そらのおとしもの 人と天使達の非日常   作:龍姫の琴音

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第五十二話願い

シュウ達が過去に時間旅行を終えてから数日後シュウの家では事件が起きていた

それはカオスが熱を出したのだ

 

「どうだニンフ?」

 

カオスは苦しそうに布団の上で横になっている

 

「原因はメランの襲撃時に可変ウィングの(コア)を大量に取り込んだことによる負荷が来たんだと思うわ」

 

「ニンフ先輩、あれって結構前でしたけどどうして今頃?」

 

「情報処理の限界を迎えたのよ

可変ウィングの(コア)は一つだけでもかなり強大な力を秘めている

それを未完成といえど一度にあんなに大量に体に取り込んだら体が持つ筈はない

 

でもカオスは長い時間をかけてゆっくりと可変ウィングの(コア)を情報処理を行い自分の身体に取り込んでいった

 

でも情報処理も取り込む体の両方が限界を迎えてカオスは今オーバーヒートのような状態になっているのよ」

 

「じゃあニンフさんのアフロディーテを使えば」

 

「それは無理よヒヨリ。カオスの情報処理を助けたとしてもそれを取り込む体が既に限界の状態

情報処理を手伝えば確かに少しは楽になるけど解決にはならない。根本的に解決するには情報処理を助けるのとカオスが取り込むための新しい容量が必要になるの」

 

「えっと・・・つまりどういう事なのシュウ君?」

 

「カオスをパソコンに例えて話すがまずカオスというパソコンは内蔵している容量が32GBとする

可変ウィングの(コア)というデータを取り込んだことによりカオスの容量の全てがそれで埋まってしまっている

つまり全てを取り込むには外部メモリー、もしくはデータを拡張して32GB以上にデータを取り込めるようにバージョンアップさせなければならないんだ」

 

「じゃあどうしたら・・・」

 

「・・・イカロス、ダイブ・ゲームの装置は部長の所にあるんだよな」

 

「はい」

 

「じゃあ今からダイブ・ゲームでシナプスに行ってダイダロスに会って事情を話して対処法を聞くしかないな」

 

「ですがシナプスにマスター一人で行くのは危険です」

 

「分かっている。だが、やらなければカオスが危ない。俺はカオスをこんな状態で放置するわけにはいかない

イカロス、俺を部長の元に運んでくれ。ニンフは俺達と一緒についてきてくれ。アストレアは会長の家にいるオレガノを連れてきてくれ」

 

「どうしてオレガノを?」

 

「オレガノは居住区には詳しい。あの辺に転移した場合の地形を教えてもらうためだ。頼む」

 

「わっかりました!すぐに連れてきます」

 

「日和はカオスを看ていてくれ」

 

「はい。任せてください」

 

「カオス、少しだけ頑張ってくれよ」

 

シュウ達が行動を開始し残った日和はカオスの看病を始める

 

「今、シュウ君達がカオスちゃんのために頑張っている。だからカオスちゃんも頑張ろうね」

 

それから数分後カオスの体に異変が起き始めた

急に熱が上がりオーバーヒート状態になり苦しみ始めたのだ

 

「カオスちゃん!」

 

「あぁぁぁぁ!」

 

苦痛な悲鳴があがりもう見るからに痛々しい

 

「とりあえずシュウ君に連絡しないと」

 

携帯を取り出しシュウに電話を掛ける

 

『もしもし』

 

「シュウ君!カオスちゃんが急に苦しみだし・・・きゃぁ!」

 

カオスの体から発生している電流が日和にあたり持っていた携帯が電気に当たりショートした

 

「カオスちゃん!」

 

「いたい・・・くる、しい・・・頭が・・・割れ、る・・・」

 

頭を押さえて苦しそうにしている。どうしていいか分からない

 

「カオスちゃん。大丈夫だから」

 

日和はカオスを抱きしめて精神的に安定させようとするが痛みで周囲が見えずカオスは暴れる

 

「やめて・・・いたい・・・いたいは、愛じゃ・・・ない!」

 

「カオスちゃん!」

 

カオスは翼を広げるとそのまま飛び庭に日和ごと飛び出し地面に激突した

 

「いた・・」

 

カオスが怪我しないように日和はカオスを庇い地面に激突したことにより額が少し切れて血が流れる

でも、日和はそんな事を気にする余裕なんてなかった。腕の中では今でもカオスが苦しそうにしている

 

「どうしよう。わたしじゃあニンフさんのようにハッキングなんて・・・」

 

その時、あることに気付いた。ハッキングは出来る。なぜなら自分がエンジェロイドに改造された際にミーノスは日和にとびきりの電子戦用のプログラムを積んでいて今もそれは自分の中にある

だが今の自分ではこのポログラムを上手く使う事は出来ない

 

「自分では使えない。でも、カオスちゃんなら・・・」

 

日和の頭にこの状況を一時的にだが好転させるアイディアが浮かんだ。でもそれはとても危険な賭けでありたとえ成功しても・・・

 

「・・・ふふ」

 

少し考えて自然と笑ってしまった。何故かってそんなのもう答えが決まっているからだ

 

「シュウ君、私は一度死にました。でもあなたに会いと願いエンジェロイドとしてですがもう一度あなたに会えてとっても嬉しかった

 

もう二度と戻る事のないこの場所に戻れて私は、本当に幸せでした。この幸せを手放したくないと思いました

 

いつか、あなたと結婚して沢山の子供達に囲まれて、二人でおじいちゃん、おばあちゃんになってあなたにそっくりな孫を抱くのが夢でした

 

でも私は今、目の前で苦しんでいるカオスちゃんを見捨てる事は出来ません。ごめんねシュウ君」

 

カオスを放しカオスの刃の翼を掴み自分の胸の元にもっていく

 

「おねぇ・・・ちゃん?」

 

「きっとシュウ君が、助けてくれるからねカオスちゃん」

 

日和は自分の手でカオスの刃で自分の胸を貫いた

不思議な事に痛みも恐怖も感じなかった。胸から血が流れ落ち力が抜けて倒れた

 

「日和!」

 

どこからかシュウの声が聞こえてきた。でも、日和は既に目を開ける力すら残っていない

 

(あぁ・・・最後にシュウ君の顔が見たかったな。ごめんねシュウ君・・・でも最後にシュウ君の声が聞けて良かった。本当に良かった)

 

幸せそうな顔をして日和は意識を手放した


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