そらのおとしもの 人と天使達の非日常   作:龍姫の琴音

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第二十五話シナプス侵入

アストレアを家に迎えた次の日に部長から呼び出されシュウ達は部長の家のある山の中にいた

 

「部長、来ましたよ」

 

「あぁ、すまないな。呼び出してしまって」

 

「別に構いませんが何の用ですか?」

 

「ちょっと出掛ける用事があってな。俺の代わりに食料の調達をお願いしたいんだ」

 

「冬の時期に食料調達は難しいんですよ部長」

 

「まぁ、みんなでキャンプファイヤーと言うのも面白いじゃないか。それと、ニンフに頼みたい事がある」

 

「私に?」

 

「わかりました。じゃあイカロスは魚を釣ってくれ。日和とアストレアは山菜を取ってきてくれ」

 

「はいマスター」

 

「わかりましたシュウ君」

 

「ご飯のために頑張る!」

 

各自食料調達のために行動に移るとニンフは部長に連れられテントの中に入っていった

 

「それで私は何をすればいいの?」

 

「その前にこれを持ってくれ」

 

ニンフに手渡したのは腕時計だ

 

「時計?」

 

「それと、ダイブ・ゲームを使ってもう一度智樹の夢にダイブする事は出来るか?」

 

「出来るけどどうしてまた智樹の夢に?」

 

「智樹の夢がシナプスに通じているからでしょう部長」

 

シュウがテントの中に入ってきて部長が言おうとしていた台詞を先に言った

 

「知っていたのかシュウ?」

 

「まぁ、色々とありましてね。俺も行きますけど構わないでしょう部長」

 

「あぁ、問題ない」

 

「じゃあ早速ダイブ・ゲームを起動させるわね」

 

カードを起動させてダイブ・ゲームの機械を取り出しそこに文字を入力していきゲートを作る

 

「じゃあ行ってくる」

 

「留守番よろしくなニンフ」

 

「気を付けてね」

 

部長とシュウを見送りシュウと部長はシナプスへと向かった

 

着いた先は前に訪れたあの石板がある場所だ

 

「それでシュウ、何かを隠しているようだが何を隠している?」

 

「ダイブ・ゲームで一度だけ皆とはぐれた事があったじゃないですか。その時にイカロスを造ったシナプスの人に会ったんです」

 

「なに!?どうして今まで言わなかった?」

 

「口止めされていたからです。でも部長は既に智樹の夢がシナプスに通じていると判断しているからいいかなって思って。それよりここには何にもないですけどどうするんですか?」

 

「いや、下を見てみろ」

 

端っこまで移動して見下ろしてみるとそこには円盤のようなの物がいくつもの浮かんでおりその上に木々が生えている

 

「うわぁ~その下に見えるのは空見町かな?」

 

「おそらくな。行くぞシュウ」

 

「了解です」

 

ハンググライダーを組み立ててシュウと部長は空へと飛び近くの浮かんでいる円盤に着地するとそこは家がいくつも建っておりおそらく住宅街だろう

 

「それにしても自然溢れる場所ですね。イカロスを造ったというから機械的な所を想像していたんですけど」

 

「ここはおそらく一部だろう。だがそれよりも家や店があるのに誰もいないという方が気になる」

 

「いいじゃないですか部長。エンジェロイドに囲まれたりしたらシャレにならないですよ。ここは現実。つまり殺されたら死にます」

 

「それもそうだな。ここからは二手に分かれて調査しよう。シュウはこの周辺を頼む」

 

「了解です!」

 

部長と別れて周囲の調査するがエンジェロイドどころか人にすら会わない

 

「ここ美棲んでいる奴らはどこに行ったんだ?道も家の中もちゃんときれいに掃除されている。それなのに誰もいない。まるで時間が止まっているみたいだ」

 

その時、シュウの肩を誰かが叩いた

 

「!」

 

咄嗟に距離を取り振り返るとそこにはエンジェロイドがいた

 

(マズい。見つかった)

 

拳を握り戦闘態勢に入るがエンジェロイドは手に持っている箒で先程までシュウが立っていた場所にあった枯葉を掃いた

 

「もしかして掃除用のエンジェロイドか?」

 

敵意は感じられない。というより感情がないのかもしれない。何も言わずに近づき方を叩いたという事はもしかしたら言語能力も積んでいないロボに近い存在かもしれない

 

「なぁ、名前とかあるのか?」

 

試しに聞いてみるとエンジェロイドは掃除を一時中断しシュウの方を見て頷く

 

「じゃあ喋れるか?」

 

今度は首を横に振った

 

「う~ん、意思疎通が出来ればな・・・それにしても感情がないとイカロスに似ているな。イカロスに似ていてイカロスよりサイズは小さい・・・よし、君をミニロスと命名しよう」

 

「おい!こっちから声が聞こえたぞ」

 

「うわぁ!誰か来る」

 

シュウは慌てて近くの木に登り隠れるとやってきたのはニンフを襲ったハーピーの二人だ

 

「くそ、どこに行った!?」

 

「次はあっちを探すぞ」

 

その場をやり過ごし木から降りるとシュウの下にさっきのミニロスがやってきた

 

「なんだ?」

 

と聞いてみても言語能力がないため話は出来ない

 

「悪いな。ちょと忙しいからまた今度話そうなミニロス」

 

頭をそっと撫でてシュウは部長と合流するためにその場から離れ残ったミニロスはさっきシュウに撫でられたところを触ると動力炉がいつもより温かくなるのを感じた

 

※※※※※

 

シュウと別れた部長は住宅街から離れた所に建っている建物を見つけた

中に入るとそこにはいくつものカプセルが並んでおりその光景を見た瞬間に部長の脳内にいくつものイメージが流れ込んできた

 

電車の中で今日も仕事かとぼやくサラリーマン、縁側で膝の上に猫を抱いてくつろぐお婆さん。色々な景色が流れ込みやがてイメージが無くなると急に疲れが出てきた

 

「まさか、シナプスの住人は地上の人間に紛れて人間を監視しているのか」

 

だがその推測はすぐに外れた

近くのカプセルを覗くとそこには風音日和(・・・・)にそっくりな羽の生えた女性が眠っていた

 

「『夢』を見ているのさ」

 

いつの間にかハーピーが部長の背後に立ち銃口を向けている

 

「夢とはなんだ?」

 

「そうね。教えてもいいけど残念ながら処刑の時間よ」

 

「・・・そうだな。こちらも時間だ」

 

部長の後ろにダイブ・ゲームのゲートが出現した

 

「な!ダイブ・ゲームの転送!?」

 

「どういう事だ」

 

「なに、簡単な事だ。あらかじめニンフに時計を渡し時間が来たら転送するように言っておいたんだ。十二分にシナプスを調査しお前達に捕捉されるまでの時間を予測してな」

 

部長が説明し終えると部長は元の場所へと転送された

 

「おかえりシュウ、守形」

 

「ふぅ~疲れた。何か分かりましたか部長?」

 

「あぁ、色々な。ニンフ、一つだけ聞きたい。俺は・・・現実(・・)か」

 

「あぁ・・・あれを見たのね。心配しないで現実よアンタ(・・・)は」




ちょっとオレガノを登場させましたけどいいよね。だって後で登場するんだもん。接点があったっていいじゃない

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