そらのおとしもの 人と天使達の非日常   作:龍姫の琴音

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第五十一話幼少時代

数秒前に智樹が間違ってシナプスの機械の起動ボタンを押してしまいシュウはそれに巻き込まれ着いた先は・・・

 

「過去か・・・」

 

頭を抱えながら目の前の光景を受け止めようと頑張っている。今、目の前にいるのは恐らく8年前の自分と日和だ

 

「日和、変な人には関わらない方がいいぞ」

 

「でも、何か困っているようだよシュウ君」

 

「あぁ~気にしないでくれ。心配してくれありがとう。君は優しいね」

 

「い、いえ・・・」

 

照れているのか日和はシュウの背中に隠れるとシュウは日和を隠す様に立ち位置を少しずらして日和を見えないようにする

 

(ほぉ~流石は俺だな。対処の仕方がアニメで見たのとまんまだ。確かこの時って姫様を守るアニメにはまっていた気がする・・・

ヤバッ、急にまた見たくなったな。DVD何処にあったかな?)

 

いや、今はこんな事をしている場合ではない。はやく二人と合流しないと

 

「では、俺は急いでいるのでこの辺で失礼!」

 

有無を言わさずにその場から去りシュウはとりあえず智樹の家に向かった

家に到着すると智樹とそはらが家の中に入っていった

 

「おいおい、過去の人間に関わるのは歴史が変わってしまうとかで禁忌なのがお約束だろう」

 

過去に戻る事に関して今まで見てきたアニメや漫画の情報から推察すると過去に戻るには二種類ある

 

まずは過去で起きていた事は既に体験済みの場合だ

この場合は世界には特に何の影響を与える事はない。なぜなら未来の人が過去に行くというのは既に決まっていた運命だからだ

これなら特に影響が出る事はない

 

だがもう一つは違う。もう一つとは未来を変えてしまう危険のあるタイムトラベルだ

さっきのシュウと過去のシュウと日和の出会いを例に挙げるとすれば本来、あの二人はあの場所で未来のシュウに会う事なんてなかった

 

だが出会ってしまった。これにより未来が改変される危険性がある。どのような危険があるかはわからいが俺達のような未来から来た人間は過去の人間には関わっていけないのだ

 

「まぁ、会っちまったなら仕方ない。俺はこれ以上関わらないようにとりあえず身を潜めなければ・・・」

 

「家に何か用ですか?」

 

「え!?」

 

振り返るとそこには智樹の母親である桜井智代がいた

 

(しまった!言ったそばから遭遇!)

 

「いえ、観光で」

 

「こんな田舎で?」

 

「はい。この町には樹齢400年を超える大桜があると聞いたもんで。ですが迷いまして」

 

「大桜ならこの道をまっすぐ行くと神社があるからその隣にあるわよ」

 

「ありがとうございます」

 

一礼してその場から足早に離れる

とりあえず大桜の元にまで行き大桜の根元に座り込む

 

「まさか智樹の母に会うとは焦った~大丈夫かな」

 

「こんな所で何をしている?」

 

「は?」

 

いつの間にかシュウの隣に眼鏡をかけた少年がいた

 

(こいつはまさか・・・部長?)

 

「この桜の木を見るために観光だよ」

 

「そう」

 

素っ気ない返事を返し部長はシュウの隣に座る

 

「一人なの?」

 

「うん」

 

「俺も一人なんだ」

 

「うん」

 

何を聞いても素っ気ない返事しか返ってこない

 

(気まずい・・・そういえば部長の事ってあまり知らないな。でも、人の事を詮索するのは良くないよな。部長ってなにか闇みたいなものを抱えていそうだし・・・)

 

「ねぇ・・・訊いてもいい?」

 

「何を?」

 

「人生って楽しい?」

 

「お前、子供のくせに生意気な事を訊くな。子供は普通はそんな事を考えずに毎日が楽しいんじゃないのか?」

 

「そんな事、ない」

 

「まぁ、人生ってのは色々あるんだ。苦しい事も楽しい事も全部ひっくるめて人生だ。この先にも色々な苦悩がある。でも、どんなに苦しい事があっても終わらない苦しみなんてない

いつかは終わりが来る。不幸が終わりその先にあるのはきっと新天地もしくは新大陸って言うんだろうな

 

「新大陸・・・」

 

「そう、そこにはきっと幸せがある。もし、今が苦しとしても生きていればなんとかなる。それが人生の先輩としてのアドバイスだ」

 

それだけ言うとシュウはその場から去っていった

 

次第に日が沈み始めた頃に再び智樹の家の前に行くと家から智樹とそはらが出てきた

 

「ようやく合流出来た」

 

「シュウ、お前まで来ていたのか?」

 

「お前がボタンを押さなければこうはならなかったんだけどな」

 

「うっ!悪い」

 

「過ぎた事だ、それよりイカロス達が迎えにこない以上今日は野宿だな」

 

「やっぱりか・・・・となればあそこか」

 

日が沈み夜になり智樹達と共にシュウは再び桜の木の元を訪れ拾ってきたダンボールや新聞紙を集めて布団代わりにした

 

「そういえば智樹達は何をしていたんだ?」

 

「俺とそはらはじいちゃんと昔の自分に会っていた」

 

「トモちゃん、昔から変わらないんだなぁ~って実感した」

 

「そういえばそはらって昔は体が弱かったけどいつから治ったんだ?」

 

「そういえば・・・いつからだろう?」

 

「まぁ、昔の事なんてあんまり覚えていないだろう。俺は昔の自分と日和、部長に会った。後、智樹の母ちゃんに」

 

「マジか!」

 

「あぁ、お前にそっくりだな。いくら親子にしても似すぎだろうというぐらいにそっくりだった」

 

「あはは・・・それより、俺達はいつ帰れるんだ?」

 

「さぁ?まぁ、その内帰れるさ。今は寝ようぜ。明日には帰れると希望を持ちながら」

 

そう言って三人は眠りについた

 

次の日

三人は起きるともう一度智樹の家に向かった

 

「お~い俺!」

 

智樹が過去の自分を呼ぶが返事が返ってこない

 

「留守じゃないのトモちゃん」

 

「じゃあ家の中で待とうぜ。どうせ母ちゃん鍵かけないし」

 

智樹の言う通り鍵は開いており智樹は家の中に入り自分の部屋に入るとそこには過去の智樹がいた

 

「なんだいるじゃないか。何やってんだ俺?」

 

智樹が顔を覗き込むと過去の智樹は泣いていた。その時、頭がズキンッ!と痛みシュウと智樹は頭を押さえた

 

「二人共どうしたの!?」

 

シュウ達とは反対にそはらは頭が痛いという様子もなく二人の心配をする

 

「おい!何をどうして泣いているんだ俺!」

 

智樹が過去の自分をこっちに振り替えさせると過去の智樹は突然に泣き止んだ

 

「あれ・・・どうして泣いているんだ、俺・・・」

 

過去の智樹のリアクション・・・それはまるであの時と・・・同じ!

 

「智・・・」

 

しかしシュウの言葉を遮るように突如シュウ達の体を光が包み込むと元の世界に戻されイカロス達が出迎えてくれた

 

「戻って・・・来たのか・・・」

 

「はい。修理するのに一日ほどかかりました。申し訳ありません」

 

「いいって」

 

(それにしてもあの時、過去の智樹に何があったんだ?

泣いたと思ったら泣き止んでなんで泣いていたか分からない。これではまるであの時と一緒だ。日和が俺達の記憶から消えた時のように)

 

謎を残したままシュウ達の時間旅行は終わった

 


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