魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-   作:零式機龍

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第6話 温泉と再衝突

 

 

 

さて、世間様では連休となっている本日、僕たちは車に揺られて山道をひた走っていた。

高町家の慰安家族旅行に、友人一同ご一緒させて貰える事になったのだ。

神代家からは僕と姉さんが参加。

ちなみに母さんは、ご近所さんと別旅行。そっちはそっちで楽しんでくれぃ。

 

そんな訳で、車2台で総勢12名(+ユーノ+美月+レイハさん)。ずいぶんな人数だねぇ・・・

ちなみに各車の人物配置はこうなっている。

 

<1号車>

 

|(運転手)士郎さん | 美由希さん | なのは |

                  | アリサ |

|  桃子さん   |   僕   | すずか |

 

<2号車>

 

|(運転手)忍さん | ノエルさん |

         | ファリンさん|

|  恭也さん  |  姉さん  |

 

・・・我ながらどーゆー説明の仕方だ。てか誰に説明してるんだ?

 

 

 

 

 

ふと、後部座席が気になり振り向くと、3人で笑いつつも、少し凹んでるっぽい顔したなのは。

 

《なのは・・・色々気にするなとは言わないけど、適当に気は抜けよ》

《そうですよ、なのはさん。折角の旅行なんですからー》

《旅行中くらいはゆっくりしなきゃダメだよ、なのは》

《Master. Cheer up.》

《分かってるよ。大丈夫。ごめんね、みんな》

 

まぁ完全に切り替えるのは難しい、よな・・・

僕だって気になっていない訳じゃない。

 

先週の一件以来、まだジュエルシードは1つも見つかっていないし。

仮に見つけたとして、またあの子が出てきた場合どうするのか。それも迷っている。

 

・・・・・・って、これじゃなのはの事言えないな。

ま、折角の温泉旅行、この際ゆっくりさせてもらいますか。

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第6話 温泉と再衝突

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

温泉旅館に来たのならば、何はともあれ風呂だろう!

荷物を置くと、早々にして意気揚々と浴場に向かう。

 

そんな時、泣きそうな声が聞こえる。

 

《祐介、助けてぇ・・・・・・》

《どうしたユーノ。蚊の泣くような声して》

《僕も・・・僕もそっちの方に・・・・・・》

《だめだよ祐介くん! ユーノくんはこっちでみんなと入るから!》

 

あぁ、そういう事か。

さしずめ、みんなの玩具にされるから助けてーって事なんだろう。

愛されマスコットは大変だねぇ。

 

《祐介、祐介》

《ん、何だよ美月》

《祐介はあっち行かないんですか? 子供ですし大丈夫でしょう?》

《・・・遠慮しておく》

 

風呂に行くと言った時からこちらの行動に目を光らせてらっしゃる、

彼女の父上と兄上の視線を感じながら、男湯の暖簾をくぐる。

女湯へ向かおうものならどうなっていたことか。僕はまだ死にたくないのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくり湯に浸かってのんびりした所で、外に出る。

ちょうど出てきていたなのは達と合流し、旅館を見て回る。

やれ卓球したいだの売店見たいだのと言いながら歩いていると、

 

「はぁ~い、おチビちゃんたち」

 

声をかけてきたのは1人の女の人。背は高く、長い赤髪。

 

悠々とこちらに近づいてきたかと思えば、

 

「ん~君たちかい、ウチの子をアレしてくれちゃってるのは」

 

とか言ってくる。その目線の先は・・・僕となのは?

な、なんだ? 誰? 何かやったっけ?

 

「あんま賢そうでも強そうでもないし、ただのガキンチョに見えるんだけどなぁ」

 

いきなり失礼な事をのたまってくれるなー。

こちらも怪訝な視線を送るが・・・

 

「あ~っはっはははは!」

 

突然大声で笑い出す。

な、何この人。ちょっと危ない人? ヤバイ人?

 

「ゴメンゴメン、人違いだったかな? 知ってる子に良く似てたからさぁ」

「はぁ・・・・・・」

 

なんだ人違いか・・・

そんなんで、いきなり剣呑な雰囲気を作らないでもらいたいものだ。

まぁ間違いは誰にでもある。そこは気にすまい。

 

にこやかにユーノを撫でていたりしたので、胸を撫で下ろしていたのだが・・・

 

《今日のところは挨拶だけね》

 

突然送られてくる声。

ぎょっとして、相手を見る。

その顔は笑っていたが、声は笑っていない。

 

《忠告しとくよ。子供はいい子にして、お家で遊んでなさいね。

 おイタが過ぎると、ガブッといくわよ》

 

なんて・・・威圧感。

こちらが声も出せないでいると、

 

「さ~って、もうひとっ風呂行ってこようっと」

 

飄々と去っていってしまった。

 

・・・・・・どっと力が抜ける。

一言で言うと・・・・・・マジ怖かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

布団に入ったものの、色々考えてしまい寝付けないでいると、なのはから念話を飛ばしてきた。

 

《祐介くん、まだ起きてる?》

《あぁ、起きてるよ。・・・・・・昼間の事か?》

《うん・・・・・・あの人、やっぱり、あの子の関係者なのかな》

《まぁ十中八九そうなんでしょうねー》

《なぁユーノ。あの子も近くに来てると思うか?》

《多分・・・そうだと思う・・・・・・》

《また、このあいだみたいな事になっちゃうのかな・・・・・・》

《そう・・・なるだろうな・・・・・・》

 

しばらくの沈黙。

見えはしないが、深刻な顔をしている事だろう。

 

唐突に、ユーノが口を開く。

 

《なのは、祐介。僕ね、あれから考えたんだけど・・・

 やっぱりここからは、僕が一人で―――》

《ストップ!》

 

なのはが言葉を遮る。

 

《そこから先言ったら、怒るよ》

《ここからは自分一人でやるってか? 冗談じゃない》

《今更1人で抜けるなんて、それは酷いんじゃないですかー?》

《・・・で、でも・・・・・・》

 

3人で責め立てる。この論議は前にもしたというのに懲りないフェレットだ。

仕方ない。少し意地悪く言ってやるか。

 

《また1人で行き倒れでもしたら、本末転倒ですよー?》

《それに僕たちを巻き込まないために言ってるなら、全くの無意味だぞ。

 お前が1人で探しに行っても、僕たちはフラフラ出て来て巻き込まれてやるからな》

《そんな無茶な!》

 

困惑とも苛立ちともつかない声で叫ぶユーノ。

そんな中、なのはが声を上げる。

 

《ユーノくん、あのね・・・

 ジュエルシード集め、最初はユーノくんのお手伝いだったけど、今は違うんだよ》

《・・・え?》

《大樹騒ぎの時に言っただろ? 自分の意志で探すって。

 僕たちが今ジュエルシードを探してるのは、自分たちの意思だ。

 強制的に巻き込まれてる訳じゃない》

《そうだよ。わたしたちがやりたいと思ったから、やってるんだよ。

 だから・・・もう一人で、なんて言ったら、駄目》

《・・・・・・わかった・・・・・・ごめん、みんな・・・》

《分かればよろしい。

 さ、もう寝るぞ寝るぞ。おやすみ~》

《あ、うん。おやすみ、祐介くん》

 

 

 

取り敢えず、折角の旅行なんだ。

ま、ジュエルシードも見つかってないし、あの子とぶつかる事もないでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところがどっこい、単なる偶然か、はたまた神様の悪戯か、事態は急変することに。

夜中に感じた気配。ジュエルシード!?

 

「美月・・・」

 

小声で呼ぶと、こちらも小声で返してきた。

 

「確認しました。少し不安定な波動ですが、間違いありません」

「分かった。行くぞ」

 

士郎さんも恭也さんもいない、か。多分まだどこかで呑んでるんだろう。

こっそり部屋を抜け出し、なのはとユーノに合流する。

 

 

 

「祐介くん!」

「裏の林だ! 急ぐぞ!」

 

なのははレイジングハートをセットアップし、僕も臨戦態勢に入る。

ぼやいても仕方ないが、何もこんな時にジュエルシード発動しなくてもいいのになぁ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現場に着いた時、そこにいたのは・・・

 

「あ~らあらあらあら。

 子供はいい子でって言わなかったっけか?」

 

昼間のあの人。

おや・・・? 耳とか尻尾とか生えてるし。何か犬っぽい。

まぁ異世界の住人だし獣人がいたって不思議じゃないが。 

それと、この間会ったあの子も一緒にいた。

手にしているのはジュエルシード。恐らく今さっき封印したものだろう。

先を越されたか・・・・・・

 

「それを・・・ジュエルシードをどうする気だ!!

 それは、危険な物なんだ!!」

「さぁねぇ、答える理由が見当たらないよ?」

 

ユーノが声を上げるが、犬な人にさらりと返される。

 

「それにさぁ・・・・・・アタシ親切に言ったよねぇ。

 いい子でないと、ガブッといくよって」

 

言うや否や、一瞬で彼女の姿が変化する。

大型の犬・・・いや、狼か!?

いつかの暴走ジュエルシード犬っちとは迫力が違う。

 

「やっぱり・・・あいつ、あの子の使い魔だ!」

「使い魔?」

「よく映画とかで魔法使いが使役する、あれか?」

 

獣人が出たり、使い魔ときたり・・・・・・

魔法って何でもアリだな・・・他人の事言えないが。

 

「そうさ。アタシはこの子に造ってもらった魔法生命。

 製作者の魔力で生き、命と力の全てを懸けて守る」

 

そう宣言すると、後ろにいるあの子を見やる。

 

「先に帰ってて。すぐに追いつくから」

「うん、無茶しないでね」

「OKぇぇぇいっっ!!!」

 

咆哮し、大きく飛び上がり、こちらへ飛び掛ってくる。

慌ててなのはの前に踏み出す。

 

「美月ッ!!」

「シールド展開!!」

 

MX2351 ソリドゥス・フルゴール。

左手の甲に設定した発生装置から盾状に緑銀の光壁が展開され、彼女の突進を受け止める。

 

「なのは! あの子を頼むぞ!」

「う、うん!」

「させるとでも・・・思ってんのっ!」

「させる為に僕らがいる! ユーノ!」

「分かってる!」

 

僕たちを中心として、淡い緑色の魔法陣が展開される。

 

「移動魔法・・・まずっ!?」

「付き合ってもらおうかッ!」

「いくよ祐介! ――― 転送っ!」

 

周りの景色が一瞬歪み、僕たちは転移されられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――― ッ!? くッ・・・!!」

 

飛び掛ってきた狼を危ういところで避ける。

転移後、一旦仕切りなおしになったのも束の間、再び襲い掛かってきた彼女と戦闘になっていた。

 

「やっぱり・・・っ、こうなるんだよなぁっ!!」

 

狼なだけあって、俊敏性が高い。縦横無尽に飛び回り、突進や光弾を放ってくる。

けど、走破性ならこちらも負けてはいない。ランドスピナーを展開し、林の中を走り回る。

 

「ちょろちょろちょろちょろ、逃げんじゃないよ!!」

「なら反撃もさせてもらいましょうッ!!」

 

移動を止めない様にしながら、両手にビームスプレーガンを顕現、連射する。

サイドステップで回避されるが、牽制にはなるだろう。そのまま射撃続行。

何発かは命中・・・ではないか。防御魔法で防がれてる。

 

そんな攻防が続く中、肩の上に乗っていたユーノが彼女に叫ぶ。

 

「使い魔を造れる程の魔導士が、何でこんな世界に来ている!

 ジュエルシードについて・・・ロストロギアについて、何を知っている!」

「ごちゃごちゃ煩いっ!!」

 

返答はオレンジ色の光弾。

左手の甲で光壁を展開、斜めに受けて弾道を逸らす。

そのまま突っ込んでくる狼。スプレーガンを連射するが、防御しつつ突進してくる。

こちらの攻撃は脅威でないと判断したらしい。

 

「祐介! 止められない! 来る!!」

「なら・・・美月ッ!!

「はい!!」

 

左手でスプレーガンを連射しつつ、右手をビームライフルに持ち替える。

 

「いけえぇぇッッ!!!」

「――― っ!!」

 

銃口から、威力を高めた緑銀のビームが彼女に向かって放たれる。

先程までとは違う威力を感じ取ったか、流石に彼女も進行を止め、シールドで受け止めた。

防がれたものの、これで向こうにも警戒心も生まれるだろう。足止めには十分だ。

 

けど・・・こっちはいいとしても、なのはの方が少し心配になる。

大丈夫かな・・・・・・

 

 

 

 

 

その時、上空で激しい光が瞬く。

僕たちも、対する狼も、ついそちらを見上げる。

なのはとあの子が魔法を撃ち合っているのか!?

 

「話は聞いてたけど、凄いな砲撃魔法って・・・」

「ビームライフルが鉄砲なら、あれは大砲ですねー」

 

拮抗する桜色と金色の光。

しかし、なのはが威力を上げたのか、たちまち均衡は崩れ桜色の奔流があの子を呑み込む。

 

「なのは・・・凄い・・・・・・」

 

ユーノが呟く。が、犬の人は口角を釣り上げる。

 

「でも・・・甘いね」

「ッ!? なのはッ!! 上だ!!」

 

慌てて叫ぶが、既にあの子はなのはの懐に飛び込んで金色の光刃を喉元に突きつけていた。

 

 

 

一瞬の静寂。

暫くして、レイジングハートから何か排出される。あれは・・・ジュエルシード!?

・・・っ、勝利報酬って事か・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジュエルシードを手にした彼女が地上に降りてくる。追うようにしてなのはも。

 

「大丈夫か、なのは」

「うん・・・・・・ごめんね、ジュエルシード・・・・・・」

「いや・・・あの状況じゃしょうがないだろ」

 

そんな僕たちに背を向け、あの子が歩き出す。

 

「帰ろう、アルフ」

「んっふっふ。さっすがアタシのご主人様! んじゃあね、おチビちゃんたち♪」

 

犬の人(アルフというらしい)が人の姿になり、それに続く。

 

「待って!」

 

その背中に、なのはが声をかける。

あの子は足を止めると、振り返る事なく言ってくる。

 

「できるなら、私たちの前にもう現れないで。

 もし次があったら・・・今度は止められないかもしれない」

「それは警告か・・・?」

「なんとでも・・・・・・

 ただ・・・ジュエルシード回収の邪魔はさせない」

 

そう言って立ち去ろうとする。

それを止めるなのは。

 

「名前・・・あなたの名前は!?」

「・・・・・・フェイト。 フェイト・テスタロッサ」

「わ、わたしは」

 

その瞬間、彼女、フェイトの姿は木々の中へと消えていく。

僕たちはその背中を見送ることしかできず、立ち尽くすだけだった・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

      第6話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

作者「ジュエルシード取られちゃったねぇ」

祐介「あんたのせいだろ」

作者「そんな事はないって」

美月「それはそうと、やっとあの2人の名前がでてきましたね」

作者「そう、これで少し楽になるの。

   名前が分からない彼女たちが2人いると、『彼女』では誰を指すのか分からなくなるから」

祐介「その結果が『犬の人』か。もう少し頑張れよ」

作者「半年後に登場する某守護獣に言ったら『犬じゃない! 狼だ!』とか怒られそうだけどね」

祐介「何の事か分からんから置いといて・・・今回は新機鋼あったっけ?」

美月「MX2351 ソリドゥス・フルゴール でしたね。防御用の物ですか?」

作者「ZGMF-X42Sデスティニーや、ZGMF-666Sレジェンドに装備されてる

   ビームシールドです。別にF91やLM312V04ヴィクトリーのビームシールドでも

   良かったんだけど、型式が分からないので」

祐介「無駄な拘りだな。

   実体盾とどっちが良いんだ?」

作者「実際のところ、シールド維持に込める魔力しだいだから・・・どっちでも一緒かな」

美月「それより、『年齢的に祐介は混浴大丈夫』みたいな事になってましたけど、

   本当に大丈夫なんですか?」

作者「混浴の年齢制限は各都道府県の条例によって定められているらしいけど。

   厚生労働省は『おおむね10歳以上』って言ってるらしいのでいいんじゃないかな、多分」

祐介「父兄に見張られてなくても行かんわい・・・

   そんな事より、一般のプールや温泉に動物(ユーノ)を入れちゃ駄目なんじゃないのか!?」

美月「なお、作者の調べはいいかげんなので全てを鵜呑みにはしないでくださいね・・・・・・」

 

 

 


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