sunny place 〜彼女の隣が私の居場所〜   作:律乃

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大変、お待たせしました。
クラインとヒナタのラブラブデート後半戦ですっ!!
とその前に…シノンとドッキリを仕掛けた皆さんによる会話がありますので…それもお楽しみください( ̄^ ̄)ゞ

では、本編をどうぞ!

*前回同様読みにくいやもしれません…


1周年記念003 ドッキリから始まる恋はあるのだろうか? 後編

イグドラシル・シティ大通りに看板を出す【リズベット武具店】のお客様スペースの片隅、一人の猫…猫妖精族(ケットシー)が机へと顔を伏せ、しょんぼりとその淡い水色の三角耳・フサフサのしっぽも垂れ下がっているのを正面から見ていたアスナは慌てたように声をかける。

このような状況でない時は実に愛らしい光景なのだが…アスナやその他にも彼女を慰めるために集まった者たちは其々バツの悪そうな顔をしている。

それもそのはずだろう…だって、彼女がここまで塞ぎ込んでしまうような出来事を引き起こしてしまったのは自分たちにも原因があるのだから…。

 

「ーー」

「シ…シノのん、大丈夫だよ…!カナちゃんも本気であんな事を言ったわけじゃあ…」

「そんな事ないわ…。だって、昨日別れを切り出されたんだもの…」

「え?」

「それ本当なの!?シノン」

「えぇ…」

 

フィリアの質問に力なく答えた水色のケットシーことシノンは何かを思い出すように宙を見つめると…ぽつんぽつんとその時の状況を話す。

 

「晩御飯を一緒に食べている時ね…。突然、箸を置いて真剣な顔をしたかと思うと…『ねぇ、詩乃…あたし達別れない?』って…」

 

藍色の瞳が波打つのはシノンが涙を流さないようにしているからだろう。

 

「私がね…『どうして?』って聞くと…あの子がこう言ったの…『詩乃より好きな人が出来たんだ』って…ぅっ…」

 

遂に溢れ出してしまった涙を隣に座る同じ種族のシリカに拭いてもらい、背中を左隣に座るルクスに撫でてもらいながら…シノンが別れ話を切り出された時の状況を包み隠さず話す。

 

「私だって冗談って思ったの…でも…『冗談なんかじゃないよ。あたしは真剣に言ってるんだ』って…。最後には…『ごめん…。あたし、詩乃のこと飽きてしまったんだ…』って…その後、お風呂に入っていったんだけど…あの顔は真剣だったわ…」

「あらあら…」

「それでそのプレイボーイ…いいえ、プレイガールは何処(いずこ)に?」

 

シノンの話を聞き終えた周りがそれぞれの表情を浮かべる中、リズベットが表情を怒りの一色で染めると…シノンへと元恋人の場所を聞く。

それに形良い水色の眉を顰めたシノンが今朝の事を思い出し、それを告げる。

 

「さぁ?今日やけにおめかししてたから…今頃、クラインとデートでもしてるんじゃーー」

「ーーじゃあ、それをこっそり覗いてみましょう」

 

そう言って、不安そうなシノンを真っ直ぐ見つめたリズベットがギュッと怒りで震える拳を握りしめると言う。

 

「今の今までシノンしか目に入ってなかったあのカナタがクラインに恋するなんてありえないわ。絶対、裏があるはずよ…その裏を必ず暴いてみせるわ!シノンの為にも!」

 

というわけで…リズベット達によるカナタの裏を暴く為の尾行が始まったのであった…

 

 

γ

 

 

そんな女性陣たちが密かに着いてきているとは気づいてない遼太郎と陽菜荼はというと…カップルのデートで定番であろう遊園地に来ていた。

 

到着するまで遼太郎の腕にしがみついていた陽菜荼は遊園地が近づいてくるとその身体を外していき、今では完全に遼太郎から離れてしまっていた。

もう少し二つの膨らみの弾力を味わっていたかった遼太郎からすれば寂しくはあるが…待ち合わせた時からずっと指が絡まったままである右手へと視線を向けては思わずニヤけてしまいそうになる。

 

というのも、今まで気にも留めてなかったがーー陽菜荼という少女は美少女もとい美人という種族に属するらしい。

確かにこっちを見つめて微笑む蒼い瞳は切れ長だし、彫りが深く思う適度に整った顔立ち、華奢だが遼太郎と並び立つ程にある身長からしても…彼女が普通の女の子ではないと分かる。

 

しかし、そんな事は遼太郎にとっては些細な事であった。遼太郎が何よりも嬉しく思うかつニヤけてしまう事というのはーーすれ違う人達…主に男が必ずというくらい振り返り、陽菜荼と遼太郎を交互に眺め、悔しそうにその唇を噛みしめる様子を何度も目撃していたからだ。

今までは遼太郎がその立ち位置であった…だがしかし、これからは違うのだ…!

 

「?」

 

チラっと隣を見ると不思議そうにこっちを見上げてくる少女…いいや、彼女…ガールズフレンドの姿がある!

それも街を歩けば振り返り、世の男性が一度は触れてみたい話してみたいと思う美少女が自分の彼女なのである。

 

“くぅ〜、長かった…。長かったぜ…この至福のひと時が!”

 

苦労の日々を思いだし、溢れそうになる涙に気づかない陽菜荼は遼太郎の手を引くととある乗り物を指差す。陽菜荼が指差す方を見た遼太郎は苦笑いを浮かべる。

 

「あっ!遼さん遼さんっ、あたし今度はあれに乗りたいです」

「おいおい、そんなにジョットコースターは乗れねぇーよ」

「もう〜。遼さん、もうへばってしまったんですか?」

「んな事言って…俺、朝からなにも食ってなくて…お腹が空いてさ…」

「はいはい、分かりました。なら、今度はあそこでランチにしましょう?」

 

そう言って、陽菜荼が遼太郎を引いていったのは売店であり、慣れたように注文する陽菜荼にメニューを任せた遼太郎はそれを受け取ると空いた席へと腰掛ける。

席に着いた途端、陽菜荼がチラっと遼太郎の方を見るとカスタードとケッチャップが多くかかったソーセージをあむっと咥える。それだけならいいのだが…何故かチロチロとカスタードやケッチャップを舐めとる赤い舌から視線が外せなくなりそうになり…遼太郎はそこで周りから自分と同じくらい注がれている熱い視線に気づく。

 

“本当はもっとやって欲しくはあるが…ここは彼氏として注意すべきだな”

 

ごほんとわざとらしく咳払いした遼太郎が今だに妙にエロい食べ方をしている陽菜荼へと声をかける。

 

「…あむ」

「陽菜荼さんや陽菜荼さんや」

「なんです?」

「なんです?じゃねーよ!なんて、食べ方してるんだお前ってやつは」

 

呆れ顔な遼太郎をキョトンとした表情で見てくる陽菜荼を見る限り、悪意は無いらしい。

 

「…え?だって、ソーセージやチョコバナナはこうやって食べた方が男性は喜ぶって…」

「お前はどんなものから学習してくるんだ…。頼むから…次からはそういう事はしないでくれ」

「でも、実際遼さんも興奮したでしょう?」

「しねーよ!バカ」

「ちぇ…それは残念」

 

そう言って、頬を膨らませる陽菜荼と共にランチを終えた遼太郎はその後、陽菜荼のリクエストに答えて遊園地内にあるジェットコースターを全部制覇し…ヘトヘトになったので近くのベンチ腰掛けていた。もちろん、隣には陽菜荼の姿がある。

夕日が落ちかけている空を見上げている彼女の横顔があどけなさが残っているものの美しく見え、遼太郎はごくりと唾を飲み込む。

 

「陽菜荼」

「りょ、うさん…?」

 

ピクッと華奢な肩を震わせ、遼太郎を上目遣いに見つめる陽菜荼に胸が高鳴る。陽菜荼が呼吸する度に僅かに震える桜色の唇がやけに眩しく見え、肩に置いた両手が震える。

 

「……キキキキ、きしゅしていいか?」

「……ふ。…はい、いいですよ。その…場所が場所なので…あまり激しいのは困るですけどね?な〜んて…」

 

こんな時なのに、そうおちゃらける彼女に魅了されつつある遼太郎は緊張した表情でゆっくりと桜色の唇へと自分のそれを近づいていきーー

 

“なんか…柔らかいけど、これは弾力がありすぎないか?”

 

ーー想像していたよりも固い陽菜荼の唇に眉を潜める遼太郎の耳へと穏やかな声が響いてくる。

 

「ごめんなさい、遼さん。あたしの唇は詩乃専用の物なので…流石にこればかりはあげられません」

 

閉じていた目を開ける遼太郎は目の前にある空のように透き通った蒼い瞳を呆けた表情で見つめる。そんな遼太郎へと慈愛の色を潜ませて、優しく微笑む陽菜荼の左掌に唇を押し付けている遼太郎はさぞかし、間抜けな顔をしていることであろう。

実際、間抜けな顔をしていたらしい…陽菜荼は遼太郎のその顔を見て、満足げにニカッと意地悪に笑うと立ち上がる。

 

「さぁーて、遼さんの間抜けなお顔と…やっとコソコソと隠れて、あたし達の後をつけていた元凶さん達が顔を表したところなのでーータネアカシとちょっとしたお説教タイムといきましょうか?」

 

振り返って、物陰から姿を現している女子メンバーと俺を交互に見て…そう言ってのけた陽菜荼の表情は今まで見たことないくらいに怒りに満ちていた。

 

 

γ

 

 

エギルが営むカフェに連行された遼太郎と詩乃たちは其々、椅子に腰掛けるとカウンター席に腰掛ける陽菜荼を見つめる。

 

「…さて、まずどこから話しましょうか?」

『ーー』

「そうだね、あたしがいつ気付いたか…から言おうか」

 

不敵笑い、目の前にあるレモンスカッシュを口に含んだ陽菜荼は行儀悪くカウンター席へと膝をつくとそのカウンター席の後ろに並んで座る全員を見渡す。

 

「気付いたのは最初からだね。茂みから珪子のツインテール普通に見えてたし…何より、遼さんの告白受けた時に茂みの中から詩乃の殺気が伝わってきたからね…」

「…ごめんなさい」「…だって、まさかokするとは思わなくて…」

 

しょんぼりする珪子と詩乃をうんうんと満足げに見た陽菜荼は遼太郎へと視線を向ける。

 

「そもそも、遼さん自身があたしのOKを信じてない様子だったし…OKの後にみんなが隠れている方を振り向いていたでしょう?あれはあたしじゃなくてもバレます」

「何よ。じゃあ、クラインが全部悪いんじゃない」

「そこ、反省はしておいでです?」

「はいはい、してるわよ」

 

陽菜荼から鋭い視線を向けられ、里香ははいはいとめんどくさそうに言うと流石にそれにはカチーンときたらしい陽菜荼が里香へと近づき、身を乗り出す。

 

「ってゆうか。里香でしょう?こんなくだらないことを思いついたの」

「なんで、あたしって決めつけるのよ」

「あたしが知る限り…君しかこんな事を思いつく人が居ないから!以上!」

「へー、あんたの中のあたしのイメージってそうなの。ふーん、今度から武器の製作や修理する時友人価格で五割り増しね」

「だからなんでそーなる。はぁ…もういい…」

 

そこまで言い合い、陽菜荼は疲れたように溜息をつくと…困ったように癖っ毛多い髪を掻き、まだ衝撃から立ち直ってないこの場で唯一の男性の前へと歩いていくと深く頭を下げる。

 

「えっと…遼さん、本当にすいません。いくら里香たちへの復讐だからと言って…遼さんを騙してしまうような事をしてしまって…」

「………陽菜荼」

「はい」

「一つ聞いていいか?俺の事を好きって…愛してるって言ったあの言葉は本物か?それとも偽物か?」

 

感情が抜け落ちた瞳を向けてくる遼太郎から視線をそらした陽菜荼は無情にも遼太郎へと真実をつきつける。

 

「…昔も今もあたしが心から愛しているのは詩乃ただ一人です。彼女以上に好きになる人はこれから先も居ないでしょう」

「……ッ!」

 

それを聞いた遼太郎は突然立ち上がると勢いよく外へと飛び出していく。その頬が夕陽に照らされて光っていたのは…誰にも知られたくない出来事である…




前編を読み、なんか私の書き方や展開に違和感を感じた読書の皆様…いい感をお持ちです!
このsunny placeはそんなに甘くはないのです…^ - ^

最初から全てを見抜き、ここまでのことをしでかすヒナタの演技力たるや…あんなにダラけているの嘘みたいに思います…(汗)
そんなヒナタの手のひらで踊らされていたクラインやシノンたちは本当に気の毒です…彼女は敵に回すとめんどくさい人種かもしれません…(大汗)

さて、明日でいよいよこの小説も1周年を迎えます!
多くの方に応援していただいていることにもう一度、感謝致しますm(_ _)m




ここから先はお知らせなのですが…

R-18版もご覧の読書の皆様は知っていらっしゃると思いますが…このsunny placeは製作当時は百合ものにする予定はありませんでした。

そんな製作当時のsunny placeを見てみたいというご意見を頂き…製作当時とは大いにかけ離れていますが、それに近いものを作成することが出来たのですが…本編と同じくらいの長編になる可能性が大になりまして…

本編が落ち着いてきたら…もしかしたら、外伝の方にそれを更新するかもしれません…m(_ _)m

最近知ったのですが…クラインさんってクールなお姉さんキャラが好きなんですよね〜。その外伝を書き始める時はそれを意識しつつ…ヒナタを書ければと思っております( ̄^ ̄)ゞ

なので…キャリバー編のヒナタは書き直すかもしません…!



また、明日26日の更新から3月中盤くらいまで更新をお休みさせてもらうことになるかもしれません…、本当に申し訳ないです…(大汗)

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