初音島物語   作:akasuke

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キャラやストーリー、歌など。
色々と魅力が多いD.C.ですが、他にもBGMもD.C.作品は良いものが多いです。

基本的に、D.C.作品ではゲームの中でストーリーとは別に、本編で流れる曲やBGMが再生することが可能です。

学生時代やいま現在も、自宅でBGMを流しながら作業したりします。

わたしとしては、場面が頭に浮かんでしまって思わず泣きそうになるBGMも。

きっと、みなさんが好きなBGMもあるのではないでしょうか。

それでは、本編をどうぞ。


episode-12「必要なのは」

「最近変わりましたね」

 

朝の芳乃家。

居間で食事をする最中、音姫は自分が内心で思っていたことを口にした。

 

 

「んん、なんのことー?」

 

音姫の言葉に、出し巻き卵を食べていたさくらが疑問を投げ掛ける。

そんな彼女に、さくらさんのことですよ、と音姫は返した。

 

 

「ほら、最近まではこうやって一緒に朝食たべたりも滅多になかったじゃないですか」

 

夕食もですし、と言葉を付け足す。

実際、さくらは最近までは音姫たちが学園へ向かうタイミングで起きることが多く、一緒に食べる機会が少なかった。

 

夜も同様で、音姫や由夢が夕食を芳乃家で食べる最中に帰宅することは滅多になかった。

 

しかし、ここ最近は朝食や夕食の両方ともさくらは一緒に音姫たちと食べている。

嫌という話ではなく、純粋な興味であった。

 

その音姫の言葉に、そういうことかぁ、と納得した表情を浮かべるさくら。

 

 

「なにかあったんですか?」

 

「んー、なんて言えば良いのかな……思い出した、からかな」

 

「思い出した、ですか?」

 

「うんっ!」

 

わたしの願いをね、とさくらは満面の笑みを浮かべて答える。

 

ここ暫く、義之と一緒に朝食や夕食をとり、その日起こったことを話した。

そんな楽しい団欒の一時を過ごし、さくらは気付いたのだ。

 

これが私が望んでいた願いなのだ、と。

 

家族が欲しいと願った。

実際に義之が現れて、さくらは喜んだ。 

しかし、魔法の桜に不具合があるのを知り、それを調整する為に日々遅くまで作業をしていた。

 

義之と一緒にいれる時間は少なかったが、仕方ないのだと思った。

 

しかし、違ったのだ。

母さんと呼んでくれて、心配だと気遣ってくれる義之。

そんな義之―家族との、他愛もない日常が、何よりもさくらが求めていたものなのだ。

 

それを疎かにすることなどあってはいけない。

 

それに、と。

さくらは音姫に向けてた顔を義之の方に向け、笑みを浮かべる。

義之はそんなさくらに照れたようにして笑う。

 

 

――息子のお願いを叶えられないなんて、母親失格だもんね

 

一緒にご飯を食べたいと言ってくれた義之のお願いは、さくらにとって一番優先するべきことなのであった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

さくらとの会話が終わった後のこと。

そういえば、と音姫は思い出したかの様にして喋りだした。

 

  

「変わったといえば、由夢ちゃんもだよね」

 

今まで黙々と朝食をたべていた妹に視線を向ける音姫。

さくらだけでなく、由夢も変わったなと思っていたのだ。

急に話題にあがった由夢はびっくりした表情を浮かべる。

 

 

「え、わたしも?」

 

「そうだよー、朝も早くから自分で起きる様になったし、夜も何だか帰るの遅くなったよね」

 

何かあったの、と質問を投げ掛ける音姫。

その問いに、慌てたように手振りを加えながら由夢は答えた。

 

 

「や、たまたまですよ。 帰るのが遅くなったのも友達と話してたりして遅くなっただけですし」

 

「……ほんとにー?」

 

目を細くして懐疑的な表情を浮かべる音姫に、必死になって否定する由夢。

そんなふたりを見て、義之は由夢の帰りが遅い理由を思い出し、話し出す。

 

 

「杉並から聞いたんだけど、初音のて――あちぃっ!」

 

「あー、てがすべったー」

 

初音の手伝いをしてるんだよな、と言おうとした義之に、由夢の湯呑みの熱いお茶が降り掛かった。

 

あつっ、顔が、かおがっ!?

ちょっ、弟くん大丈夫なのっ。

義之くん、タオルタオルー!

 

義之と音姫とさくらが慌てたように動き出す。

その姿をみて、話が途中で終わったことに安堵を浮かべる由夢。

 

由夢としては、彼方の手伝いは恥じることでは何らないと思っている。

しかし、音姫には言えない理由があった。

 

自分のポケットに入れていた、ある手帳を取り出す。

その表紙には、こう記載されている。

 

『非公式新聞部 仮部員用マニュアル』

 

彼方の助手をすることを嗅ぎ付けてきた杉並から渡された手帳である。

初めは要らないと断ろうとした由夢だが、その手帳には彼方が利用する部屋までの地図も記載されていた。

 

色々と悩んだ末に由夢はその手帳を受け取り、結果としては非公式新聞部の仮部員となったのだ。

 

 

――お、お姉ちゃんには流石に言えない……

 

音姫が所属する生徒会に敵対する組織に仮としても入っていることは言えるはずもなかった。

 

内心で謝る由夢と、どたばた慌てる義之たち。

 

芳乃家の日常はこうして始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

episode-12「必要なのは」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、初音くーん!」

 

昼休み。

 

学食で同じクラスの友人と食事をしていた彼方は、途中で別れ、第二執筆室に置き忘れたものを取りに行こうとしていた。

 

その最中、自身の名前を呼ばれて振り返ると、そこには小恋ともうひとりの女の子がいた。

 

 

「あれ、月島さん?」

 

「もー、ようやく見つかったよー」

 

探したんだから、と息を整えながら話す小恋。

杏や茜、渉などのメンバーからはすれ違う際に話し掛けられることが多かったが、小恋ははじめてなので、彼方は目を丸くする。

 

そして、彼方は小恋に尋ねた。

 

 

「何か用事でもあったんですか?」

 

「うん、ちょっと友達を紹介したくて」

 

ほらっ、ななか、と小恋は後ろに隠れていた人物を前に押し出す。

その人物は急に押し出され、慌てたような挙動をしてから、彼方の方に視線を向けた。

 

髪を黄色のリボンで束ねた、ツインテールの少女。

桜色の髪。小恋に呼ばれた、ななかという名前。

 

そこから、彼方は目の前の少女が誰であるかを悟った。

 

 

「あなたは……白河 ななかさん、ですよね?」

 

「あの、そうです…その、はじめまして」

 

彼方に問いに頷き、そして緊張した様子でお辞儀するななか。

 

白河ななか。

風見学園のアイドル的な存在である。

男子からの人気は絶大だ。

 

直接顔を合わせるのが今回で初めてであるが、同じクラスの男子からはよく口にでる名前でもあった。

 

 

――そっか、彼女が……

 

彼方は白河ななかという人物を知っている。

それは、周りの男子生徒の話を聞いて、ということでもあるが、その前から知っている存在でもあった。

 

前世的な意味でも然り。

それ以外でも然り。

 

義之たちと知り合ったことにより、いつか会う機会があるのかもしれないという気持ちはどこかにあった。

 

そして、その際に考えるべきことがあった。

どう行動するべきか、である。

 

 

彼方は前世と呼べる記憶があり、それにより『ダ・カーポ』と呼ばれる作品を知っている。

初音 彼方として生きて時間が経ったことにより大分知識は曖昧なところがある。

 

しかし、ある出逢いを機に、

白河ななかと、その願った能力について思い出したのだ。

 

読心というのがどこまで知られるのか、彼方はあまり分からなかった。

前世や今のことを知られる可能性がある。

 

しかし。

しかし、それでも。

 

もし彼女が桜の願いで困っていたとき、自分が出来ることは何なのかを考えた。

 

そして決めたのだ。

 

 

――わたしが、やるべきことは

 

ななかと知り合ったとき、彼方は自分がどう行動するのかを。

伝えなければいけないことも。

 

 

「はじめまして、初音 彼方です」

 

彼方は挨拶をし、

そして、ななかに手を差し出した。

差し出される手に、ななかは驚いたような表情を浮かべる。

 

そんな彼女をみて、彼方は笑みを浮かべながら、言葉を付け足す。

 

わたしの伝えたいことは、握手してくださればわかります、と。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

――な、なんで……

 

ななかは戸惑っていた。

会うことを決意し、小恋に紹介してもらい、彼方と面を合わせることが叶った。

 

しかし、彼方の行動は、ななかが全く予期せぬものであったのだ。

 

目の前に差し出される、彼方の手。

 

ななかは心を読む為、相手の手に触れたりすることが多い。

しかし、それはあくまで自分から行動して、である。

 

確かに下心を持つ男子生徒が、ななかに触れたがろうとして来たときはあった。

 

だが、今回のように、挨拶として握手を求められるのは初めての経験だった。

 

それだけではない。

 

 

――わたしのこと、知ってるの……?

 

彼方が手を差し出す際の言葉。

 

『わたしの伝えたいことは、握手してくださればわかります』

 

その言葉は、ななかには自分の能力のことを知っての言葉に思えた。

 

何故、知っているのか。

いや、それだけではない。

 

知っているのだとしたら、何故、自分に手を差し出してくるのだろうか。

知ってて、心を読んでも良いと、言うのだろうか。

 

 

――でも、怖いよ

 

何もかもが初めての経験で。

初めての経験が、怖くて。

 

そんな風に悩むななかを、小恋はどこか心配そうに見つめ、彼方は笑みを浮かべながら待つ。

 

そのふたりの様子を見て意を決したななかは、彼方の差し出した手に近づく。

 

そして彼方の手を握った。

 

 

 

彼方の手を通して伝わってきたのは―――

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

「な、なにがあったの」

 

わたし行かなきゃ、と走り去るななかの後ろ姿を見送りながら、小恋は呆然とした表情でつぶやく。

 

彼方にななかを紹介し、握手をふたりがして、その後に走り去るななか。

 

一部始終を目撃していた筈の小恋だが、それでも何が何だか分からなかったのだ。

 

 

「彼女は、会いに行ったんだと思います」

 

まさか、今から行ってしまうとは予想外でしたが、と笑いながら話す彼方。

 

小恋は、その話に尚更疑問が増えてしまう。

 

 

「だれに…それに、ななかに何を渡してたの?」

 

ななかが去る前に、彼方は手帳を取り出し、何かを書いたページを破って渡していた。

 

それについて質問する小恋に、彼方は答えた。

 

 

「白河さんが、会うべき人です」

 

「ななかが、会うべき、ひと?」

 

「はい…きっと、彼女のことを一番わかってあげられる人。 それは――」

 

彼方は、ななかが悩んでいるのであれば、解決するのは自分の役目ではないと思っていた。

 

彼女をちゃんと理解してあげられる人。

それは――

 

彼方は最後に答えた。

 

 

 

 

 

――白河 ことりさんです、と。




D.C.作品のなかで、白河ことりとななかの血縁関係が述べられる場面がありました。

ななかは、ことりの父親側の従姪孫であるとのことです。
文面だけだとイメージが難しかったのですが、図とかに自分でしたとき、結構遠いなと思いました。

実際にその血縁関係の人の名前や、会ったことをあるもんなのか。
自身の家族や親戚に尋ねたのですが、顔も知らないとの人が多かったです。

実際に同じ初音島に住んでいても互いのことを知らないんだろうな、と考えました。

こういう、物語を実際に当てはめて考えたりするときは何だか楽しいです。

また見ていただければ幸いです。

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