初音島物語   作:akasuke

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週一ペースでは執筆しようと思っていたのですが、間が空いて申し訳ありません。
PS2を捨てた時にD.C.無印のゲームを捨ててしまったので、最近買い直しました。

D.C.IIやIII等はやっていたのですが、無印をプレイしたのは高校時代なので…かれこれ10年振りくらいかもしれません。
ここ二週間は、仕事以外はD.C.無印の全√やってました。

結論: ゲームやってて小説描くの忘れてました。

では、本編をどうぞ。


episode-16「彼と彼女と」

「それで、何かあったのか?」

 

「何か、とは?」

 

放課後の第二執筆室。

図書室で借りた文献を読んでいる彼方に、いつの間にか来ていた杉並は質問を投げ掛けた。

 

 

「ほう、まったく普通に対応するとは……これでも気配を消して入ってきたのだがな」

 

「いや、何回もされたら流石に驚かなくなりますよ」

 

どこか感心した様に声を上げる杉並に、呆れながらも言葉を返す。

杉並が突如現れるのは日常茶飯事であり、彼方だけでなく、義之や渉達も慣れてしまい、どこから入ってきたのか等はもはや突っ込まないのである。

 

 

「……ふむ、もう少しバリエーションを増やす必要があるか」

 

「ないですから、やめてくださいね」

 

周りに被害が起こりそうな予感がした為、とりあえず彼方は釘を刺しておく。

 

それで、と。

話が脱線していたことに気付き、当初の質問に戻す為に杉並へ話を促した。

 

 

「最近は毎日入り浸っていた、朝倉妹のことだ」

 

「入り浸るって……私のお手伝いをしていただいていたんですよ」

 

由夢が彼方の助手になると告げた次の日から、由夢は放課後になると此処に訪れ、書類整理や調べ物の手伝いを積極的にしていた。

その為、杉並の言葉にツッコミを入れる彼方。

 

しかし、その返答を意に介さず、杉並はそのまま話を続ける。

 

 

「どちらにせよ、今まで毎日来ていた朝倉妹が、今日までの三日間は一度も訪れていないではないか」

 

毎日来ている訳でもない杉並が何故知っているのかは、最早問わない彼方。

確かに杉並の言う通り、今まで用事がある時以外は基本的に毎日来ていた由夢であったが、ここ三日は執筆室に来ていなかった。

 

 

「なんだ、喧嘩したのか?」

 

「特にその様な覚えはありませんが……」

 

実際、彼方が記憶している限り、由夢と最後に話した時まで喧嘩や口論すらも起きていなかった。

 

だから急に来なくなったことに心配し、体調を崩したのではと思ったが、義之からは特に休んでないという話を聞いていた。

 

 

「そもそも、毎日来てもらっていたことが申し訳なかったですからね」

 

放課後といえば、部活動に精を出す人もいれば、友達と遊んだりしている人もいる。

その時間を自身の作業のサポートにあててもらうのは、申し訳ないという気持ちが彼方にはあった。

 

一度その話をしたとき。

 

『私がお手伝いしたいからやってるので』

 

由夢は笑顔で彼方にそう告げたが、彼女自身が何か他にやりたいことが出来たら、それを優先して欲しいとは思っていたのだ。

 

だからこそ、彼方は杉並に告げた。

 

 

「由夢さん自身がやりたいことがあれば、仕方ないかなって思います」

 

少し寂しいですけどね、と。

若干、曇り気な表情で言葉を足した彼方に、ふむ、と言いながら杉並は何か考え込む。

 

 

「どうかしましたか?」

 

「朝倉妹は……いや、まぁ、いいか」

 

彼方の疑問を他所に、杉並は何かを言い掛け、そして途中で言葉を止めた。

 

 

「言い掛けられると気になるのですが」

 

「大した話ではない……む、そろそろ調査に行かねば」

 

腕時計を見てから、さらばだと言いながら出ていく杉並。

唐突に来たと思えば、唐突に去る杉並に呆れながらも、再び文献に目を通すのであった。

 

どこか、落ち着かないという気持ちを抱きつつも。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「同志初音も仕方ないやつだな」

 

地下室を歩きながら杉並はひとりつぶやく。

 

杉並は先程の彼方とのやり取りを思い出す。

由夢が来ていないことを仕方ないと言っていた彼方であったが、杉並はお茶が二つ用意されていたことに気付いていた。

 

杉並自身に用意されたものではなく、その前から置いてあったものだ。

 

 

「朝倉妹が来るかもしれないから用意したのか、もしくは無意識に淹れたのか」

 

どちらにせよ、口では仕方ないと言いつつ、居て欲しいと思っているのだろうと推測できた。

仕方ないご両人だと、杉並は彼方だけでなく、もう一人の方についても考える。

 

 

『由夢さん自身がやりたいことがあれば、仕方ないかなって思います』

 

「やりたいこと、か」

 

先程の彼方の言葉を頭の中で反芻する。

その後、杉並は呆れた口調でつぶやくのであった。

 

 

 

 

――暗い表情でぶらぶら街を歩くのが、やりたいことだとは思えんがな、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

episode-16「彼と彼女と」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――何をやってるんだろうな、わたし。

 

自嘲するような薄笑いを浮かべる由夢。

彼女は、いま現在、目的もなく街を歩いていた。

 

 

 

放課後。

彼方の助手になって以来、他に用事がなければ基本的に彼の手伝いをしていた由夢。

 

嫌々手伝っていた訳ではない。

頑張っている彼方を手伝うことに喜びを感じていたし、側にいれるだけで嬉しかった。

 

だけど。

何故だろうか。

 

 

『それなら…僕も、嬉しいな』

 

扉越しに聞いてしまった茜と彼方のやり取り。

あの話を、言葉を聞いてから、どうしようもなく由夢は胸が苦しくなってしまった。 

 

今まで通り彼方の手伝いをしていたら、あの場面を否応なしに思い出してしまう気がした。

 

 

それが嫌で。辛くて。

 

 

あの、第二執筆室に向かうことが出来なかった。

だからと言って、放課後に友人と遊ぶ気分にもなれず、自宅にそのまま帰り一人でいるのも嫌で。

 

意味もなく街をただただ歩いているのが現状である。

明日は行こうと思いながらもいざ行こうとすると足取りが重くなり、既に三日目となってしまっていた。

 

 

――こんなこと、意味がないんだって分かってるのに。

 

街を歩いて何か変わる訳でもない。

まだ、胸が苦しくなったとしても彼方に会った方が良いって、分かってるのに。

 

頭では分かっていても、決心が出来ずにいた。

 

 

 

 

「……ん、あれ?」

 

思考の渦に埋もれていたせいか、由夢が気付いた時には商店街を通り過ぎ、普段あまり行かない方面に来ていた。

 

見上げると、目の前には長い上り階段。

 

 

「あれ、ここって……」

 

由夢は自分が来ていた場所を知った。

 

胡ノ宮神社。

初音島に唯一存在する神社ということもあり、初詣には数多くの人が参拝に来る。

由夢も家族で毎年初詣で訪れている。

 

 

――行ってみようかな

 

特に此処に来るつもりはなかったが、何となしに階段を上るのであった。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「この時間って人いないんだ……」

 

上りきった由夢は、閑散としている神社を見て思わずつぶやく。

 

普段神社に行くときが初詣以外ないからか、参拝客が誰もいないのを見ると何だか不思議に感じる由夢。

しかし、平日などこういうものなのだろうと納得し、神社の方へ歩き出す。

 

 

――神社…本来なら、願いを叶えてくれるのはこっちなんだよね

 

願い。

最近まで毎日彼方の手伝いをしていたからか、願いというと魔法の桜を連想してしまう由夢。

 

そのせいか、今まで深く考えていなかったことも考え出してしまう。

 

 

わたしが視るこの予知夢は何なのだろうかと。

 

以前まで予知夢を視る理由や原因など考えなかった。

考えても分からなかった、と言った方が正しいかもしれない。

しかし、最近になって不思議な力を持つ人達を由夢は知った。

 

 

――雪村先輩みたいに、私も願ったの……?

 

杏は魔法の桜に願い、すべてを記憶する能力を得た。

彼方は魔法の桜に願い、自分の寿命を延ばした。

 

不思議な力が魔法の桜に関連しているのであれば、自身も願ったのだろうか。

あの、魔法の桜に。

 

由夢は自身が願った記憶はないが、小さい頃だから思い出せないだけなのだろうか。

 

それに、もう一つ疑問があった。

 

 

「なんで私は彼方先輩との未来を視るの……?」

 

予知夢は誰かに不幸が訪れる場面しか視ていなかった。

しかし、いつからかそれとは別に、彼方と一緒に居る未来も視る様になった。

 

それは何故なのか。

そもそも自分が視る予知夢は回避できるのか、できないのか。

 

 

――私は、わたしは……。

 

考えることが多過ぎて、頭の中がぐちゃぐちゃになってしまいそうに感じる由夢。

 

 

そんなとき。

 

 

 

 

 

「あら、お参りですか?」

 

 

 

 

 

由夢は、後ろから声を掛けられ、考えるのを止めて慌てて振り返ると、そこには巫女服の女性が佇んでいた。

 

 

「あぁー、えぇっと、その……」

 

何も考えずに来てしまったとは言い辛く、戸惑う由夢であったが、巫女服の女性は由夢の顔を見て驚きの表情を浮かべていた。

 

 

「もしかして、音夢様のご親戚ではありませんか?」

 

「えっ……あ、はい。 わたしのお婆ちゃんですが」

 

音夢という名前を聞いて、一瞬戸惑ったが、自身の祖母の名前だと気付き、頷く。

 

その返事を見て、まぁ、と両手を合わせながら嬉しそうな声を上げる。

その女性は、由夢に笑顔を浮かべ、自身のことを伝えるのであった。

 

 

 

 

 

――私は胡ノ宮 環と申します、と。

 

 




なるべく前書きは入れない方が良いかなと思っていたのですが、今回は間が空いたこともあり、記載しました。

無印をプレイして、私としてはD.C.のキャラクターは無印もIIも両方好きだなって思いました。
だからこそ、原作はD.C.IIがメインですが、無印のキャラクターが今後も登場するかもしれません。

もし、無印のキャラクターが登場するならどういう形で登場するだろうか。
そう考えたりするのはやっぱり楽しいですね。

ありがとうございました。
また、見ていただければ幸いです。

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