ゲーム・ア・ライブ   作:ダンイ

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絵師繋がりで書いてみたクロスオーバーです。


一章 十香デットエンド
プロローグ


その日の夜、俺、五河士道は夢の中で、ある出来事を思い返していた。

俺はあの日まで自分自身の事を普通の高校生だと……実際には違ったけど、少なくとも俺自身はそう思っていた。でも、あの日の出来事を切っ掛けに全てが一転した。

まず最初に、この世界で起こる自然災害……空間震の原因を知る事になった。その他には、女神が国を統べる異世界に飛ばされるし、そこであまり使いたくない力を得るし、自分の秘められた力に気づく事になるし……今となっては普通の高校生とは程遠い存在となってしまった。

 

その発端となる出来事に巻き込まれたのは、日の光がギンギンと辺りを照らす蒸し暑い夏の日だった。

その日俺は、いつものように近所のスーパーで買い物をしていた。なぜ買い物をしているのかと言うと、俺の両親は共働きで家に居ることが少なく、こういった家事は俺がするようになっていたからだ。

そしてスーパーからの帰りに事件が起こった。

 

急に女性の悲鳴とも聞こえる声が聞こえてきたのだ。

それを聞いた俺は足を止めて辺りを見渡したが、あたりには女性どころか人一人すらもいなかった。でも悲鳴のような声は未だに聞こえ、その声は徐々に大きくなっている。

少し考えて……その答えが分かった。その声は前後左右からではなく上から聞こえていたのだ。

つまり空で誰かが叫んでいるわけで……

俺が顔を見上げるとそこには、

 

「うわぁぁぁああああ!どいて、どいて、どいて、どいて!!そこに居るとぶつかるぅぅぅぅう!!」

 

「へっ…………はぁぁぁぁぁあああ!?!?!?」

 

空から少女が猛スピードで俺に向かって落ちてきて…………

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっふっ!!」

 

お腹の辺りから感じた強い衝撃、それによって一瞬で俺の意識は夢の中から現実へと引き戻された。普通の人だったら何が起きたのかと飛び上がる所なのだろうが、あいにく俺には心当たりがあった。

その心当たりとは、俺の二つ下の妹である琴里だ。彼女は俺を起こすために、ベットの上でサンバを踊ったり、ドロップキックをかましてきたり、どこで覚えたのか知らないが関節技を決めてきたりなどと、あまり良い起こし方をされた覚えがない。

今回も彼女の仕業だろうと、うっすらと目を開けて辺りを見渡したが琴里の姿は何処にもなかった。

 

琴里の仕業じゃなかったのか?

だったら一体誰がやったんだ。琴里以外には心当たりは全くないぞ。

腹が未だに痛い……その事実を踏まえると誰かが俺の腹を殴ったりしたのは間違いないと思うが……

取りあえず、ベットから起き上がろうとして布団をはいだところで衝撃を感じた原因がわかった。

俺のちょうど右隣、布団が被さって見ることが出来なかった所にその原因がいた。

 

寝ているのだ、薄紫の髪を短く切った少女……ネプテューヌが自分の右隣で。しかも、その右手は俺の腹の上に乗っかっている。

なるほど、彼女が寝返った拍子に手が俺の腹に当たってしまったのか。ともかくこれで、誰に叩き起こされたのかは理解する事ができた。

時計を見ればまだ起きるには少し早いし二度寝でも……

 

「って違う!!」

 

俺は大声で叫ぶと共に、再び眠ろうとして横になった身体を飛び起こした。

そうだ、俺が叩き起こされた事なんて今はどうでもいい、一番の問題はなぜネプテューヌが俺の布団の中で寝ているのかだ。

俺が覚えている限りでは、ネプテューヌと一緒に寝たということなかった。だとしたら一体……

 

俺が昨夜の事を必死に思い返していると、俺の大声で目が覚めたのか、ネプチューヌは起き上がると俺の方を見つめてきた。そして……

 

「へ……ふぇ!?な、何でわたしが士道と一緒に寝てるの!?…………はっ!!まさかこれが噂に聞く朝チュンってやつなの!わたしは士道に美味しくいただかれちゃったの!?二人で大人への階段を昇っちゃったの!?」

 

両手を頬に当てて顔を真っ赤にして、いやいやと首を振っているネプテューヌ。

いただかれたって……そんな事になってないのが分かって言ってるだろ。言葉がどことなくワザとらしいし……

ともかくこのままネプテューヌに騒がれると、騒ぎ声を聞いた琴里が部屋に来かねない。

だから……

 

「もぉ、ダメだよ士道。こういう事は、ちゃんと手順を踏んで、お互いの合意を「ていっ!」ねぷぅ!?」

 

俺が手刀をネプテューヌの後ろ首に叩き落すと、彼女は短く悲鳴を上げた後、俺の事を涙目で睨んでくる。

ちょっと乱暴な止め方かもしれないが、こうでもしないと彼女を止めるのは難しい。それは今までの経験が証明している。

 

「ふざけてないで、何で俺の布団に寝てるんだよ。俺が寝た時は一緒に入ってなかっただろ」

 

「ごめんごめん、士道の困った顔が見たくて、つい。それと、一緒に寝てたことなんだけど、昨日の夜に一緒にゲームをしていたのは覚えているよね」

 

「あ、ああ」

 

昨日の夜、俺とネプテューヌ、そしてもう一人の友人と一緒に俺の部屋でゲームをしていたのまでは覚えている。

そして、俺が体力的に力尽きて、二人はまだゲームに夢中だったので、終わったら帰れよと言ってベッドで寝たはずだった。

 

「士道が寝てからもゲームをしてたんだけど、クリアまであと一歩ってところで疲れちゃったんだよね。それで士道のベッドが見えたから……ぷるるんと一緒に、つい」

 

「つい……じゃないだろ!!男の布団に……っておい、今ぷるるんと一緒にって言わなかったか?ってことはまさか……」

 

嫌な予感を感じつつ、左に目を向けるとそこには腰に届くほど長い薄紫の髪を三つ編みにした少女……プルルートが気持ちよさそうに眠っていた。

なんで二人して人の布団の中で眠っているんだよ!?

 

俺が心の中で絶叫していると、それに気がついたかのようにプルルートが目を覚ました。

彼女は眠たげに目を擦るとゆっくりと起き上がり俺の方を向く、そして……

 

「士道君、おはよう~、今日はいい朝だねぇ~」

 

「ああ、今日はいい朝……じゃなくて、他に言う事があるだろ!?なんで平然と人の布団に入ってるんだよ!」

 

「おお!士道が珍しくノリツッコミをしている!!」

 

「ほんとうだぁ~、珍しいねぇ~」

 

確かに言われて見ると珍しくした気がするが、今はそんなことは関係ない。

今、重要なことは二人がなぜ俺の布団の中に入っていたかだ。ネプチューヌはついなんて言っていたが、流石に軽いノリで俺の布団で寝ようとなんて……しないよな?

この二人なら有り得ると若干の不安を感じながらも、じっと睨み付けると、二人は観念したようで正直に話してくれた。

 

「いや、実はさっきも話したと思うんだけど、やっていたゲームをクリアの直前まで進めたんだけど物凄く疲れちゃって……」

 

「それで、士道君のベッドで仮眠することにしたんだけどぉ~。お布団の魔力に負けちゃって、ぐっすり眠っちゃったのぉ~」

 

まず、人の布団で仮眠をしようとするところに疑問を抱いてほしい。

俺が琴里が起こしに来るより早く起きたから良かったものの、もし俺が起きることなく、今の光景を琴里に見られてしまったら家族会議は避けられなかっただろう。

珍しく早起きして助かった……

 

俺が安堵の息をついたのも束の間、ドッドッドと床を蹴る音と共に「おにーちゃん」と、とても聞きなれた人物の声が聞こえてきた。

ま、まさか琴里の奴が俺達の騒ぎ声に気づいたのか!?

 

「ま、まずい、琴里がこっちに向かって来てる!琴里に今の光景を見られたら…………」

 

「兄の禁断の三角関係を知ってしまった琴里、それは彼女の秘められた思いを……」

 

「ネプテューヌは、変なナレーションを入れるな!!」

 

「士道君~。こういう時は、素数を数えて落ち着いてから考えるといいよぉ~」

 

そ、そうだな。まずは落ち着かないと良い考えなんて思いつくわけないよな。

えっと、一は素数じゃないから、二、三、五……ってそんなことをしている暇もない!今も琴里はこの部屋に向かって来ているんだぞ!!

時間があまり残されていないことを悟った俺は、とっさに布団を掴むとネプチューヌとプルルートを布団の中に入れると、俺もその中に入って横になる。

これで布団が妙に盛り上がっている点を除けば、普通に寝ている姿に見えるはずだ。

 

俺が布団のなかに入ってから数秒もしない内に、部屋の扉が開くと真っ赤な髪をツインテールにした少女、五河琴里が俺の部屋に入ってきた。

 

「おにーちゃん、一体どうしたのだ?朝から大声を出して、お腹でも痛いのか?」

 

「いや、その……………えっと、あ、足だ!寝起きに足をつって、痛くて声を上げてたんだよ!!痛みはもう引いたから心配しなくてもいいぞ!!」

 

「そうなのか……でもおにーちゃん、なんで布団がそんなに膨らんでいるのだ?」

 

「えっ……そ、それは……」

 

ま、まずいどう言い訳をすればいいのか思いつかない。

人二人分の布団の膨らみなんて誤魔化しきれない……でも、真実を話してしまえば、大変なことになってしまう。

俺に取ってのネプテューヌとプルルートは何十年もの付き合いだが、琴理から見ればただの見知らぬ少女だ。その二人が俺の布団の中に寝ている光景を見てしまえば、彼女は俺が犯罪をしたと思い込んでしまうだろう。

 

本当にどうすれば……

ああ、もうこうなったらこの手で誤魔化すしかない!!

 

「う、うぅぅぅ……こ、琴理、今すぐこの場から離れてくれ……」

 

「お、おにーちゃん?」

 

俺は、顔を歪め苦悶に満ちた声を発しながら、心臓のあたりに痛みがあるかのように胸に手を当てて苦しんでいるふりをする。

すると琴理は俺の顔を不安げに見つめる。

俺は引っかかったと顔には出さないように内心では喜びながら演技を続けた。

 

「琴理……実はさっき足をつった拍子に『とりあえず目の前にいる少女に十分間のくすぐり地獄をしてしまうウイルス』略してTウイルスに感染してしまったんだ……俺が正気を失う前にここから逃げるんだ……」

 

「そ、そんな……おにーちゃんはどうするのだ!私が病院に……」

 

「だめなんだ、Tウイルスは未知のウイルス……病院に行っても治りはしない……もう手遅れなんだよ……せ、せめてお前だけでも……」

 

「おにーちゃん!?」

 

俺が目を閉じ力尽きる演技をすると琴理は大声を上げて俺の方に駆け寄ってきた。

そして琴理が俺の顔の近くに来たタイミングで……

 

「がぁぁぁああああ!!」

 

「ギャァァァァァアアアア!!」

 

急に体を起こし大声で叫んだ。

すると、それに驚いた琴理は悲鳴を上げると脱兎の如く部屋から逃げ出してしまった。

これで何とかなったんだが……なんか罪悪感に押しつぶされそうだ。なにせ琴理は何も悪くないからな、ただ間が悪かっただけだ。

悪いのは人の布団で勝手に寝ている二人だ。

 

俺が心の中で琴理に謝っていると、プルルートが急に俺の布団から這い出ると慌てた様子で部屋の隅まで行ってしまった。その顔を見ると若干だが怯えている。

何かあったのか?心当たりはないけど……とりあえず聞いてみよう。

 

「おい、プルルート、何かあったのか?」

 

「ふぇ~、だって士道君はTウイルスに感染してるんでしょ~。あたし、十分間もくすぐり地獄に合うのはいやだよぉ~」

 

「ぷるるん、士道はTウイルスに感染していないから大丈夫だよ。だって足をつってないでしょ。それよりもわたしは、Tウイルスなんて某傘の薬品メーカーの作ったウイルスの名前を安直に使う事の方が問題あると思うんだよね」

 

仕方がないだろ、とっさに考えた名前なんだから。

とにかく、ネプテューヌのおかげでプルルートの誤解は解けたようで彼女は安堵の息を吐いた後、こちらの方に戻ってきた。

 

「そうだったんだぁ~。凄い演技だったから騙されちゃったよ~」

 

「いや、場面を考えれば普通は嘘だってわかるからな。そういえば、まだ帰らなくても大丈夫なのか?イストワールには昨日までに帰るって言ってたんじゃないのか?」

 

「「あっ」」

 

大丈夫じゃなかったのか……

一応寝る前に、遅くなりそうならイストワールに電話しとけよっと言っていたんだが……

ゲームに集中してたからよく聞かないで、適当に返事を返したんだろうな……

 

「どど、どうすればいいの!?連絡するのをすっかり忘れてたよ!このままだといーすんに……いや、Wいーすんに怒られちゃうよ!!」

 

「まだ朝早いから~、急いで帰ればいーすん寝てるんじゃないかなぁ~」

 

「そ、それだ!それじゃ士道また今度ね!!」

 

ネプチューヌとプルルートは大急ぎで俺の机の引き出しを開けると、その中に飛び込んだかと思うとその姿は消えてしまった。

その引き出しの中は真っ黒になっていて……実は俺の机の引き出しは、半年程前に飛ばされる事となった異世界につながっている。ちなみにプルルートはその世界でプラネテューヌと言う国を統べる女神で、ネプテューヌはその異世界とよく似た別の世界のプラネテューヌを統べる女神だ。

そんな二人と俺が出会うことになった切っ掛けは、ちょうど今日夢に見た、空から降って来たネプテューヌと衝突した事だった。

あの時は空から降ってくるし意味の変わらない事を言い出すしで失礼だが正気を疑ってしまった。

 

俺が昔のことを思い出していると、机の引き出しから二人の悲鳴が聞こえて来た……たぶん、待ち伏せされていたんだろうな。

心の中で二人に合掌した後、俺は引き出しを閉めて、下で泣いているであろう琴理を慰めに行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の午後、俺は買い物かごを片手にスーパーへの道を歩いていた。

何時ものように食材の買い出しに向かっているのだが、ネプテューヌ達が帰った後琴理を慰めるのは大変だった。

俺の顔を見るなり泣き出すし、耳をふさいで人の話を聞こうとしないし……どうやら今回の件は琴理に深い傷を作ってしまったらしい。

お詫びも込めて今日は琴理の大好物を作るとするか。

 

夕飯のメニューを考えてながら歩いていた時だった……

 

「シドー!久しぶりではないか!!」

 

いきなりかけられた声に驚きつつ、後ろを振り返ってみれば、そこには黒髪を伸ばした綺麗な少女がいた。俺はその少女を見た瞬間思わず笑みを浮かべてしまった。

目の前にいる少女とは半年程前に一緒に異世界に飛ばされて長い間一緒に生活したことがある。

今はある事情で一か月に数回くらいの頻度でしか会えないが、その度に遊びに行ったりしている仲だ。

 

「ああ、久しぶりだな十香。最近はあまり見かけなかったけど大丈夫か?」

 

「シドーが心配する必要ない、この前も襲い掛かって来たメカメカ団の奴らは全員蹴散らしてやった」

 

「あ、あまり、やり過ぎないようにな……」

 

あはははと苦笑しつつ、俺は十香の事を見つめる。

黒くなびかせた髪、水晶のような不思議な色をした目、黄白色の肌……目の部分は少し怪しいが、それ以外の箇所はどう見ても人間にしか見えない。でも彼女は人間ではない。

精霊と呼ばれる強大な力を持った生命体……そして、空間震と言われる自然災害を引き起こす原因になっている存在だ。

もちろん十香にはそれを引き起こす気はなく、ただ彼女が普段住んでいる世界からこちらに来る際に何回かに一回の確立で引き起こしてしまうらしい。

 

ちなみに、彼女が蹴散らしたメカメカ団と言うのは、空間震の原因たる精霊を武力による対処をしようとしている部隊の事で、詳しくは分からないがたぶん自衛隊傘下の部隊だと思う。

その部隊は何度も精霊を倒すために戦いを挑んでいるらしいが、その力の差は歴然で軽くあしらわれているようだ。

 

「シドー?そんなに私の事を見つめてどうしたのだ?ゴミでもついているのか?」

 

「あ……いや、夢でネプテューヌと初めて会った時の事を見てさ。ちょっと思い耽っていただけだ」

 

俺がごめんと謝りながらそう答えると、十香は顔をうつむかせると不安そうな表情をしながらこちらを見つめて来た。

何か十香を不安にさせるような事を言っただろうか?

 

「その……シドー、最初にあった時は……すまなかった。いきなり二人に攻撃を仕掛けたりして……あの時は見るもの全てが敵に見えてしまって……」

 

ああ、あの時の事か……俺達を見るなりいきなり攻撃されたときはかなりびっくりした。

でも、別に彼女が悪いとは思っていない……あの時の十香は毎回のように攻撃を受けて精神的に参っていた。仕方がないのかもしれない……

だから俺は十香に優しい口調で語りかける。

 

「十香、そんなに気にしなくてもいいって、結果論かもしれないけどさ。あの時と十香が攻撃したおかげでプルルート達と出会えたし、十香とも友達になることができた……何も悪い事なんて起きてないだろ」

 

「それは、そうなのかもしれないが……」

 

「あっちの世界でもブランやベール、他にも多くの人たちと拳を交えたけど、今じゃ仲良くやってるだろ。十香だけが気にする必要なんてないんだよ。俺もネプテューヌも恨んだり怒ったりなんてしてないからさ」

 

俺が語り終えた後も十香はしばらく悩んでいたが、しばらくして気持ちに折り合いをつけることが出来たのか、うなずいた後にいつも通りの笑顔を見せてくれた。

 

「うむ……そうなのかもしれない…………そういえばシドー、今日は暇なのか。暇であるのなら二人で遊びに行かないか?」

 

「悪いけど今日は買い物をしなきゃいけなくてな……でも終わった後でもいいなら商店街にでもよるか?」

 

「それなら肉屋のコロッケを頼む!あそこのコロッケは絶品で……」

 

「分かった、分かったから、最初に買い物をさせてくれよ」

 

このまま商店街へと一直線に向かいそうな十香の姿に苦笑を浮かべつつ、俺はスーパーへ向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っと言うことが、あの後あったんだよ」

 

『士道だけずるいよ!わたしはあの後、待ち伏せしてたWいーすんに大目玉を食らったんだよ!しかも、それだけじゃなくて溜まってた仕事をつきっきりでやらされたし!なんでこんなにも待遇が違うのさ、主人公はわたしなんだよ!!』

 

「あ~、やっぱり待ち伏せされてたのか……それと仕事関連は溜めていた二人が悪いと思うんだが……」

 

『だって仕事なんてしたくないし……ねぇ、プリンおごってあげるから、前みたいに代わりに仕事やってくれないかな?』

 

「あまり二人の仕事をやり過ぎると、俺がイストワールに怒られるんだよ……それに明日からは学校が始まるから、あまり時間も取れなくなるからな……」

 

俺がそう返事を返すと、「そんな殺生なぁ!」と悲鳴じみた声が電話から聞こえてきた。

どうやら今回はかなりイストワールにとっちめられているようだ。たぶん今までの積もり積もっていたものが爆発したんだろうな……

まあ、自業自得と言われればそれまでなのだろうが。

 

それにしても、この携帯電話かなり便利だよな……

普通の電話では不可能な異世界への電話がこの携帯では可能になっているが、見た目は前に俺が使っていた携帯とほとんど変わっていない。ネプテューヌの妹のネプギアに今まで使っていた携帯を渡したら異世界間の通信が可能になったんだが、一体どんな技術を使っているのだろう……

前に興味本位で聞いてみたが少しも理解することが出来なかった。

ともかく、この電話のおかげで異世界に行かなくてもネプテューヌ達との会話が可能になっている。

この改造を施してくれたネプギアに心の中で感謝をしていると、イストワールのお仕置きについては諦めがついたのか別の話題を振って来た。

 

『それにしても士道、今日はあの時の夢を見ていたんだ』

 

「少し懐かしかったよ。こっちの世界だと数か月前の出来事だけど、あっちの世界で過ごした時間を考えると何十年も前の出来事になるからな……」

 

『確かにそうかもしれないね。でも士道、初めてわたしとあった時は、中二病の感染者と勘違いしたり、警察に突き出そうとしたり、いろいろと酷い扱いをしたよね。わたしは本当の事しか言ってないのに失礼しちゃうよ』

 

「わ、悪かったよ……」

 

仕方ないだろ……

いきなり自分の事を女神やら主人公やらと言ったり、存在しない国の名前を上げて自分はそこのトップなのだと言ったり、普通に生きてきた俺にはネプテューヌの事が中二病感染者としか見えなかったんだよ。

 

『だったら、そのお詫びとして仕事を代わりに「ネプテューヌさん?」い、いーすん!?もしかして今の会話聞いてたの!……そのね、今のは言葉のあやと言うか……まって!!無言で私の机に上に書類の束を置かないで!謝るから、これからは心を入れ替えるから、だからこれ以上わたしの仕事を増やさないで!お願いだよ、いーすん!!』

 

どうやら会話の内容をイストワールに聞かれていたようで、携帯からは彼女の悲痛な叫び声が聞こえてきた。会話の内容を鑑みるに仕事を増やされたんだろう。

能力はあるんだから普段から真面目にやっていれば、こんなことにはならないんだろうけどな。

 

『うぅぅ、いーすんの鬼……』

 

「人の罪悪感につけ込んで仕事をやらせようとするからだろ」

 

『それはそうなのかもしれないけどさ…………あっ!そういえば士道、明日の午後に時間取れる?』

 

「明日は始業式だけだから学校は午前中に終わるけど……何かあったのか?」

 

『明日の夜にプラネテューヌでちょっとしたイベントがあるんだけど、そのイベントにあの姿で出てくれると嬉しいかな……なんて』

 

「ネプテューヌ……俺はあの姿になるのが死ぬほど嫌な事を分かってるよな……」

 

『またまた、そんな事をいっちゃって。わたしは士道があの姿で、結構ノリノリでやってるのを何度も見てるんだよ。そんなのは口先だけで本心は「切ってもいいか?」まってまって!!実は最近、シェアが下がっててこれ以上下げるとまずい状況になってるの!だから私を助けると思って、手伝って!一生のお願いだよ!!』

 

そういえば最近はこっちに来て遊んでばかりだったからな、ただでさえ最近は転換期と言われる時期でシェアが下がりやすいみたいだしな。

人々の信仰の力……シェアが下がると言うことはそれを力の源にしている女神に取っては死活問題となる。

仕方がない……あまり気が進まないが一肌脱ぐとするか……

 

「分かったよ……今回だけだぞ」

 

『本当!?ありがとうね、士道!!それじゃあ、明日の午後に迎えに行くから部屋で待っててね!』




お読みいただきありがとうございます。
この作品の時系列としては

ネプテューヌがレイに別次元に飛ばされる

ネプテューヌは神次元ではなくてデート・ア・ライブの世界に飛ばされて、士道と衝突

色々あって、ネプテューヌと十香が戦闘、その余波で三人が神次元に飛ばされる

Vの事件を解決

神次元とデート・ア・ライブの世界が繋がって、士道と十香が帰還

っと言うふうになっています。

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