そらのおとしもの 人と天使達の非日常   作:龍姫の琴音

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第四十四話アストレアの気持ち

「あぁ~ようやく退院出来た」

 

あれから検査やらなんやらで結局三日も入院する事になり今日、ようやく退院する事が出来た

 

「ようやく帰れるねおにぃちゃん」

 

「良かったねカオス」

 

今日は学校があるのでシュウの退院にはカオスとアストレアが来てくれた

 

「さてと、じゃあ我が家に帰りますかな」

 

家に帰ると家は既に直っていた

 

「あれだけ壊れていたのにそれをたった三日の間に直すなんてやっぱりシナプスの技術力って凄いな」

 

シナプスの技術に素直に感心しながら家に入り居間に行きいつもの指定席に座ると大の字になって寝っ転がる

 

「あぁ~やっぱり家が一番落ち着くな」

 

するとカオスがシュウの横に寝っ転がり右腕に頭を乗せる

 

「私もおにぃちゃんの傍が一番好き!」

 

「そうか。そう言ってもらえると嬉しい」

 

そう言いながら頭を撫でてやるとえへへ~と嬉しそうにする

 

「アストレアおねぇさまも一緒に寝っ転がろう」

 

「わ、私ですか!?」

 

「来ても構わないぞ」

 

空いている左腕を振って手招きする

 

「そ、それじゃ・・・失礼しま、す」

 

シュウの左腕に頭を乗せる

 

(わわぁ!シュウの顔が近い。顔が熱いけど赤くなっているの気付かれていないよね)

 

ここまで接近した事は一度もないのでアストレアは緊張し顔が赤くなっていく

 

「アストレア・・・」

 

「は、はい!」

 

「すまん。ちょっと重い」

 

「女性に向かって重いって失礼じゃないですか!」

 

「重いものは重いんだよ。すまんが頭をどけてくれ」

 

「もういいです!」

 

怒ってアストレアは外に飛び出してしまった

 

「いっちゃったよ。おにぃちゃん」

 

「そだね」

 

「ただいま」

 

「あ!日和おねぇちゃんたちが帰ってきた!」

 

カオスが起き上がり玄関に向かって走り出した。シュウもカオスに続き玄関に向かう

 

「おかえり日和、イカロス、ニンフ」

 

「ただいまシュウ君」

 

「マスター、お身体はもう大丈夫ですか?」

 

「あぁ、お陰様で」

 

「あれ、デルタは?」

 

「外に飛び出していった」

 

「え!せっかくかいちょうがケーキ持ってきたのに」

 

見ると外には部長達全員がいた

 

「じゃあ俺が探しに行くから部長達は先に上がっていてください」

 

「そうか、ではお邪魔する」

 

「お邪魔しま~す」

 

「お邪魔しますね緋村君」

 

「邪魔するぞシュウ」

 

部長、会長、見月、智樹が家の中に入りシュウは外に出た

 

「さてと、あいつが行く場所といえばあそこだな」

 

やって来たのは川辺。行くと予想通りアストレアが石の上に座って空を見上げていた

 

「やっぱりここだったかアストレア」

 

「あ、シュウ」

 

シュウもアストレアの隣に座り空を見上げる

 

「ねぇ、私って役立たずかな?」

 

「どうした突然?」

 

「だって前の戦いでクリュサオルとイージスが壊されちゃったし結局イカロス先輩とニンフ先輩がいなかったらきっとみんなやられていた。戦闘用なのに私、何も出来なかった・・・」

 

「・・・まぁ、お前はバカだからな」

 

「そうかもね・・・」

 

怒って反論すると思ったら素直に認めて膝に顔をうずめた

 

「言い返せよ。調子狂うだろう」

 

「だってその通りなんだもん。私はイカロス先輩達には敵わないよ。未だにパンドラが起動しないし」

 

「バカでも悩むのか。まぁ、俺からすればお前はイカロス達より凄い所があるじゃないか」

 

「例えば?」

 

「ニンフは戦闘ではお前より弱いが電子戦ならお前より強い。イカロスはお前より強いが近距離戦になればお前の方が強い

戦闘で言えばお前は二人より強い部分があるって事だ

 

誰にだって得意な事と不得意な事がある。だったらそれをみんなで補っていけばいい。前はお前は何も出来なかった。だったら今度はお前が二人を助けてやればいい

 

それにさ、メランが襲撃してきた時にお前は誰よりも早く俺を助けてくれた。そこは感謝しているんだぜ。ありがとなアストレア」

 

「・・・どう、いたしまして」

 

感謝されてつい照れてしまいアストレアはシュウからそっぽを向いた

 

「そういえばさっきいっていたパンドラの事だがお前は多分イカロス達よりよっぽど上手に使えると思うぜ」

 

「どうしてですか?」

 

「ニンフから聞いたがパンドラは自己進化。つまり自分が思ったように進化出来るって事だ

イカロスは俺の願いを聞くために、ニンフは俺の命令を遂行するために日和の時に一度発動しそして今回はみんなを守るために発動した

 

二人共俺のためにパンドラが起動した。でもお前は二人と違って自分で物事を決められるだろう

 

自分で物事を決められるからその鎖を自分の意志で壊すことが出来た。それはイカロスやニンフには出来ないお前にしか出来ない事だ

 

これからもおまえは自分の意志で自由に生きる事が出来ればきっとパンドラもそれに応えてくれる

 

今はその答えを自分なりに探せばいいんじゃないか。自分がどんな風に生きたいかを」

 

「自由に・・・」

 

この川辺はアストレアにとって人生を変えた場所である。シュウに自分の意志で決めろと言われて自分はそれに従った。でも次はきっと自分で決める

 

「そっか!なんだか元気が出来てきました」

 

「そっか。やっぱりお前はその方がお前らしくていいよ。少し前なんて緊張で顔を赤くしていた時よりな」

 

「気づいていたんですか!?」

 

「当たり前だろう。微妙な雰囲気にならないように失礼な事を言って雰囲気をぶち壊すつもりがお前が怒って出て行っちまうから少し焦ったぞ」

 

(あぁ・・・そうか。シュウは私達の事をしっかり見ていてくれているんだ。きっと、これがシュウの優しさなんだ。イカロス先輩達がシュウの事を好きになった理由が分かる気がするな。そして私もシュウの事を好きになった理由も・・・)

 

「そろそろ帰ろうぜ。会長がケーキを持って来たらしいから早く帰って食べようぜアストレア」

 

「ケーキ!早く行こう」

 

私はバカだから自分で何を決めるかなんてわかんないけど私はイカロス先輩達に出来ない事が出来る。だったらきっといつかそれが見つかるはず

そう思いアストレアはシュウと共に家に帰っていった

 


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