罪人のシュラ   作:ウソツキ・ジャンマルコ

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アヤネ

 

日本傭兵団会館。

ハンターゲート撮影会場。

 

一階のホールを歩いているミツイに、男が声をかける。

 

「ミツイ、元気そうだな」

 

「クガさん、お久しぶりです」

 

ツクヨミ傭兵団のトップクラスの隊長アリマ。

ミツイが、養成所時代に、スカウトを通して知り合った、

先輩傭兵だ。

 

「調子は良いらしいな、君の噂はいつも耳を塞いでいても入ってくるよ」

 

「そんな、やめてくださいよ」

 

「先日もベナディールで、一度に二団を壊滅させたんだろ?」

 

「あれは偶然、戦闘の情報をうちの副長がつかんだんで、

 タイミング良く攻めたら、そうなっただけです」

 

「副長って、今朝テレビで見事なバトルしてた女の子だろ?

 羨ましいね、あんな綺麗な副長と毎日一緒とは」

 

「同期生ですから、そんなんじゃないですよ」

 

「本当かい?そうか、じゃあ今度紹介してもらおうかな?」

 

「もう、勘弁してください」

 

「はははは、そうだ!おーい、アヤネ!」

 

少し先で数人と話をしていた女性がクガに呼ばれ、近づいてくる。

長い銀髪は腰の辺りまである。

瞳には、金色の向日葵が咲いているように見える。

子供の頃に絵本で見たエルフのような雰囲気を持つ、魅力的な女性だ。

 

「紹介するよ、今、ツクヨミ傭兵団の注目の女剣士アヤネ隊長だ」

 

「はじめまして、ミツイさんですね」

 

アヤネは手を差し出し、ミツイも応じる。

 

「ええ、よろしくお願いします、アヤネさん」

 

「美人だろ?」

 

「ええ、とても」

 

「もうクガさん、やめてください!」

 

「ハッハッハ、どうだミツイのとこの副長にも、負けてないだろ。

 元々は私の隊にいた剣士なんだ。

 美人な上に実力も折り紙つき。

 ミツイ、二ヶ月前のニューワールドの話は知ってるだろ?」

 

「ああ、ニューワールドの五番隊、隊長ゲーマルクが処刑された話ですか。

 もしかして?」

 

「そう、彼女の功績だ」

 

「素晴らしい!この半年でも最高ランクの罪人でしたね」

 

「そうなんだ、我が団でもな…」

 

話していると、クガが年配の男らに呼ばれている。

 

「悪い、ちょっと外すよ。

 またなミツイ、今度食事でも行こう。

 君のとこの副長もつれてな」

 

クガは、ミツイと握手をすると、笑いながら去って行った。

 

「実は私、自分からクガさんにミツイさんに紹介して欲しいってお願いしたんですよ」

 

「そうなんですか、光栄ですよ、でもどうして?」

 

「色々、噂は聞いてましたから」

 

「ただの噂で、実際は普通の退屈な人間ですよ」

 

「謙虚なんですね。

 ミツイさん、これから帰られるんですか?」

 

「ええ、上司に帰宅の許可をもらいましたから。

 本当なら休日の予定だったので。

 ゲーマルクの事、また聞かせてください」

 

「もしよろしければ、これから一緒にお食事しながらでも、お話しましょうか?」

 

「ええ、構いませんが、この会館には喫茶店くらいしかありませんが、よろしいんですか?」

 

「私、今日車で来てますので、少し出ませんか?」

 

「そうですか、ではお願いします」

 

「ミツイさん、今日はどうやって来られたんですか?」

 

「同じ隊の者の車に乗せてもらいました」

 

「では、お食事ついでに、お送りさせてください」

 

「助かります、では行きましょうか」

 

会館を出て行く二人を、遠くで葵が見ていた。

 


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