貢献をしており、またヴァルプルギス作戦時にもあちこちで行動をしており、後世においてこの事件を描かれるときは彼を中心人物に据えられることが多い。

レルヒェンフェルトと一緒になってミュンヘン・ホテルにたてこもり、最後まで抵抗するつもりだったが、自分達にあわせて帝国国歌を合唱し、それが終わると涙声になりながらひたすら投降を訴えてくる包囲部隊の声に虚しさを覚え、部隊に投降すると命じた直後、拳銃自殺した。

ちなみにヴェルンヘーアというのは現実のドイツだと「守り手たる軍隊」というのが由来らしいが、なんかしっくりこなかったので「守護者たる軍人」と意訳した。

 

+カリウス・フォン・ノイラート

近衛参謀長。レオから懇願される形でクーデターへの協力を確約したが、どちらかというと今の帝国における貴族排撃の風潮に危機感を覚えての自衛的動機だった。

ジーベックほどではないが、クーデター成功後の主導権争いを想定しており、マリーンドルフ伯爵やクラーゼン元帥を説得して取り込もうとしていた。

ケスラーの放送後、もはやクーデターに成功の目はないと現実的な判断を下し、事実上の降伏文書である近衛司令部命令を発し、これ以上傷を広げない形での事態の収拾をはかった。

 

+レルヒェンフェルト

近衛中尉。旧軍務省の防衛の任についていたが、同じ任務のために貴族連合残党から派遣されてきたレーデルの下劣さに非常に辟易していた。旧軍務省陥落後はレオと行動をともにし、無謀と思いつつも最後まで付きあってやるつもりだったが、思わぬ出来心から館内放送で国歌を流し、それがきっかけとなって意図せずしてレオの抵抗心を叩き折ってしまった。

 

 

自由惑星同盟

ジョアン・レベロ最高評議会議長が風前の灯火の国家を守ろうと必死に努力しているがどうにもならないほど破綻している民主主義国家。いや、レベロが就任する遥かに前の時点で既に詰んでいたというべきか。

既にエル・ファシルとか独立してるんだけど、同盟系勢力ということでひとまとめに扱う。

 

+ジョアン・レベロ●

同盟の現在の国家元首。たぶん、この作品では名前だけの登場で出番が終了するだろう。

 

+ヤン・ウェンリー●

原作主人公の片割れ。同盟軍退役元帥で、現在は善良な民間人()であるはずなのだが、レンネンカンプとレベロの疑心暗鬼と妄想によって、なぜか根拠もないのに真実を見抜かれて暗殺されそうになる。

現在はエル・ファシル独立政府に身を寄せて革命予備軍総司令官の職にあるが、自分の虚像ばかり見てくる人間が多くてうんざりしている。

 

+フレデリカ・グリーンヒル・ヤン●

驚異的な記憶力と情報・事務処理能力に長けた才色兼備のヤンの副官。

夫への恋愛感情はそうとうなもので、そもそも軍人になったのも彼に近づきたかったからという超がつくレベルの物好き。

 

+ユリアン・ミンツ●

ヤンの養子。フェザーンではシュテンネス、地球ではヴェッセルというように、どういうわけか、旅先でゲオルグの関係者とよく出会うので、ある意味同盟キャラでは一番スポットがあたっている。地球での体験はいろいろと衝撃だったようで、ヤンとそのことについて語りあった。

地球編では恐るべき主人公属性を発揮し、この作品の主人公だれやれったかなと作者は何度か疑問に思った。

 

+オリビエ・ポプラン●

ユリアンと一緒に地球への旅に同行した人物。拒絶反応を見て即座にサイオキシン麻薬によるものと見抜くあたり、もしかして知り合いに手を出してしまった人物でもいたのだろうか。

余談だが、地球教本部と異なり、ダージリンに住んでいる女性には彼の目から見ても魅力的に映ったのが少なからずいたようだが、地球教の教義による貞操観念の強さのせいで、だれもかれも「結婚を前提に」と前置きしてくるので断念し、地球での戦歴はゼロな模様。

おかげで宗教嫌いがさらに悪化したと本人は語る。

 

+ルイ・マシュンゴ●

ユリアンと一緒に地球への旅に同行した人物。ユリアンの父親だと素朴な地球教徒から勘違いされて驚いていた。

 

+フランチェシク・ロムスキー●

エル・ファシル革命独立政府主席。現実感覚より理想や羞恥心を優先する傾向があり、潔癖だが有能な指導者とは評し難い一面がある。本作では反和平活動防止法にひっかかっていた大量の強硬派を受け入れて、エル・ファシル全体を右傾化させた。

ところで原作における彼の肩書きは「主席」「政府首班」「議長」とコロコロ変わるのはなぜなのだろうか。頻繁に行政機構の改編とかしていたのだろうか? よくわからないのだが、とりあえず本作では独立政府主席として政務を仕切っているということにして、「主席」で一貫することにする。

 

+アーレ・ハイネセン●

自由惑星同盟の建国の父として崇められている人物。同じ銀河帝国の奴隷たちと一緒に自由の天地を求めて脱走した長征一万光年(ロンゲスト・マーチ)の指導者であるが、彼自身は途中で事故死しているので、同盟の建国そのもにはかかわっていない。同盟の首都名は彼の名に由来しており、巨大な彼の銅像が自由と民主主義の象徴として設置されている。

ルドルフに比べて彼がどのような性格の持ち主であったのか原作での描写がほぼ皆無であるため、二次作家にとってはいろいろと好き勝手に解釈できてしまう人物である。

 

+グエン・キム・ホア●

ハイネセンの親友であり、彼の死後は長征一万光年(ロンゲスト・マーチ)の指導者として、バーラト星系第四惑星を発見した。やがて人類社会を二分する一大勢力へと成長するささやかな共和国を建国した後、公職に就かず喪われた親友の名を冠したハイネセン記念財団の名誉会長の地位だけで老後を過ごした。

原作の記述によると初代元首に推されたものの謙虚に辞退したらしいが、それって人口たった一六万人での建国事業(しかも将来的に接触するであろう帝国の脅威に対抗できるまで成長する基盤を作らなくてはならないとかいう難事業(ムリゲー))を若者に押し付けただけなのでは……? いや、盲目の上、老境の人だから無理からぬことであるが。

 

+イオン・ファゼガス●

ドライアイスで宇宙船を作ればいいんだというハイネセンのアイデアの切欠を作った子ども。

年齢的に考えて、もしかたら彼が自由惑星同盟の初代国家元首だったのだろうか?

(他に原作で名ありのキャラがいないだけだが)

 

 

フェザーン自治領

帝国と同盟の間に存在した自治領。現在は帝国軍が進駐して自治権を剥奪されている。

同盟同様、ここもフェザーン自治領にルーツがある人物をまとめて扱う。

 

+アドリアン・ルビンスキー●

第五代フェザーン自治領主。彼の陰謀により、ゲオルグが当初想定していた長期戦略を初っ端から破綻してしまった。フェザーンが帝国軍によって占領されてからは地下に潜伏して情報収集と謀略に励んでいる。

 

+ニコラス・ボルテック●

元々はルビンスキーの片腕だったが、己の失敗で立場を失うことを恐れて元上司を帝国に売り飛ばし、その功績をもって帝国のフェザーン代理総督に就任する。

しかしフェザーンを新帝国の首都にしようとするラインハルトの構想もあって、代理総督府はフェザーンにおける統治権を喪失しつつある。

 

+ヤツェク・グラズノフ▲

元々は帝都駐在高等弁務官府の一等書記官だったが、時の上司ボルテックの売国事業に加担して帝国領フェザーンの高官となることを目論む。しかしボルテックから自分の地位を狙っているのではないかと警戒されて帝国本国に置いてけぼりにされる。

その後、ジルバーバウアーの失脚に伴い、明らかにボルテックと繋がっている彼を疎んじた帝国政府によってアルデバラン星系総督に就任させられる。その後、ゲオルグの秘密組織となんらかの関係を結んだようだが詳細不明。

 

+ボリス・コーネフ●

フェザーンの独立商人。ヤンの親友であった伝手で、ユリアンを地球まで送り届ける役を任されていた。どんなことであれ体制側に就くこと拒む自由人。

 

+ナポレオン・アントワーヌ・ド・オットテール●

コーネフの部下。原作だと地球教本部で情報室を守っていた狂信者によって殺害されるが、本作ではユリアンがヴェッセルと打ち解けていた影響で別ルートから地球教の情報を入手したため、生存。

 

+レオポルド・ラープ●

地球出身の商人であり、コルネリアスの大親征によって帝国と同盟が疲弊している状況を巧みに利用し、フェザーン自治領を成立させ、その初代自治領主となった男。

実は地球教の工作員であったが、そのことを本人がどう思っていたのかは謎であるが、たとえ地球教のバックアップがあったとはいえ、とても重要なポイントに自治領を築き、同盟と帝国の間に国交を結んだ手腕は凄まじい。

 

+ワレンコフ●

第四代フェザーン自治領主。帝国と同盟を相争わせるという地球教の方針に背き、独自路線を歩もうとしたため、地球教によって暗殺された。本作では帝国と同盟に対する宥和政策の一環として両国のチームが参加するフライングボール大会とか企画・実行していた。

 

 

リヒテンラーデ家

帝国にある貴族家のひとつ。本作では五〇〇年の歴史の中で徐々に力をつけてきたから名門になっているだけで、ルドルフ存命時は数ある中堅貴族家のひとつに過ぎなかったという設定であり、当然皇妃などを輩出したことはない。

ちなみにだが、ゲオルグが警察の幹部には逃亡先を教えていたのに、家の人間(執事とか)に教えている人物がいないのは、祖父や叔父の影響が色濃くて自分が一から関係を築いていった者達ほど信頼していないからである。

ゲオルグの幼少期話入れようと思っているのだが、完全にタイミングを逸してしまっているような気がする。

 

+クラウス・フォン・リヒテンラーデ●

ゲオルグの祖父。帝国宰相。ラインハルト一派に拘束され、四八八年に自裁。

彼が次男ハロルドと直系の孫であるゲオルグのどちらを次期当主にすべきか悩み、ハロルドへの次期当主指名を延期したのが一〇年以上にわたる暗闘のはじまりであった。

 

+エリック・フォン・リヒテンラーデ

ゲオルグの父。無能な典礼省の官僚。ロイエンタールの指揮で四八八年に銃殺刑に処される。

フライングボールのファンで、昔は家族と一緒に観戦しに行くこともあった。

あまりにも無能な父であったので、ゲオルグがルドルフ大帝が唱えた遺伝子理論を信じていないのは彼の存在に起因しているところが大きい。

 

+エリックの妻

ゲオルグの母。ハロルドの刺客から身を挺して息子を庇い、死亡。

余談だが、彼女の葬式にハロルドは何食わぬ顔で親族として参列していた。

 

+ハロルド・フォン・リヒテンラーデ

ゲオルグの叔父。次期当主の座を巡ってゲオルグと暗闘を繰り広げたが、四八六年九月に「事故死」。

もし自分の次期当主指名がクラウスによって撤回されなかったら、普通に甥のゲオルグを優秀な部下として使ってたかも。ある意味では兄が超がつくレベルの無能であったのに、その子が優秀すぎる素質を持って生まれるという、運命の気まぐれの犠牲者。

余談だが、彼の葬式にゲオルグは真顔で参列していた。

 




グエン・キム・ホアやイオン・ファゼガスについて本編で触れた記憶ないけど書いてしまったことだし、別にいいよね?

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