初音島物語   作:akasuke

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お久しぶりです。
しばらく更新できず、申し訳ございません。

早めに投稿したいと思いながらも出来ず、これでは忘れ去られてしまうかな、と反省しております。

なるべく今度からは間を空けずに投稿できたらと思いますので、見ていただけたら幸いです。
D.C.の新作も出るので、また二次創作が増えないかなって願ってます。

それでは、本編をどうぞ。


episode-32「俺たちの幼馴染は」

 

 

 

 

 

 

 

 

episode-32「俺たちの幼馴染は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、毎回思うんだが……」

 

女性の買い物が長いのは年齢問わずなのだろう、と。

朝倉 純一は昔からの経験で理解しながらも改めて実感していた。

 

 

とある初音島の商店街。

平日ということもあり、土日と比べて人は少ないが主婦層で賑わっている。

そんな中、純一は服屋で黄昏れていた。

 

 

――はぁ……かったるいな。

 

思わず、昔からの口癖を内心で呟いてしまう。

彼が何故この様な状態になっているのか。

その理由は、一緒にいる女性の存在にある。

 

 

「もー……お兄ちゃんっ、ちゃんと見てよー!」

 

金髪の少女――芳乃 さくらが頬を膨らませ、こちらを見つめていた。

 

そう、純一がこうして服屋にいる理由は、さくらに誘われたからである。

彼女からお願いされたのだ。

ついて来て、さくら自身が着る服を一緒に選んでほしい、と。

 

 

――お兄ちゃん、お願いっ! ね、いいでしょー?

 

女性の洋服を一緒に選んだり出来るほどセンスがあるとは純一自身思わなかった為、初めは断った。

しかし、何度もさくらにお願いされてしまい、結局は折れた形である。

 

こうして実際に服屋に来たのは良いが、さくらがどの服にしようか悩んでから彼此すでに1時間以上経過している。

そういえば、音夢との買い物も同じ様に待たされていたな、と今更ながらに女性の買い物の時間の長さを思い出したのだった。

 

 

「ねー、お兄ちゃん、聞いてるのー?」

 

「ちゃんと見てるし、聞いてるよ……あと、そんな大声で言わないでくれ」

 

さくらがお兄ちゃんと呼ぶ度、商店街を歩く人々が不思議そうにこちらを見てくるのである。

 

だが、周囲の人々の気持ちも分からないではない。

外見だけ見れば、さくらが純一を兄と呼ぶのに違和感があるのだ。

 

 

――学生の頃は、別に普通だったんだけどなぁ。

 

年齢としては同世代なのだが、容姿からして孫と祖父の買い物に見られているのだろうな、と純一は思わず苦笑いする。

 

それはともかく、さくらに返事した方が良いかと思い、純一は彼女の方に視線を向ける。

 

 

「あのなぁ、さくら。 自慢じゃないが、昔から俺は服の善し悪しとか、詳しくないんだぞ」

 

「むぅ、それでも良いから、相談に乗って欲しいんだってばー……」

 

さくらからしてみれば、幼馴染の純一にそこまでセンスを求めている訳ではないのだ。

自分だけでは悩んでしまうから、似合う似合わないを言って欲しい、と純一に言う。

 

 

「それは別に構わないんだが、何で今更――」

 

選んで欲しいのか、と。

純一は言おうとした矢先、彼女が選んで持ってきた服を見てとあることに気付く。

 

 

「なぁ…なんか、少し落ち着いた服を選んでいるのか?」

 

「えっ……そ、そうかなー? 普通じゃない?」

 

少し慌てた彼女の様子を見て、純一はさくらも意識して選んでいることを理解した。

 

さくらの容姿が若いこともあり、見た目相応の服を彼女は好んで着ていた。

年齢からしてみれば可笑しいかもしれないが違和感が全くないのだから何も言えない。

 

 

――普段着ているのとは違う服を選ぶから、相談に乗ってほしいのか。

 

そのように、昔から可愛らしい服装を好んでいたのを知る純一からしてみれば少し驚きを感じていた。

急に好みが変わったのだろうか、と純一が首傾げにさくらを見ていた。

 

 

「えーと、その、なんというか、ね」

 

その純一の疑問を含んだ言葉と視線に、テンパった様子を見せるさくら。

 

あちこちに視線を向けていた彼女であったが、最終的に口元を持っている服で隠しながら恥ずかしげにさくらは答えた。

 

 

 

 

 

 

「その、ね……、義之くんのお母さんとして、もう少し大人っぽく見せたいなーって」

 

 

 

 

 

 

にゃはは、と照れ笑いしながら話すさくらに、純一はようやく彼女の気持ちを理解することが出来た。

 

 

「そっか……そうだよな」

 

――凄く、喜んでたもんな。

 

さくらが最近自分に話していた内容について、純一はふと思い出す。

 

 

『義之くんにね、お母さんって呼んでもらえたんだ』

 

由夢や音夢が自宅に居ないとき、さくらが純一のもとを訪れ、彼に向かって発した言葉。

 

その時の彼女の表情は、印象的であった。

 

嬉しそうで。幸せそうで。

言われたときを思い出したのか、瞳が潤んでいた。

 

 

『お兄ちゃんっ! 義之くんがね――』

 

その後も、さくらは嬉しいことがあると純一に話しに行っていた。

 

 

義之がまたお母さんと呼んでくれた。

恥ずかしそうに言う姿が凄く可愛い。

絶対にクラスメイトの女の子たちにモテモテに違いない。

わたしは、うちの息子はやらないぞって頑固親父みたいにやるべきかな。

結婚式は和式と洋式のどちらで行ってあげるべきか。

 

 

子煩悩と言うべきか、親バカと言うべきか。

義之の行動について嬉しそうに語るさくらを見て、純一は内心呆れながらも喜びを感じていた。

 

さくらの、心の底からの笑顔を久方ぶりに見たからだ。

 

 

――ずっと、望んでたもんな。

 

純一は、義之の生まれを知っている。

そして、さくらがどれだけ家族を望んでいたのかを。

 

だけど、彼女は義之を朝倉家へ預けた。

たまに会えるだけで十分に幸せなのだと純一に話していたが、さくらが寂しさを隠していたのに気付いていた。

 

だからこそ、純一は義之が中学生になってから彼に芳乃家で暮らすように伝えたのだ。

さくらと義之が、もっと近付けるように。

 

 

――家族が、出来たんだな。

 

家族が欲しい。

さくらの願いにより、義之が生まれた。

だけど純一からしてみれば、今までさくらは遠慮があり、自身の願いを我慢していたように見られた。

 

だけど、義之にお母さんと呼んでもらい、さくらが母親らしくなりたいと思って行動するようになって。

 

ようやく、さくらの願いは、本当の意味で叶ったのかもしれない。

 

 

――よかったな、さくら。

 

思わず、幼馴染の幸せな様子を見て感情が高ぶり、込み上がりそうになる涙を必死に抑える。

 

泣きそうになるなんて、もう自分も歳かな、と純一は自分自身の涙脆さに笑う。

 

 

「そうだな、大人っぽさなら……着物とか良いんじゃないか?」

 

「あぁ、お兄ちゃん! それ良いかも!」

 

環ちゃんや叶ちゃんに相談しようかなぁ、と。

楽しそうに考えるさくらを見て、純一は空を見上げながら思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――なぁ、音夢、知ってるか。

 

ここには居ない、大切な妻に。

どうしても、今のさくらについて伝えたくなった。

 

 

 

 

 

 

 

――俺たちの幼馴染は、さくらんぼは、立派に母親をやってるみたいだぞ。

 

久しぶりに電話でも掛けてみるかな、と。

音夢に何から話そうかな、と考えるだけで楽しく感じながら、さくらの買い物に付き合うのであった。

 

 

 

そんな、とある幼馴染たちの日常の一幕。

 

 

 




少しリハビリも兼ねてるので短いかもしれません。
見ていただき、ありがとうございました。

たまに、さくらさん回を入れたくなるのは、きっと私が実際のゲームでももっと母親の彼女の姿を見たいって気持ちがあるからかもしれません。
さくらも、純一も昔から大好きです。

さて、申し訳ないのですが、一点ご連絡があります。

最近、『初音島物語』『沢近さんの純愛ロード』以外に新しく作品を描き始めました。

タイトル名:
『ひなた荘物語』
原作:
ラブひな

複数描いてるのにまた作品増やしてしまいました。
大変申し訳ございません。

いまなら普通はUQ Holderとか描くべきかと思いますが、赤松先生のラブひなは大好きで、つい。
優先順位としては、初音島物語、沢近さんの純愛ロード、ひなた荘物語となります。

ラブひな知ってる人はどれくらい居るのかな、と不安になりますが、もし気になったら見ていただけたら嬉しいです。

それでは、失礼いたします。

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