罪人のシュラ   作:ウソツキ・ジャンマルコ

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デイライトの幽霊

 

驚きつつもカイトが、マキオに確認する。

 

「…女の子?

 こんな山奥に、女の子が一人でいたって言うのかよ?」

 

「…う…うん。

 俺も信じられないけど、女の子だった」

 

カイトは、少し考え込んでから、

 

「マキオ、覚えている範囲でいいから、

 その子の特徴を教えてくれ」

 

「…たぶん、12、3歳くらいじゃないかな…

 髪は長い銀髪で…青いワンピースのような服を着てた…

 そのくらいだよ…」

 

カイトはうなずくと、

 

「バニラ、コノハ。

 急いで街に戻って、今マキオが言った女の子がデイライトにいるか、

 確認してきてほしい。

 以前に行方不明になってる子かもしれないから、それも聞いてくれ。

 わかったら、花火で合図を」

 

バニラはうなずき、コノハを連れて街へ向かった。

マキオは、カイトに尋ねる。

 

「俺達はどうするんだよ?」

 

「その子の痕跡がどこかにないか、探そう」

 

それから、二人は一時間ほど探したが、何も手がかりはなかった。

 

「カイト…デイライトの街からここまで、子供の足でどのくらいかかると思う?」

 

「…体力のある俺達が走り続けても二時間以上だから、子供だと四、五時間はかかるだろう」

 

「それを街から一人で?

 ありえないだろ…」

 

「…じゃあ、どうしてココにいたんだよ。

 周りは山で囲まれてる。

 他に人が住んでる地域には、少なくとも一日以上歩くしかないような場所だぜ?」

 

「住んでるんじゃないか…?

 この山に」

 

「……不可能じゃないかもしれないけど…考えにくいなぁ…」

 

「でも、普通じゃないよ。

 小さい女の子に、俺達が追いつけないなんて。

 この山の事を知ってるからだとしか、思えない」

 

「じゃあ…もし仮にそうだとしたら、マキオ…俺達も危険だぜ?

 女の子が一人で住んでるとは、考えられない。

 おそらく仲間がいるだろう」

 

「そうだね」

 

「よし…俺達も街に戻るぞ。

 日が暮れるとマズイからな

 一応、この場所はまた来れるように、マークしておくから」

 

「ああ」

 

二人は、街へ急いだ。

戻る途中で、バニラからの合図があり、街にはその女の子に似た子はいないとわかった。

 

 

カイトとマキオは、暗くなる直前に街に戻り、夕食を済ませると、片桐の部屋へ行く。

カイトが片桐に事情を話し、片桐が手をひたいに当てて、考える。

 

「……確かに、普通ではなさそうですね、その女の子」

 

「片桐…どう思う?」

 

「そうですね……お二人が考えた事以外には、私にもわかりませんね。

 ただ…気になるのは…

 その子が街の子供達が消えた事と、何か関係してる可能性がある…

 という事ですね。

 

 キメラの痕跡も、発見できませんでしたし…」

 

「そうだな……片桐、これからどうする?」

 

「そうですね…調査はひとまず保留にしておきましょう。

 不確定要素が多くなってしまいましたので。

 団長不在の間に、もしもの事態が起きても困りますから。

 皆には、ご苦労かけましたね」

 

「ああ、わかった。

 ただ、このままじゃ気持ちが悪いから、何かわかったら教えてくれよ。

 こっちも、危険が及ばない程度で調べてみるから」

 

「ええ、そうしましょう。

 でも、マキオさん」

 

「はい?」

 

「あなたの能力は大した物ですね。

 何かの気配がわかるとは」

 

「いえ…たまたまです」

 

「…これからも、協力してくださいね」

 

片桐は、マキオに軽く微笑んだ。

 

「は…はい。

 戦闘以外なら、なんとか…」

 

「戦闘も大丈夫ではないですか?

 私ともずいぶん稽古しましたからね。

 あれからは、していませんが、自主的に練習も続けているのでしょ?」

 

「はい…せっかく教えて頂いたので…一応…。

 でも、やはり実戦は不向きだと思いますから」

 

「まぁ、今回はお疲れ様でした。

 バニラにも後でお礼を言っておきます。

 お二人はゆっくり体を休めてください。」

 

二人は、片桐の部屋を出た。

 

翌日から、カイトはマキオと一緒に、デイライトの子供達に、

その女の子について、何か知らないか、聞き込みをしていった。

 

しかし、相手が子供の為か、話はうまく伝わらず、手がかりは何も掴めない。

ただ、子供の中に何人か、その女の子と同じような子を見たと言う子もいた。

しかし、それは幽霊だったと、口を揃えて言っていた。

 

幽霊が相手では、カイト達にもどうする事もできなかった。

 

しかし、その数日後に事件が起こった。

 

警戒していたにも関わらず、

 

また子供が消えたのだ。

 


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