ステイゴールドの本拠地。
武器庫で、調べ物をしている一番隊の副長小早川に、
二番隊隊長のサラスが声をかける。
「小早川さん、メイジ団長を知りませんか?」
小早川は、しゃがみながら振り向きサラスを一瞥すると、また顔を戻した。
「ああ…なんか自分だけが住む為の、状態のいい戸建ての家を探しに行ってるらしい」
「家?」
「そうだ、どうせあの女と住むんだろう。
そのまま隠居してくれると有難いんだがな…」
「俺達と同じビルの中じゃダメなんですか?」
「知るかよ、そんな事。
本人に聞け」
「……」
サラスが考えていると、小早川が振り向き冷たい目を向けてきた。
「それより、サラス……
お前、すいぶんと八雲団長と親しいらしいな…」
「親しい?
別にそんな事は…」
小早川は立ち上がり、調べていた短剣を手にしている。
「じゃあ、なんで俺達に黙って八雲団長の部屋に行ったんだ…
そのあと、わざわざお前を八雲団長が探してたらしいじゃないか?」
「ああ…それはメイ…」
「別にお前がそのつもりならいいんだぜ?
ただそれなりの覚悟をしとけよ?」
「…何を言うんです。
八雲団長は、俺たちを助けようとしてくれてるんだ。
それに、こんな切迫した状況になってきてるのに、
俺たちが仲間割れをしてる場合じゃないでしょ!」
「それは、こっちのセリフだ!
仲間だと思ってるんなら、勝手な行動はするな!」
白河は唾を吐きながら、去っていく。
サラスは背中を向けたまま、後ろで荒々しくドアが閉まる音を聞いた。
サラスはしばらくその場に立ち尽くした。
(どうしてこんなに、バラバラになってしまったんだ…
…こんなはずじゃ……なかったのに……
メイジ団長……あなたが、作りたかったのは…
こんなんじゃないでしょ……なのに…どうして?
……俺達このままじゃ……もう……)
サラスは、ふいに視線を感じ振り返った。
そこには、壁に背中をつけ、腕を組むニーナがいた。
サラスは気まずくなり、急いでニーナの前を通り過ぎ、ドアに向かう。
そしてドアノブに手をかけたが、動きを止めて、その手をおろした。
背中を向けたまま、ニーナに話しかける。
「…こんな奴らを、助ける気になんて…ならないでしょ…?」
「さあな……私が決める事じゃない……
団長が決める事だ」
「…信頼してるんですね…
うらやましいです………仲良さそうで…」
「別に仲良くなんてないさ。
ただ、お互いがやるべき事をやる…それだけだよ」
「……でも、八雲団長の事、信じてるんでしょ?」
「さあね…どうだろ?
どうせ私達は皆……犯罪者だから」
「……そう…ですね」
「……」
「……」
「ねぇ、あんた……
サラス……っだっけ?」
「…ええ」
「ちょっと体がなまってんだけど…
時間あるなら、剣の相手……してくんない?」
「…いいですよ。
こちらこそ、お願いします」
サラスは、ほんの少しだけ、心の雲が薄くなった気がした。
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同時刻。
ブラッドベリーとステイゴールドの境界付近の建物。
ロデオソウルズの幹部、カイト、バニラ、鳴子が二十名の団員と一緒に集まっている。
そこに、十名の団員を連れた男が現れた。
男はカイト達に向かって話す。
「…君らは…ロデオソウルズか?」
カイトは、槍の刃に研ぎ石を当てながら答えた。
「ああ、あんたは?」
「私は、ブラッドベリーの参謀…白河だ。
深見団長からの命令で、迎えにきた。
ついてこい」
「…ごくろうさん」
カイトはヒュッと立ち上がり、バニラ達に顔を向けて、白河の方へアゴをしゃくった。
一行は、ブラッドベリー領内へ向かって行く。