ハーピーの襲撃から数日が経った
鎖が切れ一人になったニンフをシュウは引き取り家に住まわせている
それから数日後ニンフは洗面台の鏡に映る自分を見つめている
「これからどうしようかな・・・」
鎖が切れて首輪に仕掛けられた爆弾が爆発する危険は無くなった。鎖が亡くなったという事は同時に私はマスターを失ったという事であるわけでエンジェロイドはマスターの命令を遂行する事に存在意義があるのに私にはそのマスターがいない
「新しいマスターか・・・」
一番最初に頭に浮かんだのは鎖を切ってくれたシュウの顔だ。イカロスのマスターでもあるけど別に一人が複数のエンジェロイドと主従関係を結んではならないという制約もない
洗面台から移動し居間に行くとシュウはいつもの指定席でお茶を飲んでいる
「おはようニンフ」
「おはようじゃないわよ。もうお昼よ。日和なんて朝早くから畑で仕事しているのよ」
「ここは俺の家。つまり俺が何をしようと自由だ。それよりそこのリモコン取ってくれない?」
「あぁ、これね」
足元に転がっているリモコンを取りシュウに渡す
「ありがとうニンフ」
「・・・」
「どうした?」
「別に、何でもないわよ」
地上の人間はすぐにお礼を言う。地上とシナプスで違うのは分かるが正直止めて欲しい。調子が狂うというか言われ慣れていない言葉だからどう対処していいか分からない
「ねぇ、シュウ」
「うん?」
「シュウは私とインプリンティングをしようとか思わないの?」
「ニンフ、ちょっとそこに座りなさい」
「う、うん・・・」
ニンフはシュウの前に座りシュウもニンフに向かい合う
「ニンフ、この際だから色々と言っておこうと思う。俺はお前に自由に生きて欲しいと思っている」
「自由に?」
「そう、誰かのために生きるのが悪いとは言わないがそれはインプリンティング有り無しとかじゃなくて自分がこの人だったらいいと思った奴のためにすればいい
今は自分の頭で考えて自分の意思で決めて生きればいいと思う。そうすればそのうちにそういう奴に会えるさ。焦らずにゆっくりやればいいさ」
「自分で、決める・・・」
今までそんな事をした事はなかった。ずっとマスターの命令で動いていた
「それでも命令されたほうが楽な事もあるのよ。エンジェロイドは命令を遂行するのが存在意義だから」
「それはお前を見ればよく分かるよ。命令を遂行する事で自分の存在を実感できる。だったらちょっと俺と賭けをしないか?」
「賭け?」
「あぁ、一年。今から一年の間に俺がお前に自由の素晴らしさとやらを教えてやる
一年の間にお前が自由の素晴らしさを理解して納得したら俺の勝ち
だけどお前がもし、自由の素晴らしさを理解出来なくてマスターが必要だと思うなら俺がお前のマスターになってやる。どうだ?」
「いいわ。その賭け乗ったわ」
「よし、じゃあ早速やるか」
「何をするの?」
「みんなで出掛けるぞ」
こうしてシュウの自由は素晴らしい作戦が始まった