魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-   作:零式機龍

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第11話 それぞれの誓いを胸にして

 

 

 

雨の降りしきる中、空を見上げる。

 

『・・・4人とも、戻ってきてちょうだい』

「了解・・・」

 

リンディさんからの通信にクロノが答える。

 

『・・・で! なのはさんとユーノくんには、私直々のお叱りタイムです!』

 

ま、そうなるよなぁ・・・

お叱りで済むといいけど・・・・・・

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第11話 それぞれの誓いを胸にして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指示や命令を守るのは、個人のみならず集団を守るためのルールです。

 勝手な判断や行動が、あなた達だけでなく周囲の人たちをも危険に

 巻き込んだかもしれないという事・・・それは分かりますね?」

「「はい・・・・・・」」

 

アースラのブリーフィングルーム。

リンディさんのお説教タイムである。

被告は、なのはとユーノ。

(単に出遅れただけなんだが)命令違反した訳ではない僕は外されると思ってたが、

この後の事もあるとか何とかで、クロノに連れてこられた。

 

「本来なら、厳罰に処すところですが・・・結果として、幾つか得るところがありました。

 よって今回の事については、不問とします」

 

僅かな驚きとともに顔を上げる2人。

お説教だけで済んだか・・・良かった・・・・・・

 

「ただし・・・・・・2度目はありませんよ。いいですね?」

「はい・・・・・・」

「すみませんでした・・・」

 

ほっと胸を撫で下ろす。寛大な処置に感謝だな。 

安心したところで、なのはの頭に手を置く。

なのはも、どこか安堵した表情で微笑み返してくる。

 

リンディさんがこちらに向き直る。

 

「さて・・・・・・問題はこれからね。

 クロノ。事件の大元について、何か心当たりが?」

「はい。エイミィ、モニターに」

『はいはーい』

 

中央のモニターに、1人のオバ・・・もとい妙齢の女性が映し出される。

 

「あら・・・!?」

 

リンディさんが驚きの声を上げる。

知ってる人なんだろうか。

 

「そう・・・・・・僕らと同じ、ミッドチルダ出身の魔導師、プレシア・テスタロッサ。

 専門は、次元航行エネルギーの開発。

 偉大な魔導師でありながら、違法研究と事故によって、放逐された人物です。

 登録データと、さっきの攻撃の魔力波動も一致しています」

 

帰ってきてから聞いたが、あの雷攻撃があった時、アースラにも攻撃が加えられていたとか。

 

「物騒な人だなぁ・・・・・・

 ん? ちょっと待て・・・テスタロッサ? って事は・・・」

「ああ。あの少女、フェイトは恐らく・・・・・・」

「フェイトちゃん・・・あの時、『母さん』って・・・・・・」

「・・・親子、ね・・・・・・」

 

リンディさんが頷き、それに続いて美月が呟く。

 

「・・・上手くいってないのかもしれませんね。

 驚きというより、どことなく怯えが感じられたような気がします」

「・・・だよなぁ・・・・・・」

「・・・・・・エイミィ。プレシア女史について、もう少し詳しいデータを出せる?

 放逐後の足取り、家族関係、その他何でも」

『は、はい! すぐ探します!』

 

 

 

 

 

数分後、エイミィさんが資料を持って入ってくる。

 

「プレシア・テスタロッサ。

 ミッドの歴史で、26年前は中央技術開発局の第3局長でしたが、

 当時開発していた、次元航行エネルギー駆動炉 “ヒュードラ” 使用の際、

 中規模次元震を起こした事で、地方へと異動。

 辺境に異動後も、数年間は技術開発に携わっていました。

 そのしばらく後、行方不明になって・・・それっきりですね・・・」

「家族と、行方不明になるまでの行動は?」

「その辺のデータは、綺麗さっぱり抹消されちゃってます。

 今、本局に問い合わせて調べてもらっていますので」

「時間はどれくらい?」

「一両日中には、と」

「・・・プレシア女史もフェイトちゃんも、あれだけの魔力を放出した直後では、

 そうそう動きはとれないでしょう。

 その間に、アースラのシールド強化もしないといけないし・・・・・・」

 

こちらに向き直るリンディさん。

 

「あなた達は、ひと休みしておいた方がいいわね。

 特に、なのはさんや祐介くんは、あまり長く学校を休みっぱなしでも良くないでしょう。

 一時帰宅を許可します。ご家族と学校に、少し顔を見せておいた方がいいわ」

「はぁ・・・・・・」

「分かりました・・・・・・」

 

とりあえず、相手の出方次第ってことか・・・・・・

まぁ、ジュエルシードがもっと必要だっていうなら、向こうから出向いてくるしかないしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・しかし本当に来るんですか?」

「えぇ、お子さんを預かっているんだから、お家の方にご挨拶するのは当然ですもの」

 

リンディさんと連れ立って我が家へ向かう。

なのはと帰る時間をずらすように言われ、なんでだろうと思ってたがこのためだったか。

さっきまで、高町家に行ってたらしい。

 

「そんなに気を遣わなくてもいいと思いますけどね・・・

 ウチの人間って細かい事気にしないから」

 

一応、こっちの世界に帰って来た時に、連絡はいれておいたが、いつも通りな感じだったし。

 

「いやいや、詳しい事も訊かずに送り出してくれた神代家や高町家がおかしいんですってばー」

「そうですよ、やはり保護者として、事情の説明はしなくてはいけません」

「はぁ・・・そんなもんですか・・・・・・」

 

 

 

結局、当たり前といえば当たり前なんだけど・・・・・・

リンディさんの、家庭への事情説明とやらは、大半が嘘八百だった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、学校から帰宅後、自室で窓の外をボーッと眺めていると、突然に念話が入る。

 

《ゆ、祐介くん祐介くん!》

《どうした、なのは。今日はアリサの家に行ってるんじゃ―――》

《そのアリサちゃんの所に・・・その・・・アルフさんが・・・・・・》

《はぁ!?》

《なんか、凄い怪我してて・・・・・・》

《フェイトは?》

《ううん、アルフさんだけ。これからお話を聞くところなんだけど・・・・・・》

 

 

 

 

 

クロノによる事情聴取によって、大体のことは分かった。

 

目的は不明だが、プレシア・テスタロッサはジュエルシードを欲していて、それの回収を、

娘、フェイトに命じた。しかし彼女の求めるだけの成果を上げられなかったフェイトに、

虐待じみた折檻を幾度となく行っていた。それに(実力行使で)抗議したが返り討ちにあい、

命からがら転移してきたところをアリサに拾われた、と。

 

これがアルフさんの語った現状である。

 

《なのは、祐介。聴いたか》

《うん・・・》《あぁ。色々と大変みたいだな》

《君たちの話と、現場の状況。そして彼女の使い魔、

 アルフの証言と現状を見るに、この話に、嘘や矛盾は無いみたいだ》

《これから、どうするんだ?》

《プレシア・テスタロッサを捕縛する。

 アースラを攻撃した事実だけでも、逮捕の理由にはお釣りがくる程だ。

 だから僕たちは、艦長の命があり次第、任務をプレシアの逮捕に変更する事になる。

 ・・・君たちはどうする・・・?》

 

・・・・・・まぁ、答えは決まっているようなものだけどな。

恐らく、なのはも決まってるんだろう。

 

《わたしは・・・

 わたしは、フェイトちゃんを助けたい!

 アルフさんの想いと、それから、わたしの意志。

 フェイトちゃんの悲しい顔は、わたしも何だか悲しいの。

 だから助けたいの! 悲しい事から・・・

 それに・・・・・・友達になりたいって伝えた、その返事をまだ聞いてないしね》

《僕も、ここで降りる訳にはいかないな。

 あの寂しそうな瞳を放っておくってのは、ちょっとな。

 お節介だろうが何だろうが、できる事があるのなら、助けてやりたい》

《分かった。

 こちらとしても、君たちの魔力を使わせてもらえるのはありがたい。

 フェイト・テスタロッサについては、君たちに任せる。

 ・・・それでいいか、アルフ・・・?》

《あぁ・・・・・・

 なのは・・・それに祐介、だったね・・・》

 

アルフさん・・・?

 

《頼めた義理じゃないけど、だけど、お願い・・・・・・

 フェイトを助けて・・・!

 あの子・・・今ほんとに独りぼっちなんだよ・・・・・・》

《うん・・・大丈夫》

《任せてください》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

出発は明日の早朝となっている。

ベランダで月を眺めていると、隣に並ぶ影があった。

 

「どうしたの、ボーッっとしちゃって」

「姉さん・・・・・・

 いや、明日からの事をちょっと考えててさ」

「また・・・行くのよね・・・・・・」

「うん・・・・・・母さんにも姉さんにも、心配かけるけど・・・・・・

 多分、もう少しでケリはつくと思う」

「そっか・・・・・・

 ま、気が済むまでやってくればいいわ。

 ただ・・・無事に帰って来なさいよ・・・・・・」

 

後ろに回り、頭を抱きかかえてくる姉さん。

その腕に手を添えて呟く。

 

「約束する。

 ちゃんと帰るよ。全部片付けて・・・・・・」

 

なんか大げさになってきたな・・・

死地に向かう勇者じゃあるまいに。

まぁ、それなりに危ない事ではあるかもしれないけど・・・

約束は守るさ・・・・・・

 

そう決意して、2人でただ月を見上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早朝。

時刻は5時過ぎ。

玄関に向かうと、そこには母さんの姿があった。

 

「母さん・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

 

無言で拳を突き出してくる母さん。

・・・まったく・・・・・・

こちらも拳を出し、打ち合わせる。

 

「行ってらっしゃい」

「行ってきます」

 

それだけを言い、隣を通り過ぎる。

扉を出るとき、もう一度振り返った。

そこには、まるで学校に行くのを見送るかのような、いつも通りの笑顔。

 

・・・行ってきます。

心の中でもう一度呟き、親指を立てて答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

集合場所でなのは達と合流し、走り出す。

道中、これからの事を尋ねる。

 

「・・・今日は、計画通りいくのか?」

「うん・・・・・・きっと来てくれると思うから・・・・・・」

「そうだな・・・きっと・・・・・・

 ・・・おや?」

 

気づけば、僕たちに並んで走るオレンジ色の姿があった。

アルフさん・・・・・・

無言で頷き合い、僕たちは目的地へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海鳴臨海公園。

最近は随分と、この場所によく来るような気がするな。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

ただ彼女を待つ。

もう全てのジュエルシードは回収された。

これ以上の数を望むなら、もう一度接触してくるしかない。

 

 

 

 

 

――― ふと、空気が揺れた。

 

「・・・美月」

「はい・・・ご客人です」

 

背後の街灯の上に佇む黒い影。

 

「Scythe form.」

 

フェイト・・・・・・いきなり臨戦態勢ときたか。

 

「フェイト・・・! もうやめよう!」

 

前に出たアルフさんが訴えかける。

 

「あんな女の言う事、もう聞いちゃ駄目だよ!

 フェイト・・・・・・

 このまんまじゃ、不幸になるばっかりじゃないか・・・!

 だからフェイト!!」

 

首を振るフェイト。

 

「だけど・・・・・・

 それでも私は・・・あの人の娘だから・・・・・・」

 

予想はしていたが・・・やっぱり単純な説得では無理か・・・・・・

 

隣では、レイジングハートをセットアップするなのは。

今回の接触は、なのはに任せる事にしていた。

 

「ただ捨てればいいって訳じゃないよね・・・

 逃げればいいって訳じゃ、もっとない・・・」

 

正面からフェイトと向き合う。

 

「賭けよう・・・

 お互いの持ってる、全部のジュエルシードを・・・!」

「Put out.」

 

レイジングハートから吐き出される12個のジュエルシード。

 

「Put out.」

 

応える様に、バルディッシュもジュエルシードを排出。

その数9・・・・・・

 

「それからだよ・・・・・・

 全部、それから・・・!」

 

そしてデバイスを向け合う2人。

 

「わたし達の全ては、まだ始まってもいない・・・・・・

 だから・・・・・・本当の自分を始めるために・・・!

 始めよう・・・・・・最初で最後の、本気の勝負―――!!」

 

僕に今できるのは、見守る事だけだ。

・・・任せたぞ、なのは・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

      第11話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

作者「うーむ・・・・・・」

祐介「どうしたんだ?」

作者「何この姉弟・・・」

美月「禁断の愛フラグでも立ててるんですかねー」

作者「何だって!? おい、そうなのか!?」

祐介「知らないよ! あんたが書いたシナリオだろうが!!」

美月「で、このシーン、何かの伏線に?」

作者「いや、咲の出番が全然ないなーと思って・・・・・・

   思いつきで書き足した部分だから、特に意味は・・・無い。

   さして長いシーンでもないでしょ」

祐介「まぁそうだけど・・・・・・」

作者「・・・何、祐介×咲シナリオ作ってほしい?」

美月「それより私のルートを!」

祐介「いつからこの話はギャルゲー風になった!?」

 

 

 


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