魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-   作:零式機龍

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第4話 失敗と決意

 

 

 

土曜日の夜。僕たちはとある学校に来ていた。

 

「Stand by ready.」

「リリカル、マジカル。ジュエルシード、シリアル20! ・・・封印っ!!

「Sealing.」

「よっし、お疲れ、なのは」

 

言わずもがな、ジュエルシードの探索だ。

今夜で、通算5つめのジュエルシードになる。

それなりに順調ではあるんだけど・・・・・・

 

 

 

 

 

「なのは・・・大丈夫か・・・?」

 

帰り道、フラフラとレイジングハートを引きずりながら歩くなのは。

 

「だ、だいじょ~ぶ・・・なんだけど、ちょっと・・・疲れた・・・・・・」

 

流石に連日の探索で、僕も若干疲れてはいるけど、やっぱり封印担当のなのはには相当な負担が

かかっているらしい。

 

「大丈夫には見えないぞ―――」   バタッ

「わーっ!? なのは!? 大丈夫!?」

 

しょうがない・・・家までの搬送もサポート役の務めか・・・・・・

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第4話 失敗と決意

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、日曜日の朝。

 

「眠いっす・・・・・・」

 

僕は河原に来ていた。

今日は、士郎さんがコーチ兼オーナーをしているサッカーチーム、翠屋JFCの試合の日。

僕もなのは、アリサ、すずかと一緒に応援する筈だったんだけど・・・・・・

 

「何故にユニフォーム着て、グラウンドに立たされているのでせぅか・・・?」

《人が足りなくなったから臨時選手として連れ込まれたんじゃないですかー》

 

しかし普通は補欠選手とかいるだろうに・・・・・・何故かいない。

 

「・・・まぁいいか。

 どうせ今日のジュエルシード探しは休みだって言ってたしな」

 

せいぜい頑張るとしますか・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ピッピーッ!!

 

「試合終了ーっ! 2-0で、翠屋JFCの勝利!!」

 

審判の声が響きわたり、試合が終わる。

 

「前後半に1点ずつ、快勝だな」

《祐介はあんまり働いてませんけどねー》

 

何か聞こえる気がするが無視。

みんなで士郎さんの元へと集合する。

 

「よーし! みんな良く頑張った! いい出来だったぞ、練習通りだ」

『ハイッ!!』

 

1名ほど練習してないのもいるけどね。

 

「それじゃ、勝ったお祝いに飯でも食うか! 俺の奢りだ!!」

 

歓声が広がり、みんな荷物をまとめ始めた。

 

その時、士郎さんが話しかけてくる。

 

「すまなかったな、祐介君。 おかげで助かったよ」

「いえ、あんまりお役に立てなかったですけどね」

「中々いい動きをしてたじゃないか。

 どうだい、この際うちのチームに入るってのは」

「あはは・・・ま、まぁ機会があれば考えときますよ」

 

でもきっとやらないだろーなー・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~喫茶 翠屋~

 

「応援の筈が、試合に巻き込まれるとは思わなかったな」

「ご、ごめんね。 お父さん、強引に頼んじゃって」

「いや、別に強引でもなかったけどさ」

 

翠屋では勝利の打ち上げが行われていた。

店内は満席になっていたので、僕たち4人は外のテーブルを囲んで休むことに。

 

「流石にあれだけ動いたら疲れた・・・・・・」

「何言ってんのよ、あんた全然活躍してないじゃないの」

「何だよ、僕のプレッシャージャマー機動が見えなかったのか」

「ただボール持ってた人にベタベタくっついてただけじゃない!」

 

そう、特にサッカーの技術など磨いてない僕に出来る事といえば、せいぜいボールをキープしてる

相手に寄ってプレッシャーをかけるくらいしか思いつかなかった。

そのプレッシャーにより、相手の行動にジャミングをかける!

それがプレッシャージャマー機動!!

 

「いいだろ、実際それで2回くらい相手のパスミス誘発したんだから」

「どうせならもっと攻めにいきなさいよ」

「ま、まぁまぁ2人とも落ちついて。そ、そういえばユーノくん、すっかり元気になったね」

「キュ?」

 

すずかの制止によって、事なきを得る。ナイスだすずか!

アリサの興味がユーノに向く。

 

「・・・でも、改めて見るとなんかこの子、フェレットとはちょっと違わない?」

「そういえばそうかな。動物病院の院長先生も、変わった子だねって言ってたし」

 

す、鋭い・・・・・・何とかごまかさないと・・・・・・

 

「あー、ほらあれだ、ちょっと変わったフェレットってやつだ。

 亜種だとかフェレットモドキだとか・・・」

「そ、そうだよ。ほらユーノくん、お手」

「キュ!」 タシッ

 

なのは・・・流石にお手はどうかと思うぞ・・・ てかユーノもやるなよ。

 

そんな調子で、やいのやいの言ってると、店内からチームの皆が出てくる。

 

「みんな! 今日はすっげー良い出来だったぞ!

来週からまたしっかり練習頑張って、次の大会でもこの調子で勝とうな!!」

『ハイッ!!』

「じゃ、みんな解散! 気を付けて帰るんだぞ」

『ありがとうございましたー!!』

 

どうやら解散らしいな。みんなぞろぞろと帰っていく。

 

と、なのはがその中の一人を見ている事に気づく。

あれは・・・・・・ゴールキーパーやってた人・・・?

 

「どうした? なのは」

「う、ううん、何でもない・・・・・・気のせい、だよね・・・

 

何か言ったような気もするが、まだ若干疲れてるんだろう。ボーッともするか。

 

「さて・・・じゃあ、私達も解散?」

「うん、そうだね」

「そっか、そういえばアリサもすずかも、午後は用があるんだったか?」

「うん、お姉ちゃんとお出かけ」「パパとお買い物!」

「なのはは? どうするよ?」

「うーん・・・おうちに帰ってのんびりするよ。祐介くんは?」

「とりあえず一眠りする。後は起きたら考えるよ」

 

欠伸混じりに答える。

いや実際、運動して疲れたし。予定も無いならゆっくりしたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お? あれは・・・・・・」

 

みんなと別れて、帰り道の途中で知った顔を見かける。

例のゴールキーパーの人と・・・マネージャーの人・・・?

仲睦まじく並んでいらっしゃる。あの2人、そーゆー関係でしたか?

なかなか美男美女ではないですか。

どうやら男の子の方が、何か渡そうとしているらしい。プレゼントか?

 

《人様の恋路を覗き見するのは、いい趣味とは言えませんよー?》

《いや覗き見じゃないし。 普通に見かけただけ・・・――― ッ!!?》

 

男の子の手にある物に目が止まる。

あれって・・・ジュエルシードッ!?

 

「ちょっ・・・! 待っ―――!!」

 

慌てて駆け出そうとするが、その瞬間、視界いっぱいに光が広がった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   Side Change   なのはView

 

 

 

「――― っ!?」

 

突然の感覚に目が覚めた。この感覚・・・もしかして・・・

 

「なのは!」

「ユーノくんも気づいた? これって・・・」

「間違いない。新たなジュエルシードだ!」

 

大変! 急がなきゃ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

慌てて家を飛び出し、発動を感じた近くのビルの屋上へと駆け上がる。

 

「レイジングハート! お願い!」

「Stand by ready. Set up.」

 

すぐにバリアジャケットを展開し、前方を見下ろす。

 

「・・・っ!!?」

 

なに・・・これ・・・・・・

大きな樹が辺りいっぱいに根を伸ばして・・・街が・・・ひどい・・・・・・

 

!! そうだ、祐介くんは!?

 

慌てて念話をつなぐ。

 

《祐介くん! 聞こえる!?》

《なのはか! ジュエルシードだ!!

 悪い、気づいた時には遅かった・・・》

《たぶん、人間が発動させちゃったんだ・・・強い想いを持った者が、

 願いを込めて発動させた時、ジュエルシードは一番強い力を発揮するから・・・》

《当たりだ、ユーノ・・・

 あのゴールキーパーの人が持ってた》

 

!! やっぱり・・・あの時の子が持ってたんだ・・・・・・

わたし・・・気づいてたはずなのに・・・・・・

こんな事になる前に、止められたかもしれないのに・・・

気のせいなんて・・・思ってたからっ・・・!

 

「なのは?」

「ユーノくん・・・こういう時・・・どうしたらいいの」

「・・・え?」

「ユーノくんっ!」

「あぁ、うん!

 封印するには、接近しないとだめだ。

 まずは、元となっている部分を見つけないと・・・」

 

そう言ってユーノくんは、祐介くんに聞く。

 

《祐介。そこから何か、大元の場所とか分からないかな?》

《悪い、木の根に・・・ッ 絡め取られて動けそうもない・・・ッ

 美月。エネルギー中心点は分かるか?》

《反応から、大体の位置は分かりますけど、

 それでもまだ広すぎます。現場まで行って探さない事には・・・》

 

祐介くんは動けない・・・なら・・・!

 

《わたしがやる!

 美月さん、探す範囲を教えて下さい!》

《は、はい! レイジングハートに転送します!》

「いけるよね、レイジングハート」

 

呟いて、レイジングハートを前に向け掲げ集中する。

 

「Area search.」

「リリカル、マジカル。 探して! 災厄の根源を!」

 

魔法陣から無数の光が散っていく。そのまま目を閉じて集中を続け、次々と浮かぶ風景を探す。

 

(ビルの隙間・・・・・・いない・・・・・・

 住宅街・・・・・・いない・・・・・・

 いったい何処に―――っ!!)

 

その時、隅で何かが光ったのが見えた。

あれは・・・!!

 

「見つけたっ!!」「本当!?」

 

ここから少し離れた所・・・大樹の中心付近・・・!

 

「すぐ封印するから!」

「ここからじゃ無理だよ! 近くに行かなきゃ!」

「できるよ!大丈夫!!

 そうだよね・・・レイジングハート・・・!

 

願う様にレイジングハートを掲げる。わたしは信じてる・・・!

 

「Shooting mode. Set up.」

 

レイジングハートが形を変える。柄尻が引き伸ばされ、先が音叉の様な形になる。

大樹に向かってレイジングハートを構え、封印態勢に・・・!

 

「行って! 捕まえて!!」

 

光が走り、ジュエルシードを包んだのを感じる。番号は・・・・・・10番!

 

「Stand by ready.」

「リリカルマジカル! ジュエルシード、シリアル10!

 ・・・・・・封印っ!!」

 

一気に力を開放し、ジュエルシードへと撃ち込む。

 

「Sealing.」

 

いつもの封印の感覚と、レイジングハートの声と一緒に、樹が光に包まれた。

 

 

 

   Side Out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「樹が・・・・・・」

 

なのはの魔法の光が辺りを包むと、樹は消滅していた。

 

「・・・どうやら封印は成功したようですね」

「そうだな。取り敢えず現場へ行ってみるか・・・」

 

あの二人を見かけた場所へ向かう途中、街の惨状が痛いほど目に付く。

 

「・・・なぁ、美月。僕たちって・・・甘かったのかな・・・・・・」

「・・・・・・分かりません・・・・・・

 ジュエルシードが危険物だということは認識していた・・・つもりでしたが・・・・・・」

 

そう・・・分かっていたつもりだった。

でも、心の何処かで遊びがあったのかもしれない。

これまで上手くやって来た・・・だからこれからも大丈夫だって・・・軽く見ていたのか・・・?

 

 

 

 

 

「・・・・・・祐介、着きましたよ」

 

二人は気絶している様だった。

ぱっと見た限りでは命に別状はなさそうだが・・・

キーパーの人の手にしたジュエルシードを拾う。

この人がどんな想いを持っていたかは分からない。

でもそれはきっと、誰もがごく普通に持っている願いだったんだろう。

それがこんな形で現れてしまったのは、この人のせいじゃない。

 

「・・・ごめん・・・・・・」

 

直接責任がある訳ではないけど、謝っておきたかった。

 

「祐介・・・・・・」

「うん・・・取り敢えず、なのは達と合流しよう・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し離れたビルの屋上になのははいた。

レイジングハートにジュエルシードを格納し、街を見下ろす。

 

「色んな人に、迷惑かけちゃったね・・・」

 

ポツリと、なのはが呟く。

 

「・・・そうだな・・・・・・」

「わたし、気づいてたんだ・・・あの子が持ってるの・・・

 でも・・・気のせいだって思っちゃった・・・・・・」

「・・・そっか・・・・・・」

 

うずくまるなのは。なのはも後悔してるんだろうな・・・同じ様に。

ユーノが「なのはは、ちゃんとやってくれてる」とフォローしてはいるけど・・・・・・

 

 

 

・・・やっぱり、このままって訳にはいかないよな・・・・・・

 

「決めるべき・・・なのかな・・・」

「・・・え?」

「これからどうするのか、って事」

 

2人に背を向け、街を見下ろす。

選ぶ道は2つ。続けるか、やめるか・・・

 

 

 

 

 

・・・やめられる訳がない・・・・・・

それは無責任すぎる、と自身が叫ぶ。

確かに、ここでやめても責任を追及してくる人はいない。

ユーノだって怒ったりはしないだろう。

 

(でも・・・・・・)

 

街の惨状を目に焼き付ける。

そして、考えたくもない事だが、考える。

今回のような、またはそれ以上の惨事が起きた時、巻き込まれる人の事。

母さんが、姉さんが、アリサが、すずかが、周りのみんなが・・・

そんな状況を想像し怖くなる。

だから・・・やめる訳にはいかない。

 

「覚悟・・・か・・・」

 

向き直って、ユーノに告げる。

 

「決めたよ。

 これからもジュエルシード探しは続ける・・・

 今までは、ただユーノの手伝いって事でアレを探してきた。

 だけど、これからは・・・

 自分の意思で、自分で決めた目的に従って、ジュエルシードを探す。

 言葉遊びでしかない・・・かもしれないけど・・・

 その覚悟が・・・今は必要だと思うから・・・」

 

知らない人ならどうなっても構わないという訳じゃない。

でも、近しい人が傷つくのは・・・絶対に嫌だ。

さっき感じた恐怖を・・・現実にさせてたまるか・・・!

 

「・・・わたしも・・・・・・」

 

見ると、悲しそうな瞳をしながらも顔を上げているなのはがいた。

 

「わたしも、自分なりの精一杯じゃなく、ほんとの全力で・・・ジュエルシード探しをする」

「祐介・・・ なのは・・・」

 

そう・・・もう絶対こんな事のない様に・・・・・・

自分の力が足りないせいで、誰かが傷ついたりするのはつらい事だから・・・・・・

 

そう、胸に刻んで、僕たちは落ちる夕陽を見つめていた。

 

 

 

 

 

      第4話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

祐介「・・・覚悟・・・」

美月「微妙ですね・・・」

作者「それは言わないで。文才無いんだから」

祐介「しかも何故か導入された視点変更。これも微妙」

作者「いや・・・祐介視点だけだと限界あるかなってやってみたけど・・・うん、難しい」

美月「最初から三人称視点で書けば良かったんですよ」

作者「第0話での、『地の文を読むな』がやりたいがためにこうなってしまったんじゃい・・・

   今更全部直すのは面倒だし、このまま一人称でいく!」

祐介「おぉー まあ頑張れ」

美月「そういえば、いつものメカ紹介は?」

作者「ん? 祐介は今回な~んもしてないから無しだが?」

祐介「あんたのせいだから! 事件中ずっと根っこに絡まれてましたから!」

美月「というより面倒になったんじゃ?

   きっと新メカ出てきても紹介しなくなるんでしょうし」

作者「あー・・・きっとなる」

祐介「なるのかよ!!」

 

 

 


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