シュウが居なくなりハーピーの姉の方は人間、いや正確に言えばイカロス達のマスターである緋村シュウという存在が気になり始めていた
人間なんてエンジェロイドからしたら力の無い無力な存在のはず。それなのに緋村シュウという存在は今まで見てきた人間とは違うように感じた
私達エンジェロイドはマスターの命令を遂行するだけの存在なのに緋村シュウは私達を対等の関係のように見ている。今までそんな風に見られた事がないせいなのか少し戸惑いも覚えた
「ねぇねぇ、姉さん。今日の夜に行ってみない?」
「本気か?」
「だってこのまま何もしないとマスターに怒られるしそれに楽しそうじゃん」
「まぁ・・・いいが目的は忘れるなよ」
「は~い♪」
「全く・・・」
妹のテンションのあがりように溜め息を吐きながら姉は夜に何があるのかと少し楽しみであった
※※※※※
その日の夜ハーピー達はシュウの家を訪れた
「ようやく来たか。とりあえず入れ」
「ねぇねぇ、何やるの?」
「しょうもない事だったら帰るぞ」
「とりあえずこれに着替えろ」
数十分後
ハーピー達はシュウに渡された浴衣に着替えて外に出てきた
「似合っているじゃないか」
「これってなんなの?」
「浴衣といって祭りを楽しむ際に着る服装の事だ」
イカロス達も既に浴衣に着替えており祭りを楽しむ準備は出来ているようだ
「んじゃ行くか」
祭りが行われる大桜の隣に経っている神社には沢山の出店と人がおり賑わっている
「おにぃちゃん、お祭りって楽しいの?」
「そうだよ。みんなで楽しむものだよ」
「シュウ!リンゴ飴買って!」
「ハイ!私は屋台の料理全種類食べたいです!」
「マスター、ヒヨコ買ってもいいですか?」
「ちょっと待て。一人ずつ順番に回るからそうせかすな。日和、はぐれるなよ」
「大丈夫ですよ。それより早くいかないとイカロスさん達を見失っちゃいますよ」
「うぉ、もういない!」
急いでみんなの後を追いイカロスにヒヨコを買いその後ニンフのリンゴ飴、アストレアの屋台全ての料理を買いあっという間に両手では抱えきれない程の量になり近くの長椅子に座って食べる事にした
「ほら、お前らも食べてみろよ。地上の食事が口に合うかは保証はしないがな」
「わぁ~いただきます!」
「・・・いただく」
姉はお好み焼き、妹は焼きそばを受け取り一口食べる
「美味しい~!」
「美味いな・・・」
「それは良かった・・・ん?」
見るとカオスがわたあめの屋台の前でわたあめが作られる様子を見つめている
「どうしたカオス?」
「おにぃちゃん、これなぁに?」
「これはわたあめだ」
「おいしいの?」
「甘くて美味しいよ。一つ食べてみるか?」
「うん!」
「すいません一つください」
「あいよ!」
屋台のおっちゃんは慣れた手つきでわたあめを作っていき大きなわたあめが作られた
「出来たぜあんちゃん」
「ありがとうございます。はい、これがわたあめだよ」
「わぁ~・・・」
手渡されたわたあめは大きくて真っ白でとっても綺麗だ
「あ~ん」
大きく口を開き食べる
「甘~い!」
「気に入ったか?」
「うん!おにぃちゃんも食べる?」
「いいのか」
「うん。あ~ん」
「あ~ん」
一口貰うと砂糖の甘さが口の中に広がる。わたあめなんて小学生の頃に食べたの最後だから懐かしい
「うん。美味しい」
「えへへ~」
嬉しそうな顔をするとカオスのほっぺたにわたあめがくっついているのに気づいた
「カオス、わたあめが付いているぞ。取ってやるかジッとしてろよ」
ハンカチを取り出しそっと取ってやる
「ありがとう~」
「どういたしまして」
二人のやり取りをみてハーピー姉妹は驚いていた
「姉さん、あれって本当にカオスなの?」
「私達が知っているカオスとは全く違うな」
カオスは第一世代を遥かに凌ぐ性能を持って戦闘型として作られたエンジェロイド。だが目の前にいるのは無邪気な笑顔を振りまく女の子だ
「カオスちゃんの違いに驚きますか?」
「お前は
「お久しぶりですね。貴方達も気づいていいるはずですよ。シュウ君は私達エンジェロイドを人間と同じように対等な関係で見る。そのおかげで私を含めイカロスさん、ニンフさん、アストレアさん。そしてカオスちゃんもシュウ君のおかげで今、この場所で心の底から楽しんでいるのです」
二人は今、自分の前にある光景には空の上では見られない光景が広がっていた。皆で笑い、そして楽しんでる。こんな光景は空の上では一度も見た事がない
「私達と対等・・・変な人間だなあいつは」
「ふふふ・・・そうかもしれませんね。ですがそれでいいんです。それがシュウ君の魅力なのですから」
「お~い!そろそろ行くぞ!」
「は~い!さぁ、行きましょう」
「あぁ」
シュウ達は川岸まで移動するとそこには智樹達が集まっており智樹の手には両手一臂愛に花火を持っていた
「智樹、これから花火を見るのに何で花火を持って来たんだ?」
「いやぁ、やっぱり見るだけじゃつまらないから始まるまでやろうかと思って」
「ねぇねぇ、おにぃちゃん、花火って面白いの?」
「まぁ・・・百聞は一見に如かず。実際にやってみよう」
「おぉ~!」
シュウは智樹の持っている花火を一本貰いカオスに渡し火を点けると花火がシャァァァーとシャワーのように流れる
「わぁぁぁ!綺麗・・・」
「シュウ!私にもやって!」
「はい!わたしもやりたいです!」
「マスター、私も・・・」
「はいはい。智樹、もっとくれ!」
「沢山あるからみんなでやろうぜ」
「トモちゃん、私にもちょうだい!」
「俺も貰おうか」
「会長にも一つちょうだい」
「どうぞどうぞ」
智樹にもらいシュウはイカロス達に花火を渡す
「ほれ、ハーピー達も」
「あ、あぁ・・・」
「わぁ~やるやる!」
二人共シュウから受け取り花火に火を点ける
「わぁ~綺麗だね姉さん」
「そう、だな・・・」
(これを持って帰ればマスターは、喜んでくれるかな・・・)
そう思っていると真っ暗な夜空に満天の花を咲かせた
「おぉ~これはまた大きな花火だな」
「会長、頑張っちゃった~」
「わぁ~綺麗だね姉さん」
「あぁ・・・とても綺麗だな」
二人の笑った顔をみてシュウは一安心した
(ようやく笑ったな。これで後は・・・)
「なぁ、ハーピー姉妹。前に行ったが家にこないか?こっちにいる間だけでもいいから家で泊まればいい」
「そう、だな。じゃあ・・・世話になろうかな」
「やった~!これからよろしくね!」
「こちらこそよろしく」
「緋村君~そろそろ花火が始まるわよ~」
「あぁ!」
「あ、その前に私、喉渇いちゃったから飲み物買って来るけどいる?」
「あぁ、じゃあ俺も行こうか?」
「大丈夫だよ、ねぇ、ちょっと手伝って」
「うん」
妹はイカロスを連れて空に上がりジュースを買いに行った
暫く飛ぶと自販機を見つける
「自販機」
「もうちょっとあっちに行くよ」
妹は止まらずさらに進みある場所で降り立った。そこは大桜の下だ
「どうして、ここに・・・?」
「姉さんを頼んだよ」
そう言ってハーピーはイカロスにプロメテウスを向ける
「どうして・・・どうしてなのハーピー・・・」