そらのおとしもの 人と天使達の非日常   作:龍姫の琴音

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第二十一話智樹の夢

羽の生えた女の子はゆっくりとシュウの前に降りてきた

腰まで届く青い髪をしており紙に隠れて目元は見えない。女の子には羽が四枚ありおそらく結構位が高いのかもしれない

 

「初めまして緋村君」

 

「俺を知っているのか?」

 

「えぇ、今までずっと見てきたから。本当はトモくんの所にイカロスを落とすつもりったけどまさか貴方が拾うなんてね」

 

「どう言う事だ?」

 

「詳しくは言えないわ。ただ、私の娘達を助けて欲しかった」

 

「じゃあ、あんたがイカロス達を造ったのか?」

 

「えぇ、私はダイタロス。シナプスの科学者よ。と言ってもシナプスの王とは敵対関係だからシナプスとは無関係だけどね。緋村君、ここで私と会った事はトモくんには内緒にしておいてください。そして私の娘達をどうか守ってください」

 

女の子を羽を広げて空へと上がっていく

 

「待て!まだ聞きたい事が!」

 

手を伸ばすがその手は空を切りシュウは現実世界へと戻された

 

「マスター!」

 

「あれ、イカロス?」

 

「どこに行っていたのよシュウ。探すの大変だったんだからね」

 

「ここは・・・現実か」

 

「なにかあったのかシュウ?」

 

「いえ、ちょっと昨日の夢にいたようです。それより部長、その頭のタンコブはどうしたんですか?智樹もなんかボロボロだし」

 

部長の頭には大きなタンコブが出来ており智樹はそはらから制裁を受けたかのようにボコボコにされている

 

「まぁ、色々とあってな」

 

「そうですか。ニンフ、智樹の夢に行けない原因は分かったか?」

 

「ちょっと待ってて。今調べて・・・ってなにこれ!?智樹の夢にプロテクトが掛けれれている」

 

「プロテクトだと?」

 

「ちょっと待ってて。いますぐクラックするから」

 

「部長、おかしいと思いませんか?」

 

「あぁ、プロテクトをかけているという事は誰かが人為的に智樹の夢に行けないようにしているという事だ。いったい誰が?」

 

おそらくあのダイタロスの仕業だろうと思うが彼女の事は秘密にしてくれと約束している以上は言えないからここは黙っておこう

 

「あの、マスター」

 

「どうしたイカロス?」

 

「ダイブ・ゲームはもうやめた方が・・・」

 

「危険でもあるのか?」

 

「いえ、そうではなく・・・」

 

イカロスの言葉は歯切れが悪く何か隠しているようだ

 

「よし!クラック完了。今度こそ正真正銘智樹の夢よ」

 

ニンフが再びゲートを開く

 

「イカロス、何かあるのかは分からないけど俺は大丈夫だ。それにダイタロスにお前達を頼むって頼まれたから心配するな」

 

「会ったのですか?」

 

「あぁ、さっきな。あ、これは秘密にしておいてくれよ」

 

「はい」

 

「じゃあ行ってくる」

 

ゲートをくぐり出た先は何かの機械の上で何もない殺風景な場所だ

 

「ここが、トモちゃんの、夢?」

 

「やっとこられたわね」

 

「違う!」

 

「え?ここ、トモちゃんの夢じゃないの?」

 

「全然違う。俺の夢は緑あふれる草原だし、こんな殺風景なところじゃないし」

 

「それじゃあまた失敗?」

 

(おかしい。俺が訪れた場所が智樹の夢だとすればあの場所に出るのが普通だ。それなのにどうしてこんな所に。それにイカロスの心配していた事と関係があるのか?)

 

考え込んでいると部長が座り込み何かを見ている

 

「何を見ているんですか部長?」

 

「これを見てみろ」

 

指さした所を見るとそこは葉を落とした小さな木が立っておりどんぐりが落ちている

 

「これはシイの木と言って常緑樹なんだ」

 

「常緑樹って確か一年中葉が茂っている木ですよね」

 

「あぁ、だがこの木は葉を落として冬眠しているという事は現実では有り得ない」

 

「つまりここは夢の中と言うわけですか」

 

(だが、それはあくまで現実の常識で考えた場合だがな)

 

「ねぇ、あれ、なんだろう」

 

そはらが指さした方を見るとそこには何か塔のようなものが建っている

近くに寄ってみるとそれは石で出来ており石板には文字が書かれているが読めない

 

「なんか怖く思うな」

 

「怖い?」

 

「文字って書き方で感情が出るじゃないですか。この文字は何というか悲しみ、怒り、絶望、そういった感情が伝わってきてなんんだか怖いです」

 

「私も、なんだかちょっと気持ち悪い」

 

「帰るかそはら?」

 

「うん・・・」

 

数々の謎を残しながらみんなは現実世界へと帰還した

 

「結局智樹の夢については分からずじまいだったな」

 

「そうね。でも会長的には楽しかったわよ」

 

「まぁ、智樹の夢はその内分かるさ。イカロス、ゴミ捨てを手伝ってくれないか?」

 

「はい」

 

部長とイカロスはごみを持って学校の焼却炉に行きゴミを捨てる

 

「イカロス、お前、本当は智樹の夢の正体を知っているんじゃないのか?」

 

「それは・・・」

 

「答えられないと言う訳か」

 

「・・・すいません」

 

「まぁ、良い。それよりこれが何か分かるか?」

 

部長はポケットからドングリを取り出しイカロスに差し出す

 

「ただの、ドングリですが・・・」

 

部長はニンフの言葉を思い出す『言い忘れていたけど夢の中の物は持ち帰れないから』このドングリはさっきの智樹の夢と思われる場所で拾ったドングリだ

 

「そうだ。ただ(・・)のドングリだ」


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