ブラッドベリー拠点内の中心部。
ブラッドベリーの参謀、白河の後を、
カイト達がついていっている。
マキオも一緒に連れてこられた。
ブラッドベリーの街を見ながら、カイトが声を上げる。
「へぇー、すげぇなぁ…ずいぶん栄えてんじゃん。
ステイゴールドとは、かなり差がありそうだぜ」
マキオも驚く。
「ほんとだ、…見た目は、古びてるけど、普通に機能してそうな街だ…」
マキオもこのシュラに来て、初めて大きな街に来た。
この街は、元は駅前だった場所で、大きなビルが立ち並んでいる。
街中には、大勢の人達が溢れており、活気があった。
戦闘に参加しない団員も合わせて、12000人がこの領内で生活しているからだ。
街の中には、露天のような店まであり、人と物資が豊富なのが、一目でわかった。
カイトがはしゃいで、バニラに話しかける。
「久しぶりにこんなに沢山の人がいる所を見たぜ。
なぁ…バニラ」
バニラはそれに答えずに、ただブラッドベリー参謀、白河の後をついていく。
「物資も溢れてそうだなぁ?
いい靴とかあったら、欲しいよな…バニラ」
「…」
「お前はスカーフかな……な?…バニラ」
「…」
「小さいサイズのブラジャーもあるんじゃねーか!」
カイトに何かが飛んできた。
カイトはとっさに受け止める。
「!?」
カイトが受け止めたのは、ナイフだった。
それを見たマキオが二人を離して、バニラに声をかけた。
「バ……ニラ…、
小石ぐらいに、しとこうよ?」
しばらく歩いて、街の中心地から20分ほど離れたある建物の前で、白河は止まった。
「ココだ」
そこは、大きいが古びた廃病院だった。
カイトは、見上げながら、
「ココ…?」
「…しばらくあんた達は、ココで生活をしてくれ」
不気味なたたずまいの建物に、団員達は、互いに顔を見合わせている。
カイトが不満そうに、白河に言う。
「本部のあるビルじゃないのかよ?」
白河は、冷たい表情で答える。
「…深見団長からは、一度ココで世話をするように言われてる。
何も問題がなければ、じきに向こうに移れるだろう」
「問題?」
「ああ、裏切ったりするような奴らなんだから、
きっちり調べてからでないとな」
「…」
「フン、建物の中に食糧などは運んで、用意してある。
しばらく大人しくしてろ、いいな?」
カイトは建物を見つめる。
「…しっかし…マジかよ……変なの出ねぇだろうな?」
マキオも不安になる。
「出ても出なくても、嫌だよ…こんなトコ…」
白河は、鼻をフンっと鳴らし背中を向ける。
「では、また明日顔を出す」
去っていく白河を、カイトが引き止める。
「おい、うちの団長はいつ来るんだ?」
「悪いが、今日はあちらにいてもらう。
…なんだ?…可愛い団長だから心配か?」
「…」
カイトは目を鋭くして、白河を見つめた。
「冗談だ。
大丈夫、心配するな、仲間の生首かかえて歩くような奴に簡単に手は出さん。
ただ、こちらもお前らを警戒してないわけじゃないからな。
明日まで、大人しくしててくれ」
白河は、そう言い残して足早に去って行った。