sunny place 〜彼女の隣が私の居場所〜   作:律乃

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毎週欠かさずオムライスを食べてないと元気になれないほどにオムライス大好きっ子な陽菜荼がただただヒロイン達と相棒達、知り合い達とオムライスを食いまくる文字通りブレークタイムな話です。

最初のお相手は【綾野珪子/シリカ】ちゃんです。

理由は【WoU】編が始まって以来のラジオの最初のゲストがシリカちゃんの中の人こと日高里菜さんがだったことと、一生の不覚でシリカちゃんの誕生日をその日にお祝い出来てないので……そのお祝いも一緒にできればと思ってます。

それでは、シリカちゃんとオムオムデートする陽菜荼をご覧ください。

本編をどうぞ(リンク・スタート)!!


息抜ーbreak timeー
001 オムオムパーティ(珪子編)


あたしは現実世界に帰ってきてからなんとなく切らずにいる癖っ毛の多い栗色の髪の髪の束を指先でクルクルと弄りながら、透き通る青、そして遠くに見える目を惹く赤、黄、茶色のコントラストを優しく照らす秋空の太陽を見上げては目を細めながら、冷たくなってきた澄んだ空気を吸い込む。

 

「すぅ……」

 

“随分、寒くなったもんだな……”

 

首に巻いた琥珀(こはく)色のマフラーを緩く首に巻いているせいか、隙間から風が入ってきて寒いのでしっかり直してから、橙のダウンジャケットの前を止めようとしていると右横からトタトタと軽やかな足音が聞こえてきて……あたしへと遠回りに待ち人が到着した事を知らせる。

 

「はぁ……はぁ……」

 

下に向けていた顔を上に向けてみるとやはりそこには待ち人である綾野珪子。

で、セーラー服のような水色のワンピースの上に寒くないようにか、青いカーディガンを羽織って、足元は黒いレギンスに茶色いブーツを履いている。

 

“ちゃんと使ってくれてるんだ……”

 

ワンピースの胸元を抑えながら、走ってきて荒くなった息を整えている珪子の茶色い髪の毛を束ねているのが白と青のシマシマに巻き付くように銀色の猫と小竜が顔を出しているシュシュだと気づいた瞬間、思わず頬が緩んでしまった。プレゼントしたものをこうして大切に使ってもらえるのは正直言って……いいや、かなり嬉しい。

 

「や。珪子。こんにちわ」

「……こ、こんにちわ、陽菜荼さん。そ、その……またせちゃ––––」

 

申し訳なさそうに謝罪を口にしようとする珪子の唇に触れるわけにはいかないので、自分の唇へと左人差し指を押し当てて、無理矢理セリフを切ってから、"本当に気にしてないから"という意味を込めて、ウインクする。

 

「そういうの無し、ね。あたしが無理言って珪子に付き合ってもらうんだから、待つのは当たり前って思ってるから」

「……は、はい」

 

まだ何か言いそうな珪子の服装を改めて、上から下まで見てから首元が寒そうだと思ったあたしは首に巻いてたマフラーを解くと一歩前に出てから珪子に近づいてからキョトンとした様子の彼女の首を絞めないように少し緩めに巻いてあげる。

 

「それよりもその格好だと寒いでしょ。このマフラー貸してあげる……っていうか、あげるよ。最近忙しくて、珪子の誕生日をお祝いできてなかったから」

「そ、そんな……いいですよっ」

 

あたしに巻かれるまで微動だにしなかった珪子だが、流石にマフラーを貰っては……あげたあたしの方が寒くなり、風邪をひくと思ったのか、折角巻いたマフラーを解こうとする珪子へと肩掛けリュックに突っ込んだままにしてあったネックウォーマーを見せつけながら、スパッと首に巻いてから。

 

「気にしなくていいよ。ほら、こんな事もあろうと……ほらっ! あたしにはこのウォーマーがあるんだから。それともあたしのお古は誕生日プレゼントにならないかな……?」

「…い、いえ……。その……とっても嬉しいです……」

 

今だに解こうとしている珪子の手を優しく解いてから、再度巻き直してあげると赤くなっていく頬を隠すようにマフラーに埋もれていく珪子の頭をとんとんと撫でる。

 

「喜んでもらえたようでよかった。それじゃあ、そろそろ行こうか」

 

ポンポンと撫でていた手を差し出すと珪子が戸惑いがちに掌を乗っけてくれるのでニカッと振り返って笑うとギュッと指と指を絡めてから意気揚々と歩き出す。

 

「秋もだいぶん深まってきて、冬に近づいてきたよね……」

 

空いた方の手でネックウォーマーを首元まで持ち上げてから、喉が渇いたので自販機を探していると隣の珪子がやけに落ち着きがないことに気づく。

ふむふむ。首に巻いてある琥珀色のマフラーを首元まで持ち上げようか悩んだ末に空いた手でギュッと掴んでから口元……ではなくて、鼻のところに持っていくとスンスンと空気を吸い込む音が聞こえ……ありゃ? そうかと思ったら、顔を真っ赤にしてからマフラーを下に下げたかと思ったら……チラッと俗にいう恋人繋ぎをしている自分達の手を見てから……もう一度顔を真っ赤にしてから……視線を目の前のマフラーに向けてから、もう一度空いた手がマフラーへと伸びてきて………んー???

 

“ふむ……珪子が何をしたいのかがよく分からない上にやけに挙動不審なのが気になる”

 

まるで、はしたないと分かっていても好奇心に負けてついつい気になる人の匂いがついているものを嗅いでしまう……みたいな。

 

“まさか、ね”

 

あの真面目で頑張り屋な珪子に限ってね……おっ。あそこにおわすは自販機殿ではありませぬか、久方ぶりですな〜。

 

「てね。どれどれ、あのコンポタはあるね。確か、クーポンも……あるある」

 

首にかけてあるオーグマーを起動させてから溜まっていたクーポンでコーンポタージュの小さいペットポトルのようになっているタイプのを二本購入すると今だに謎の動きをしている珪子の頬を押し付ける前に自分の頬で実験してから大丈夫と判断してから彼女の真っ赤に染まった頬へとズイとコンポタを押し付ける。

 

「ひゃああ"っ!?」

 

素っ頓狂な声を出す珪子にしてやったりとほくそ笑みながら、こっちを涙ぐみながら睨んでくる視線から感じながら、ガチッと小刻み良い音を聞きながら蓋をあげると中に溜まっているコンポタを胃へと流し込む。

 

「……あ、美味しい」

「えへへ、でしょ? 他のマーカーのコンポタも好きなんだけど、このメーカーが一番好きなんだ。牛乳とコーンがお互いを引き立てあっているように計算され尽くされた黄金比が素晴らしくてね」

「……ふふふ」

 

各メーカーのコンポタの違いを熱弁するあたしが面白かったのか、珪子がくすくすと見上げながら笑うので照れを隠すために頬をかく。

 

「陽菜荼さんは本当にコーンポタージュが好きなんですね。前に奢って貰ったのもそうでしたから」

「確かにそうだったね。ついつい自販機でコンポタ見つけちゃうと買っちゃうんだよね。無意識に買っちゃうってことは好きってことなんだろうけどね」

 

そう言っている側からキャッシュレスでコンポタを二本買うあたしを見て、もう一度くすくすと笑う珪子へと振り返ってから尋ねる。

 

「珪子もなんか飲む? ついでだし、あたし奢るよ」

「そんないいですよ」

「まあまあ、ご遠慮なさらずに。ここはわたくしめを立ててくださいませ、珪子お姫様」

 

そう言っておどけてみせると珪子はおずおずと言った様子でコンポタの隣にあるオニオンスープというのを指差すのでガチャンと押すと入り口から出てきた暖かい缶を差し出すと目的地に向けて、ぶらぶらと歩き出す。

 

「ふぅ……生き返った……」

 

手に持っていた分を飲み干したあたしはほかほか笑顔を浮かべながら、隣でちびちびと大事そうにオニオンスープを飲む珪子の歩幅に合わせて歩きながら、人通りが多くなってくると小さな肩に手を添えてからスッと人が多くない方に誘導しながら、まだある道のりを見つめながら暫し考える。

 

“んー、あんま車道に近づけさせるのは気がひけるしな……でも、人混みの方は男性が多いしな……ふーむ’

暫し思案した結果、車道側あたし寄りを進んでもらうになり、あたしはあたしと離れた位置を歩いている珪子の手を握ると思っていたよりも冷たいことに気づき、暖めてあげようという善意とそうした方がもっと近くに寄ってくれるはずという効率を優先した結果、あたしは珪子と繋いだ手を自分のダウンジャケットの右ポケットへと突っ込んだのだった。

途端、突っ込まれた珪子はあたしの読み通り、近くにはやってくれたが、びっくりするほど顔を真っ赤にして、赤い瞳を涙ぐませるので慌てて突っ込んでいた手を引っこ抜く。

 

「ご、ごめんね。そんなに嫌だったとは知らなくて……」

「いえ、こちらこそごめんなさいっ。陽菜荼さんが謝ることはないですよ。びっくりさせちゃいましたね……この涙は陽菜荼さんのことが嫌とかじゃなくてその幸せの方の涙で、幸せすぎて、あたしどうにかなっちゃうのかもって思って……」

 

“ほーぉう? 幸せの方の涙?”

 

よく分からないけど、ポケットに手を突っ込むのは嫌じゃないなら店に着くまで入れておこうか……珪子の手、まだ冷たいし……。

「嫌じゃないなら良かった。まだ目的地まであるし……一行に秋風が冷たくなったからあたしのポケットに珪子の手入れとくね」

 

今度は珪子に断りを入れてから、ポケットに繋いだ手を入れてからしばらく進んだ先の角を曲がったところにあたしの目的地があった。

 

「ここが陽菜荼さんオススメのオムライス専門店さんですか?」

「そそ。ここのオムライスは目が飛び出ちゃうほど美味しいから、珪子に是非食べて欲しかったんだ」

 

説明しつつ、店内に入ると週4ペースで通うあたしは店員さんや店長さんの中でも常連さんという称号を得ていたようで「いつもの場所で、いつものオムライスですね。お連れの方はどうしましょう?」と親しげに注文を取ってくれるのでニコニコしながら、受け答えをしてから珪子といつも座っている四人がけの窓際の席に腰掛けたあたしは肩掛けリュックとダウンジャケットを隣の席に置いてから大きく背を伸ばす。

 

「ふわ〜ぁ……」

「大きな欠伸ですね。昨日寝れなかったんですか?」

「うん。少しALOの方で色々あってね……」

 

あははと照れ笑いを浮かべていると目の前に頼んだオムライスが顔を出す。

あたしはオーソドックスなオムライスの横に唐揚げとスープがついているもので珪子はこの店自慢のデミグラスソースがかかっているオムライスで……あたしは注文したものが揃ったのを見届けてから、スプーンを両手で持ってから「いただきます」と呟いてから、まずはケチャップが付いてない黄と白が一種の有名な画家の作品のように美しいコントラストを見せつけてくる生地とその下にある赤いチキンライスを掬い上げてから、すかさず口内に導くと自然と幸せが溢れてくる。

 

「あむふむ………美味しいね、珪子っ」

「そうですね。って、陽菜荼さん、頬にケチャップ付いてますよ」

「そう言う珪子こそ頬にデミグラスソースが付いてるよ」

 

そう言われて、珪子は頬を真っ赤に染めてから近くにある紙ナプキンで頬を拭こうとしてからあたしの頬へと付いているケチャップを暫し見つめた後、自分の頬についているであろうソースの場所へと視線を向けてから、何か小さな声で何か呟いてから席を立つ。

 

「け、珪子?」

 

何か思いつめた表情でこっちに近づいてくる珪子にピクッと肩を震わせたあたしの方へとズイと身を寄せた珪子は自分の頬とあたしの頬をくっつけてから自分のスマホでガチャリと撮る。

 

“え………と、これはどんな状況?”

 

その後、自分の撮った写真を真剣な様子で見ていた珪子は満足したように身を寄せていた身体と頬を離していく様子を黙ってみていたあたしは向かい側で突然上機嫌になった珪子がさっきまでくっついていた場所に触れてみる……そこには微かに彼女の残り香とぬくもりが残っていた。頬をくっつけることに必死になって、あたしの腕へと小さいながらもしっかりと柔らかい双丘の感触……そして、うなじや癖っ毛に触れていった彼女の茶色い髪から漂っていたシャンプーの甘い香り……それがやけに嗅覚や触覚に染み付いては離れない。

向こう側でにこにこと笑顔を浮かべながら、オムライスを頬張る珪子から視線を逸らしながら、ボソリと呟く。

 

「……本当になんなんだ」

 

呟いた後、正面へと視線を戻すと幸せそうに食べる珪子の姿に些細なことはいいかという判断になり、自分のオムライスを胃へと収めていく。

 

“うん、やっぱオムライスは最高だな”

 

 

 

τ

 

 

 

綾野珪子は上機嫌だった。

密かに想いを寄せている香水(かすい)陽菜荼から別れて、自分の自宅に到着した珪子は父と母に挨拶をしてから自分の部屋へと駆け上がると着替えも程々にベッドに飛び込むとスマホを取り出してから、つい先程陽菜荼のオススメのお店で撮った写真を眺める。

 

“どうしようどうしよう”

 

バタバタと両手を前に突き出してから興奮と他の別の感情によって真っ赤に染まりきった顔を隠すようにベッドに押し付け、湧き上がってくる羞恥心や達成感があわさった不思議な感情をパタパタと両脚をベッドに叩きつけることによって発散していく珪子に近づく影があった。

ニャーニャーと甘い声をあげながら、スリスリとベッドに横たわる珪子の身体に自分の小さな体躯を擦り付けながら、珪子の頬へとたどり着いたその影はこの部屋のもう一人……いいや、もう一匹の住人、猫のピナだ。

 

「ピナ。どうしよう……あたし、大胆なことしちゃったかも………」

 

件の写真が写っているスマホから両手を離した珪子は今更になって自分がしでかした事の重大さに気づいてしまった様子で事情を知らないで首をかしげるピナを胸へと抱きとめる。

 

「……突然あんなことしちゃって、あたし……陽菜荼さんに嫌われちゃったかも……でもでも、折角二人っきりでお出かけしたんだから………これくらい、いいよね………」

 

ニャー、と返事するように鳴き声をあげるピナの撫でながら、珪子は微笑む。

 

「……ふふふ。ありがとう、ピナ。そうだよね……折角だもんね……」

 

その後、珪子は部屋着に着替えた後に食事をするために一階へと降りていき……部屋に残ったピナは珪子が置いていったスマホの画面を見つめる。

 

ピナが見つめる先には–––––––キョトンとした様子で右頬にケチャップを付けている陽菜荼と頬を真っ赤に染めながらデミグラスソースが付いている右頬を押し付けている珪子で……二人の頬が押し付けられることによって、重なったケチャップとデミグラスソースは綺麗な綺麗な♡マークを作っていた。

 

 

〜珪子編・完〜




何気にこの二人の距離感というか、関係性って私好きなんですよね(微笑)

因みに、私は牛乳の分量が多いコーンポタージュよりもコーンの分量が多いコーンポタージュの方が好きです(照)


簡単に【WoU】の感想ですが………アリジゼーション編の後半戦も作画が綺麗すぎる(見惚れ)
秋の美しい感じや空気が済んだ感じとかがしっかりと表現させれている上に……原作を読んでいる身からすれば、この章は始まりから終わりまで胸が張り裂けそうなんですよね……。
その言葉通り、一話から六話最新話見たり、見返したりして何度涙が溢れたことか……………。
今までのシーンで一番好きなのはアリスちゃんがロニエちゃんとティーゼちゃんへと自分が整合騎士になった経緯を話すところです、あのシーンは原作でも何度も読み返しては涙がポロポロ出たシーンですので……。
自分達が過ちを犯さなければ、キリトくんとユージオくんは公理協会に連れていかれてしまうことはなかったのにとあの時からずっと自分達を責めていた二人の気持ちを思うと胸が苦しくなりますし……そんな二人を励ます暖かい言葉を贈れるようになったアリスちゃんの成長はキリトくんとユージオくん無しでは起こり得なかった出来事だと思うので。
あと、アリスちゃんが副団長殿に嫉妬するシーンも好きなシーンの一つだったりします、嫉妬アリスちゃん可愛いですよね(デレデレ)

また、多くの読者の方は勘付かれていらっしゃると思いますが……陽菜荼のパパさんがかなり前から登場しちゃいましたね(笑)
パパさんの有名な名台詞『Your soul will be so sweet(君の魂は、きっと甘いだろう)』が放送で流れたので多くの読者の方は『は!? へ……こいつが父親なの?』と思われたかもしれません……ですが、答え合わせはまだ気づかれてない読者の方もいらっしゃると思いますのでもうしばらく先という事で……。
しかし、パパさんの幼少期のエピソードは何度も読み返しましたが……映像化するとさらにエグい。あそこまでパパさんサイコだったとは……いや、あの人はあの頃にはもう完成してたか……(大汗)
また、パパさんの幼馴染の声をアリスちゃん役の茅さんが声を当てていらっしゃったのもなるほど……と思いました。

あと、個人的にサテライザーとシノンの戦闘シーンがもう少しあってもと思ったんですが……あのシーンは後々にも現れますし、それように表現を取ってあるのかな?(思案)

最後の最後に、WoU編のDPを歌われている【LiSA】さんが初登場で今年の【紅白歌合戦】に出演させるそうで………それを知ってから『うっしゃぁーーー!!!!!(ガッツポーズ)』と大きな声を上げてしまったのは秘密です(笑)

LiSAさんの楽曲はどの曲も大好きなので……今からワクワクが止まらないですっ。




では、長々となってしまいましたが……ここまで読んでいただきありがとうございます(土下座)

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