sunny place 〜彼女の隣が私の居場所〜   作:律乃

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物凄く遅くなってしまいましたが……今年も作者共々この作品をよろしくお願いいたします。

2021年は終わってしまいましたが、冬はまだ続いていますので……冬が終わるその前にこの話を書き終えたいと思っております。

この作品で登場するゲームは私が勝手に考えているものですので、原作や関連アプリに比べると設定が穴だらけとなっております。

そういうのが許せない方は回れ右をよろしくお願いいたします。

それでは構わない方はそのまま最後までご覧いただけると嬉しいです。

それでは、本編をどうぞ(リンク・スタート)


【クリスマス記念2021】cross Xmas ~second part ~

 

ナニカに群がっている人々が耳にオーグマーを着けていたのが見えたあたしは小柄のリュックからオーグマーを取り出し、装着し、起動させる。

 

起動音が鳴った後に画面がAV空間へと早変わりする。

 

そして、あたしは人混みの方へと視線を向けた時に絶句する。

 

「詩乃も付けてみて」

 

詩乃にも着用を促し、一緒に人混みの方を見てみると彼女もあたしと同じく、絶句している。

 

仕方ない。

誰だって、目の前の光景を見てしまったならば、絶句するはずだ。

 

「カナタ、シノン、二人とも黙ってどうしたというのです?」

 

絶句しているあたしと詩乃の側に立つアリス様は一言も喋らない両脇により一層困惑を深めていく。

 

「あぁ……」

 

アリス様はオーグマーを着けてない。

故に、あたしと詩乃が困惑してしまっている目の前の状況が分からないのだ。

 

まず、あたしと詩乃同様にオーグマーを着けている人盛りはビルとビルの間にできた小道みたいな、ちょっとした広場へと視線を向けている。

 

その視線の先にあるのは、どうやら《Xmas》イベントのようだった。

 

言われてみれば、今日は師走に入ってから数えて25日目。

街の中はイルミネーションが至る所で輝いている。赤、緑、白の三色だけじゃなく、様々な色で飾り立てては街を華やかにしている。

ふらっとコンビニ、スーパーに寄れば、誰もが耳にし、口ずさんだ事があろう某Xmasソングがベビーローションで流れ続けている。

そればかりか、Xmasというイベントを盛り上げようとしているのか、店の前でトナカイやミニスカの服装をしている店員さんまでいる。

 

そして、このXmasイベントでもそのコスプレは例外ではないようだ。

人混みから視線を逸らし、封鎖している道路の脇に立っている警備員さんの方を見ると案の定、トナカイや赤い三角帽子を被っていた。

被っている警備員さん達もどこか満更そうなので、本人達が楽しければ、別にいいかと再度人混みに視線を向ける。

 

人混みの先にあったのは、赤・緑の光で区切られた二つのフィールドであった。

各フィールドの大きさはテニスコート一つ分。

手前が緑で奥が赤といった感じ。

 

その区切られたフィールドの中では各三人のプレイヤー達が居る。

プレイヤー達は各自選んだ獲物でフィールドの内に反映される敵を倒している。

このイベントに登場する敵は恐らく一般から募集したのだろう。如何にも幼児であろうクレオンモンスターを皮切りに可愛い系からグロデスクなプロ級モンスターまで様々現れていた。

 

それを身をかわしながら、攻撃していくプレイヤー達の頭の上には三つの(くろまる)がある。

その●はフィールドの色がそのまま頭上にある感じである。

赤フィールドなら赤の、緑のフィールドなら緑の

不意を受けてモンスターの攻撃を受けたプレイヤーの●が一つ減ったところを見ると三つある●が消えたところでそのプレイヤーはゲームオーバーといったところだろうか。

 

フィールド内をランダムに出現するモンスターは各自プレゼントを持っている。

そのプレゼントも色によって、点数が決まっているようだった。

赤い表紙に緑のリボンのプレゼントは1点。

白い表紙に緑のリボンのプレゼントは3点。

銀の表紙に緑のリボンのプレゼントは5点。

金の表紙に緑のリボンのプレゼントは10点。

時々、全部銀のプレゼント、金のプレゼントが現れるのだが、それはレアなようで得点も一気に跳ね上がる。

銀のプレゼントが50点。

金のプレゼントが100点。

といった具合に。

中には、倒すのと運ぶのが大変だが点数が高い特大プレゼントもあるようで、それぞれのプレゼントの点数に0(ゼロ)が2つ付く。

 

そして、そのプレゼントを回収する袋が四つ角に置かれている白い袋のようだった。

 

そこであたしは緑のフィールドのプレイヤー達がよく《オーディナル・スケール》で出会う顔見知りであることを知る。

彼、彼女達は最初こそは「流行ってるから…」でプレイし始めた新参者だったが、最近では立ち回りや獲物の使い方も覚えて、ベテランプレイヤーとして名を馳せていたのだがーーーー

 

赤のフィールドの上に表記された1227に比べて、緑のフィールドは525と半分以上差をつけられていた。

 

そして、時間制限である10:00はあっという間に過ぎ、残りの1:00に差し掛かっていた。

 

(ーーーー惨敗だな)

 

そう、誰がどう見ても緑の負けが目に見えていた。

緑が今から立ち直っても、残りの1:00で追い越せる点数差ではない。

 

「……陽菜荼、凄いわね」

 

「ああ、あの子達ね」

 

そして、その緑に大きな差をつけて、圧勝している赤のプレイヤー達があたし達が困惑している元凶だったりする。

 

そう、赤いフィールドの中で暴れ回る三つの人影はXmasを全身で表していた。

一人は《ミニスカサンタ》。もう一人が《赤鼻のトナカイ》。そして、最後の一人が何故か《雪だるま》となっていた。

 

《ミニスカサンタ》の娘は長い黒髪を三つ編みにした上で円を描くように二つに結んでいる。髪飾りには二つの鈴が揺れ、その脇には小さな葉っぱが付いている。その円は深紅のリボンで固く結ばれており、身動きするたびに上下に揺れ、チリンチリンと軽やかな音を辺りへと響き渡る。

白い綿が付いている袖無しの上着は真紅でボタンなどがふわふわの白で出来ている。下に履いているミニスカートは赤い線が入っており、黒色のハイソックスも相まって、彼女の女性らしさをぐっとUPしている。

両手には綿毛の白い手袋は暖かそうで首に巻いている白いふわふわのマフラーもとても柔らかそうで肌触りが気持ちよさそうである。

 

《赤鼻のトナカイ》の娘は癖っ毛が多い金髪がフードからはみ出ている。

焦げ茶色の上着、下着はボア素材かのか、遠目から見てもふわふわで肌触りが気持ちよさそうだ。

焦げ茶色の長袖には端にもふもふな真っ白な綿毛が付いており、首の下には深紅のリボンが装備されている。その長袖にはフードが付いており、円らな黒い瞳。深々と被っているそのフードの頭のてっぺんには二本の枝分かれしたツノがくっついており、小さな垂れ耳が身動きするたびにぴこぴこと揺れる。

下に履いているのは焦げ茶色の短パン、お尻の部分には小さなシッポが左右に揺れる。カボチャズボンの先にあるのは、細っそりした脚を包み込むのは茶色のストッキング。足元には黒い長靴である。

 

《雪だるま》の娘は日が当たるが水色に光る銀色の髪の毛がフードから溢れている。

真っ白い上着、下着はトナカイの娘と同じくボア素材のようで、遠目から見てもふさふさと気持ちよさそうである。

純白な長袖にはもふもふの綿毛の袖があり、胸元のところには拳ぐらいの黒綿毛が2つ付いていた。襟首には真紅のリボンが揺れている。

深々と被られているフードには黒の円ら瞳。鮮やかな橙の筒は恐らく人参の鼻であろう。何処か、気怠そうに見えるまつ毛や口元も相まって、チャーミングだ。

下に履いているのは、真っ白い短パンで袖には綿が各箇所に飾れている。ふわふわの袖から覗く脚は細く、真っ白いストキングに包み込まれている。足元には黒いブーツを履いている。

 

そして、それぞれ持っている武器も使い手があまり居ない事から、野次馬達・あたし達の注目を受けているようだった。

 

ミニスカサンタの娘が持っているのが《円月輪(チャクラム)》。

こちらは名前にもあるように鋭利な刃が円状になっている投擲(とうてき)武器である。

指にチャクラムを引っ掛け、敵に向かって投げて攻撃するのが一般的なようだが、ミニスカサンタの娘は大中小と様々なチャクラムを時と場合によって使い分けているようだ。

フィールドの敵が少ない時は大きいチャクラムで攻撃し、敵が大きくなった時は小さなチャクラムに持ち上げて投擲。中のチャクラムは援護の時に使用しているようだった。

 

赤鼻のトナカイの娘が持っているのは《大鎌》。

こちらは説明するまでも無く、細長い棒の先に幅広い鋭利な刃が付いているあの鎌である。

鎌というのは使いにくそうなイメージがあるのだが、彼女は普段から使い慣れているのか、身体の一部であるかのようにブンブンと大鎌を振り回している。

振り回してはいるが、ミニスカサンタの娘や雪だるまの娘が大鎌が当たる事はない。赤鼻のトナカイの娘が上手く立ち回っているのか、はたまた、後の二人が彼女の邪魔にならないように立ち回っているのかは早くてよく分からない。

 

チャクラムと大鎌といえば、あたしと詩乃が囚われる前のデスゲームでは使い手が居たようだ。

チャクラムは黒髪の友人・栗色の友人共々知り合いだったようで、元鍛冶屋だった使い手へと戦闘やり方……チャクラム専用のソードスキルの修得のした方を伝授したのは黒髪の友人なのだとか。

大鎌の方は栗色の友人の知り合いのようだったが、そこはあまり触れてはいけないと思って、あたしからは聞いていない。

 

話を戻して、最後の雪だるまの娘だが、上の二人と違い、彼女は何も持っていなかった。

そう、己の拳、脚を武器として立ち回っていた。

独特な構えからくりだされる鋭い突き、蹴りは吸い込まれるように敵の急所に入っては1、2発で敵を倒していた。

赤チームの野次馬に居た顔見切りが言うには彼女が何も持ってないのは「…今こそ師匠達のお教えで身についた力を見せる時」と言い、誰もが知っているであろう某有名カンフー映画の構えを始めたとか。最初の方は"なんだ、モノマネか"と嘲笑っていた者たちも彼女が技を繰り出すたびに考えを正したとか……その顔見知り曰く"彼女はモノマネの天才だ"とか。

いやいや、あのカンフー映画の技をそのまま扱える娘なんているわけないじゃない……と思っていたが、あたしもその考えを改めた。

技を繰り出す前の某仕草も彼女はしっかり再現し、酔っ払い特有の千鳥脚も見事再現していた。あの娘は本当に10代なのだろうか。

 

その後、顔見知りと数回会話を交わしたあたしは詩乃とアリスのところへと帰る。

顔見知り、今目の前で行われている事を総合するとーーーこのXmasイベントの内容は赤と緑のフィールドで対戦をし、より多くプレゼントを回収した方が勝利。その場に残り、敗北した方のチームが待っているチームと交換、そして勝利したチームと対戦ーーというのを延々と繰り返しているようだった。

そして、総合得点や連勝記録によって、このXmasイベントを開催した運営から送られるプレゼントの豪華さが変わるのだとか。

 

そのイベントで勝利し続けているチームがあの赤チームというわけだ。

 

赤チームの上に浮かんでいる表へと視線を向ければ、赤い文字で《連勝数:4連勝》《総合得点:53247》と記してあり、その下にデカデカと《得点:12650》と書いてある。

 

もう、赤チームが勝つ事は決まっているようなものなので、緑チームのやる気が感じられない。

そして、ここにいる野次馬たちは赤チームの活躍にどよめくが、戦おうとは思わないらしい。

それはそのはずだ。赤チームの連携は長年連れ添ったソレでつけ入れる隙が全くなく、プレゼントの収穫もスムーズ。互いが互いの立ち回りを理解し、ゴタつく事なく、其々の役割を全うしている。

それは遠目に見ているあたしにも分かった。

 

分かったからこそーーーーそれだけにあたしの闘志に火がついた。

 

それはもうメラメラと。

 

ここ数年、ありとあらゆるVRゲームに浸かり続けたあたしは根っからのゲーマーとなってしまったようだ。

ゲーマーたる者、強者を倒してなんぼというものである。

自分が今まで磨いてきた能力全てを出し切り、強敵を打ち倒す。

その過程が大変であればある程に心の中に広がる達成感が違ってくる。それを味わってしまえば、もう後には戻れない。

 

そっと隣を向く。

すると、二人共、あたしと同じ顔をしている。

 

やれやれ、うちのパーティーメンバーはこうも血の気が多いのだろうか。

そのおかげで日々刺激的な日々を過ごさせてもらっているのだが。

 

(よし!あの娘たちに目にもの見せてやる!)

 

意気揚々と空いた緑のフィールドに向かうあたしはガシッと背中に背負っている小さなリュックを掴まれ、あたしはその反動で首が絞まり、激しく咳き込みながら、いきなりリュックを掴んだ不届き者に一言文句言ってやらねば!と勢いよく後ろに振り返るのだった。




 次回、third partへと続く・・・・


~少し補足~
気づいていらっしゃる方も居ると思いますが、サブタイトルの「cross」は「クロスオーバー」のクロスとなっております。
クロスオーバー先については私からは公言しませんので、各自で想像していただけると嬉しいです。(タグには「時々、クロスオーバー」とつけておきます)
また、クロスオーバー先の登場人物達の服装は二人は公式さんのイラストのまま(その中の一人は少しだけアレンジを加えました)
もう一人は私が勝手に考えた服装となっております。

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