魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-   作:零式機龍

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第9話 世界を脅かす遺物

 

 

 

突然に現れた、黒いコートを纏った男、もとい男の子。

なのはとフェイトの戦闘を止めた、のか?

 

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。

 詳しい事情を聞かせてもらおうか」

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは Metal Chronicle -鋼を統べる者-

 

第9話 世界を脅かす遺物(ロストロギア)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「時空管理局・・・!」

 

ユーノが呟く。

いや、その管理局って何だよユーノ。てか誰? あ、名前は名乗ってたか。

 

 

 

3人が地上へ降りて来たので、僕たちもそっちへ歩いていく。

 

「このまま戦闘行為を続けるなら・・・

 ――― っ!?」

 

突如、上空から降り注ぐオレンジの光弾。アルフさんか!?

彼、クロノが展開したシールドに弾かれるが、さらに光弾が降りかかる。

 

「フェイト! 撤退するよ!!」

 

魔力弾は地面に着弾し炸裂。慌ててビームシールドで防御しながら、後方へ飛び退る。

辺りを爆煙が包み込み、その中からフェイトが上空へ飛び上がる。

 

「待てフェイト!」「フェイトちゃん!」

 

僕たちの声を背に、ジュエルシードへと手を伸ばすフェイト。

が、そこへ撃ちこまれる水色の光弾。

攻撃を受けたフェイトは落下し、アルフさんに受け止められた。

 

「なッ!? 今のは・・・!」

 

見ると、今の攻撃を放ったであろうクロノは、

更に追い討ちをかけるべくデバイス(だよな? あの杖)を2人に向ける。

 

「駄目ぇっ!!」

 

その間に割って入るなのは。

流石にクロノも攻撃を止めるが、その隙にアルフさんはフェイトを連れて走り出す。

 

「待て! フェイト! アルフさん!」

 

その背に向けて叫ぶが、彼女たちはそのまま飛び去ってしまった。

・・・今回も・・・進展無し、か・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて・・・・・・」

 

ジュエルシードをデバイスに格納したクロノが、こちらに向き直る。

 

「君たちには、事情を聞かせてもら―――」

「クロノ、お疲れ様」

 

突然浮かび上がる魔法陣、そしてそこに映し出される女の人。

 

「・・・すみません。片方は逃がしてしまいました」

「まあ大丈夫でしょう。ちょっとお話を聞きたいから、

 そっちの子たちを、アースラに案内してあげてくれるかしら」

「了解です。すぐに戻ります」

 

通信(だと思う)を切り、こちらを見るクロノ。

 

「聞いての通りだ。一緒に来てもらえるか」

 

あー、これって・・・事情聴取ってやつですかねぇ・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

転移させられ連れて来られたのは、かなりSFチックな部屋だった。

やたら広い。何かのホールみたいだ。

 

《ゆ、ユーノくん・・・ここって一体?》

《時空管理局の・・・次元航行船の中だね・・・》

《次元航行船・・・って何だ?》

《えっと・・・簡単に言うと、

 幾つもある次元世界を自由に移動する、そのための船だよ》

《あ、あんまり簡単じゃないかも・・・》

《つまり、僕たちの住んでるこの世界の他にも、

 ユーノたちの世界みたいなのが幾つもある・・・って事でいいのか?

 で、この船は、その世界間を移動できる・・・と》

《うん、そんな感じだよ》

《じゃあ、時空管理局ってのは?》

《幾つもある世界で、それぞれの世界に干渉し合う様な出来事を、

 防いだり管理したりする機関・・・かな》

《世界間の警察機関みたいな物ですかねー》

国際刑事警察機構(ICPO)のもっと規模でかいverみたいな感じか》

 

そうこう言ってる間に、廊下の様な通路に出た。

クロノが振り返り、言ってくる。

 

「あぁ、いつまでもその格好のままというのも窮屈だろう。

 バリアジャケットとデバイスは、解除しても平気だよ」

「あ、そっか。そうですね」

 

言われてなのはは、バリアジャケットを解き、レイジングハートを待機状態に戻す。

 

「君も・・・元の姿に戻ってもいいんじゃないか?」

「へ? いや僕はもともと・・・」

「あぁ、そういえばそうですね。

 ずっとこの姿でいたから、忘れてました」

 

ユーノ? 何言ってんの??

ユーノが魔力光とともに、その姿を変え―――

 

 

 

・・・・・・開いた口が塞がらない。

隣を見ると、なのはも口をパクパクさせるだけで、言葉が出てこない様だ。

 

「ふぅ・・・2人にこの姿を見せるのは、久しぶりになるのかな」

「ゆ、ユーノ・・・・・・お・・・おま・・・・・・」

「ふぇぇっっ!? ゆ、ユーノくんが・・・えっ?えっ? えーぇぇっっ!?」

「ど、どうしたのさ!? 2人とも!」

「お、お前は一体何なんだッ!?」

 

ユーノの姿はどー見ても人間。僕たちと同年代くらいだろうか。

 

「・・・君たちの間で、何か見解の相違でも・・・?」

「えぇと・・・僕たちが最初に会った時って、僕はこの姿じゃ・・・・・・」

「いやいやいやいや! 違うって!!」

「最初からフェレットだったよぉ!!」

 

・・・? とばかりに考え込むユーノ。

暫くの後、ハタと気づく。

 

「あーっ! そ、そうだそうだった・・・!

 ご、ごめんごめん! この姿は見せてなかった・・・」

「だよね! そうだよね! びっくりしたぁ・・・・・・」

「まぁ私は知ってましたけどねー」

「だったら何で言わないんだよ!?」

「いや、特に問題は無いかなーと思いまして」

「問題は無くても、結構重要な事だろそれ!」

 

「あー、ちょっといいか?」

 

やいのやいの言ってたら、咳払いをしてクロノが間に入ってくる。

 

「君たちの事情はよく知らないが・・・

 艦長を待たせているので、できれば早めに話を聞きたいんだが」

「は、はい・・・」

「すみません・・・」

「お、お待たせしました・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「艦長。来てもらいました」

 

クロノに連れられ、ある部屋に入る。

が、目に飛び込んできたのは異様な風景。

・・・ここ、SFチックな船の中のハズだよな? 何で盆栽やら鹿威(ししおど)しやらが

設置されてたり、中央に敷物しいて茶器をスタンバってたりするんだ・・・?

そこにいたのは、さっきクロノに通信を送ってきていた女の人。

――― この人、艦長だったんだ・・・・・・

 

「お疲れ様。

 まぁ3人ともどうぞどうぞ、楽にして」

「「「は、はぁ・・・」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、そうですか・・・・・・

 あのロストロギア、ジュエルシードを発掘したのはあなただったのですね」

「はい・・・それで、僕が回収しようと・・・・・・」

「まったく・・・危険すぎる!」

 

事情聴取、というほど堅苦しいものではないが(なんちゃって和空間のせいだ)、

これまでに至る経緯を説明。

 

・・・・・・ひとつ疑問に思ったので尋ねてみる。

 

「あの・・・ロストロギアって何なんです?」

「あぁ、遺失世界の遺産・・・って言っても分からないかしらね。

 えっと・・・・・・

 この幾つもある次元世界。その中に、ごく稀に進化しすぎる世界があるの。

 進化しすぎたそれらが、自分たちの世界を滅ぼし、残された危険な技術の遺産・・・」

「それらを総称して、ロストロギアと呼ぶ・・・・・・

 使いようによっては、世界どころか次元空間さえ滅ぼす程の力を持つ事もある」

「あなたたちが探している『ジュエルシード』は、次元干渉型のエネルギー結晶体。

 幾つか集めて特定の方法で起動させれば、空間内に次元震を引き起こし、

 最悪の場合、次元断層をも巻き起こす危険物・・・・・・」

「君たちと、あの黒衣の魔導士がぶつかった時に発生した震動と爆発、あれが次元震だ」

 

・・・たしかにあの時のアレは凄かった。

なんかこう、大地が鳴る!とか空間が揺れる!みたいな感じしてたしなぁ・・・

 

「たった一つのジュエルシードの、全威力の何万分の一の発動でも、あれだけの影響があるんだ。

 複数個集まって動かした時の影響は計り知れない・・・・・・」

「あれで何万分の一ですか!?」

 

仮に10個使ったとして、フル発動したらその威力は、単純に倍加すると昨日の何十万倍。

いやまさか、威力が乗算なんかされたら――― だめだ、想像つかない・・・

 

 

 

数瞬の沈黙。

そんな中、艦長さんが表情を引き締めて言う。

 

「これより、ロストロギア『ジュエルシード』の回収については、時空管理局が全権を持ちます」

「「「え!?」」」

「君たちは今回の事は忘れて、それぞれの世界に戻って元通りに暮らすといい」

「・・・でも、そんな・・・・・・」

 

なのはが声を上げるが、クロノに窘められる。

 

「次元干渉に関わる事件だ。

 民間人に介入してもらうレベルの話じゃない」

「でも・・・!」

「いきなりそんな事言われても・・・・・・」

 

そうだ、ここまで色々やってきたんだぞ。じゃあ後は任せましたってのはちょっとなぁ。

――― いや理屈では分かるけど・・・・・・

こんな規模の大きな事件には、しかるべき機関が当たるべきだってのは。

でも・・・だからって・・・・・・

 

「まぁ、急に言われても気持ちの整理もつかないでしょう。

 今夜一晩ゆっくり考えて、3人で話し合って。それから改めてお話をしましょ」

「送っていこう。元の場所でいいね」

 

立ち上がるクロノ。

僕たちはついて行くしかなかった・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海鳴臨海公園。

僕たちを送り届けた後、クロノはさっさと帰って行った。

 

「何か、随分と色々ありましたねー」

「そうだな。

 物騒な話とかもあったけど、とりあえず・・・・・・

 一番の驚きは、お前が人だったって事だユーノ!!

「え、えぇっ!?」

 

ユーノをビシィッ! と指差してやる。

 

「ご、ごめん・・・・・・

 そんなつもりじゃなかったんだけど・・・何か、秘密にしてたみたいになっちゃって・・・」

「だ、大丈夫! びっくりはしたけど、それだけだよ」

「あぁ、別に怒ってなんかないって」

「2人とも・・・ありがとう・・・・・・

 えっと、とりあえず・・・・・・」

 

ユーノがフェレットの姿になり、なのはの肩に上がる。

 

「しばらく、普段はこっちの姿でいる事にするよ」

「うん、そうだね」

「・・・後は、これからどうするか、か・・・・・・

 正直言うと、このまま引き下がるってのは、ちょっと納得できないんだけどな」

「『これ以上邪魔するなら逮捕』とか言われれば、あきらめるしかないですけどねー」

「わたしも・・・・・・このままやめちゃうのは・・・嫌かな・・・・・・

 フェイトちゃんとも、ちゃんとお話してないし・・・・・・」

「・・・という訳だから、ユーノ、よろしく」

「えぇぇ!? ぼ、僕が言うの!?」

「だって僕たち、次元世界とかいうのにも、管理局にも詳しくないし。

 なんとかならないか?」

「ユーノくん、お願い!」

「ジュエルシード探索チーム現場監督として、ここはズバッ!といってくださいよー」

「うぅ・・・・・・

 分かったよ・・・なんとか協力者という形で同行させてもらえないか頼んでみる・・・」

 

一晩考えるどころか、即決だったなと苦笑する。

さて、後はユーノ頼みか・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

管理局は、僕たちが現地協力者として、ジュエルシードの探索に同行する事を認めてくれた。

ユーノから伝えられた条件は2つ。

 

 1.3名とも身柄を一時、時空管理局の預かりとすること

 2.現地指揮官の指示を遵守すること

 

 

 

「――― という訳で、しばらく家を空ける許可を頂きたく・・・」

 

母さんに事情を話し、長期外出・外泊の認可をとるべく説得する。

もっとも、全てを話す訳にはいかなかったが。

 

「・・・危ない事は無いんでしょうね?」

「あー・・・・・・多分ある、かな・・・?」

「そう、ならアタシは反対よ・・・って言っても、しょうがないか。

 ・・・もう、決めてるんでしょ?」

「・・・・・・ごめん」

「なんで謝るのよ」

「心配、かけるなって思って・・・・・・」

 

母さんは大きく息を吐き、

 

「そりゃね、子供を心配しない親なんているもんですか。

 ・・・・・・でもね。同じくらい信じてもいるわ。

 あんたが自分で考えて、自分で決めた事。だったら、行って来なさい。

 その探し物もちゃっちゃと見つけて、相手の子ともケリをつけて来なさい!」

 

そういって頭を撫でてくれた。

 

「ありがとう・・・母さん。姉さんにもよろしく」

「あ、そういえば聞き忘れてたわ」

「???」

「話したい相手の子って女の子? ひょっとして惚れちゃったとか? それとも―――」

「あのなぁ・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

荷物をまとめ、家を出る。

 

「・・・ここからは、さらに気合を入れていかないとな」

「公的機関が絡んできた以上、フェイトさんたちも少なからず焦ってくるはずです。

 事態の急変は必至かと」

「ずっと睨めっこするよりはいいだろ。

 勝手だけど、相手の事情や気持ちを知らないまま戦うのは、気持ちが悪い」

 

そう、引き下がる訳にはいかない。

次元振だとか、世界が滅びかねないとかは、スケールが大きすぎてピンとこない。

だけどやる事は変わらないな。

この街に、周りの人たちに被害が及ぶのが嫌だから、その原因たるジュエルシードの早期回収。

そして、フェイトとの対話。

――― 結局はそれだけだ。

 

決意も新たに、僕は走り出す。

 

 

 

 

 

      第9話   終

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   ~あとがき・・・もどき!!~

 

 

 

美月「何ですか、この終わり方・・・・・・」

祐介「俺たちの戦いは、まだまだこれからだ! みたいな?」

作者「そんな、打ち切りマンガじゃあるまいし」

祐介「決意も新たに走り出す! ・・・似たようなもんだろ」

美月「あ、じゃあ連載終了ですね。お疲れさまでしたー!」

作者「終わらないから! まだまだ続くから!」

祐介「あーそうかい。

   公的組織が出てきたし、もう終わるんじゃ?」

作者「そういや、調べてて初めて知ったんだが・・・

   ICPO、インターポールって言えば、国際警察ッ!って

   思ってたけど、あれってフィクションの中の話なのね」

祐介「え、そうなのか? 世界中をまたにかけて捜査とかしてないのか?」

作者「『各国法執行機関の連絡機関・協議体としての性格が強い』(by Wikipedia)だと。

   まぁそう言われてみれば、国によって法律って違うもんなぁ。

   そっかー、とっつぁん居ないのかー。『インターポールの銭形です』ってやらないのかー。

   南原さんも、ブラックホール第3惑星人を探して沖縄行ったりしないのかー」

美月「また訳の分からない事を・・・」

 

 

 


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