そらのおとしもの 人と天使達の非日常   作:龍姫の琴音

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第三十三話イカロスの気持ち

日和を助け出しようやくいつもの日常が戻ったのだが・・・

 

現在シュウは自分の部屋の机で頭を抱えていた

 

「どうして・・・どうしてこうなったんだ・・・」

 

事の発端は日和を助け出した次の日の朝食での出来事だ。いつも通りみんなで朝食を食べている時の事だ

 

「ニンフ、漬け物を取ってくれ」

 

ニンフの近くに置かれている漬け物を取るようにニンフにお願いするとニンフは漬け物の入った器を手に取る

 

「御命令ですか?」

 

「いや、頼んでいるだけだが」

 

「・・・はい」

 

残念そうな顔をしてニンフはシュウに漬け物をシュウに渡した。たけどこれだけでは済まなくなった

ニンフは事ある毎に命令ですか?とシュウに聞いてくるとイカロスも命令が欲しいと催促が来てシュウは困り果ててしまった

 

「全員がアストレアみたいに馬鹿ならいいのに・・・」

 

ディすっているがアストレアは一人で物事を決められるようになった

それはイカロスにもニンフにも出来ない事だ

そう思いながらシュウは自分の左手に巻かれている鎖を見る

イカロスと初めて会った時に無理やりインプリンティングをさせられてそのままなし崩し的にマスターになってはみたがこのままでいいんだろうか

 

「はぁ・・・どうしたものかな」

 

シュウが悩んでいる時、居間のほうでは新大陸発見部の面子が集まっていた

 

「それで、シュウは部屋で考え事をして出て来ないと言う訳か」

 

「はい、毎日のようにニンフさんがシュウ君に命令がないかと聞いてくるので流石にまいってしまったそうです

それに最近ではイカロスさんもニンフさんと一緒に命令を求めるようになって・・・どうにかならないでしょうか守形先輩?」

 

「無理だな。シュウは自由に生きて欲しいから命令したくない

それに引き換えニンフとイカロスは命令の遂行を存在意義としている

互いの意見が平行線である以上どうする事も出来ない」

 

「トモちゃん、何か良い案とかないの?」

 

「俺に振るなよ。俺達がどうこう出来る話じゃないだろう」

 

「そうだな。ニンフはともかくイカロスは少し心配だな」

 

部長の言うようにイカロスはさきほどから落ち込んでいるのか部屋の隅で黙々とこけしの首を取ったりはめたりを繰り返している

 

「イカロスさんはシュウ君のエンジェロイドなのに命令されないからとニンフさん以上に落ち込んじゃって」

 

「じゃあ会長がどうにかしてあげる~」

 

会長が挙手してイカロスに近付く

 

「イカロスちゃん。緋村君に命令されたいなら私の命令きいてくれないかしら?」

 

「なんでしょうか?」

 

「緋村君をどこか深い海にでも捨ててきてくれるかしら~」

 

会長が突拍子もない事を言うとイカロスは空の女王(ウラヌス・クイーン)を発動し瞳の色が緑から紅に変わると天井を突き破りシュウの部屋に突撃した

 

「おわぁ!イカロス、どうした!?」

 

「マスター、会長さんの命令です」

 

「はぁ?ちょ、まっ・・・」

 

こちらの話は聞く耳持たずにイカロスはシュウを抱きかかえて空高くに飛び上がった

風景が物凄い速さで後ろに吸い込まれていきたった数分で海に到着し海の深い所にまで移動する

 

「イカロス!何をしする気だ!?降ろしてくれ!」

 

「御命令ですか?」

 

「は?」

 

「御命令であればすぐに止めます」

 

「命令じゃなくて頼んでいるの!」

 

イカロスは急停止するとシュウの腕を掴み思いっきりに振り上げ海に向かって投擲する

 

「わぁぁぁぁぁ!」

 

「御命令、ですか・・・御命令・・・ですか」

 

海にぶつかる直前にイカロスはシュウを抱きかかえて再び空に上がる

 

「あ、危なかった・・・イカロス、そろそろ戻ろうぞ」

 

「それは、御命令ですか?」

 

「いや、だから頼んでいるだけで・・・」

 

「どうしてですか!」

 

イカロスが声を荒げてシュウは面を喰らったように目を丸くしてイカロスの顔を見る

その顔はとても辛そうで目からは涙がこぼれ落ちシュウの頬を濡らしていく

 

「イカロス・・・?」

 

「どうして私には命令してくれないんですか!マスターにとって私は要らない存在ですか!?」

 

「そんなわけ・・・」

 

「じゃあどうして命令してくださらないんですか!

ニンフに命令した時、私はニンフが羨ましかった

マスターは私に一度も命令してくださらなかった。マスターにとって私は必要ないのではないかって不安でした

お願いです・・・どうか、私にも・・・命令してください

私を捨てないでください。私の鳥籠(マイ・マスター)

 

「・・・お前もアストレアと同じ馬鹿なんだな」

 

そう言ってシュウはイカロスを抱きしめる

 

「俺がお前を捨てるわけないだろう。俺はお前が降って来たあの日になにもわからないままマスターになったのもあるがお前達には自分の居場所を自分で決めて欲しいんだ」

 

「でも、私はマスターの傍に」

 

「それはお前の意思かそれともインプリンティングをしているからなのかイカロス」

 

「わかりません。ですがマスターが居なくなると考えると動力炉が痛いんです

自分が壊れてしまいそうな気持になります。だから、私は自分の気持ちを知りたいんです

その答えはマスターの傍にいればいつか分かると」

 

「そっか。じゃあ俺はお前に最初で最後の命令をする」

 

「はいマスター」

 

「その答えがでるまでは俺の傍に居ろ。答えが出た時にそれでも俺の傍に居たいと思うなら俺の傍にいればいいさ」

 

「はい・・・ありがとうございますマスター」

 

「じゃあ帰ろうぜ俺達の家に」

 

「はい」

 

シュウとイカロスのひと騒動が終わりダイタロスも一安心した

 

「良かった。元の鞘に収まって」

 

二人の光景を微笑ましく見守っているとビー!ビー!と警戒音が鳴り響いた

 

「警報?いったい何が・・・」

 

映像を切り替えるとそこには新型のエンジェロイドの姿があった

 

「これは新型のエンジェロイド!場所は!?」

 

エンジェロイドの現在位置を調べるとそこはシュウ達の真下。新海8000メートルの地点だ

 

「新海8000メートル!ありえない!エンジェロイドにとって水は最大の弱点のはず!」

 

『クククク随分とうろたえているなダイダロス』

 

ミーノスがダイダロスに通信を送り映像が出現した

 

『ヒムラ・シュウには随分と辛酸をなめさせられてきたからな。だから・・・こちらも多少本気を出すことにした。これが私が作り上げた新型のエンジェロイド水中戦闘用エンジェロイドタイプη(イータ)seiren(セイレーン)

いかに空の女王(ウラヌス・クイーン)といえど弱点である水中に引きずり込まれればひとたまりもあるまい。しかも今は脆弱な人間を抱えてとあってはなおの事だ』

 

「逃げて・・・緋村君・・・」

 

『行けセイレーン。ヒムラ・シュウを殺せ』

 

「逃げて!緋村君!」

 

ダイダロスの声は届かずセイレーンが動き出すとセイレーンの背後から何者かが姿を現しセイレーンの心臓を刃が貫いた

 

「!」

 

突然の出来事にセイレーン、ミーノス、ダイダロスの三人は何が起こったのか理解できずにいた

 

「何が起きたのだ!?」

 

慌ててミーノスはピアノの鍵盤にみたてたコンソールを操作するとある者がモニターに映し出された

 

「バカな・・・あいつは・・・」

 

そこにいたのはイカロスとの戦闘で海の底に沈んだカオスの姿だった

 

「たくさん、たくさん・・・食べたの。でもおさかなさんじゃダメ。だからちょうだい・・・あなたの力を」

 

次々とカオスの羽である刃がセイレーンの体を貫いていく

 

「あぁぁぁ!助けて!助けてくださいマスター!」

 

『やめろカオス!命令だ』

 

だがカオスは止まらない

 

『どうしたカオス!俺の命令が聞こえないのか!?』

 

ダイダロスはカオスのデータを分析して恐ろしい事実を見つけた。カオスがセイレーンのシステムを食べて吸収していたのだ

 

「まさか・・・カオスにあれ(・・)を積んだの?自己進化プログラム『Pandora(パンドラ)』を」

 

セイレーンの全てを喰らいつくしたカオスは前回の戦闘で壊された片翼の翼を修復した

 

「ミーノス!貴方は何をしたのか分かっているの!?これでもうカオスは命令なんて聞かない。いずれシナプスにも牙を向けるわ。Pandora(パンドラ)は進化するのよ。もう誰にも止められない」

 

カオスの首のインプリンティングしている鎖が砕け散りカオスは自由となったカオスは深海から地上へと上がり空見町に視線を向ける

 

「つぎは私が愛をあげるね。あははははは!」


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