そらのおとしもの 人と天使達の非日常   作:龍姫の琴音

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今回はかなり長いです
今回で原作は最終回ですが次の話がこの小説の最終話になります(文章の長さによっては二話に分割します)


第五十九話願い

シナプスには神殿のような造りの建物が建っておりシュウはその神殿に入り奥へと進んでいくと神殿の奥の部屋にミーノスが座っている

 

「来た・・・か・・・」

 

かつてのイカロス達のマスターのミーノスと今のイカロス達のマスターのシュウ

二人のマスターが今、対峙する

 

「こうして会うのは初めてだな。ヒムラ=シュウ。よくぞここまで私を手こずらせてくれたものだ褒めてやる。だが・・・」

 

ミーノスの右手に粒子が収束されていくと槍が形成されると穂先にはエネルギーが収束されていく

 

「たかが地蟲(ダウナー)の分際でこの私の前に現れて何かできると思ったか!たかが地蟲(ダウナー)の分際でこのシナプスの王である私に敵うとでも思ったか!」

 

穂先にエネルギーの収束が完了するとミーノスの足元に亀裂が走る。そこまで膨大なエネルギーが穂先に収束されていることが分かる

 

「死ね!ヒムラ=シュウ!これで・・・終わりだ!」

 

渾身の力を込めてミーノスはシュウめがけて槍を投擲する

 

バキィィィン!

 

甲高い音響き渡るとシュウの前にミーノスが投擲した槍がカラン・・・カラン・・・と音を立てて落ちた

 

「馬鹿な・・・何が起きた!?」

 

自分の目の前にいるのはシナプス人より下等な地蟲(ダウナー)。自分たちのように羽がなく地を這うだけの存在のはず。しかし、その下等な存在のはずの地蟲(ダウナー)に自分の攻撃を防がれた事にミーノスは激しく動揺する

 

「たかが地蟲(ダウナー)にポセイドンの槍を弾く力など・・・」

 

その時ミーノスはシュウの手に握られているものに目がいった。それはシュウの手の中にすっぽりと収まっており光が周囲に広がっている

 

「それは・・・可変ウィングの(コア)!バカな!たかが地蟲(ダウナー)に可変ウィングの(コア)を使えるはずが・・・」

 

「可変ウィングの(コア)だと・・・。これは、そんなちゃちなもんじゃねぇよ。これは・・・あいつ等の、心だ!

てめぇが散々踏み潰してきたあいつ等の心だ。死ぬ寸前にしか笑えねぇ・・・そんなあいつ等の心だ!」

 

シュウの心に応えるかのように可変ウィングの(コア)はシュウの手の中で大きな力となっていく。まるでイカロス達がシュウに力を貸すかのように

 

「あいつらの痛みを思い知れ!この・・・くそ野郎がぁぁぁ!」

 

握りしめた拳で思いっきりミーノスの顔面を殴るとミーノスは後方に思いっきり吹き飛び殴った衝撃がシナプス全体に響き渡った

 

「がはっ・・・」

 

血を吐きながらミーノスは近くに転がっている槍を取り杖のようにして自分の身体を支えながら身体を起こす

 

「・・・」

 

「なぜ、止めを刺さん。今の私に止めを刺す事など造作もないはずだ。何故だ!?」

 

「・・・ここには何にもないな。こんな退屈な所にずっといたら性格の一つもひん曲がるよな。でも同情はするがお前を許す事は出来ない

だからさ、お前も一度地上に来てみろよ。シナプスの王としてではなくただのミーノスとして。そうすればきっと楽しい事もあるかもよ」

 

おそらくミーノスがこうなってしまったのはミーノスが空の王であるからだと思う

王としてシナプスを守っているのに臣下であるシナプス人はシナプスを捨てて夢を見ながら地上で暮らしている

ミーノスは空の王だからシナプスを捨てることが出来ずに皆が眠っていくのをただ見ている事だけしか出来ない。それが悔しかったのだろう

 

「知ったような口を・・・きくな!」

 

ミーノスは自分の心臓に自ら槍を突き立てて絶命した

 

「・・・王らしく死ぬか・・・その心意気だけは尊敬するよ」

 

神殿を出てシュウはシナプスにある石板(ルール)の前に行くとそこには誰もいなく眼鏡が落ちていた。シュウははそれが誰のものかすぐに分かった

 

「部長の眼鏡・・・やっぱりここにいたんですね部長」

 

「ここまで来ましたね緋村君」

 

フワフワと浮かぶ機械に乗ってダイダロスがシュウの元にやって来た

 

「久しぶりだなダイダロス・・・いや、見月そはらの本体」

 

「!」

 

シュウの言葉にダイダロスは驚き口が開いてしまった。その顔を見てシュウは確証を持ち話を続ける

 

「どうしてわかったって顔だな。最初に違和感に感じたのはお前と会った時だ

あの時、お前は智樹の事をトモ君と呼んでいた。まるで昔から知っていたかのような口ぶりだった

 

あの時は空から見ていたからと思っていたが少し前に智樹達と一緒に過去に行った時に昔の智樹が泣いていたのになぜ泣いているのか分からないと言った後に頭が痛くなった。まるで日和が死んだ時のように

 

そこで一つの仮説を立てた

見月そはらとはダイダロス、お前が地上での姿であり見月が死んだ事によりお前は目覚めた

だが、その後にお前は見月の複製を造り地上に送った。だから俺達は見月そはらを覚えている。エンジェロイドを造ったあんなだからこそ出来た芸当だ」

 

「凄い・・・そこまで分かっているなんて」

 

「まぁ、これぐらいはアニメなんか見ていれば予想はつく。ダイダロス、一つだけ聞かせてくれ。どうしてシナプスの人々は眠っているんだ?」

 

「そうですね。お話ししましょう。私達シナプス人は緋村君達より遥か昔から存在する文明」

 

「遥か昔の文明・・・なるほど。そう考えれば納得だな」

 

世界には今の科学では証明できない事が沢山ある

例えばエジプトのピラミットがいい例だ。あのピラミットの建造は今の数学や建築の知識を使っても建造できないと言われている

 

「私達は貴方達がいうビックバンより前に存在しています。そもそもそのビックバンを起こしたのもこの石板(ルール)によって引き起したものなの」

 

「何故シナプス人はそんな事を?」

 

「昔は私達もあなた達と一緒っだったの

獣から進化して火を覚え少しずつ発展させていった。あなた達と違うところといったら羽が生えている事と夢を見ない事ぐらい

永い年月をかけて少しずつ科学は進歩していった。まず、私達は不老不死の体を手に入れた。でも・・・それが間違いの始まりだった

 

次々に不自由がなくなったわ。叶わないものを探す方が難しくなるぐらいに。そして私は遂に石板(ルール)を完成させた。シナプスの人々は大いに喜んでくれたわ。でも、それは最初の内だけだった」

 

「・・・」

 

なんとなと予想は出来る。人間というのは目的を完遂するために行動し成功すれば次の望みを求める。だが、永遠という永い時を生きていればいつかは欲望自体がなくなっていき人は生きる意味を失う

 

石板(ルール)の完成で叶わない願いは無くなりシナプスの人々は生きる意味と希望を失いシナプスの人々は死を選び次々と自らの命を絶っていったわ」

 

「普通なら自然年を迎えるのに不老不死のせいで自ら命を絶たなければならないっていう事か」

 

「そう、人々は何度もこの石板(ルール)に願ったわ。新しい世界が欲しい。新しい世界にはきっと希望があるはずだと信じて・・・」でも、何度も世界を作り替えてもそんなものは存在しなかった。そして次第に人々は歪んでいったわ。なにかを作りそれを虐げるのに快楽を覚えてしまったの」

 

「はぁ!?」

 

いくらなんでも歪み過ぎだろう・・・でもそう考えるとミーノスの性格が歪んでいるのはそのせいもあるのかもしれないな

 

「人間という存在も私達が造ったの。翼もなくただ地を這うだけの人間を眺めてときにはエンジェロイドで人間を殺したりして楽しんでいた。でも・・・人間達は私達の持っていないものを全て持っていたわ」

 

「それがシナプスの人々が眠っている理由か」

 

「そう、最初は虐げるはずだった人間をいつしかシナプスの人々は羨ましく思い始めた

だって人間達は短い人生の毎日を一生懸命に生きて毎日が楽しそうだった

特に人間の見る夢というのは私達の探していた『不自由』そのものだった。

 

だからシナプスの人々は眠ったわ。眠って人間として夢を見る事でしか不自由を得られないから・・・

 

私は、みんなを幸せにしたくてエンジェロイドや石板(ルール)を造ったのに・・・それが逆にシナプスの人々を不幸にしてしまった。もうどうしたらいいか分からなくなって私は空の女王(ウラヌス・クイーン)の封印を解き地上に放った。きっと何かが変わると思って」

 

「そして俺がイカロスを拾ったってわけか」

 

「そう、ゴメンね。私達の都合に付き合わせちゃって・・・」

 

「気にするな。俺はお前に感謝しているんだぜ。お前のおかげでイカロス達に出会えてそして日和にも再会できた。全部お前の技術のおかげだ。少なくとも俺はお前に感謝しているぜ。ありがとうなダイダロス」

 

今までずっと自分の技術が人を不幸にしてしまっていたと思っていたのにそれなのに礼を言われたことにダイダロスの心は救われたように感じた

 

「ありがとう・・・そんな言葉を言われたのは何十年ぶりかしら・・・」

 

「さてと、じゃあサクッと世界を救うとしますか。ダイダロス、この石板を止める事は出来るのか?」

 

「それが・・・出来ないの。願いを止めるには新しい願いを上書きするしかないんだけど・・・守形先輩が書き込んだ願いで最後だったの」

 

「最後?」

 

石板(ルール)を見て。最後の行まで埋まっているでしょう。こうなったらもうこの石板(ルール)はもう使えない。手としては新しく作るしかない」

 

「そうなった場合どれぐらいかかる!?」

 

「緋村君が何億回とおじいちゃんになっても足りないぐらい」

 

「・・・そうだ!だったら俺に不老不死の薬を飲ませてそのときまで待てば・・・いや、無理か。そうしている間にここには新しい世界が誕生してしまう

俺の世界を復活させるためにいまある世界を壊すのは横暴だ

くそっ!何か・・・何か他に手はないのか!?」

 

「手なんて・・・」

 

その時ザザザザと音が聞こえると守形先輩が書き込んだ願いが消え始めた

 

「ウソ!誰かがプログラムを書き換えたですって!そんな芸当いったい誰が・・・!?」

 

ダイダロスが驚くがシュウにはこれが誰の仕業かすぐにわかった

 

「そうだよな・・・こんな芸当ができるのはあの人しかいない。ありがとう部長」

 

感謝の気持ちを部長に述べるとシュウはチャンスを逃さないようにダイダロスに質問する

 

「これで、願いが叶うんだろう。どうすればいい!?」

 

「そのまま石板(ルール)に手をつけて願えば何でも叶えてくれるわ」

 

「そうかい。じゃあ石板(ルール)よ。ちょっと俺の願いを叶えてくれよ。この世界を元通りに」

 

シュウの願いにより世界は元の姿を取り戻した。イカロス達も日和もみんなが生き返りカオスはシュウが生きていた事に喜び何度もシュウにごめんなさないと言いながらシュウの胸の中で泣いた

 

空見町には平和が戻り見月とダイダロスが同一人物がある事をみんなに打ち明けてダイダロスも地上で暮らす事になった

 

「世界は元通りになった。お前も少しは生き方を考え直せよミーノス」

 

きっとミーノスやハーピー達も蘇っているはずだ。失う悲しみを知った今のミーノスならきっと同じ過ちをしないだろうと信じてシュウはとりもどした日常をみんなと過ごすがシュウにはある大きな問題が残っていた事を忘れていた


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