そらのおとしもの 人と天使達の非日常   作:龍姫の琴音

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第五十七話幸せ

カオスとアストレアが消えるとその光は地上にいるシュウとイカロスも目視する事が出来た

 

「イカロス、何があったか・・・教えて欲しい」

 

「・・・タイプΔ(デルタ)アストレア、カオス。共に全壊・・・」

 

「アストレア・・・カオス・・・」

 

両手を握りしめ悔しそうな顔を浮かべる

 

「ニンフは・・・無事、なんだよな」

 

「タイプβ(ベータ)ニンフ。ZEUS(ゼウス)」内部に到達」

 

イカロスは何も言わないがニンフは今、絶望的な状況に置かれていていた

ZEUS(ゼウス)に侵入すると中にはメラン達がZEUS(ゼウス)を警護しており電子戦用のエンジェロイドであるニンフでは歯が立たない

 

「はぁ・・・はぁ・・・。まったくついてないわね・・・」

 

壁に背をつけてもう駄目だと観念するとメランの動きが止まりメラン達の後ろから一人の男がやって来た

 

「久しぶりだなβ(ベータ)

 

「マス・・・ター・・・?」

 

ミーノスが現れたのに驚きニンフは彼をマスターと呼んでしまった

 

「今まで散々裏切ってくれたな・・・だが、それももう意味をなさない。なぜならまもなく世界は造り直される。もはや何もかも意味の、ない事だ」

 

「意味がなくなんか・・・ない!」

 

「何?」

 

「私は・・・幸せだった」

 

壊れかけの体を無理に動かしながらもニンフは立ち上がる

 

「みんなに出会えて・・・シュウに出会えて・・・幸せだった。幸せ・・・でした」

 

ニンフは変わった。今までは自分が生きるために何でもやった。何をされても耐えて耐えて・・・時には友達だった小鳥を殺して・・・自分は今まで生き残ってきた

 

そんな自分が幸せになる資格なんてないとずっと思っていた

 

でも、シュウやみんなに出会ってインプリンティングが解けてから毎日が幸せだった。毎日、他愛のない事で笑ったりして毎日が賑やかでそんな日常が大好きで大切だった

 

「フン、それがどうした。そのボロボロになった身体ではハッキングもパラダイス=ソングも満足に撃てまい。非力で壊れかけのお前がどうやってこの強固なZEUS(ゼウス)の心臓部を破壊する?」

 

悔しいがミーノスの言う通りだ。今の自分の身体では満足に攻撃もハッキングも出来ない。今の自分では心臓部を破壊するなんて不可能に近い

 

β(ベータ)、もう一度・・・私のエンジェロイドに戻る気はないか?」

 

「え・・・?」

 

「今更かもしれない。だが、もう一度、もう一度だけでいい。戻ってきてくれβ(ベータ)

 

「・・・」

 

突然の申し出に驚きニンフは目を見開いたがすぐに顔を伏せミーノスから視線を外し数秒が流れると

 

『インプリンティング開始』

 

ニンフの首についている首輪から鎖が形成されていきミーノスの手に巻き付きインプリンティングが完了するとミーノスは嬉しそうな顔をする

 

「これからは・・・」

 

「ク・・・クク・・・クククク」

 

β(ベータ)?」

 

ニンフは不敵な笑みを浮かべながら起き上がる

 

「なるほどね。起爆コードはこう、なっていたのね」

 

ニンフの首からはピッ・・・ピッ・・・と音が聞こえてくる

 

「!」

 

「覚えてる?あんたが私につけた爆弾」

 

「やめろ・・・やめろβ(ベータ)・・・」

 

「勿論覚えているわよね!でも以前のものとは違う」

 

β(ベータ)よせ!」

 

「そんな命令聞かない!私の・・・私のマスターはもういるのよ!インプリンティングみたいに目には見えないけどどんなことがあろうと切れる事もなく変えの効かないとっても大切な絆っていうのが私にはある!

 

私のハッキングで爆弾を進化させておいたわ。このZEUS(ゼウス)の心臓部を粉々に出来るぐらいにね!これでアンタ達も道連れよ!」

 

自爆を阻止しようとメラン達がニンフに飛びかかる

 

「遅い!」

 

しかしそれより早くニンフは爆弾を起動させる

ニンフの目に必死にニンフに呼びかけるミーノスの姿が見えた

 

「あぁ~結局シュウに好きって言えなかったな・・・でもシュウにはアルファーがいるんだよね

それでも、もしシュウが私を選んでくれたらきっと・・・これ以上の幸せはないんだろうな・・・

ゴメンねシュウ。約束、守れなくて。ゴメンね。後は・・・頼むわよシュウ」

 

後の事を全てシュウに託しニンフは笑って自爆した

 

爆発が起こりシナプスから煙が上がる

 

「何が・・・起きたんだ?」

 

ZEUS(ゼウス)破壊・・・」

 

「じゃあニンフの奴やったんだな!」

 

「ですがニンフは・・・」

 

「まさか・・・あいつも・・・」

 

「はい・・・」

 

これで残ったのはシュウとイカロスだけだ。シュウは空を見あがて決意する

 

「イカロス。俺を、シナプスに連れて行ってくれ!」

 

「はい」

 

イカロスに抱きかかえられシュウは空に上がり地上を見ると既に地球の殆どが消滅しておりシュウ達が居た場所も消滅してしまった

 

「マスター、少しだけお話してもよろしいでしょうか?」

 

「こんな時に何だ!?」

 

「私がまだ、シナプスにいた頃の話です。遥か昔に私はマスターの命令で地上を攻撃した事があります。その時、私は原因不明の動作不良に陥りやむなく初期化して地上に墜落しました

その時、たまたま生き残っていた人間とインプリンティングしてその人間の命令でシナプスを逆に攻撃した事がありました」

 

「なっ!」

 

「当時シナプスにはZEUS(ゼウス)のような防空システムがありませんでした

シナプスに存在するわずかな兵器とニンフ、ハーピー、アストレアが四人がかりでやっとの思いで私を止めました

しかし、当時最強のエンジェロイドであった私の攻撃はシナプスを崩壊する一歩手前まで破壊しました

それからです。私のコアにある装置が付けられました」

 

その時、あることに気付いた。イカロスの羽に炎のようなものが灯っているのに

 

「おい・・・なんだよ。その炎は・・・・」

 

「一種の自爆装置です。私がシナプスに許可なく近づくと私の体は・・・燃え尽きます」


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