中庭を抜け、階段を登り、7階建の建物に入ると、
中はずいぶんと古い建物だとわかった。
廊下の幅が狭いのだ。
カイトは2階の部屋を一つずつ調べていく。
あまり人がいた気配はしない。
廊下にも、おの部屋にも、埃が多く堆積している。
人が住んでいなくても、物資が隠されていたりするために、
廃ビルにも、罪人は入っていく。
そのため、建物には、何かしら人の痕跡のようなものが、
残されている事が、ほとんどであった。
(部下がいたんだから、根津がいないワケは…ないよなぁ…)
この建物は、廊下の真ん中に階段がある造りになっていた。
その為、階段を上ると、まず右か左かを決めて廊下を進み、各部屋を調べる。
そして、端の部屋を調べると、また真ん中の階段の所まで戻って、
もう一方を調べるという形になり、カイトは、面倒になっていった。
建物の3階まで登り、同じように部屋を調べていく。
3階にも誰もいない。
廊下を戻りながら窓の下を見ると、中庭が見えている。
敵が入ってきてないところを見ると、隊員達は奴らを倒したのだろう。
あとは、自分が務めを果たせば、終わりだ。
階段を登り、4階に着くと左に曲がり廊下を歩く。
各部屋は、廊下に面して窓がある為、カイトは廊下から覗きながら、
部屋を調べる事にした。
左側の廊下を調べ、また真ん中まで戻り、右側の廊下に入り、部屋を見ていく。
また誰もいない。
(…逃げたのか?)
5階まで登り、同じように調べる。
ここにもいない。
残るは6階と最上階の7階だ。
6階に登り、左側を向くと、
「君がカイトか……」
男はつぶやいたと思ったら、男の右手から光が飛び出した。
カイトは、それが何かはわからないが、とっさにかわした。
「へぇっ、今のをかわすなんて、凄いなぁ…
噂以上じゃない?」
男がニヤニヤと笑っている。
攻撃を控えた隙に男の手を見ると、光の正体はレイピアだった。
…おかしい!?話が違う!?
カイトは、少し混乱した。
一番隊隊長のマークスの話では、根津の武器はハンマーのはずだ。
こいつ…誰だ?
「……噂?なんで俺の事を知っているんだよ?」
「なんでって…君は、結構有名だよ…『閃槍のカイト』君?」
「あっそう…で、お前は誰だよ?
根津じゃないよな?」
「そうだね、君の命を獲る男の名を聞いておきたいよね?
俺はビエイラだ」
「!?」
ビエイラは、「ブラッドベリー」の二番隊隊長だ。
レイピアを得意とし、その剣速は、一秒に五度の突きが出来るほど速い。
どうして、こいつが!?