そらのおとしもの 人と天使達の非日常   作:龍姫の琴音

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第四十話ニンフとオレガノ

会長の家は江戸の宿場町だったころから空見町を仕切っているいわば極道の家系である

そのため家はめちゃくちゃ広く庭には黒スーツの強面の男達が警備している

 

「銃まで装備させているなんて本当に極道って感じだな」

 

「あら~どうしてわかったの?」

 

「本日はお招きありがとうございます会長」

 

「挨拶はいいからさっきの推測について教えてくれないかしら~」

 

「単純ですよ。あの人達の右手にはタコがあった。あれはリボルバー式の銃をよく使う者に現れるタコだ

そしてさらに言えば左肩が少し下がっている。あれは左の内ポケットに銃を持っているからじゃないですか」

 

「ブラボー。大正解よ緋村君」

 

パチパチパチパチと手を叩き称賛を送る

 

「そりゃよかった。アニメで得た情報も案外役に立つんですね」

 

「まぁ、そういう事は置いておいて。緋村君はこっちの部屋で会長とお話でニンフちゃんはちょっとオレガノちゃんとこっちの部屋で待っててね

あ、カオスちゃんは緋村君と一緒で大丈夫だからね~」

 

「うん!」

 

シュウとカオス、会長が同じ部屋に入りニンフとオレガノが隣の部屋に入るとそこは茶室だった

 

「どうぞお座りください」

 

「う、うん」

 

ニンフが座りオレガノはニンフの前に座り茶をたて始めた

カシャカシャという茶をたてる音だけが部屋の中に響く

 

「どうぞ」

 

オレガノが茶をたて終えてニンフに差し出す

 

「ありがとう」

 

差し出された茶を受け取ると差し出された茶器の中にはどす黒い液体がボコボコと気泡が出ている

 

「えっと・・・これは何?」

 

「黙って飲めチビ」

 

「・・・は?」

 

突然のオレガノの暴言にニンフは固まってしまった

 

「カオス様が来るのは予想していましたがどうしてチビまでくっついてくるんでしょうか」

 

「・・・あぁ~そっか。きっとかいちょうが口が悪くように改造して・・・」

 

「チ~ビ。チビ、チビ、クソチビ」

 

この言葉にはニンフは激怒してゆらりと立ち上がる

 

「あんたいい加減に・・・」

 

その時シュウの言葉を思い出した

 

(あ・・・大人しくしてろって言われていたんだ。ここは耐えないと・・・)

 

「フフン・・・好きなだけ悪口を言えばいいわ。何を言われようと私は怒らないからね」

 

自信満々に胸を張るとオレガノも立ち上がりニンフと対峙する

 

「貧乳」

 

その言葉にニンフは遂に切れた。ハッキングシステムを展開する

 

「あんた、覚悟は出来ているんでしょうね」

 

殺す気でニンフは息を大きく吸い込み攻撃の準備をする

ニンフが攻撃を仕掛けようとした時オレガノは天井から垂れているロープを引っ張るとパカッ!とニンフの足元の畳が開きニンフは落下していきその間にオレガノは庭に逃げ出した

 

「逃がすか!」

 

穴から抜け出しオレガノを追いかけてニンフも外に飛び出し周囲を見渡すと走っているオレガノの姿を見つけた

 

「見つけたわよ!」

 

オレガノが庭に生えている木の傍にまでいき振り返ってニンフの姿を確認すると木の幹にあるロープを引っ張ると再びニンフの立っている場所に穴が空落下した

 

「こんなの飛べれば!」

 

ガシャン!と落ちた穴が鉄格子で塞がれた

 

「は?」

 

オレガノは手に籠を持ってニンフを見下ろす。気のせいかオレガノの持っている籠の中からゲロゲロと声が聞こえる

 

「プレゼントです」

 

籠をひっくり返すと中からカエルがニンフにめがけて落下してきた

 

「イヤァァァァ!」

 

狭い場所のため逃げる事も回避する事も出来ずにニンフの体にカエルが降り注がれた

 

「ぬるぬるして気持ち悪い!」

 

「おや、カエルはお気に召しませんでしたか?」

 

「そんなわけないでしょう!」

 

「では、これならどうですか?」

 

再び籠を持って現れ籠をひっくり返すと今度はウナギが投下されてきた

 

「ちょっと!本当に止めさな「ガツン!」」

 

言葉の途中で何か硬い物が当たった。見るとそれは安全ピンの抜かれた手榴弾だ

 

「これで最後です」

 

そういって大量の手榴弾が投下されオレガノはその場から離れ耳を塞ぐと大きな爆発音が鳴り響きニンフの落ちた穴は完全に埋もれた

 

※※※※※

 

一方シュウと会長は向かい合って座って話しをしていた

 

「会長、どうやってオレガノに言語能力を取り付けたんですか?」

 

「あら~気になる?」

 

「えぇ、イカロスの持っているカードでも無理なのも今の科学力でどうやって取り付けたのかすっごく気になります」

 

「・・・何が言いたいのかしら?」

 

「これはただの推測です。イカロスが落ちてきたあの日、あの場所には本来なら部長もいたはずだった。でも部長は会長に捕まり来れなかった

どうして会長は部長の桜の木の下にいくのを邪魔したのですか?」

 

「それはその日に守形君が屋上から飛び降りた件についてのお話よ」

 

「それならいつでも出来たし桜の木の下でも出来たはずですよね。どうしてですか会長」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

互いに沈黙が続くとシュウは口を開いた

 

「まぁ、言いたくないのであれば構いませんけどね」

 

「あら、随分と引くのが早いわね」

 

「別に会長が悪い人という訳ではないですしね。人の事情にまで首を突っ込むような真似はしませんよ。でも、一つだけ覚えておいてください

もし、イカロス達になにかよからぬ事をするのであれば俺は相手が会長でも全力で倒しに行きますよ」

 

「えぇ、心に留めておくわ。次は私の話でいいかしら?」

 

「えぇ、どうぞ」

 

「オレガノちゃんの事だけど暫くこっちで預かてもいいかしら?」

 

「オレガノをですか?」

 

「えぇ、彼女の意志よ。彼女が言語能力を取り付けたお礼がしたいって」

 

「構いません。彼女がそう決めたのなら俺はそれに従います」

 

「ありがとうね緋村君」

 

「それじゃ僕はこの辺で失礼します。行くよカオス」

 

「うん!」

 

カオスを連れて部屋を出て会長は一息ついた

 

「英君みたいに頭がいい人もそうだけど緋村君のように観察眼と勘がいい人って隠し事をするにはちょっと骨が折れるわね」

 

そう呟きながらカップに残っている紅茶を飲み干した

 

会長の家の玄関を出るとオレガノが待っていた

 

「あれ、ニンフはどうしたんだ?」

 

「ニンフ様ならお先に帰られました」

 

「そうか。邪魔したなオレガノ」

 

「いえ、こちらこそ私のワガママを聞いていただきありがとうございますシュウ様」

 

「気にするな。あぁ、一ついいか?」

 

「なんでしょう?」

 

「ニンフをあまりイジメるなよ。あいつはあぁ見えて心は子供だからすぐに傷ついちまうからな」

 

「・・・はい」

 

「じゃあな」

 

シュウが帰るのを見届けオレガノは溜め息ついた

 

「バレないようにしたのですがやはりバレましたか。流石ですねシュウ様」

 

素直に称賛をし次はバレないようにやらねばと決意するオレガノであった


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