簡単なあらすじは、シノを含めた女性陣がヒナタへとドッキリとして選んだのは『仲のいい異性から告白された場合、彼女がどんな反応を取るか?』というもので…その仕掛け人として選ばれたのは同じ職場で働くクラインでありました。
果たして、ヒナタはクラインからの告白にどんな反応を取るのか…?そして、クラインに春は訪れるのか…?
後者は限りなくゼロに近いですが……本編をどうぞ!
*後編は明日更新いたしますm(_ _)m
「ーー」
あたし、香水 陽菜荼は暫し目の前で起こっている出来事を整理するのに…時間が掛かっていた。
目の前には右手をこっちへとまっすぐ伸ばして、深く腰を折っている雑に伸びた髪へとタオルを巻き、無精髭を生やしている好青年は同じ職場の同僚・
“なになに?あたし、狐にでも抓られてる?”
狐に抓られていなければ…この人はあたしにこう言ったんだ、『陽菜荼。俺と付き合ってくれないか?』と。
その後に続く言葉も安易に思い出せる…『陽菜荼に詩乃さんって人が居るのは分かってる。だけど、俺は本気でお前と付き合いたいんだ!この気持ちに嘘はねぇ!最初はチャラいし俺より女子にモテるしでイカすかなぁ奴って思ってたんだ…だが、それは違った!だって、職場のお前とALOのお前は違ったから!ALOでのお前は頼りになる奴だけど…職場でのお前はどこか頼りない感じで儚いって思ったんだ…今にも折れてしまいそうなその背中に背負っているものを俺も一緒に背負いたいって思ってしまったんだ…。こんな俺だけど…この手を取ってくれないか?陽菜荼』
身振り手振りでそう言ってくる遼さんを前に一歩後ろに下がりかけて…そこで顔の異変に気付いた。
突然吹いた風にカサカサと音を立てる緑が茂っている植木や葉っぱに当たった風があたしの頬に当たり…あたしはそこで頬が暖かくなっていることに気づく。
“〜ッ!!”
何、顔を赤くしてるんだっ!あたし!?相手はあのクラさん、あの遼さんだぞ!?絶対、誰かに言わされているに違いない!こんなドッキリに動じてたまーー
「ーー陽菜荼、やっぱり俺じゃあダメか?」
「……」
真っ白なタオルによって上に挙げられた前髪が風にそよぐ中、そう呟く遼さんはどこか頼りなく見え…あたしが支えてあげなきゃって思えてしまう何かがあった。
「…すぅ…はぁ…」
大きく空気を吸い込み、瞼を閉じて…きっちり数えること10秒。ゆっくりと瞼を開けたあたしは不安そうにこっちを見てくる遼さんへとにっこり微笑むと…その答えを口にする…
γ
“たく…妙に落ち着かねぇ〜な”
俺は両腕を組み、カツンカツンと地面を蹴飛ばしながら…目の前にあるウィンドウを見つめ、そこに映る自分の姿を見て…おかしいところが無いか?とバンダナによって上に挙げた前髪を意味なく弄ってみる。
“まさか、こんなことになっちまうなんて…”
思い出すのは3日前のこと。
シノンさんやアスナ、リズなど大勢の女子に頼まれた時は断ろうと思っていた。だがしかし、俺自身あいつがどんな表情を浮かべるのか気になったし…何より一握りの奇跡にかけてみたかったというもの嘘ではない。
その日、どこか不機嫌そうなあいつを会社の裏に呼び出し、俺は深く深呼吸するとそれを口にする。
数秒後、付き合ってくれと言った俺の右手を掴み、あいつはこう言ったんだ…『そんな事ないです…こちらこそよろしくお願いします』と。
びっくりする俺へとあいつは握りしめた指をを俺の指へと絡めると『安心してください。詩乃とは今日別れます…二股なんてしませんよ』
ちろっと舌を出し微笑むあいつを呆然と見つめていると…グイグイと手を引っ張られたのだった。
その後、心ここに在らずの状態であいつ…陽菜荼をマンションへと送り、俺は俺のマンションへと向かう。ベットへと腰掛けると…何気なしにポケットから取り出した携帯を開くと一件のメールが届いており…開くとそこには【大好きな遼さんへ】という題名が打ち込まれており、そこに続くのは【今日遼さんに好きって言われて…とても嬉しかったです。ついさっき、詩乃と別れたんですよ…。なので、これからのあたしは遼さんただ一人のものですよ♪といっても、あたしみたいな子供が遼さんと釣り合うとは思えないんですけどね…】という文章、それをぽやーんと眺めた後、目を覆った俺は深いため息をつく…。
『ちくしょー。俺の彼女が可愛すぎるぜ…』
と呟いてしまったのは…思わず漏れてしまったものなので、どうか許してほしい。
というか、あんな文章を送られて…悶絶しねぇ男がいるかっての!
あのメールは厳重に消えないように設定した後に…時々、眺めてニヤニヤする為の道具となっていた。
そんなニヤニヤしてしまうメールを読み返していると…後ろから声が聞こえてくる。
振り返るとドタバタと慌ただしい足音の後に見慣れた栗色が見えた途端、俺は動きを止める。
走り寄ってくるのは…明らかに陽菜荼だ。
だがしかし、服装や雰囲気がいつもと違うーー栗色の肩まで伸びた髪は緩く首の後ろで結んでいるし、華奢な身体に纏わりつく衣服がまた違う。襟首がVになっている淡い水色のTシャツ、その上に膝辺りまで長さがある蜜柑色のカーディガン。引き締まった肉つきが魅力的な脚が時折覗くのがダメージスキニーである。
いつものラフな格好より大人の女性って感じに落ち着いた雰囲気が流れる陽菜荼に見惚れてしまった俺はポカーンと口を開きかけながら…陽菜荼の到着を待った。
「遼さん!」
「!?」
「すいません…大分待たせてしまいましたか?」
はぁ…はぁ…と息を整えながら、こっちを上目遣いで見てくる切れ長な空のように透き通った蒼い瞳から思わず、視線を逸らしそうになって…俺は思わず、男の性であるものをガン見してしまった。
前屈みで呼吸を整えているからか…深く空いたV字からブラジャーで締め付けられている二つの膨らみが織りなす谷間が覗く。ALOで愛用しているアバターよりも僅かに熟れているように思えるそれは俺が想像しているよりも熟れているらしく…不覚にも呼吸に合わせて、上下に動く谷間から目が離せない。
“なっ!こいつ、意外と大きい?”
不躾にそんなことを思った俺の視線に気づいた陽菜荼は俺へとジト目を向けると小さく非難の声を浴びせる。
「………遼さんのえっち」
「!?」
「初めてのデートだっていうのに、あたしの胸ばっかり見て…そんなに女の人の胸が好きなんですか?」
「そんなに好きってわけじゃ…」
いいどもる俺に陽菜荼が意地悪に笑う。
「分かってますよ、遼さんは大きな胸が大好きな変態さんですもんね〜♪」
「!」
「なんてね」
そういって、俺の右二の腕へと抱きついた陽菜荼は自分の二つの膨らみをそれに押し付ける。それによって、変な声が漏れそうになる俺を見た陽菜荼はその蒼い瞳へと不安の二文字を浮かばらせる。
「ーー」
「どうです?あたしだって、遼さんの好みの女性になろうって努力してるんですよ…?」
「…努力しなくたっていいじゃねーか。…その、俺は…そのままのお前に惚れたんだからよ…」
「遼さん…っ」
左頬をぽりぽりと掻きながらそう言う俺のクサい台詞に嬉しそうに笑った陽菜荼に連れられ…俺の初めてとなるデートが幕をあげた……
さて、読者のみなさんはこの展開を想像できていたでしょうか?
もう既にラブラブなクラインとヒナタですが…ここで終わる程sunny placeは甘くはないのです…
というわけで、後半戦は2月25日に更新となっておりますm(_ _)m