そらのおとしもの 人と天使達の非日常   作:龍姫の琴音

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第十一話取り戻した記憶

ニンフと名乗る少女はイカロスの脳にハッキングを開始した

 

「機能プロテクト99%正常、可変ウィングプロテクト72%正常。記憶域(メモリー)プロテクト100%に思考制御(エモーシャル)プロテクト100%。なるほど。それで瞳の色が緑色に変化しているのね」

 

「貴女は、だ、れ?」

 

記憶(メモリー)だけでなく感情にまでプロテクトをかけられているなんてまるで人形ね」

 

手を放しイカロスを蹴り飛ばすと岩山は完全に壊れイカロスは岩山を貫通し吹き飛んだ

 

「あはは、これがあのシナプスを震撼させた空の女王(ウラヌス・クイーン)なんてね」

 

 

空の女王(ウラヌス・クイーン)・・・?私は愛玩用、エンジェロイド」

 

「はぁ?愛玩用?あなたが愛玩用?あんまり笑わせないでよ」

 

逃げられないようにニンフはイカロスの頭を踏みつける

 

「シナプスに連れ帰れってマスターに言われているの。大人しく付いて来るわよね」

 

「わたしは・・・愛玩用、エンジェロイド」

 

「そう、もう少しお仕置きがしなくちゃ」

 

※※※※※

 

イカロスが敵と接触している頃シュウはみんなと家の飾りつけを行っている

居間には何故かイカロスさんお誕生日おめでとうという横断幕が掲げられている

 

「日和、イカロスって今日が誕生日なの?」

 

「ううん。この前、聞いたら分からないって言われたからそはらさんと守形先輩に相談したの」

 

「天使と言ったらクリスマスだろう」

 

「あぁ、確かにそうですね」

 

守形先輩の意見に智樹が同意する。確かにイメージとしては合っている

 

「そりゃ、そうだけど・・・」

 

「それにイカロスさんってまだ人形みたいなところがあるっていうかあんまり笑わないし少しでも笑えるようになったらな~って思って」

 

「日和の言う事は分かったが俺からすればイカロスは十分に感情を出しているように見えるがな」

 

「そうなの?」

 

「表には出ていないけどヒヨコやスイカ可愛がったりスイカを畑に植えて育てているし初めてのお使いで買ったスイカが腐っているのがわかったら落ち込んでお墓を作って手を合わせたりとイカロスって感情ではないけど行動だけで見れば十分に感情表現できているんだと思うんだよな」

 

「それにしてもイカロスちゃん、少し帰りが遅くないかしら。もう一時間は経つわ」

 

会長の言う通り既にかなり時間が経っているが一向にイカロスが帰ってこない。歩きならわかるがイカロスは空を飛べる。こんなに遅くなるなんて普通では少し考えられない

 

「まぁ、あいつなら平気だと思うが・・・早く帰って来いよイカロス」

 

最後だけみんなに聞こえないように小声で呟いた

 

シュウの心配するようにイカロスはずっと痛めつけられ羽は片方が折れており体中ボロボロだ

 

「マス・・・ターが・・・呼ん・・・でいる。そう・・・だ。クラッカーを・・・買いに行かないと・・・」

 

「どこへ行く気なの」

 

ガシッと頭を掴まれニンフはイカロスの顔を木に何度もぶつける

 

「ねぇ、聞いているの。どこに行くの空の女王(ウラヌス・クイーン)さん」

 

木が折れると今度は地面に顔を叩きつける

 

「わた・・・しは、愛・・・が、よう・・・」

 

「あくまで愛玩用って言い張る気ね。いいわ、だったら思い出させてあげる。私は電子戦用エンジェロイド。私のハッキングシステムで記憶域(メモリー)のプロテクトだけ解いてあげるわ

そして思い出しなさい。自分が愛玩用なんてちゃちな物じゃないってことを教えてあげる」

 

ハッキングを暗いイカロスの頭の中で何かの映像が流れ込んできた

 

自分の目の前に翼を生やした人間が食事をしている

 

地蟲(ダウナー)どもが巨大な塔を建設している」

 

「どもう天まで届く塔を建ててこのシナプスに攻め入る気らしい」

 

「ククッこのシナプスまで!?地を這う虫は空が遠くて大変だな」

 

「あの国には地蟲(ダウナー)が全部で何百万もいるらしいがどうする賭けるかね?」

 

「おいおい空の女王(ウラヌス・クイーン)相手にか?賭けにならないだろう」

 

ふふ・・・だから何分もつかだよ」

 

「よし、決まりだイカロス」

 

「はい」

 

踏みつぶして(・・・・・・)こい。一匹残らずだ」

 

「はい」

 

これは・・・私の記憶?

イカロスは地上降りると次々と街の人間を殺していき最後は矢を国の中心に放つと着弾と同時に巨大な爆発が起こり国はたった一瞬で滅んだ

 

この映像を見て前にマスターが言っていた言葉を思い出した

『・・・あぁ、兵器は人の命を奪うだけで誰にも幸せにする事も出来ずただ人を不幸にするだけでなんか、イヤだなって思って』

 

あぁ・・・私は兵器なんだ

 

その事実が分かった時、悲しくて、苦しくて涙が止まらない

 

「あーはっはっは!何よ。泣く程悲しかったの。自分が愛玩用じゃなかったのが泣く程!?アハッアハハ!ハハ・・・ちょっと待て。お前、なぜ泣ける(・・・・・)?」

 

「・・・」

 

「私が解いてのは記憶域(メモリー)だけ・・・思考制御(エモーショナル)のプロテクトは・・・解いていない!」

 

その時イカロスから膨大なエネルギーが発生した

 

思考制御(エモーショナル)プロテクト100%解除。可変ウィングプロテクト解除進行中・・・80・・・90・・・。並行して自己修復プログラム開始。昨日プロテクト解除進行中。70・・・80・・・90・・・100』

 

マズい・・瞳の色が紅く・・・ヤツ(・・)が目覚める。あのシナプスを恐怖におとしいれた空の女王(ウラヌス・クイーン)

 

瞳の色が緑から紅に変わり頭の上には天使を思わせるリングが浮かんでいる

 

『自己修復完了。目標(ターゲット)捕捉(ロックオン)

 

Artemis(永久追尾空対空弾)発射

 

イカロスの羽からいくつものホーミングミサイルが発射されニンフに襲い掛かる

 

「くっ!」

 

ニンフはその場から離れるがアルテミスは追尾型の兵器。どこまで逃げても追ってくる

 

(何故だ!何故プロテクトが解けた・・・まさか私のハッキングをシステムを逆二乗っ取った?いや、そんなことあり得ない!)

 

ニンフが動揺しそのせいで一個のミサイルがニンフの前から迫って来た

 

「しまっ!」

 

着弾し爆発が起こりニンフは地面に叩きつけられた。起き上がると自分の顔に泥が付いているのに気づいた

 

「私の顔に、泥が・・・いや!汚い汚い汚い!汚いもの大っ嫌い!

よくも、私の顔に泥を・・・許さない!粉々にしてやる!」

 

大きく息を吸い込むとエネルギーが収束されていく

 

超々超音波振動子(パラダイス=ソング)

 

口から超音波のブレスを放つとイカロスは自分の周囲に防御層で囲むとニンフの技を簡単に防いだ

 

aegis(絶対防御層)・・・ですって」

 

次にイカロスは弓と矢を形成していく。矢は普通の矢だが弓は黒く禍々しい気配を出しており威圧感がある

 

「おい・・・ちょっと待て。それは最終兵器(APOLLON)。正気か!この国ごと吹っ飛ぶぞ」

 

「大・・・丈夫・・・貴女に着弾したら・・・aegis(イージス)を全開にして地上を守る」

 

「バカな!そんな事をすれば貴様もただではすまない!」

 

「それ・・・でも・・・私は・・・マスターの所へ戻る・・・。私は愛玩用(・・・)エンジェロイドタイプα(アルファ)イカロス・・・お願い・・・退いて・・・ニンフ・・・」

 

「・・・分かったわよ。私もむざむざ消える気はないわ。だけど一つだけ言っておく。いつまでだまし続けられる(・・・・・・・・)のかしら?」

 

「!」

 

「あんたの正体を知ったらあんたのマスターはどう思うんでしょうね。この『大量破壊兵器』」

 

言い捨てる様にしてニンフは認識をされないようにする光学迷彩のようなシステムを起動させてイカロスの視界から消えイカロスは武器をしまい瞳の色も紅から緑に戻った

 

「私はどうすれば、いいんでしょうか・・・」

 

応えの出ない自分に投げかけイカロスはマスターの元に帰った

 

時刻は日付が変わる五分前。シュウは自宅の居間でイカロスの帰りを待っていた。みんなには謝って帰ってもらいパーティーは後日やる事が決まった

日和にも先に寝る様にって言っておいたため今はシュウしか起きていない

 

ガララ・・・

 

玄関の戸が開く音がし帰って来たと思い玄関に向かうとそこにはボロボロになったイカロスがいた

 

「イカロス!どうしたんだその怪我!?」

 

「えっと・・・ぼーっとしていたら・・・木に、ぶつかって」

 

「まぁ、いいや。とりあえず風呂に入って泥を落としてこい」

 

「はい」

 

私はマスターに嘘をついた。嘘は人を傷つけるもの。でも大丈夫。隠し通せれば絶対に大丈夫

 

そう自分に言い聞かせ風呂場に向かうために居間の横を通り過ぎると居間にかかっている横断幕を見て急に胸が締め付けられるようになった

 

「あ・・・」

 

居間の中ではシュウガ薬箱を取り出し消毒液を探している

 

「待てよ・・・イカロスに消毒液とかって効くのか?いや、そもそも消毒液を使っていいのか?」

 

悩んでいるとシュウの背中にイカロスが顔をうずめてきた

 

「イカロス?」

 

そこには涙を流し必死に泣き声を抑えようとし泣いているイカロスの姿があった

 

「何があったか知らないが泣きたいなら思う存分に泣け。お前がそれで少しでも楽になれるのなら俺はマスターとしてお前の傍にいてやるから」

 

「はい・・・ありがとう、ございます。マスター」

 

イカロスがこの家に来て半年が経つが俺はこの時、初めてイカロスが自分の感情を表に出してしかも顔に出ているのをみた。でもその表情が笑顔ではなく悲しい顔だったのがとても悔しかった


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