魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-   作:零式機龍

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無印編
第1話 それは不思議な出会い、と言えなくもない?


 

 

 

夢うつつの中・・・・・・誰かの声が聞こえる・・・・・・

 

   ――――・・・れか・・・

   ・・・くの・・・・・・いて・・・

     ・・・らをかし・・・

       ・・・うの・・・・・・からを・・・―――

 

・・・誰だ・・・? 何を言って・・・・・・?

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第1話 それは不思議な出会い、と言えなくもない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チュンチュン・・・チュンチュン・・・

 

「祐介ー 朝ですよー。起きて下さーい」

「んむぅ・・・あいよー・・・」

 

今日もいつもの様に美月に起こされ起床。

・・・なんか夢うつつに、微かに声を聞いたような・・・気がする。

よく覚えてはないケド、まぁいっか。

・・・・・・ねみー。

 

「おーい、目さめてますー?」

「おぉ・・・8割くらいは。

 おはよう、美月」

「おはようございます。ほらほら、早くしないと遅刻ですよ」

 

そう急かすな。間に合えばいいのよ、学校なんざ。

 

着替えを済ませ、リビングへ。

 

「おはよう、祐介」

「あー、おはよ、姉さん」

 

キッチンから顔を出す姉さんと声を交わす。

 

「母さんは、今日は早朝出勤だっけ?」

 

言いながら、食パンをトースターへ。

 

「ええ。ぶつくさ言いながら出かけてったわ」

 

現在の家計は、母さんのパート+生活保護で運営されている。

いつも母さんは忙しい。でも家族の時間をいつも大事にしてくれているんだよな。

 

「あ、いけない! もうこんな時間! 日直!

 祐介、後お願いね! 私先に出るから!」

「はいはーい、いってらー」

 

時計を見ると、姉さんは慌ててカバンを掴み、走って出て行った。

え? 僕? まだ余裕。

あ、やべ。ちょっとパン焦げた・・・

 

 

 

 

 

あれから―――

記憶喪失が発覚したり、美月と妙な邂逅したりしたあの時から、1年が経っている。

目を覚ましてから、記憶は未だに戻ってはいないけれど、日々は平穏に過ぎていった。

これといって問題も起きていない。

母さんも姉さんも、そして僕の首に架かっている美月も、変わりない。

 

なんにしても、平和じゃね~。

支度して戸締り、学校へ。

 

久しぶりの(僕の主観では初めてだが)学校でも、当初は周りが騒ぐ騒ぐ。

まぁ、事故にあったクラスメートが、まるで人が変わったようになって帰ってきたんだもんなぁ。

色々あったが、とりあえず今は上手くやっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「学校に関してはとりたてて話すこともないので、時間は飛んで放課後」

「祐介、誰に向かって話してるんです?」

「さあ?」

 

誰だろうね? 自分でも分からない・・・

 

 

 

 

 

とにかく、いつもの待ち合わせ場所へ向かう。

何故か、校内の友達より校外の3人の友達の方が仲がいいというこの不思議。

しかし、3人とも女子というのが若干引け目ではあるが・・・

 

む、少し遅れたか・・・? もう3人とも来てるじゃんよ。

 

「あ! おーい! 祐介くーん! こっちこっちー!!」

「おっそいのよ、あんた。何してんのよ」

「だ、大丈夫だよ。私達も今来たところだから・・・」

 

三者三様な対応で迎えられる。

 

不要かもしれないが、一応簡単に紹介しておこう。

 

「誰にですか?」

「さあ? って同じネタを続けて・・・?」

 

大きく手を振りながら元気にこちらを呼んでいる、短いツインテールの女の子が、高町なのは。

この辺りではちと有名な喫茶「翠屋」の娘で、姉さんに連れられて行った時に知り合った。

「友達百人~」とか平気でやりそうだ。本当にやってはないだろうが・・・

 

会うなり文句を飛ばしてきた、うるさい小娘が、アリサ・バニングス。

両親が大会社をやっている、お嬢である。

とはいえ、よくあるただの我侭お嬢様ではなく、思いやりのある優しい子である事は、皆が知っている。

まぁ、そんな事を言えば照れ隠しでまた怒るだろうけど。

 

最後に、フォローを入れてくれた、おっとりした子が、月村すずか。

彼女もまた、会社経営の親をもつお嬢様である。

なのはとアリサの緩衝役とされることの多い、苦労人だ・・・

 

3人とも、僕と同じ3年生だ。

こうして外で待ち合わせをしてることから分かるように、学校は違うが。

彼女たちが通うのは、私立聖祥大学付属小学校。それなりの学力と学費が求められるトコだ。

僕? 僕はごくごく普通の市立の学校。別に良いトコ行く必要ないし。

 

この3人は1年の頃から付き合いのある仲良し3人組だ。

何故そこに僕が組み込まれたんだっけ?

細かい事は忘れたが、なのはに引っ張り込まれたのは確かだ。

 

《で、祐介は誰が好きなんですかー?》

 

いきなり、美月が話しかけてくる。声には出さずに。

 

《・・・知るか・・・・・・》

 

頭の中で答える。

この1年、美月は自身の内部構造の解析に勤しんでいた。

その結果、結構いろいろ出来るようになったのだ。

今の脳内会話もその一つ。特定の人の脳波に干渉して会話をできる機能を有していたらしい。

秘匿通話、とでも呼んでおこう。便利なんだよコレ。

おかげで独り言の多い危ない人にならずに済む。

 

 

 

おっと、いつまでも説明ばっかりしてる訳にもいかない。いい加減、意識を現実に戻そう。

待たせちゃったんだしな。

 

「悪い悪い。ちと考え事しながら歩いてたもんで、遅れちゃったよ」

「どうせ大した事じゃないでしょ」

「正直言うと、何処の誰とも分からん相手に説明をたれてた」

「ハァ? 何よそれ。訳わかんないわよ」

「自分でも分からん」

 

とか何とか言いつつ出発する。

特にとりとめもない様な会話をしながら歩く、いつもの風景。

彼女たちは、これから塾へ向かう。僕はそこまででお別れだ。

 

 

 

 

 

そして、いつも通っている公園にさしかかる。

 

「あ、こっちこっち。ここを通ると、塾に行くのに近道なんだ」

 

と、アリサが脇の路地を指差す。

 

「あ、そうなの?」

「でも、かなり道が悪いな・・・なんでこんな鬱蒼としてるんだよ」

「あんたが遅かったから近道するんでしょ! ほら行くわよ」

 

仕方が無いので3人でアリサに続く。

 

 

 

夕方のこの時間だと、辺りは少し薄暗くなってきている。

特に心配した訳ではないが、3人の様子を確認しようとして・・・

 

・・・? どうしたんだ? なのはのヤツ。さっきからキョロキョロして。

と思えば、何かを考えるかのように立ち止まる。

 

「どうしたの?」「なのは?」

 

すずかとアリサも怪訝な顔をする。

 

「あ・・・うぅん。なんでもない。ごめんごめん」

「大丈夫か?」「うん、平気」

 

再びアリサを追う。

 

 

 

なのはの様子が気になりつつも、そのまましばらく歩いていた時・・・

 

   ―――――・・・けて ―――――

 

!? 何だ今の? 声・・・?

思わず足を止め、美月に話しかける。

 

《おい美月、今のお前か?》

《いえ、私じゃありません。

 でも、さっきこの周辺から、何か思念波のようなものが検出されました》

 

思念波? テレパシーみたいなやつって事? さっきの声は、心の声って事か・・・?

 

「祐介?」「なのはちゃん?」

 

突然足を止めた僕たちに、アリサとすずかが振り返る。

って、僕()()? 見ると、なのはも僕と同じ様に立ち止まってキョロキョロしている。

 

「今、何か聞こえなかった?」

「何か?」

「なんか、声みたいな・・・」

 

なのはには、さっきのが聞こえていた?

 

「別に・・・」「聞こえなかった・・・かな?」

 

アリサとすずかには聞こえていないらしい。

キョロキョロと辺りを見回すなのは。

 

   ―――――・・・けて・・・! ―――――

 

また聞こえた!?

 

「!!」

 

突然走り出すなのは。

 

「あ、おい! なのは!」「なのは!」「なのはちゃん!」

 

急いで、3人で追いかける。

あいつ、今ので場所の特定できたのか!?

 

《美月! その思念波とやらの発信源は分かるか?》

《なのはさんの進んでる方向、ドンピシャです。何なんでしょうか?》

《知らん。ケド、とにかく今は行くしかないだろうな》

 

 

 

 

 

僕たちが追いついた時、なのはは腕に何かを抱いていた。

 

「どうしたのよ、なのは。急に走り出して」

「あ、見て。・・・動物? 怪我してるみたい」

「う、うん。どうしよう?」

「どうするもこうするも、病院に連れてくしかないだろ。

 この近くに獣医ってあったっけか?」

「あ、待って。家に電話してみる」

 

すずかに連絡を任せ、なのはに抱かれている生物を見る。

・・・イタチ系、か? 色は、何か金色っぽい黄色というか・・・

 

《ハニーブロンドですよ、祐介。

 あと、形状はフェレットに似ていますね》

 

あらそう。で、首には真紅の丸い宝石がかかっている。飼いフェレットか?

 

《で、これが思念波の発信源?》

《今のところは何とも・・・座標は確かに此処でしたけど》

 

まさか超能力を持ったフェレットだったりして・・・

飼い主とはぐれ、野犬に襲われ、助けてーっ! ていう思いを他者へ発した、とか。

・・・それは無いか。そんな事より、早く手当てが必要だ。

 

通話を終えたすずかについて、僕たちは病院に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「怪我はそんなに深くないけど、ずいぶん衰弱してるわ。

 きっと、ずっと一人ぼっちだったんでしょうね」

 

やってきたのは、槙原動物病院。

どうやらフェレットは持ち直したようだ。

 

「院長先生、ありがとうございます」

「いいえ、どういたしまして」

 

優しく笑う先生に続いて、フェレットの近くへ移動する。

 

「先生、これってフェレットですよね。どこかのペットなんでしょうか?」

「フェレット・・・だと思うんだけど。 変わった種類なのよね。

 それに、この首輪に付いてるのは・・・宝石、なのかな?」

 

先生がフェレットの首元に指を伸ばす。

と、フェレットが目を開け体を起こした。そのままキョロキョロと僕たちを見回す。

一瞬、僕と目が合う。が、また目を移し一点で目を止める。その視線の先は・・・なのは?

 

「なのは、見られてるぞ」

「う、うん。えっと・・・えっと・・・」

 

なのはが戸惑いながら、フェレットに指を伸ばす。

フェレットはフンフンと鼻を鳴らした後、その指をペロッとなめた。

とたんに満面の笑みを浮かべるなのは。単純なやつめ。

 

  コテッ

 

「「「ああっ」」」

 

ありゃ、また倒れちゃったよ。

 

「しばらく安静にした方が良さそうだから、とりあえず、明日まで預かっておこうか?」

 

先生の言葉に僕たちは顔を見合わせ、答える。

 

「「「「はい、お願いします」」」」

「良かったら、また明日様子を見に来てくれるかな?」

「分かりました」

 

そうだな、明日になれば、多少は元気になってるだろう。

テレパシーで会話し始めたりして。・・・・・・無いな。

 

 

 

「あ! ヤバ!! 塾の時間!!」「ほんとだ!」

 

アリサが時計を見て慌てる。

 

《そういえば祐介も・・・時間が》

「ん・・・? うわ僕もヤバッ! タイムセール!!」

「じゃあ、院長先生。すみません、また明日来ます」

 

そう言って、僕たちは走り出す。

先生は、病院を去る僕たちに笑顔で手を振っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく走って、僕たちは別れる。

 

「祐介くん、また明日ねー」「じゃあね」「また明日」

「じゃ、また明日なー。しっかり勉強してこいよー」

 

そして彼女たちに背を向け、再び走り出す。

目的地は、毎度お馴染みのスーパー! 間に合うかっ!!

 

「タイムセールに必死な小学生って・・・なんかオバサンくさいですよー?」

「うるさいよ! 残っててくれモヤシと豚バラーッ!!」

 

コイツ・・・これから凄惨たる戦場へ向かう勇者に向かって・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦場より帰還し、今はお食事の時間。

我が家の夕食はいつも揃って、が基本である。

 

「で、まぁ何とか持ち直したみたいでさ」

「そっかー、でもそんな色のフェレット珍しいねー」

 

食事の時は、その日の事などが会話の主なネタになる。

そこで、夕方の話をしていたのだが・・・

姉さんがフェレットの種類の話をし出した所で、

 

「へー、助かって良かったわねー。で、フェレットって何?」

「・・・・・・」「・・・・・・」《・・・・・・》

 

おいおい、何かも分からず今まで会話してたのかよ。

姉さんと二人して苦笑する。

美月も顔があったら、呆れ果てた顔してるんだろうな。

 

「イタチの仲間よ。人気のペットってやつ」

 

母さんへの講釈は姉さんに任せ、あのフェレットの今後を考える。どうするんだろ。

まず、首輪してた事から飼いフェレットの可能性が高い。

となると、飼い主が見つかるまで何処かで預かる事になるんだろうが・・・

順当にいけば病院。次なる可能性として、発見者である僕たち4人の誰か。

でも、アリサとすずかの家は、それぞれ犬屋敷と猫屋敷だしなぁ・・・

高町家も翠屋があるし。あぁでも自宅と店舗は別だから、関係ないのか。

ウチは・・・どーだろ? 世話できる人間なんているのかなぁ?

 

 

 

 

 

問題は、夜に来たメールによって解決した。

 

   『祐介くん、アリサちゃん、すずかちゃん。

    あの子はうちで預かれることになりました。

    明日、学校帰りにいっしょに迎えに行こうね。

                          なのは』

 

そうか、なのはの家で預かれる事になったか。

ま、これで飼い主が見つかれば一件落着、だな。

 

「そーなると気になるのは夕方の声・・・・・・

 美月、あの思念波って、やっぱフェレットなのかな?」

「どうでしょう? それに、思念波とか言うとオカルト的に聞こえますけど、

 どちらかと言えば、アレは科学的なものに近いと思います。

 何かのエネルギーに、思考を変換したものを乗せて飛ばす・・・

 電話と似たようなものだと思えば分かりやすいんじゃないですか?」

「ほー」

 

分かったような分からんような・・・・・・

まぁ、生物は皆、何らかの信号を発しているみたいな説もある事だし。

そんな事より問題は、なぜ僕となのはが、あの声をキャッチしたのか・・・だ。

 

ベランダに出て病院の方角を向いてみる。

 

「おーい、フェレットー。聞こえるかー?」

 

小声で呼んでみる。

・・・・・・返事は無い。当たり前だ、と苦笑して部屋に戻ろうとした時、

 

   ダンッ! ゴウッ!!

 

突然、何か黒い塊が家の前を横切って行く。

 

「な・・・何だぁっ!?」

「あれは・・・! 昨日の・・・」

「おい美月! アレの事何か知ってるのか!?」

「いえ、それは・・・」

「知ってるんだな! アレは一体何だ!?」

 

なんかイヤな予感がする。どう考えても普通のモノには見えなかったぞ・・・・・・

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 昨日の夜、あの公園で未確認のエネルギーの衝突が確認されたんです・・・

 その時の片方のエネルギーパターンと、さっきの黒いモノのエネルギーパターンが

 一致しています」

「・・・つまり、あの黒いのとフェレットがぶつかっていたと・・・?」

「分かりません・・・

 でも、あのフェレットがただのフェレットじゃなかったと仮定すると・・・

 可能性はあると思います・・・」

 

なら、こうしてる場合じゃない!

急いで服を着替え、出かける準備をする。

 

「ちょっと、祐介! どうする気ですか!?」

「決まってる。病院に行くんだよ。

 アイツの向かった方向、病院の方向だろ!

 フェレットは今動けないんだ。ここでアイツに襲われたら・・・!」

 

夕方の声・・・途切れ途切れにしか聞こえなかったが、

今にして思えば、あれは『たすけて』って言ってたんじゃないのか?

 

「行ってどうするんです!

 祐介に何かできる訳ではないでしょう! 危険です!!」

「だからって放っておけないだろ! それに・・・」

 

公園、そして病院での事を思い出す。

迷わずフェレットを見つけたなのは。

そしてあのフェレット、なのはの方をジッと見ていた。

 

「・・・なのはのヤツ、僕以上にあのフェレットの声を受け取っていたのかもしれない。

 だとしたら、あいつの事だ、やっぱり出てきて巻き込まれてる可能性がある。

 それも危険だろ!」

「・・・・・・・・・・・・分かりました。

 そこまで言うなら行きましょう。ただし・・・

 

 機鋼を司る私の所有者として、正式登録してからにしてもらいます」

 

 

 

 

 

機鋼・・・? 所有者登録・・・?

何か訳の分からない事を言い出したよ?

 

「この1年で解析して得た結果です・・・・・・

 出自は不明ですが、データベースの中に、メカトロニクスに関する膨大な情報が収められて

 いました。そして、そのデータを実空間に顕現させる機能があるようなんです。

 ただしこれは私単体では発現できず、所有者と一緒で初めて稼働するもの、らしいです?」

「ちょ、何で最後疑問形!? そんな良く分からないトンデモ機能使って大丈夫か!?」

「私だって分かりませんよ。でも、このまま行ったって祐介には危険過ぎます!

 少しでも身を護るものが必要だと思うんですよ私は」

「・・・・・・まぁ。僕自身は無力なわけだけど・・・・・・

 なら、少しでも可能性のある布石は打っておくべきかな。

 

 よし、分かった! いや分かってないケド!

 所有者正式登録、受けてやろうじゃんか!」

 

美月を目の前にかざし、深く頷いてやる。

 

「・・・了解しました。

 では・・・登録接続、開始します・・・!」

 

美月が、もといクリスタルが輝きだし、部屋に明るい緑の光が満ちる。

 

 

 

管理AI権限により、能力顕在機能の解放モジュールを起動。

 

 登録者情報、確認開始。

 

 生体パターン検出・・・・・・完了。

 脳波パターン検出・・・・・・完了。

 

 能力顕在者は登録者本人である事を確認、続いて能力設定に入ります。

 

 データベースより、能力情報をアウトプット。

 能力情報を所有者ブースにインポート・・・・・・完了。

 

 能力設定を終了します。

 

 ――― 全工程終了。モジュールをシャットダウンします」

 

光が収まる。

手を開いたり閉じたり・・・

何となく変化は感じられるが、あまり実感はない。

 

「祐介、大丈夫ですか?」

「いまいち実感が無いんだが・・・大丈夫なのかな・・・?」

 

所有者は、あらゆる機械に関する能力を発現できると言ってたな。

しかしやり方とか、分からないんだが・・・・・・

 

「使用できる能力のリストは、適宜検索します。

 まずは使ってみないと何とも言えませんね・・・・・・」

「おいおい・・・激しく不安なんだが・・・・・・

 でも、とりあえずよし! 行くぞ!」

「くれぐれも気をつけて下さい。

 初めて使うんですし、私が持っているのはあくまで機械能力のデータだけで、

 運用などは分かりかねますよ!?」

「つまり、いろいろ試してみるしかないってコトか・・・」

 

呟き、そっと外に出る。

そして僕たちは、夜の街を病院に向けて走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

懸命に走り、病院を目指していたのだが・・・

なんか不安になってきた・・・このまま行って間に合うのかな・・・?

 

「美月、さっきの黒いヤツの現在位置は!?」

「あちこち飛び回ってましたけど・・・どうやら本命を見つけたみたいです。

 もう病院の目と鼻の先です。 このスピードじゃマズイかも・・・」

 

クソっ! ・・・・・・やってみるか・・・!!

 

「美月! 高速移動が出来る能力ってあるか?」

「検索中・・・出ました! この辺りが、脚に作用するものっぽいです!」

 

目の前に、もとい脳裏に、能力名のリストらしき文字列が浮かび上がる。

・・・・・・分からんっ!! 文字のリスト表示じゃ全然分からんっ!!

やっぱり使って試してみるしかないのか・・・・・・

 

「と、とりあえず一番上の『ランドスピナー』ってやつ!!」

「ランドスピナー、展開します!」

 

両脚が輝きを纏い、その機鋼が姿を現す。

足先から膝あたりまでを覆うブーツ状の機械。

ふくらはぎ部分に付いていた車輪が後ろに引き下ろされる。

車輪の回転をイメージ・・・脚に力を込め・・・・・・

猛スピードで走り出・・・したいところだったケド、慣れるまで安全運転で行かないと・・・

 

間に合うのかな・・・?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

病院の近くまで来ると、何か違和感を感じた。

心なしか、景色も色褪せて見える。

 

「・・・? 美月。何かおかしくないか?

 何かこう、妙な雰囲気というか・・・」

「空間に異常が認められます。空間のズレ・・・みたいな?

 ・・・でも、特に身体に異常はないみたいですよ。急ぎましょう!」

「お、おぅ・・・」

 

 

 

 

 

病院に辿り着いたとき、そこは凄惨な有様だった。

塀は崩壊、建物にも大きな穴、脇の木はへし折られ・・・

 

「ズタボロだよ・・・美月、ヤツは?」

「ここから少し離れた所を移動中。その進行方向上に移動する生命反応があります。

 バイタルパターン検出、精査中・・・・・・

 これは・・・なのはさんです!!」

「なっ!!?」

 

やっぱ来てたのかよ、なのはのヤツ・・・!!

 

「急ぐぞ!!」

「はい!!」

 

両脚に力をこめ、全速で追跡を開始する。

 

 

 

 

 

・・・・・・見えたっ!!

激しく飛び跳ねる黒い塊を視認。その先には・・・

 

「なのは・・・!!」

 

道の真ん中で立ち止まってるよ。追われてるって知ってるのか!?

ギリギリで・・・間に合うか・・・!?

 

上空から飛び掛ろうとした黒坊(もう面倒くさいからこう呼ぶ)の下に何とか割り込み、

なのはに背を向ける形になる。

・・・・・・って、割り込んだはいいケド、どーしよーっ!?

とりあえず防御を!!

 

「美月! 盾! 盾ッ!!」

「り、リスト出ます!!」

「――― ッ!! やっぱリスト解りづらすぎだーッ!!

「とにかく上の、一番上のやつ出して!!」

 

とりあえず、リスト最上段の『RX-M-Sh-008/S-01025』を選択する。

すると光が輝き、左手に赤い盾が握られる。

それを両手で構えて、黒坊の突進に備え・・・!

 

   ガンッ!!!

 

「ぐ・・・ッ!」

 

盾の上から衝撃が襲う・・・が、耐えられない程じゃない・・・!

 

「だあぁッ!!」

 

そのまま弾き飛ばし、黒坊は道路にめり込む。

あっぶねぇ・・・ぎりぎりセーフ・・・

安堵の息をつきつつ振り返る。

 

「大丈夫か、なのは?」

「え、え? ゆ、祐介くん!?」

 

目をパチクリさせてるなのは。

 

「話は後。今はあの黒坊をなんとか・・・

 美月、対処法の目処はたったか?」

「何かのエネルギーによる思念体、の様な物だって事は分かるんですけど・・・

 すぐに対処法と言われても・・・」

 

・・・どーすんだよ。思念体って・・・オバケ? お祓いでもしなきゃダメか?

 

「だから、お願い! 君の力を貸して!

 君に眠る資質・・・魔法の力を!」

 

後ろから声。

フェレットが、こっちを見ている。

というか、なのはに言ってるようだ。

 

「ホントにフェレット喋ったよ。

 何か勝算があるのか? なのはに」

「えぇ!? ど、どうすればいいの?」

「これを・・・」

 

そう言って、あの首の赤い宝石をくわえて、なのはに差し出す。

 

「暖かい・・・」

「それを手に、目を閉じて、心を澄ませて。僕の言う通りに繰り返して」

 

そして向き直り、こちらに言う。

 

「それと、少しの間でいいから、時間を稼いでください!」

「へ? 僕!? ・・・取り敢えずよく分からんが分かった!

 とにかく、なのはとお前を護ればいいんんだな!!」

 

そう言って黒坊に向き直る。

 

視線の先には、めりこんだ体をゆっくりと起こす黒い塊。

ヤツも体勢を立て直したか・・・

 

「・・・さて、時間稼ぎとは言ってもどうするべきか」

「とりあえず、近づけないように威嚇してればいいんじゃないですか?

 確か・・・武器のリストもあったような・・・あ、出ます」

「武器って・・・物騒な。

 ――― そして相変わらず分かんないよこのリスト・・・・・・

 例によって一番上のやつ。出してみて」

 

右手に意識を集中。

握られるのはライフル・・・みたいなでっかい銃。

上部に円形の照準器、サイドにフォアグリップもついている。

えーと・・・『XBR-M-79-07G』だっけか?

銃なんて撃った事ないんだけど・・・・・・あったら大変だっての。

とにかく右手で構え、左手でフォアグリップを握り、黒坊へと銃口を向ける。

 

「おりゃあぁッ!!」

 

とりあえずヤツに向かって連射してみる。

先端から、緑がかった銀色のビームの様な光が迸り、黒坊へ向かう。

跳ね回る黒坊に当たりこそしないものの、避けてくれてる間はヤツは無闇に突っ込んで来れない。

時間稼ぎとしては十分、だと思いたい。

 

 

 

後ろからはフェレットとなのはの声が聞こえてくる。

 

「我、使命を受けし者なり」「我、使命を受けし者なり」

「契約の下、その力を解き放て」「えと・・・契約の下、その力を解き放て」

「風は空に、星は天に」「風は空に、星は天に」

 

黒坊を牽制しながら、後ろの様子を伺う。

心なしか、あの宝石の光が強まってるような気がするけど・・・

 

「未確認エネルギー、徐々に増大していきます・・・」

 

美月が報告する。マジ・・・?

黒坊との攻防を余所に、詠唱は続く。

 

「そして、不屈の心は」「そして、不屈の心は」

 

後ろの光が脈打った・・・ような気がする。

 

「「この胸に!

  この手に魔法を!

  レイジングハート、セット・アップ!!」」

「Stand by ready. Set up.」

 

大きな輝きと共に、桜色の長大な光の柱が立ち上る。

 

「なのはさんから、莫大なエネルギー量が検出されています!!」

「なのはのヤツ・・・何者だよ・・・」

 

まぁトンデモ能力を発現してるのは僕も同じなんで、とやかく言えないが。

 

 

 

そして光が収束していく・・・

そして、中心から姿を現すなのは。

ただその姿は・・・・・・

 

「・・・・・・はぁ!?」

「これまた可愛くなりましたねー」

 

白を基調として青いラインの入った服。

手には、紅い珠を冠した杖(の様なもの)。

 

・・・僕はただただ、あっけにとられるだけだった。

 

 

 

 

 

      第1話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

美月「さぁ、あとがき座談会、はじまりです」

祐介「今回は何するか決まったの?」

美月「はい、祐介が変な能力を使い出したので、

   話に登場したメカ等の元ネタを出していくそうです」

祐介「・・・・・・それって必要?」

美月「前回も言いましたけど、自己満足ですよ自己満足」

祐介「何やってんだ作者の奴・・・

   いるよな、こういう知識ひけらかしたがる奴」

美月「で、情報が間違ってたりして恥かくんですよねー」

祐介「ふぅ・・・まぁいっか。で、今回のメカは何だったっけ?」

美月「まずは『ランドスピナー』ですね。

   えっと・・・作者からのメモが・・・

   『コードギアスのブリタニア製KMFの足についてるアレ。

    日本製KMFの高機走駆動輪と一緒ですね。大して違いはありません。

    ちなみに、ブリタニアのは外着式ですが、日本製のは脚部内蔵式で(ry』

   だそうです。知ってました?」

祐介「へぇ~へぇ~へぇ~(ポンポン」

美月「・・・やる気なくトリビアボタン押さないでください。古いですよ」

祐介「気にするな。で、次は・・・『RX-M-Sh-008/S-01025』だな。

   メモによると・・・これは、かの有名なRX-78-2ガンダムのシールド、と。

   へー、たかが盾といっても、構造は単純じゃないのか・・・

   強度を考えると、一枚の金属板って訳にはいかないから・・・多層構造になってるんだな」

美月「段ボールと一緒ですね」

祐介「・・・一気にグレードが下がったな。

   厳密にはハニカム構造とトラス構造の違いはあるけど」

美月「最後は・・・『XBR-M-79-07G』ですが、これは?」

祐介「え~、メモメモ・・・

   さっきのガンダムの持ってたBLASH社製のビームライフルらしい。

   『ビームライフルって言ったら普通はコレだよね!』だって。

   あ、でも構造は面白いなコレ。エネルギーCAPに蓄積された縮退寸前のミノフs」

美月「あー、薀蓄はいいです、長くなりそうだから。元ネタだけで十分です」

祐介「あっそう・・・今回はこれくらい、か」

美月「ですね。どうせ、その時のノリで書いてるみたいですし・・・」

祐介「そのうちネタが尽きるんじゃなかろーか・・・・・・」

 

 

 


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