ハーピー妹がイカロスに銃口を向けるゆすを空から見ていた空の王はこの光景を見て高笑いしていた
「そうだ。戦えハーピー」
勝てるはずのない戦いだなんて火を見るより明らかだ。それでも空の王はこの無意味ともいえる戦いを愉しんでいる
「アルファー・・・最後に一つだけお願いを聞いてくれない?」
「え・・・?」
「不器用で怒りっぽくておへそが見られるのが嫌いな私の姉さんをお願いね」
「だったら貴女も!」
「それは駄目だよ。二人共マスターの命令に逆らうのは流石にいかないでしょう
私は迎撃用エンジェロイド。タイプ
「止めてぇぇぇ!」
イカロスの声をかき消すようにハーピーの攻撃が夜空に響き渡る
※※※※※
イカロスとハーピー妹の二人が飲み物の買い出しに行ってからしばらく経つが一向に戻ってこない二人をシュウは心配していた。嫌な感じが胸の中に渦巻いていた
「浮かない顔だなシュウ」
「部長、嫌な予感ってなんで当たるんですかね」
「嫌な予感とは人の危険察知能力や経験で発生する。つまり嫌な予感とはそのまま起きて欲しくはない事象のため嫌な予感は良く当たると思い込んでいるだけだ」
「そうですか・・・」
「何か気になるのか?」
「まぁ・・・ちょっと・・・」
「緋村君~ハーピーの姉の方知らないかしら~」
「え?」
そういえば姉の方の姿が見えない。さっきまで一緒に花火を見ていたはずなのに。それに飲み物を買いに行った二人の帰りも遅い
この二つの事実が頭に入るとシュウの中にある嫌な予感が膨れ上がる
「智樹、ハーピーを知らないか?」
「あぁ、さっきトイレに行くって言っていたがそういえば少し遅いな・・・」
帰りの遅いハーピー妹とイカロス、いなくなった姉。そしてこの胸騒ぎ。全ての情報がそろうと胸騒ぎは大きくなる
「あいつら、まさか・・・!」
間に合ってくれよ!そう心の中で祈りながらシュウは走り出した
※※※※※
一方イカロスとハーピー妹の戦いは一方的なものだ
ハーピー妹はプロメテウスを乱射しイカロスはイージスを展開しハーピーの攻撃を防ぐだけだ
「こんな事しても無駄よ。プロメテウスではイージスは破壊できない!」
「うるさい!そんなのやってみないと・・・分からないでしょうが!」
カチッ!
「え・・・?」
ハーピーのプロメテウスから砲撃が止んだ
「しまっ!弾切れ!」
チャンス!とイカロスはイージスを解除し突っ込むがイカロスの横から砲撃がイカロスを直撃した
「まったく・・・残弾数は常に確認しておけといっただろう」
ハーピー姉がプロメテウスを構えて妹の前に降り立った
「どうして姉さんが!」
「決まっているだろう。マスターの御命令を遂行するためだ」
「でも、あの時ヒムラ=シュウに世話になるって言っていたじゃん!」
「あれは私が壊されて残った妹の居場所のつもりで言ったんだ。それはお前というやつは・・・どこまでも私と同じ考えなんだか」
「だって・・・私達、双子の姉妹だもん・・・」
「そうだな。双子なら考える事も一緒か」
「うん。あ~あ、せっかく姉さんのための居場所を用意したのにな~」
「それはこっちの台詞だ。だが・・・」
「うん」
「「これでいいのかもな(ね)」」
二人がプロメテウスを構えるとイカロスは何かを決意したように立ち上がり二人にまっすぐな視線を送る
「分かったわ。あなた達が私を壊すつもりでいるなら私はあなた達を傷つけずに止めて見せる!」
「はは・・・相変わらず優しいなお前は。だけど・・・これが何か分かるか?」
二人はプロメテウスを解き首輪をイカロスに見せる。その首輪からはピッ!ピッ!と規則正しく電子音が鳴っている
「まさか!」
「そう、
「もし私達を止めたかったらメランのアポロンの時と同じように私達をイージスの中に閉じ込めないといけない」
「やめ・・・なさい!そんな爆弾では私には傷一つ付けられない。そんなのは分かっているでしょう!どうして!どうして!どうして!どうしてなのハーピー!」
「お前にはわかるまい。あの方がどれだけ苦しんでいるかなど・・・」
ハーピー姉の言葉に空の上でこの状況を見ていた空の王は画面を注視する
「マスターは空の王としていつも苦しんでこられたかな・・・わかるまい!」
二人は同時に首の爆弾を起動させた
「あの方が少しでも笑ってくださるのなら私達は・・・」
「やめろ!」
シュウの声が響きシュウ達がこちらに走って来た
「アルファー、最後にあいつに言っておいてくれないか。短い間だったが楽しかったとな」
ピー!
電子音が止まり爆弾が爆発した。イカロスはイージスで二人をイージスの内部に閉じ込め被害は出なかった
だが解除されたイージスからは二人の痕跡は跡形もなく爆発により消え去った
悲しみに包まれる中シュウの中には二人を失った悲しみの他に空の王に対する怒りと憎しみが増していく
「これが・・・お前の望んだ結末なのか空の王!」
返事など返ってくるはずもない。だけどシュウは出せるだけの大きな声が空に響き渡るだけだった