初音島物語   作:akasuke

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まずは、一言。
皆さんのおかげで、日間ランキング1位を取ることが出来ました。

本当にありがとうございます。
私の小説が、というわけではなく、これはD.C.が好きな皆さんと一緒に取れた1位だと思ってます。

私はD.C.が大好きです。
でも二次創作ではあまりなくて。
思い出してほしい、知ってほしいと思い、この小説を書きました。

ランキングに入り、少しでも小説が増えたらいいなって思っていたのですが、こんなにも早く、目的が達成するとは。

この小説は、メインヒロインはいますが、他のキャラも含め描きたいと思っているので、どちらかと言うとノーマルルートもしくはトゥルーエンドだと感じるかもしれません。
なので、それぞれのルートを書いた小説が増えることを祈ってます。

…それにしても、大願が叶っちゃいましたね。

でも、物語自体はまだ始まったばかりです。
もし良かったら見てください。

それでは、本編をどうぞ。


episode-5「後悔なき」

「それにしても、色々と凄いな」

 

お茶を出しますから少々お待ちください、と。

そう告げてから出ていった彼方を見送った後、部屋の中を見渡しながら義之はつぶやく。

 

義之からしてみれば、新聞記事や地図、手書きメモなどが至るところに置かれている部屋を初めて見るので新鮮に感じたのである。

 

 

「確かに凄いねー、新聞部って記事を書く為にこんなに沢山調べるの?」

 

義之の曖昧な物言いに対して頷きながら、壁に貼られる記事を興味深そうに見る小恋。

義之や小恋だけでなく、他のメンバーも壁の記事やホワイトボードのメモ、積み重ねられているファイルを見たりしている。

 

そんな面々を面白げに見ながら、杉並は小恋の疑問に返答する。

 

 

「確かにネッシーやUFOを調査しているメンバーの部屋も似たようなもんだな」

 

しかし、と。

ひと区切りさせてから、杉並は言葉を付け足す。

この部屋の資料は、記事を書くことが目的ではないだろうがな、と。

 

その回答に、目を丸くして杉並を見つめる小恋。

 

 

「へっ、そうなの?」

 

「そうだと思うぞ。 この部屋の資料は、記事を書く為というよりは、やつ自身の目的の為であろうな」

 

今回、珍しく同志初音は記事を書いたがな。

そう語る杉並に、今度は杏が質問を投げ掛ける。

 

 

「杉並、この部屋は彼だけが使っているものなの?」

 

「ここ暫くはそうだな、やつの物が多くなったので一室専用として貸し与えたのだ!」

 

「あん? 随分と優遇されてるな?」

 

「入学当初から非公式新聞部に入った同志だ、多少は優遇するさ」

 

「入学からこんな怪しいとこに入るなんて、人は見掛けに寄らないものね」

 

杏と渉、杉並が話している中、茜が少し緊張した雰囲気を漂わせ、杉並に質問する。

 

 

「ねぇ、杉並くん。 初音くんが調べてることって……その、魔法の桜のこと?」

 

「それは…フッ、本人に聞くべきであろう」

 

杉並は何かを答えようとし、途中で止める。

そして後ろへと振り返りながら、ニヤリと笑い、言葉を発する。

 

出番であるぞ、同志初音よ、と。

 

杉並の言葉と視線を追うようにして義之たちが振り向くと、そこにはお茶を運ぶ彼方と由夢の姿があった。

 

 

「そんな、如何にも出番待ちしてたみたいな言い方しないでくださいな」

 

ちょうど朝倉さんと一緒にお茶を持ってきたばかりなんですから、と。

ジト目で杉並を見る彼方と、彼方の言葉に同意する由夢の姿をみて、ふとした疑問を浮かべる義之。

 

 

「あれ、由夢はいつの間に一緒に行ってたんだ?」

 

「かな…初音先輩がお茶を取りに行くって言ってた初めからですよ」

 

「人数が多いから手伝う、と言ってくださって」

 

助かりました、と。

礼を述べる彼方に、当たり前のことですからと由夢は頬を赤くしながら嬉しそうに告げた。

 

 

「あれ、ふだ……いや、何でもない」

 

普段は手伝わない由夢が珍しいなと言おうとした義之だが、

余計なことを言うなと視線で語る由夢を見て話すのを止めたのだった。

 

そして、彼方と由夢が皆にお茶を配る最中、茜の疑問について彼方は言葉を返した。

 

 

「花咲さん、でしたよね? 確かにわたしは魔法の桜について調べていました」

 

「その……どうして調べようと思ったの?」

 

さらに質問を投げ掛けた茜に、彼方は言葉を返した。

 

願いを叶えてくれた魔法の桜について、知りたかったからでしょうか、と。

 

その言葉に、少し表情を堅くさせる茜と杏に気付かず、渉はあー、と思い出したかのように喋る。

 

 

「あー、そういえば小恋が記事に願いが叶ったって書いてあったって言ってたな」

 

それじゃあお前は何を願ったんだよ、と。

 

そうですね、と言葉を置いてから少し悩む仕草を見せる彼方。

そんな彼方を見ても躊躇なく質問しようとする渉に、杏は視線を向けながら、止めさせるかのように強い口調で渉の名を呼ぶ。

 

 

「渉」

 

「え? いや、だってよ……」

 

「渉くん!」

 

尚も聞こうとする渉に、今度は大きい声で止めるように名前を呼んだ茜。

二人からしてみれば、無遠慮に聞こうとする渉に怒りを止めることができなかったのだ。

 

そんな杏と茜の怒気を感じた渉は、戸惑うように二人を交互に見る。

戸惑いを見せたのは渉だけでなく、義之や小恋もそんな二人の様子に驚きを見せた。

 

 

 

「え、えーっと……」

 

「…………」

 

小恋がなにかを言おうとするも言葉が続かず。

そこから少しの間沈黙が続いたが、その沈黙を破ったのは彼方であった。

 

大丈夫ですよ、と。

周りを安心させるよう、笑いながら義之たちに伝える彼方。

 

言うのが嫌だった訳ではなく、どこから始めようか考えてたんです。

そのように言いながら、困ったように、頬を指でかきながら笑みを浮かべる彼方。

そんな彼方をみて、凍った空気が和らいだように感じられたのであった。

 

 

「さてと、それじゃあ話しましょうか」

 

魔法の桜に願ったときのことを、と。

彼方は、目を瞑り、その時の光景を思い出しながら話し始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

episode-5「後悔なき」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故だろうか、と。

彼方の話を聞きながら小恋は思った。

何故、こんなにも穏やかな表情で語れるのか、と。

 

 

彼方が話してくれたのは、彼が小学生の頃について。

 

昔、病気を抱え、入院生活を送っていたこと。

重い病気であり、助かる可能性が低かったこと。

看護師から魔法の桜の話を聞いたこと。

ひとり、魔法の桜に向かい、生きたいと願ったこと。

その翌日、病気が突然治ったこと。

 

その内容は、病気も熱とか風邪しか体験したことがない小恋からしてみれば、遠くの世界に思えるような、とても重い話。

 

だけど話はそこでは終わらなかった。

 

 

「50年以上前も、いまと同じく、願いを叶えてくれる魔法の桜があったみたいです」

 

退院した後に、かつての魔法の桜に願いを叶えてもらった人に会ったという。

 

 

「その方は、わたしに、こう言いました」

 

 

――魔法の桜は、シンデレラと同じ魔法のようなものなのだ、と。

 

 

小恋も童話『シンデレラ』については知っている。

灰かぶりと呼ばれた少女が、魔女に魔法でドレスやガラスの靴、カボチャの馬車を出してもらい、お城の舞踏会へと向かう。

しかし、その魔法は、午前零時に解けてしま――

 

そこまで思い出し、小恋は、その女性の言った意味について理解する。

思わず、彼方の方を見つめてしまう。

小恋以外も、意味を悟ったのか、それぞれが複雑な表情を浮かべ、彼方を見ている。

 

そんな面々を見ながら頷き、彼方は告げる。

 

 

「いつか、魔法は解けて、願いは終わってしまうのだと言っていました」

 

そうしたら、病気が再発してしまうのでしょう、と。

穏やかな表情を崩さず、重い事実を告げる彼方。

その表情をみながら、杏が一つ質問を投げる。

 

 

「……でも、病気が再発しても、治る可能性があるんじゃないかしら?」

 

「えぇ、治療して、治る可能性がゼロではありません。でも、手術が成功する可能性は低く、治っても以前と同じように歩くことが出来ない場合もあるらしいです」

 

中学生になってから、仲の良い看護師を通じて、病気のことについて聞いたのだと、彼方は語る。

 

その返答に、杏だけでなく、小恋や他の面々も何を言えば良いのか、分からなかった。

 

小恋は、もし自分が同じ境遇であれば、辛くて、不安がずっと渦巻いて、ずっと泣いてしまうかもしれないと思った。

いまも、想像しただけで泣きそうになってしまう。

 

だからこそ、心の中で思う言葉が、つい溢れ出して口に出してしまう。

 

 

――何で、そんな表情で言うことができるの、と。

 

あくまで穏やかで、話している過去を懐かしそうに語る彼方に聞かずにはいられなかったのだ。

 

そんな泣きそうな表情の小恋を見た後、彼方は、かつて話した女性との会話を、再び話し出す。

 

 

「以前の魔法の桜は、何の予兆もなく、突然枯れて、願いは解けたそうです。 現在咲いている桜が、いつ枯れるのか分かりません……数年後かもしれませんし、明日かもしれません」

 

だからこそ、と。

だからこそ、その女性が言ってくれた言葉は、忘れることが出来ません、と。

 

 

「『後悔しないように生きなさい』……私の胸に、心に、ずっと残り続ける、大切な言葉です」

 

胸に手をあて、大切なのだと、本当に嬉しそうに言う。

そして、更に彼方は話す。

 

 

「いっぱい泣きました、苦しみました。 でも、そんな私の思いを受け止めてくださる方がいました」

 

彼方は心の中に、両親や看護師の葵、尊敬する友美を思い浮かべる。

受け止めてくれた人たちがいるからこそ、今の自分がいるのだと思っている。

 

自分自身では、後悔しないように生きてきたつもりだ。

だからこそ、知ってほしいのだと。思ってほしいのだと。

 

 

「魔法の願いは関係なく、どうか皆さんも、後悔しないように生きてください」

 

これを、きっと伝えたかったのだろう。

微笑みながら皆を見渡す彼方を見て、小恋は悲しく感じていた思いが解けていくのを感じた。

 

 

彼方の言葉に思うところがあったのだろう。

それぞれが自分の中で何かを思い浮かべる中、渉が困ったように、彼方に質問する。

 

 

「その、さ……後悔しないようにって、実際、なにをすれば良いんだ?」

 

渉自身も感じるものがあったが、実際に何をすれば良いのか、始めれば良いのか分からなかったのだ。

そんな渉に、彼方は自分の経験をもとに話す。

 

 

「別に、そんなに大きなことをする必要はないんです。 例えばですが、道中で困っている人に声を掛けたり、バスでお年寄りに席を譲るなどからでも良いと思います」

 

「え、そんなことからで良いのか?」

 

「えぇ、そうです。 誰かがやるからと、やらなかった小さいことが、きっと死ぬ間際に、シコリに残ったりするんだと思います」

 

そんな他愛のないことが後悔に繋がるんです、と。

彼方自身の経験なのか、少し悲しそうな表情をしながら告げた。

それだけでなく、と。

 

 

「恥ずかしいかもしれませんが、両親や友達に普段は言えない感謝をしたり、想いを告げたりするのも大事なことだと思います」

 

こういうクサい話をするのは本当は恥ずかしい気持ちがあるんですよ、と。

恥ずかしそうに、照れた表情で話す彼方。

恥ずかしくても言葉にするのが大事なのだと、態度で示そうとしていたのである。

 

 

「私に出来ることがあれば、何でも言ってください」 

 

いつでもお待ちしてます、と。

一人ひとりをしっかりと見渡した後に彼方が言い、今回の初対面は、終わりを告げたのだった。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

彼方との対面後。

地下から地上に戻った頃には、既に日が暮れていた為、義之たちはそれぞれの家に帰宅していく。

 

その道中、渉と小恋は、自宅が近いこともあり、二人で帰っていた。

 

 

――後悔しないように、かぁ。

 

彼方が話した内容を思い浮かべ、内心でつぶやく渉。

 

渉は、朝に杉並から誘われたときには、こんなに色々と考えることになるとは思わなかった。

普段は、軽薄で調子がいい性格であったり空気が読めなかったりする渉だが、決して真面目に話す人を茶化したりはしない。

 

そして、彼方が話したことは、渉自身にも感じさせる何かがあった。

 

 

『想いを告げたりするのも大事なことだと思います』

 

彼方の言葉を思い出しながら、ちらりと、隣で歩く小恋を見る。

出会って時間が経たない内に彼女のことが好きになり、今でも想いを渉は告げられなかった。

 

でも、と。

後悔しないように、俺も頑張らないといけない、と。

これから告げようとする想いに、緊張で震えそうになりながらも、意を決して渉は小恋に話し掛けようとする。

 

 

「あの…………」

 

「あのさ、月島は、私は、ヘタレなんだ」

 

話し掛けようとした渉であるが、その前に、小恋が渉に話し掛ける。

いや、渉だけでなく、自分自身に対してなのかもしれない。

小恋は、渉の方を見ずに、ただ前を見ていた。

 

 

「でもね、今日の話をきいて、後悔だけはしたくないって思ったの」

 

本当は、まだ不安で仕様がないけど、と。

渉の方に振り向いた小恋は、泣きそうな表情を見せつつも、何かを決意したかのような強い目をしていた。

 

 

――わたしね、義之のことが好きなんだ

 

そう告げた小恋に、渉は頭が真っ白になるのを感じた。

 

だけど、何かを言わなければ、と。

まだ迷った表情を見せる小恋に何かを言わなければ、と渉は思った。

 

 

「お前はヘタレなんかじゃねえよ、大丈夫だ」

 

きっと義之を振り向かせることが出来るさ、と。

そう告げた渉は、泣きそうな気持ちを隠し、必死に笑みを浮かべた。

ちゃんと背中を押してあげられるように、勇気を出させてあげる為に。

笑顔を見せてあげられているのか、不安になりながらも。

 

 

『好きな女の子に告白できずに応援しちゃうタイプね』

 

いつか、杏から言われたこと。

確かに、そうだなって渉は思う。

本当にその通りだと。

 

そして、今はこの場にいない、新しい友人に内心で思いを伝える。

 

 

――後悔しないようにって難しいな、初音。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー……って、もう、寝ちゃってるよね」

 

もう深夜だもんね、と。

自身の家の扉を開けながら、芳乃 さくらは寂しそうにつぶやいた。

 

芳乃 さくらは魔法使いである。

そして、現在の魔法の桜を復活させた張本人であった。

かつてのように、皆の願いを叶えようとした為に。

いや、自分自身の願いをであろうか。

 

目的のために、初音島に戻った彼女は、サンプルとして残っていた魔法の桜の枝を利用し、再び桜を咲かせようとした。

 

目的を果たすことが出来た。

しかし、自分が植え込んだ魔法の桜は、純粋な願い以外も叶えようとする不具合があった。

その調整するために、魔法の桜の樹に遅くまでおり、家に帰宅するのは日付を跨ぐことが多かった。

 

自分自身が巻いた種である。

でも、義之くんと一緒にご飯を食べれないのは寂しいな、とさくらは思った。

 

 

「あ、あはは、そういえば昼から何も食べてないや」

 

静寂が辺りを包む中、ぐーっとお腹が鳴るのを感じ、さくらはひとり恥ずかしそうに笑った。

 

何か冷蔵庫にご飯ないかな、と。

キッチンに行く前に居間の電気を点けると、こたつの上に、ラッピングされた、おにぎりが二個置いてあるのを見つけた。

 

 

「あはは、義之くんが作ってくれたんだね」

 

遅くなるから夕飯は大丈夫だと告げたのに作ってくれていた義之に、思わず笑みが溢れる。

 

 

「ん? あれ、なんだろ、メモかな?」

 

おにぎりの隣に、ノートのページを破いたのだろうか、二つ折りになっていた紙を見つける。

 

その紙を広げて、さくらは、無意識につぶやいてしまった。

 

 

「あっ……っ…よし…ゆき、くん」

 

その紙には、義之からの短い、メッセージが書かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

『遅くまでお疲れ様です。 身体を壊さないか心配です。あまり無理しないでください、母さん』

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ、どうして」

 

おかしいな。

メモに水滴が点いてしまうのを感じ、自分が涙を流しているのを感じた。

大事なメモなんだから汚したくない、そう思っても、溢れ出す涙を止めようとしても止めることができなかった。

 

 

――お母さん

 

昔、間違えて呼ばれたことを思い出す。

あのとき、義之は別に本当にさくらを母と思っていたわけではないだろう。

でも、それでも、義之から母と呼ばれたのが凄く嬉しかったのを覚えている。

 

それでも十分に嬉しかったのに。

義之が母と思ってくれなくても、見守れるだけで嬉しかったのに。

 

 

「義之くんのおにぎり美味しいな」

 

義之がこんな自分のことを母親だと思ってくれていた。

 

 

「美味しいな、ほんとに」

 

今すぐにでも部屋に行って義之に抱き着きたい。

直接、お母さんと呼んでほしいと。

でも、これだけで力が湧いてくるのを感じた。

 

 

 

「お母さん、こう見えてすごいんだから! 大丈夫!」

 

今までは自分以外の、全てを救わなければと思った。

だけど、そうじゃなくて、自分の命を掛けてでも救いたいと思えるものができた。

 

義務感じゃなくて、

使命感じゃなくて、

ほんとに救いたいのだと。

 

息子の為に、頑張ろう。

さくらは、あらためて決意する。

 

 

 

 

 

――だって、義之くんの結婚するとこ、一番前で見ないといけないんだから、と。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

義之たちの帰宅途中に遡る。

 

渉や小恋とは別の帰り道で、家が近かった彼方と茜は一緒に帰っていた。

もう少ししたら茜の家に到着する、そんなときのこと。

 

茜が彼方に言った。

少し別の場所で話さないか、と。

 

彼方が茜の言葉に了承し、茜が向かった先は公園であった。

 

 

「それで、話とは何でしょうか」

 

彼方に背を向け、こちらを見ない茜に、彼方は質問した。

暫くして、茜が言葉を発した。

自己紹介してもいいかな、と。

 

茜の言葉に彼方が戸惑う中、背を向けるのを止めて、振り返った。

何故だろうか、彼方は疑問に思った。

先程までの彼女と何かが違うと思ったのだ。

 

そんな彼方を、悪戯げに、笑いながら見つめていた。

そして、彼女は、彼方に告げた。

 

 

――はじめまして、私の名前は、花咲 藍です。

 

目を見開き驚く彼方を見ながら、更に言葉を付け足した。

 

 

――わたしは、願いを叶えてもらって茜に宿った、妹です、と。

 

 

 




私が小説を書くうえで決めていたことがあります。

・義之がさくらをお母さんと呼ぶ
・4人で雪月花

上の2つはどうしても書きたかったです。
ゲームでも消えると分かった義之くんはさくらにお母さんと呼んでいました。
でも、義之くんなら消えるという状況じゃなくても呼んであげられると思います。
私のイメージでは実際の義之くんは気恥ずかしくて、メモという形で伝えるかなと思いました。

皆さんは如何でしょうか。

小説なので分けましたが、ゲームではこの話の後にようやくOPムービーが流れるイメージです。

また見ていただけたら幸いです。

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