魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-   作:零式機龍

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第16話 咆哮! 鋼を纏った龍

 

「ほらほら! まだまだ行きますよッ!!」

「―――くッ!!!」

 

周りを縦横無尽に飛行する多数の物体から、次々と魔力弾が発射される。左から来る魔力弾を身を

捻って躱し、脇をすり抜けようとした発射元に、ビームサーベルの魔力刃を一閃。消え去るそれを

最後まで見ることなく、次に攻撃をかけようとしていた2つの飛翔物体に対処する。

 

「あと・・・3基・・・・・・」

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第16話  咆哮! 鋼を纏った龍

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・疲れた・・・・・・」

 

部屋で横になる。

今日は練習、張り切りすぎたか・・・・・・

 

「次回は、もっとファンネル増やしましょうかねー」

「止めて下さい。殺す気か・・・

 まったく・・・倒しても倒しても、次々相手させやがって・・・・・・」

 

あの日、父さんのメッセージを聞いた日から、1週間が過ぎていた。

まぁ特に環境に何か変化があったかといえば、そんな事はなかったけど。

世は事もなし。中々に充実した夏休みを送っていると言えるんじゃないかね。

 

なのはと一緒に、魔法の鍛錬も続けている。

早朝と夕方。基本的には、なのははユーノ監修のもと、練習に励む。

流石に、僕の術式はユーノに見てもらう訳にもいかないので、ほとんど自主練だが。

たまに、なのはと試合したりするけど。・・・とりあえず砲撃怖い。

今日の練習は、美月の操作するファンネルを仮想敵としての高速機動戦闘。

1基倒しても、即座に美月が補充するせいで、

意地悪く飛んでくるファンネルを常に4基迎撃する羽目になった。

結局35基くらい倒したかね・・・ まったく容赦無ぇ・・・・・・

 

「今日はこれからどうするんですか?」

「んー、何も考えてないな。

 3人娘は今頃買い物してるだろうけど」

「祐介も買い物行ったらどうです? 咲さん誘って。

 きっと喜びますよ?」

「姉さんも出かけたろ?

 つーか家には誰もいないって」

 

そんな事を言いながら、とりあえずゲームでもするべく準備していたところ・・・

 

「!! レイジングハートからエマージェンシーコール!!」

「はぇ?」

 

思わず間抜けな声が出てしまった。

そこへ間髪いれず、なのはから念話が。

 

《ゆ、祐介くーん。えーと、大変な事に・・・・・・》

《何だ、何があったんだよ》

《えー、簡単に言うと、誘拐されちゃった、かな・・・?》

《・・・はぁ!?》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

急いで家を飛び出し、目的地へと走る。

 

《・・・しかし今時、こんなベタな誘拐あります?》

《ベタだろうが何だろうが、事実なんだからしょうがないだろ》

《ユーノさんはどうしたんです?》

《今日はアースラに行ってるってよ。タイミング悪ぃなぁ・・・・・・》

 

なのはからの連絡によると、3人で買い物の帰り、後ろから来た車に突然連れ込まれたとか。

流石に、魔法で撃退するわけにもいかず、取り敢えずいいなりになっているらしい。

今は、レイジングハートが位置情報を送ってくれている。

3人がいるのは・・・街の外れか・・・・・・

・・・普通に走っていくにはちょっと遠いな。

 

《美月! 飛ぶぞ!》

《この真昼間にですか?》

《見られなきゃいいんだろ!》

 

手近な路地に入り、周りを見渡す。

・・・よし。

即座に飛行能力を顕現し飛び上がる。それと同時に、

 

「ホログラフィックカモフラージュ!!」

 

自分の姿を周囲の景観と同化させる。

これで一般の人には見つからない・・・!

そのまま全速。3人を助けるべく飛ぶ。

 

「行くぞ!! 待ってろ3人とも!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辿り着いた街の外れ。そこは寂れた倉庫街になっていた。

その倉庫の1つ。レイジングハートの信号はそこから発せられていた。

息を殺して、そっと窓から中を伺う。

 

(居た・・・・・・)

 

奥の壁際に、腕を後ろ手に縛られた3人が座らされていた。

まだ無事だった事に安堵する。

 

《なのは・・・到着したぞ。

 今、倉庫の外から、中を伺ってる》

《祐介くん・・・!

 ごめんね・・・心配、っていうか迷惑かけて・・・》

《謝るなよ・・・

 助けにくるのは当然だろ。大丈夫か?》

《うん。大丈夫だよ。アリサちゃんとすずかちゃんも》

《そっか、取り敢えずは良かったよ。

 というか・・・状況は?

 何か・・・もっとヤバイ人たちを想像してたけど、ただのチンピラっぽくないか?》

 

もっとこう・・・カタギじゃない職業の方たちが、

ご令嬢であるアリサやすずかを狙ったものかと思ってたが・・・・・・

中に居たのは、不良学生以上、任侠未満っていうか、街のチンピラくずれって感じの奴らだった。

 

《う、うん・・・・・・

 別に、アリサちゃんやすずかちゃんの家を狙ってた訳じゃないみたい・・・

 さっき2人の事を知って、大騒ぎしてたよ。

 諦めてこのまま帰すべきかもって悩んでたし》

《・・・悩んだ結果は?》

《にゃはは・・・誘拐継続・・・・・・・

 流石に、ここまできたら後に引けなくなったみたい・・・・・・

 でも、やっぱり怖いのかな・・・まだ家に連絡はしてないみたい》

 

まぁこの連中には、2つの大会社相手に身代金を要求するのは、荷が重いだろうな。

今のうちに潰した方が、こいつらのためにもいいかもしれん。

 

《美月。奴ら何人だ?》

《倉庫内スキャンの結果、敵性反応は15人。

 全員が、鉄パイプやら特殊警棒やらで武装してます》

《銃とかは?》

《それは流石に・・・あ、1人持ってました。

 何処から手に入れたんでしょうねー?》

《何でも手に入るご時世だからなー。

 さて・・・蹴散らすのは簡単だけど・・・・・・

 3人の近くには、と・・・》

 

再びこっそりと中を伺う。

3人を座らせている場所のすぐ近くには、1人が見張りについていた。

 

(普通に入口から入ったら・・・遠いか。

 人質に取られたら面倒だからな・・・・・・)

《祐介。3人の上、見て下さい》

《上・・・?》

 

縛られているなのは達の上を見ると、そこには窓が。

しかも、3人のいる場所は壁から板が張り出している。

あれなら、窓から飛び込んでも、ガラスを被る心配もなさそうだ。

決まり。あそこから突入しよう。

 

《なのは。今から突入する。

 お前たちの上にある窓から飛び込むから。

 ガラス被る事はないと思うけど、注意しててくれ》

《え!? ちょっと祐介くん、そのまま来るの!?

 アリサちゃん達の前で、魔法とか使うのは―――》

《心配するな。バレない方法はある》

 

そう言って、場所を移動。目標の窓の外に陣取る。

 

《・・・行くぞ美月》

《新技のお披露目ですねー》

 

全身に意識を集中する。

――― イメージする。我が身は鋼。猛る龍の如く。

 

形態変化(チェンジモード)――― 3式機龍ッ!!」

 

同時、目の前の窓から飛び込む。

さぁ・・・騒動の始まりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   Side Change  なのはSide

 

 

 

わたし達の上の方で、ガラスが割れる音。

その直後、目の前でわたし達を見張っていた人が吹き飛ぶ。

 

「っ!!!」「何・・・あれ・・・・・・?」

 

アリサちゃんもすずかちゃんも驚いている。

わたしだってびっくりした。

だって、そこに立っていたのは・・・今、見張りの人を蹴り飛ばしたのは・・・・・・

 

「何よ・・・あれ・・・?

 ど、ドラゴン・・・?」

 

アリサちゃんが呟く。

その姿は・・・大まかには人のフォルムをしているけど、尻尾があって、背びれがあって・・・

頭はドラゴンの顔をした・・・・・・銀色のロボットだった・・・・・・

 

《ゆ、祐介くん・・・なの?》

《おう。ちょっと待ってな。取り敢えずこいつ等ぶっ飛ばすから》

 

念話で応えながら、掴み掛ろうとしていた相手を殴り飛ばす竜人ロボット。

バレない方法はあるって言ってたけど・・・

 

(ユーノくんみたいな・・・変身魔法、なのかな・・・?)

 

確かにあれなら祐介くんだって分からない。

・・・何か正体を隠して戦うヒーローみたいだね・・・・・・

次の相手をタックルで突き飛ばしているロボットを見ながら、そんな事を思っていた。

 

 

 

 

 

      Side Out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(残り・・・12人!!)

 

タックルで吹っ飛ばした相手が気絶したのを確認し、視線を巡らせる。

 

《どうです祐介。安定してますか?》

《ああ、問題はなさそうだな》

 

形態変化(チェンジモード)。それが新たな能力だ。

今までは、機鋼の力を付与(エンチャント)という形だけで行使してきた。機鋼の多くは運用方法が

分からず、手持ち系の武器等、人が違和感なく使用できるものが関の山だったからだ。

だけど今は、その機鋼の元ネタたる記憶がしっかりある。

つまり、能力の運用も幅が広がったのだ。

そのなかで、形態変化(チェンジモード)は、簡単に言うと自身を機械に変身させる技だ。

結構魔力使うけど・・・・・・

 

今回変化したのは MFS-3 3式機龍。

ただ、今は不要だろうからバックユニットは着けてない。アームユニットだけだ。

 

《祐介ー。楽しんでますねー?》

《・・・否定はしないけど。さて・・・・・・》

 

そろそろチンピラどもも、何人かは目が本気になってきてるなー。

・・・キレてる10、困惑1、怯え1、か・・・・・・

実質、11人だな・・・

 

《美月、銃持ってた奴を警戒しててくれ。

 後ろの3人を狙われたら敵わん》

《はーい》

《取り敢えず、人質には近づけないように――― ッ!!》

 

2人が鉄パイプで殴りかかってくる。

それに対し、身体を回転させて尻尾を一振り、吹き飛ばす。――― 残り9人。

背後から振り下ろされる鉄パイプ。敢えて避けなかったのでに頭に直撃する。

当たり前だがダメージは皆無。

 

「なっ・・・何だこいつ!? おもちゃのロボ着ぐるみじゃねぇのかよッ!?」

 

残念、そんなチャチなもんじゃあございません。

裏拳で沈める。――― 残り8人。

 

(次は・・・・・・

 ―――くそッ!!)

 

回り込んで、なのは達の所へ向かおうとするのが2人。

そちらに向き直り口を開け、そのまま99式2連装メーサー砲を後ろから浴びせる。

勿論言うまでもないが、非殺傷設定だ。

ぶっ倒れるチンピラ。――― 残り6人。

流石に今のメーサーには驚いたようで、皆さん、ちょっと腰が引けているようですな。

明らかに、未知の存在に怯えている人が増えている。

 

「ふ・・・ふざけやがって!! た、たたんじまえぇっ!!!」

 

リーダーっぽい奴が叫ぶが、それに応えて殴りかかってきたのは3人。

残りの2人は腰を抜かしている。

襲い掛かって来る相手に向けて手を伸ばし、0式レールガンで一挙に3人を鎮圧する。

・・・はい、残り1人。

 

リーダーっぽい、そのサングラスに一歩歩み寄る。

奴は一歩後退する。

その震える手が、シャツの後ろに回され―――

 

(させるかッ!!)

 

奴が拳銃を構える前に、一気に肉薄。メーサーブレードを奴の眼前に突き付ける。

・・・チェックメイト、と。

 

「くっ、くそっ! なんなんだテメェは!!」

 

名乗るほどの者ではありません故。

その腹に拳を一発、黙らせる。

 

さて・・・残りはどうするか・・・

そう思って振り向くと・・・・・・

 

《・・・いねぇし・・・・・・》

《さっき逃げて行きましたよー?》

 

そこには誰もいなかった。

 

(ま、いいか・・・・・・)

 

わざわざ追いかけて殴る必要もあるまい。

 

 

 

 

 

なのは達のもとへ戻り、縛ってあるロープを引きちぎる。

まったく・・・大事にならなくて良かったな・・・・・・

 

「あ、あの・・・・・・」「あ、ありがとう・・・ございます・・・」

 

2人とも困惑してるなー。当たり前か。

チンピラに攫われて、そこに突然現れたロボットが、チンピラを蹴散らしたんだからな。

状況が上手く掴めないんだろう。

とりあえず無事なようだし、撤収するか。

踵を返し、倉庫の入口へと歩き出す。

 

《ふっ・・・すp―――》

《すぴーどわごんはくーるにさるぜ》

 

ひどい・・・先に言われた・・・・・・

 

 

 

倉庫から出る時。

後ろから、アリサが何か言っていたように聞こえたが、

振り返る事はなく、軽く手を振ってその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

なのはから電話がかかってきた。

 

『祐介くん、今日はありがとう。

 アリサちゃんも、すずかちゃんも無事で良かったよ』

「結局、今日の出来事はどうなるんだ? あの2人としては」

『うーん、謎の正義の味方に助けられたって事にして、あまり気にしてないみたい』

「そっか・・・

 そういえば、あのチンピラたちはどうした?

 僕あのまま帰っちゃったけど」

『えーと・・・そのまま放ったらかしてきちゃった。

 アリサちゃんは、何回か踏んづけてたけど。

 それより祐介くん、今日のあれって・・・あれも祐介くんの魔法なの?

 ユーノくんみたいな』

「ん? あぁ形態変化(チェンジモード)か。

 まぁそうだな。最近の新技だ。

 変身魔法・・・とはちょっと違うかな・・・?

 あーでも、一緒なようなもんか。

 ざっくり言うと、今までは機械の能力を使えるだけだったけど、

 今は機械に変身もできるようになった、みたいな」

 

そんな感じで適当な説明をし、後は世間話で通話を終わる。

 

「・・・あれも結局の所、使いどころ限られるよな」

「まぁ趣味の強い能力ではありますねー」

 

それに燃費も、そんなによろしくない。

まぁ僕が未熟なだけかもしれないけど。

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

「どうしました? 祐介」

 

今回の事で考えた事がある。

そうそう自分の周りでトラブルなんて起きるもんじゃない、そう思っていたけど・・・

今日は未遂だったとはいえ、事故・事件は実際に起きると実感した。

この先・・・もっと危機的な事態が起こったら・・・?

また魔法の絡むような事件が起きたら・・・?

そう考えると・・・やっぱり・・・強くなりたい、そう思う。

 

「修練あるのみ、だな・・・」

 

日常を大切にしたい、それは今でも変わらない。

その日常を守るために、力が必要な時もあるんだろう。

なら・・・努力しなければならない。

 

 

 

 

 

さてさて・・・

そうと決まれば、明日からもまた、忙しくなりそうだな。

新たな決意をもって・・・新たな力を手に入れるために・・・・・・

 

 

 

 

 

      第16話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

祐介「趣味だねぇ・・・」

作者「そーだねぇ・・・」

美月「変身しちゃいましたねー。

   ・・・役に立つんですか?」

作者「まぁ趣味的なものだから、実用的かどうかはなんとも・・・

   でもこの先も、たまに使うかもしれん。

   いやー、趣味全開でいきたいねー」

祐介「もう1話の時点から趣味全開だったろーが」

美月「これからが不安ですねー」

 

 

 




微妙に祐介たちの設定を更新

 ⇒キャラ紹介2

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