sunny place 〜彼女の隣が私の居場所〜   作:律乃

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更新、1日遅れてしまいすいません…。

今回の話はタイトルを見た方は察していらっしゃると思いますが…今回は二つの話を合わせて、更新してます!

一つは火曜日に更新する予定だったキャリバー編。もう一つはR-18版の5話・後書きをご覧になった方はご存知かもしれませんが…この小説制作当時の主人公と今の主人公がばったりと会ってしまう話を書いて見ました。

いつもの如く、コロコロと視点が変わりますので…どうか、読むときにご注意ください。

では、本編をどうぞ!


018 A man of high caliber/ カナタとヒナ①

火妖精族(サラマンダー)音楽妖精族(プーカ)の刀使いに両手を差し出され、それをしなやかな両手を添えて立ち上がった深窓の令嬢を視界に収めた瞬間、水色のショートヘアーに同色の三角耳を生やした猫妖精族(ケットシー)ことシノンは藍色の瞳を細めて、その令嬢を睨んでいた。もちろん、その横でデレデレとゆるゆるに緩みきった表情を浮かべている恋人も一瞥する。

 

“何よ…いつにも間にして、デレデレしちゃって…”

 

不機嫌に腕を組み、カツンカツンと氷で出来た床をブーツで蹴飛ばしては、いまだに深窓の令嬢の左手を強く握りしめ、下心ありありの表情を浮かべて…甲斐甲斐しく令嬢のお世話をしている恋人へと溜まっていく積怒を拡散していく。床を思えば、完全なる八つ当たりだとは分かってはいるが、現在進行形で溜まり続けているこの怒りを何やらかの形でどうにかしないと今にも肩に掲げている弓矢で恋人を撃ち抜いてしまいそうになる。

実際、今も刀使い達は普通の声音を無駄にカッコいいトーンに変えると緩みに緩みきっている顔をその時だけ引き締め、どっちがこの令嬢を入り口までエスコートするかを言い争いしている。

 

「お姉さん、一人で帰る?」

「あぁ、出口までちょっとばっかし遠いしな」

「もし、心配ならあたしが送っていくよ」

「いや、お前はこの攻略に必要な人材だからな…ここは俺がーー」

「ちょっ、クラさんばっかし、いい思いしようとしてるでしょう!」

「けっ、いっつも女の子に囲まれてキャッキャウフフしてるお前が何を今更言ってる。ここは俺に譲るべきだろ!」

「好きでキャッキャウフフしてるんじゃないし!みんなが勝手に寄ってくるんだって!」

「あぁ〜ぁ、いいよなぁ〜。女子にモテるやつはさぁ〜、俺も一度でいいから言ってみてぇーよ、そんなセリフ」

「じゃあ、ここで言えば?ほら、聞いてあげるから言いなよ。ほら、ほらっ」

 

顔を目一杯近づけ、醜い言い争いを続ける子供な刀使い達を前に…助けられた令嬢も困り果てている様子であった。そんな令嬢へと声を掛けるのが、キリトやユウキたちであり…令嬢もやっと助け船が来たと困り顔を綻ばせた。

 

「えぇ…と、あいつらは置いといていいですから」

「そうそう、あの二人。無駄に仲がいいんだから」

『仲なんか良くないわ!!』

「あははっ、そう言うところが仲が良いんだって」

 

同じタイミングで否定する刀使い達を見て、けたけた笑うはユウキだけであり…他のみんなは謎の令嬢・フレイヤの目的を聞き出すと、未だに言い争いをする刀使い達を置いて、スリュムが待つボス部屋へと歩いていく。

 

そんな中、水妖精族(ウンディーネ)特有の青みが掛かったロングヘアーを揺らして振り返ったアスナは、今まで不気味な静けさを保っている親友(シノン)へと恐る恐る声をかける。

 

「シ、シノのん…?」

「何?アスナ」

「リーファちゃんも言ったけど、さっきから無言だけど大丈夫?」

「えぇ、大丈夫よ」

「そう?」

「えぇ。今ならスリュムだろなんだろうと一撃で仕留められる気がするわ。それもこれもあそこで鼻の下を伸ばし続けてる色ボケのおかげだわ」

「あはは…そう…だ、ね…」

 

ニッコリと事情を知らない者が見たら、惚れ惚れしてしまうような美しい笑顔を浮かべて…そう答えるシノンにアスナは冷や汗をスゥーと流す。

後方でそんな話がされているとは気づいてない前衛を任されている刀使い達は又しても醜い争いを続けていた。

 

「ささ、床が滑りやすいですから…あたくしめのお手を取ってください、フレイヤさん」

 

とカナタがフレイヤへと手を差し伸べると、それを押しのけるようにクラインがフレイヤへと手を差し伸べる。

 

「なっ!フレイヤさんをエスコートするのは俺様の役目だっての!フレイヤさん、そんな奴の手を取る必要なんてないですよ。そいつは今までそんな事を言っては女の子を取っ替え引っ替えしてしたんですから。そんなナンパ男よりも、どうか わたくしめのお手を」

「ハァ〜ァ?どの口が言うんだ、この偽侍!!あんたの方があたしより酷いだろうがっ!!」

「んだと、てめぇ!お前の方が俺も酷いだろうが!!実際、あそこに並んでいる女子メンバー、お前が美味しく頂いちゃった後だろうが!」

「んなわけねーだろ、このクソ侍!!フレイヤさんが居る前でデタラメ言いやがって!あと、未成年者が多いパーティでそういう下ネタ言う奴は一生モテませーん♪」

「おうおう、そうかい」

 

ほっておいたら、取っ組み合いの喧嘩になりそうな雰囲気が漂っていたので…フレイヤが苦笑いを浮かべつつ、二人をなだめる。

 

「まあまあ、どうか落ち着いてください、剣士様方」

 

しかし、一旦血が上ってしまったものは何をどうしても下がらないらしく…しばし、廊下には二人が発する汚い言葉が流れ続けていた……。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

【カナタとヒナ ①】

 

運命というのは不思議なもので、第三者から見れば些細な出来事でその人が進む道は大きく異なったものになり、全く違う運命を辿ることになる…それは大きく異なった道を歩んでいってしまったとある少女達が本来は出会うはずが無いのに、出会ってしまったという摩訶不思議な物語である。

 

その物語の事の始まりは、とある少女がこの世界へと迷い込んでしまったことからなる。

 

「……ぅぅ…。クー…さ、ん…どこにいるの?……私を…一人にしないでよ……」

 

その少女は困っていた。

突然、白い光に巻き込まれたかと思うと…見知らぬ街の中に居たこと。歩き回って、見知ったオブジェクトを見つけ、下の層に降りようと思ったが何故か降りれなくなってしまってること。どうしようかと思い、辺りをキョロキョロして知ってる人を探そうとしても…見知った人が居なかったこと。また、少女の心を一番不安にさせてるのは…唯一の心の拠り所となってる恋人の姿が何処を探してもない事であった。

 

「もう少し…探してみようかな…?でも…」

 

探すとしてもどう探せばいいか分からない故に、少女は小動物のように身体を縮め、キョロキョロと忙しなく辺りを見渡し、心細さからギュッと自分が着ている衣服を握りしめる。

そんな少女を見つめる視線が三つあり、こそこそと何かを話し合っているようだった。

 

「なぁ、あそこにいる奴って…蒼目の侍じゃね?」

「ん?違うだろう、蒼目にしては胸ありすぎだろ。それにあんな女子力高くねぇーだろ、あいつ」

「あはは、だな。でも、あの子。割といい感じじゃね?」

「あぁ、上玉だな。どうする?俺らで案内してやる?」

「いいんじゃね、やる事ねぇーし」

「あぁ、案内した後にたんまりご褒美も貰ってな」

 

ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべる男性達は少女の前に歩いていくとわざとらしく優しい声音で話しかける。

 

「こんにちわ」

「……ッ」

「そんなに警戒しないでよ」

「そうそう、俺ら。君が困っている様子だったからさ」

「……わ、かりましたか…?」

「そりゃ、そんなにキョロキョロしてたらね」

「さっきから誰か探している感じだったけど…誰、さがしてたの?」

 

男性の一人のそう聞かれ、少女はギュッと唇を噛むと探している人を話す。

 

「クーさん…いいえ、クラインって名前のプレイヤーを探して居たんです」

「あぁ、クライン。それなら俺ら知ってるぜ」

「おお、ついてきな。クラインにあわせてやるよ」

「ありがとうございます!」

 

深く頭を下げる少女に男性達はニヤニヤと笑いながら、人目がつかないところへと歩き出す。小さい小道をギグザクに入れ込み、大きな広場に出た時に男性達は振り返ると…上目遣いに不思議そうにこちらを見てくる少女の容姿を確認する。

癖っ毛の多い栗色の髪を腰近くまで伸ばし、こっちを不思議そうに見つめるは空のように透き通った蒼い瞳。適度に整った顔つきは綺麗系統で、触れれば折れてしまいそうなほどに細い手脚が橙を基調した和服から色っぽく覗く。

 

「……なぁ、やっぱり…蒼目なんじゃ…」

「……いいや、違うに決まってるだろ。あいつのおっぱい、あんなに膨らんでたか?」

「……いいや、膨らんでねぇよ。…まぁ、細かいことはいいからさ。早いこと美味しく頂いちまおうぜ」

 

実際、目の前にいる少女がとある攻略組に似てることは否めない。だかしかし、だからこそ…男性達は内心盛り上がっていた。

あの攻略組にこんなことを仕掛ければ、返り討ちにしかねないからだ。奇襲に成功したとしても、いつも隣にいるあの弓使いに知られてしまえば…自分たちの命の保証がない。

故に、この激似の少女は男性達にとって神からの贈り物のように思えたのだった。

 

「あ、あの…」

「ん?どうした?」

「クラインさんはどこですか?私、一刻も早く…あの人にーー」

「あぁ、直ぐにあわけてあげるよ。君からの報酬をしっかり受け取った後に、ね?」

「……ほう、しゅう…?」

 

ニヤニヤした笑みを浮かべる男性達を見て、そこでようやく少女は自分が罠にはめられていていたことに気づいたらしい。勢いよく振り返り、逃げ去ろうとする少女の前に一人の男性が回り込む。

そして、その男性が少女のほっそりした手首を掴むのを見て…少女は大きな声を上げようとする。

 

「まあまあ、もう少し。ここにいなよ」

「…嫌です!私はクラインさんに会わなくては……」

「ふーん、あまり手荒な真似はしなくなかったんだけどね」

「いっ、むぐ…!?」

「はいはい、静かにね」

 

唯一助けを呼ぶ方法を奪われ、少女はぽろりと涙を流す。そんな少女を見て、ますます笑みを深めた男性達はそのゴツゴツした手を少女の柔肌へと伸ばそうとしてーー

 

「ぐは!?」

「ごほ!?」

「がは!?」

 

ーー綺麗なソードスキルを叩き込まれ、あまりの衝撃に気を失い…地面へと倒れこむ。

バタバタと自分の周りを取り囲んでいた男性達が地面へと伏せていくのを見て、少女は恐怖からの解放感に満たされ…その場にへたり込み、自分の前に差し出されたほっそりした左手を見つめる。

 

「お嬢さん、大丈夫?あいつら、この町でも名の知れた悪党だからね、今度からは気をつけなよ」

 

頭上から響くアルトよりの声に助けてもらったお礼を言おうとして、上を向いたところで…互いに固まる。そして、同じタイミングで息を呑み…呟く。

 

「……へ?あたし…?」

「……え?わたし…?」




まず、キャリバー編は次回はスリュム戦なのですが…予定ではカナタvsシノン戦となると思われます。
言わずもがな、原因はあの人のアレで…です(苦笑)

そして、淡々と進めてしまった制作当時の主人公と本編の主人公がばったりと会ってしまう話ですが…
えぇ、皆さんの言いたいことは分かりますとも…あの弱々しい奴、誰!?ってことぐらい(笑)
彼女も彼女で苦難の道を歩んできたのです…そして、その旅路で心許せる恋人に出会い、今はその人にベッタベタなのです(微笑)

まぁ、それは後々明らかにしていくとして…参考程度に、下に制作当時と本編の彼女の違いを書いてみますね…(微笑)

例) 本編/制作当時

一人称) あたし/私(わたし)

胸元) 年相応/大きく膨らんでいる

口調) 男勝り/丁寧

服装の色) 橙と黄を基調/橙と赤を基調

服装の違い) 首に黄緑のマフラー/左二の腕に赤い趣味の悪いバンダナ

利き手) 左手/右手

武器) 刀と小太刀/主に短剣。たまに槍

身長) かなり高め/年相応

恋人) シノン/クライン

※制作当時は、原作第1巻から書き進めていく予定だったので…シノンは登場しない予定でした。

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