ゲーム・ア・ライブ   作:ダンイ

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エピローグ

「……以上です」

 

フラクシナスの中でも司令官である琴里にしか入ることが許されない特別通信室。

その部屋の中央には円卓が設けられており、その円卓の一席に座っている琴里は今回の精霊攻略に関する報告を行っていた。

一席と言っても、この場に居るのは琴里のみで他の人物は別の場所におり、会話は通信を通して行われている。ちなみに琴里の趣味なのか、円卓の上には四体のぬいぐるみが置かれていた。

 

『……彼の力は本物だったと言う訳か』

 

琴里の左手に座った猫のぬいぐるみからそのような声が発せられた。

いや、実際にはその隣のスピーカーから発せられているのだが、スピーカーは小さく見えにくいため琴里の目にはそう見えた。

ちなみに通信されているのは音声だけで映像はされていない……もしこの光景が見られたら琴里は怒られること間違いなしだろう。

 

「だから、言ったじゃないですか。士道ならちゃんとやれるって」

 

『君の話だけだと、信憑性がなかったのだよ。精霊の力を吸収する能力など、とてもではないが信じられなかったのでね』

 

『しかし、いくら信じられなくとも事実封印に成功しているのだから、信じるしかないだろう。それよりも気になるのは、この女神と呼ばれる存在だ』

 

会話に割り込んできたブルドックの話を聞きながら琴里は顔をしかめた。

やはり来たかと……本当はこの事実は隠しておきたかった。絶対にここにいる奴らはろくでもない事を考えると、確信にも似た予感があったからだ。

しかし、だからと言って組織の一員として全てを隠して置く事はできない……士道の不利益になる情報を隠すだけで精一杯であった。

 

『戦闘中の映像を見させてもらったが……見た限りでは精霊にも劣らない戦闘能力を見せていたじゃないか。本気を出した際はどれほどの力になるのかね?』

 

「あくまで聞いた話ですが、精霊には一歩劣るもののASTをはるかに凌駕した実力を誇るようです」

 

『聞いた話か……その話に信憑性はあるのかね。データとして示してもらわないと困るのだよ』

 

「それは……」

 

無茶を言うなと怒鳴りたくなるのを琴里は無理やり抑えた。

目の前のブルドックは平然と言ったが、フラクシナスに積まれたセンサーで一切感知できない力をどうやって測れと言うのか?

まさかとは思うが精霊と実際に戦わせる……なんて馬鹿な答えではないと思いたかった。そんな事をすれば本末転倒だし、街一つくらい消える……

たぶん、何も考えないで話しているのだろう。

 

『そう彼女をせめてはいかんよ。報告書を読む限りではデータを取ることは出来なかったのだろう?それよりも私が聞きたいのは、どうやって異世界間を移動しているかと言う話だ』

 

「本人には一応聞いたのですが、言いたくないそうで……下手に尋問をすればこちらの立場が悪くなるのでこれ以上は……」

 

やはり聞いてきたか……

琴里はそう思いつつ、会話に割り込んできたネズミに事前に考えていた嘘を話した。

士道から聞いた話によれば異世界にはこちらよりも進んだ技術がいくつもあるらしい。この事は報告はしてないので気づいているかは分からないが、異世界からの何かしらの利益を独占したいと考えているのだろう。

丸わかり過ぎる。

 

『……異世界の事はこちらでも完全に予想外の事態だ、また別の機会に話すとしよう。五河指令、なにはともあれ素晴らしい成果だ。これからも期待しているよ』

 

「はっ」

 

リスの声を聴いた琴里は初めて姿勢を正して、頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふぁ」

 

十香の霊力を封印してから一夜……たった一日で修復を終えた校舎の中で俺はあくびをしていた。

琴里に聞いた話だが、空間震の被害の修復には顕現装置が用いられた装置で修復しているらしい。そのためか、たった一日で元通りとなっていた。

 

ASTの攻撃から無事に逃れられた後、十香は検査があるとのことでラタトスクの職員の人たちに連れていかれてしまった。さすがに此処に来て裏切りなんて事は考えたくなかったのだが、もしものためにプルルートが十香についていった。

霊力を封印する方法は教えてもらったが、封印した後の十香を好き勝手に使わない……なんて保証はなかったからな。まあ、大丈夫だとは思うけどな。

ちなみに、ネプテューヌは超次元の方に帰っていた。さすがに転換期の真っただ中にこれ以上国に居ないのは不味いからな……まあ、国に帰ってもやる事なんてゲームとかなんだろうけどな。

 

それにしても、あの十香の霊力の封印の際、何かしらの力が流れ込んできたような気がしたんだが……もしかして封印って俺の身体にするのか?

だとしたら……あの力って……

 

「……よう、五河士道……覚悟はできてるんだよな?」

 

「殿町……ってどうしたんだよ!!お前、血の涙を流してるぞ!」

 

急な声に驚いて後ろを振り向けば、そこには瞳から血を流した殿町が立っていた。

一体何があったんだ?病院に行った方が良いんじゃ……っていうか殿町のあまりにも酷い有様に皆距離を取ってひそひそ話をしている。

「一体何があったの」や「事故にでもあったんじゃない?」や「より気持ち悪くなってるわ」や「士道君が浮気したんじゃない?」とか……って最後の言った奴だれだ!?

俺と殿町は断じてそんな関係じゃない。

 

「よくも、よくも白々しく学校に登校することが出来たな!!」

 

「ちょっと待って、一体なんの事なんだよ!」

 

「俺が何も知らないと思うな!何が旅先で会っただ!!これを見て同じことが言えるのか!!」

 

そう雄叫びを上げながら携帯を取り出す殿町……なんかこれ似た光景、つい最近にもなかったか?

すごく嫌な予感がするんだが……

殿町の取り出した携帯の画面を見つめる。するとそこには俺と十香が一緒に出歩いている写真が……これはもう誤魔化せそうにない。

本当にどうしよう……

 

「さあ……今度こそ真実を話してもらうぞ。五河士道、この写真の少女とは……」

 

「皆さん、ホームルームを始めるので席に座ってください」

 

た、助かった。

珠恵先生が現れたことで、殿町もさすがにこの場での追及は諦めたようで舌打ちをした後、席の方に戻っていた。正直、血を流しながら問い詰めてくる殿町はゾンビのようで恐ろしかったからな。

今も席に座りながら呪いのような恐ろしい言葉を唱えてるし……なんか別の理由を考えてないとまずいな。

 

「今日は出席を取る前にサプライズがあります。……入ってきて!」

 

珠恵先生がそう言うと、扉の奥の方から声が聞こえてきた……転校生だろうか?

教室中の生徒が扉の方に視線を向ける……そして扉から入って来た人物を見て俺は声を失ってしまった。

だってそこには……

 

「今日から厄介になる、夜刀神十香だ。皆よろしく頼む」

 

制服を来た十香がいたのだから……

たぶん琴里達が十香が一般人として暮らせるように手を回してくれたのだろうが……他にも方法ってものがあるだろう。

それに俺にまで黙ってるなんて……

たぶん琴里の奴、俺が慌てふためく様を録画してるんだろうな……本当にどこで育て方を間違ったのだろう。

 

「おお、シドー!会いたかったぞ!!」

 

十香の大声に反応するように俺に向けられた注目に頭を抱えたくなりながら、俺はこの後に言わなければならない言い訳を必死に考えることにした。

いや、だって何か考えないと、もはや化け物と化している殿町がガチで怖いし……




今までお読みいただきありがとうございます。
今回で十香の話は終わりで、次は四糸乃……の前に番外編を入れます。
内容としてはラタトスクに捕らえられた折紙が中心となる話です。そこでは伏線っと言うほどのものではなかったかもしれませんが、士道の使いたくない力についても明かされます。
感の良い方は予想が付いているかもしれませんが……楽しみに待ってもらえると嬉しいです。

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