山から降りたロデオソウルズは、イグニスの小さな街にいた。
今、団員が二百名しかいないロデオソウルズは「ステイゴールド」という団に身を寄せていた。
この団の団長メイジは、八雲団長と知り合いだった。
八雲は、イグニスの中心都市に行く為の道を探している状態だったが、
どの道を通っても、危険な巨団とぶつかる事になる。
この人数で、まともにぶつかっても勝ち目はない為、
この地をに拠点を構えている、ステイゴールドを頼ったというわけだった。
ステイゴールドは、ロデオソウルズの面倒をみる代わりに、
自分達と敵対する団「ブラッドベリー」を壊滅させる為、
協力をする事を求めた。
八雲と片桐は、渋々了承した。
そして、先ほどステイゴールドの団長や幹部達と、大まかな戦闘状況の確認をし、
八雲と片桐は、用意された八雲の部屋に戻ってきた。
「団長、なかなか厄介な相手ですね…
ステイゴールドは」
「ああ…相手は一万人を超える巨団だ、
こちらは、四千…
よく、今まで持ちこたえられてたと思うよ」
「そうですね…
先ほどお会いした、二番隊の隊長サラスと副長のイオナは、
かなり優れているようなので、そのおかげでしょう…
まぁそれでも、このままではいずれ疲弊して、潰されるのは、
時間の問題ですね」
「…ああ」
「ブラッドベリーには、我々が合流した事は、すぐにわかるでしょうね」
「うん。
でも、たった二百名が合流したって、たいした事はないから、
警戒はされないよ」
「そうですね…
では、警戒されてないうちに、何か考えないといけませんが…」
団長……何か案はありますか?」
「…いや…
今は正直、何も浮かんでない。
……片桐は?」
「……右に同じく……
ただ…先ほどの会議で、少し気になる事はありましたが」
「何?」
「団長のメイジさんが、少し席を外した時…
隊長さん方の雰囲気が、少し……
何か感じませんでした?」
「…感じたよ。
おそらく、隊長達はメイジに何か不満を持ってるんだろうね」
「……あまり、良い状況ではありませんねぇ」
「ああ…私達もメイジの知り合いだから、良く思われてはないかも…
隊長達の印象を良くする為に、早めに先手を打った方が良さそうだな…」
「そうですね……
……………ネロを使いますか?」
「……いや…まだいいよ。
…少し休ませたい。
……まだ…いいだろう…?」
「そうですね……
では…カイトかバニラに少しだけ敵を削ってもらうように、
頼みましょうか」
「うん……あまりやり過ぎて、ブラッドベリーに警戒されない程度にって、
伝えておいて。
私は…何か方法がないか、少し考えてみるよ」
「はい。
では、私も失礼しますね」
片桐は部屋を出て行こうと、ドアを開けた。
するとそこには、ミミミが立っていた。
「…おや…どうしまし…」
「ネロは…!」
片桐は、部屋を出てドアを閉じる。
「……」
「どこだよ!」
ミミミが、片桐を見上げて睨みつけている。
150センチと180センチでは、流石に睨まれても、
効果はなさそうだが……
片桐は、少し目を反らして話す。
「……以前お話をしたように、今、団にいな」
「休ませるって言ってたろ!
ドコにいんだよ!」
ミミミは、背中から素早くナイフを片桐の足に刺す。
片桐は、ミミミの足を払い、身体を浮かせて腕ごとナイフを掴み、
ミミミを抱え上げる。
「…っく…離せっ!」
ミミミは片桐の腕の中で暴れながら、腕に何度も噛み付く。
ドアを開けて、八雲が出てきた。
「…片桐…離してやって」
片桐はナイフだけを取り上げ、ミミミを下ろした。
「んだよ!
女の身体を乱暴にさわんじゃねぇよ!」
ミミミは、離れると同時に片桐の足をつま先で蹴り上げたが、
鉄のように硬くて、自分の足を抱えて飛び跳ねる。
八雲はドアを開けたまま、
「片桐、後はいいよ。
私が話すから」
「……では」
片桐は、ミミミを一瞥して、去って行く。
「待てよ、蛇メガネ!
あたしのナイフを返せよ!」
片桐は振り向きもせずに、ナイフを後ろに放り投げた。
ミミミは、慌てながら間違えて刃を掴まないようにする。
「わっったっっと!…たく…あぶねーだろ!
テメェ!」
片桐は無視して去って行った。
「ミミミ、入って」
ミミミは八雲を少し睨んで、部屋に入りながら、
ナイフを確かめると、刃がピョコピョコとへこんだ。
「……蛇メガネの野郎…」
八雲はドアを閉めた。
片桐は、歩きながら思った。
( ……メガネ蛇……じゃないのか? )