そらのおとしもの 人と天使達の非日常   作:龍姫の琴音

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第五十三話二度目の別れ

家を出てシュウはイカロスとニンフを連れて部長のいる河原に向かいアストレアはオレガノのいる会長の家に向かった

 

シュウ達が河原に着くと部長は釣りをしていた

 

「どうしたシュウ?」

 

「実は・・・」

 

シュウは部長に今日の朝に起きた出来事を話しシナプスにいるダイダロスの元に行くという計画を話した

 

「なるほど。なら俺も行こう」

 

「ありがとうございます」

 

「シュウ!連れてきましたよ」

 

丁度アストレアがオレガノを連れて合流出来た

 

「アストレア様から大体の事情は聞きました。シュウ様のために微力ではありますがお協力させていただきます」

 

「ありがとうオレガノ」

 

オレガノから話を聞こうとした時シュウの携帯が鳴り見ると日和からの着信だ

 

「もしもし」

 

『シュウ君!カオスちゃんが急に苦しみだし・・・きゃぁ!』

 

「日和?おい、日和!」

 

「マスター、どうかしましたか?」

 

「日和から電話があったけどそれが突然切れた」

 

「ヒヨリに何かあったの!?」

 

「わからない。だけどカオスが急に苦しみだしたって。イカロス、急いで家に戻るぞ」

 

「はい」

 

「なら、シナプスは俺が行こう。ダイダロスには俺から話しておく」

 

「ありがとうございます」

 

部長に後の事を任せてシュウ達は日和の元に向かった

 

「くそっ!なんか嫌な予感がする。イカロス、俺の事は構わず全速力で飛んでくれ」

 

「はい!」

 

羽を羽ばたかせ一気に加速シュウの体にGがかかる。息が出来なくなり苦しいがそれ以上に胸の中にある違和感が気になってしまう。あの時の・・・ハーピーの時のような違和感が拭えない

 

(頼むから無事でいてくれよ日和!カオス!)

 

数分で家に到着し家に入ろうとした時、庭に二人の姿を見つけた

何をしているのか分からなかったがその時、シュウのの中にあった嫌な予感は確信へと変わった

 

「日和!」

 

シュウが叫ぶがすでに遅かった。日和はカオスの刃の羽を自らの胸に突き刺し力なく地に倒れた

 

急いで日和に駆け寄り抱き起すが既に日和は息をしてなくシュウの手の中で日和の体温は急速に無くなっていく

 

「おねぇ・・・ちゃん・・・。いや・・・いや・・・」

 

日和は自分の中にある電子戦用のプログラムをカオスに食わせるために自分の命を捨ててまでカオスを救おうとしたんだ

 

「マスター!カオスの様子が!」

 

カオスは頭を押さえて日和が死んだ事を拒絶するように否定の言葉を何度も呟いている

 

「ニンフ、今のカオスの状態は!?」

 

「ダメ・・・日和のプログラムを食べて少しは良くなったけど日和が死んだ事に拒否反応を示している。このままじゃ暴走してカオス自体が壊れる」

 

「やむ得ない・・・イカロスとアストレアはカオスの動きを止めろ!ニンフ、お前の力でカオスの情報処理を助けながら可変ウィングの(コア)のデータを削除しろ」

 

「データを削除するって危険よ」

 

「それは重々承知だ。部長がシナプスでダイダロスから対策案を持ってきてくれるそれまでの時間稼ぎだ。少しでも可能性があるなら今はこれに賭けるしかない」

 

「わかった!素粒子ジャミングシステムAphrodite(アフロディーテ)展開」

 

ニンフがハッキングを開始しカオスがそれを跳ね返そうと苦しみ暴れ出し周囲に刃を振ったり黒炎を飛ばす

 

「アルテミス発射!」

 

イカロスは黒炎をアルテミスで相殺しアストレアは羽の刃をパンチや蹴りで弾く

 

「よし、ニンフ、どれぐらいで完了する?」

 

「五分あればある程度は出来るけどそれ以上はカオスに負担が大きくかかる。強制的に冷却モードにして動きを止めるわ」

 

「そうか。イカロス、アストレア。五分だけ耐えてくれ」

 

「はい!」

 

本当ならニンフの周りをイージスで囲みたいがイージスを張ればニンフのハッキングの邪魔になる。危険だがこれが今できる最善の策だ

 

「ハッキング、80%成功。あと少し・・・」

 

「よし、そのまま頼むぞニンフ」

 

「二人共、あと少し頑張ってくれ!」

 

「はい!」

 

「任せて!」

 

「あぁ・・・あぁぁぁぁ!」

 

カオスが悲鳴を上げると手の中に黒炎を収束させていく

 

「マズい!イカロス!イージス全力展開!」

 

「イージス展開」

 

「キマイラはっしゃ!」

 

イージス展開と同時にきまいらが発射されイージスがキマイラを受け止める。全てを受けきりイージスを解除するがさきほどの衝突で煙が生じカオスの姿が見えない

だが二人はレーダーでカオスの姿をきちんと確認しているはずだ

 

「これは・・・アンチシステム!」

 

イカロスが何かに驚くと羽の刃が煙の中から跳び出しイカロスとアストレアがぶつかり吹き飛ばされた

 

「イカロス!アストレア!」

 

煙が晴れると目の前にカオスが三人いた。カオスの持つ知覚アンチシステムを使ったんだ

分身が消えて一人に戻ると刃がニンフに向けられ放たれた

 

「ニンフ!」

 

「ニンフ先輩!」

 

イカロスとアストレアが逃げるように言うがニンフはハッキング中のため動けない

 

「ダメ・・・」

 

もう無理だと思い目を閉じるが一向に自分の身体に痛みが来ない

 

恐る恐る目を開けるとシュウがニンフの前に立っている

 

「シュ、ウ・・・」

 

シュウの体をカオスの刃が貫き血が地面に落ちていき地面を赤く染めていく

 

「おにぃ・・・ちゃん」

 

刃を抜くとシュウは一歩、一歩とカオスに近づく

 

「ごめん、な。カオ・・・ス」

 

頭を撫でてやろうと手を伸ばすがその手はカオスに触れる事無くドサッ!と倒れる

 

「マスター!」

 

「シュウ!」

 

「しっかりしなさいよ!シュウ」

 

みんながシュウの心配をしている中カオスは自分がした事を受け止められないでいた

 

自分は日和を殺しそしてシュウも・・・

 

「いやぁぁぁぁ!」

 

全てを拒絶するように悲鳴を上げるとカオスのパンドラが発動しカオスの体が子供から大人に変わりその場から飛んでいった


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