そらのおとしもの 人と天使達の非日常   作:龍姫の琴音

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第三十七話風邪

カオスを引き取った次の日の事だ

朝、目が覚めるて時計を見ると起床時間の五分前だ

普段ならいつものように二度寝を始めるのだが何故か今日は頭が重く感じ起き上がると体がだるく感じる

 

「あぁ・・・だるい」

 

身体がだるいだけではなく寝汗をびっしょりとかいている

寝汗で湿ったパジャマを脱ぎ捨てて新しいシャツに取り換えて部屋を出ると丁度イカロスがカオスと手を繋いで二階に上がって来た

 

「あ!おにぃちゃん」

 

シュウの姿を見てカオスがイカロスの手を放してシュウの元に駆けてきた

 

「おはようカオス」

 

「おはよう。おにぃちゃん」

 

「おはようございますマスター」

 

「おはようイカロス」

 

「今日はお早いですね」

 

「なんか目が覚めた。行こうカオス」

 

「うん」

 

カオスとシュウは手を繋ぎ下に下りて居間に行くと既に朝食の準備が整っていた

 

「あら、今日は早いわねシュウ」

 

「おっはようございます!」

 

「二人共元気だな。おはよう」

 

「あ、シュウ君おはようございます」

 

「おはよう日和」

 

「シュウ君?」

 

「・・・ん?どうした?」

 

「いえ、なんでも・・・」

 

気のせいかしら・・・

 

いつもの席に座るとカオスはシュウの隣に座る

 

「じゃあいただきます」

 

「いただきます」

 

シュウにならって食事の挨拶をして朝食を始まった。シュウは味噌汁を一口すすると味がいつもより薄く感じた

 

「隙あり!」

 

アストレアがシュウのおかずを一品奪い取った

 

「・・・アストレア!人のおかずを盗るな」

 

「へへ~ん。隙を見せたら終わりですよ」

 

「・・・シュウ君」

 

「うん、どうした日和?」

 

日和はシュウの元に移動するとシュウの額に自分の額を押し当てる

 

「う~ん・・・シュウ君、少し熱っぽいよ」

 

「熱?」

 

額を放して日和はシュウの頬や首を触り口の中を見る

 

「喉は腫れていませんが風邪ですね」

 

「風邪か・・・いつぶりだろう?」

 

「今日は一日休んで様子を見た方がいいですね。後で消化の良いものを作るので今は部屋に戻って休んでください

イカロスさん、シュウ君の部屋の押し入れからお布団を出してください」

 

「はい」

 

シュウとイカロスが部屋に戻ると日和は早速料理を始める

 

「日和おねぇちゃん。おにいちゃんはどうしたの?」

 

「少し体調が悪いから今日は一日休ませないとね」

 

「何作るの?」

 

「おうどんを作るの。昔から風邪の時はこれを作っていたから」

 

冷蔵庫からうどんを取り出し早速料理を作り始めカオスはその光景をじっと見ていた

 

部屋に戻るとイカロスは新しい布団を押入れから取り出し整える

 

「悪いなイカロス」

 

「いえ、マスター早く良くなってくださいね」

 

「大丈夫だって。一日寝てれば治るよ」

 

布団を整え終わると扉が開き日和とカオスが鍋を持ってやってきた

 

「これ食べて早く元気になってくださいね」

 

「おぉ!ありがとう」

 

鍋を受け取ると醤油だしの良い香りが鼻孔をくすぐる

 

「あぁ~いい匂い・・・いただきま~す」

 

味はあまり感じられないがそれでもおいしいと感じられた。でもシュウからしてはひとつだけ足りない

 

「なぁ、日和」

 

「駄目ですよシュウ君」

 

「・・・まだ何も言っていないぞ日和」

 

「一味が欲しいって言いたいんでしょう。駄目ですよ。体調が悪いのに辛い物は体に良くないんですから今は我慢してください」

 

「うぅ~はい・・・」

 

「おにいちゃんは辛いの好き?」

 

「うん。ピリッてくる辛さが好きです」

 

「風邪が治ったら作ってあげますから今日は我慢してください」

 

「へいへい」

 

不服そうにシュウはうどんを完食した

 

「今日は半日で学校が終わるので帰ってくるまでは大人しく寝ていてくださいね」

 

「分かってるって。いってらっしゃ~い」

 

日和、イカロス、ニンフが学校に出かけシュウは部屋で寝ておりアストレアとカオスは居間にいた

アストレアは縁側で空を見上げながらボォ~としておりカオスはお絵描きをしているがシュウが気になるのかシュウの部屋を見ている

 

「気になるの?」

 

カオスの行動に気付いたアストレアがカオスの隣に移動してきた

 

「おにいちゃんの、傍にいたい・・・」

 

「う~ん・・・ちょっと覗いてみようか」

 

「いいの!」

 

「起こさないようにね」

 

「うん!」

 

そっとシュウの部屋の前まで移動し扉を開けるとシュウが寝ている

 

「起こしちゃ駄目だよカオス」

 

「うん」

 

「それにしてもお腹空きましたね」

 

時刻は十二時ちょっと前。日和達が帰ってくるまで後一時間ぐらいだ

 

「アストレアおねぇさま、おにぃちゃんにご飯作りたい」

 

「でも私、料理できませんよ」

 

「大丈夫。朝、日和おねぇちゃんの作っているの見て憶えた」

 

「じゃあ頑張って作りましょうか」

 

「うん」

 

カオス達が料理をしている時にシュウは目を覚ました

 

「大分良くなってるな・・・」

 

朝ほどのだるさも頭の重みも感じない

 

「少し起きるか」

 

寝巻のまま居間に行くと居間には誰もいなかったが隣の台所に二人の姿を見つけた

 

「何やっているんだ?」

 

「あ!おにぃちゃん」

 

「起きて平気なんですか?」

 

「朝よりは楽になった。それより何しているんだ?」

 

「おにぃちゃんのご飯作ってるの!」

 

「期待していてくださいね」

 

「あぁ、楽しみにしてる」

 

そう言ってシュウは居間で座って料理の完成を待った

 

カオスとアストレアは料理を完成させお椀にうどんを盛りつけた

 

「これで完成だね」

 

「まだだよアストレアおねぇさま」

 

「まだなにかやるんですか?」

 

「これ」

 

カオスが取り出したのは一味唐辛子だ

 

「おにぃちゃんは辛いのが好きなんだって」

 

そう言ってキャップを開けてうどんに一味唐辛子を振りかけると振った衝撃でキュポッ!と蓋が外れて瓶の中にあった一味唐辛子がスバァッ!とうどんの上にかかりうどんとスープが真っ赤に染まった

 

「・・・これ、大丈夫かな?」

 

「おにぃちゃんは辛いのが好きだし大丈夫だよ」

 

「そ、そうですね・・・」

 

「おにぃちゃん、出来たよ」

 

「まってました!」

 

しかし運ばれてきた料理は全てが真っ赤に染まったうどんだった

 

「・・・」

 

匂いが鼻を刺激し鼻が痛い

 

「がんばって作ったよ」

 

「じゃあ、いただきます」

 

カオスが一生懸命作った料理を食べない訳にはいかないとシュウは覚悟を決めて箸を取り一口

 

「!!!」

 

口に入れた瞬間辛さが舌を通して脳を直接叩かれたかのような辛さが痛みとなり鈍っている味覚も辛いを通り過ぎて痛い

 

「どう?おにぃちゃん」

 

「スパイシーで美味しいです」

 

「うん!」

 

カオスがものすっごく無邪気な笑顔をこちらに向けてきた。シュウはここまで来たら全て完食してやると意気込み無言で箸を進める

その様子をアストレアはカオスの後ろで心配そうに眺めている

 

「ご、ご馳走様でした・・・」

 

三十分かけてようやく一杯食べ切った

 

「全部食べたからきっと良くなるね」

 

「あぁ・・・ありがとうカオス」

 

カオスは笑いながらお椀を台所の方にもっていった

 

「・・・で、大丈夫ですかシュウ?」

 

「・・・」

 

シュウは顔を天井に向けて口を開くと勢いよく炎を噴き出た

 

「辛かった・・・です」

 

それだけ言ってシュウは倒れてしまった

 

目が覚めるとシュウは自分の部屋の布団の上で寝かされていた。夢かと思ったが舌が痺れており夢でなかったんだと気づいた

起き上がると体の不調は消えておりどうやら舌が痺れている事以外は治ったようだ

 

居間に行ってみるとみんな夕食を食べていた」

 

「あ、おはようございますシュウ君」

 

「マスター、お身体の方は大丈夫ですか?」

 

「おはよう。もうすっかり良くなったよ。それよりカオスは?」

 

「そこよ」

 

ニンフが指さした方を見ると部屋の隅っこでカオスが体を丸めて落ち込んでいた

 

「シュウ君が倒れてからずっとあれで・・・」

 

「ははは・・・」

 

シュウはカオスに近寄り後ろに座る

 

「カオス」

 

「おにぃちゃん・・・」

 

こっちを見ないでシュウの言葉に応えた

 

「落ち込むなよ。失敗なんて誰だってあるさ」

 

「でも、おにぃちゃんに愛を上げられなかった」

 

「そんな事はないさ。確かに辛かったけどカオスが一生懸命作ってくれたという気持ちは伝わった。だから俺はカオスの作った料理を全部食べたんだ。だからありがとうカオス」

 

「うん」

 

「それにニンフやアストレアは料理できないからお前の方が優秀だぞ」

 

「ちょっと!こっちまで巻き込まないでよね!」

 

「はいは~い!私は食べる専門です!」

 

「だからさ、次は失敗しないように一緒に作ろうぜカオス」

 

「うん!」

 

ようやくこっちを向いてくれた。シュウはカオスの頭を撫でてやった

 

「えへへ~おにぃちゃん大好き!」

 

カオスがシュウに抱き着きようやく笑ってくれた

 

これが緋村家の日常であり非日常


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