ゴォーン・・・ゴォーン
ここはシナプス人が眠っているドームの建物から少し離れた木の陰に守形は隠れていた
ドームの前にはハーピーが侵入者である守形を見つけようとやっきになっておりハーピーがあの場から早くいなくならないかと待っていた
「風音日和にそっくりのシナプス人・・・」
初めてシナプスを調査したあの日、このドームで見た風音日和にそっくりなシナプス人について色々と推測したがどれも推測の域を出ずにいた
答えはあのドームの中にあるはずなのだがハーピーが邪魔をしているため入れない
「さて、どうするかな・・・」
一方、地上では・・・
「こら!アストレア!人の朝食を勝手に食うな!」
「もっと食べたい!」
「朝から騒がしいわね。もっと静かに食べられないのかしら」
ニンフが文句を言いながら自分の朝食を食べるとアストレアが今度はニンフのおかずを横からかっさらった
「ちょっと!私の朝ご飯まで盗るんじゃないわよ!」
シュウとアストレアの喧嘩にニンフが混ざりより一層騒がしくなった
「あはは・・・止めなくていいのイカロスさん?」
「楽しそう、ですし」
確かにはたから見れば楽しそうだが当の本人達はおかずを奪い合って争っている
「そうだね。楽しそう、だね」
前まではシュウと日和の二人だけの生活だった。だけどイカロス達が来てから二人だけの生活は変わった
あの日、イカロスが地上にやってきてイカロスを連れ戻すためにニンフがやってきてそして最近ではアストレアもシュウの家にやってきていつの間にか賑やかで楽しい日々になっていた
だが、日和はシュウの事が好き。イカロス、ニンフ、アストレアが加わりシュウの周りには女性が常にいるような状況になり三人とも空くなからうシュウに好意を持っている。この状況に日和は少し焦っている
あの日、本当なら自分がシユウに告白をするはずだった。しかしそれはイカロスが降って来た事により告白が駄目になり今日に至るまで毎日がドタバタとした日常になり告白する機会がなくなり唯一シュウと二人っきりになれる時間と言えば・・・
「まったく、アストレアの奴・・・少しは自重と言う言葉を知らんのか」
ぶつぶつと文句を言いながらシュウは畑に生えている雑草を抜いていく
「大変だねシュウ君」
二人で畑仕事をしているこの時間だけが二人っきりになれる唯一の時間だ。でも畑仕事は土を触る仕事のためどうしても泥まみれになってしまいこんな格好では告白どころではない
「まぁ、あいつに自由に生きろって言ったのは俺だし家に来いって言ったのも俺だからあまり言えないがな」
「誰に対しても優しいよねシュウ君」
「そうか?それより日和、何か悩みでもあるのか?」
「え?」
「お前、たまにボーっとしていて溜息をついたりしているか何か悩みでもあるのかなって思ってさ」
「な、何にもないよ!大丈夫だから」
「そうか?、まぁ、俺より同性の奴にしか話せない悩みもあるだろうし深くは聞かないが何かあったら相談してくれよ。俺達は昔から一緒に暮らしている家族のようなものなんだからさ」
家族・・・その言葉に日和は少し胸が高鳴った。今までずっと一緒だった。だから家族であるのは当たり前なんだと思う。でも、出来れば幼馴染とかずっと一緒に住んでいるからとかではなく恋人として家族になりたい
そう思うと泥だらけでもいいじゃないかと思えた。これも一つの自分の姿でありシュウはそれを知っている。だったら格好なんてなんだっていいだと思えた
「ねぇ、シュウ君。これから、大桜の木に行きませんか?」
「どうした急に?」
「そこで聞いてもらいたい話があるの」
シュウには日和が何かを決めたような目をしていると分かりシュウは頷いた
「分かった。じゃあ行こうか」
「はい」
桜の木へと続く道。いつも通っているはずなのに今日はなんだかとっても新鮮な感じがする
「そういえばこうして二人で出掛けるのって久しぶりだな」
「そうですね。今までイカロスさん達も一緒でしたからね」
「こうして二人で歩いていると静かでいいな」
「そう、ですね。こんな時間は久しぶりですね」
「・・・いつまでもこういった時間が続けばいいのにな。こうやって日和と静かに過ごしたりたまにはイカロス達と一緒に騒がしい日を送ったりして毎日が楽しくて明日は何をしようかなって考えながら寝られたら最高なんだろうな」
「続きますよ。だってみんなシュウ君と一緒にいるのが大好きなんですから。私達だけじゃありません。守形先輩に会長さん、桜井君にそはらさん。みんなみんな一緒です」
「そうだな。ずっと一緒だよな」
そう思って・・・いたのに・・・
突然、トラックが道路を脱線しこっちに向かって突っ込んできた
シュウは日和の名前を呼び手を伸ばす。日和もシュウの手を取ろうと手を伸ばすがその手は触れ合う事はなく風音日和はトラックに轢かれた
ドォン!鈍い音がして日和の体は宙に飛び地面に叩きつけられ血が流れだす
「日和!」
日和を抱き起すと周囲からは救急車を呼べ!とパニックになっている
「日和!しっかりしろ日和」
「シュウ、君・・・私、シュウ君の、事が・・・」
だがそこで力尽きてしまい日和は涙を流しながら目を閉じてしまった