sunny place 〜彼女の隣が私の居場所〜   作:律乃

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お久しぶりの更新となります。

今回の更新はタイトルにもある通り、本日8月21日はシノンこと朝田詩乃さんの誕生日です!!おめでとうございます!!!!

去年の誕生日はしっかりお祝いできなかったので、今年は去年の分までお祝いの気持ちを詰め込んで書かせていただきました。

時間軸は【史録ーmainー】の2章のところです。

簡単な話の内容は
ソードアート・オンラインというデスゲームに捕られた二人はある日、開催された夏祭りを満喫するというものです。

本作に登場する夏祭りは私が勝手に作ったものですので、原作に比べると穴だらけのガバガバ設定やもしれません。
そういうのが許せない方は回れ右してもらえると嬉しいです(敬礼)

それでは前振りが長くなってしまいましたが、誤字脱字、中には文章が可笑しいところもあると思いますが……最後まで読んでいただけると嬉しいです。

※総文字数は1万4千ちょいです。
自分の好きな曲を聴いたり、何かおやつなりと摘みながらでくつろぎながら、読んでいただけると嬉しいです(深々とお辞儀)

では、本編をどうぞ(リンクスタート)!!


とある夏祭り(シノン誕生日記念2021)

「夏祭り?」

 

あたしは隣に座る恋人殿の顔をまじまじと見つめる。

 

「そ。夏祭り」

 

あたしを真っ直ぐ見つめる瞳は焦げ茶色で儚さを感じながらもその奥には芯の強さを感じさせる。僅かに小首を傾げる仕草で肩に掛かっていた房がさらさらっと音を立てて揺れ、糸のように細かい髪の毛一つ一つに窓から差し込む夕陽の光が当たる。凛々しさと可愛さが同時に存在しているかのような輪郭が夕暮れに照らされ、艶っぽく光る小ぶりの唇まで見たあたしは(ほお)けたようにマジマジと何かを喋っている彼女を見つめる。

あたしにはまるで一枚の完成された絵画のように目の前の光景が思え、息をするのも忘れるほどに彼女の姿に心を奪われる。

何度も見ても、綺麗だと思うし、可愛らしいと目の前の存在を思う。

 

そして、ふと思う。

やっぱり、あたしはシノの事がどうしようもなくなるくらい好きなんだ、と。

 

込み上げてくる愛おしさをグッと堪えながら、シノから送られてきたメッセージへと視線を落とす。

 

そこにあったのは、簡単な参加条件が載っていた。

まず、夏祭り限定のフィールドは浴衣を着用する事で出現するとの事。

街中を歩いていたら、提灯の温かな灯りがともり始め、次の瞬間にはフィールドに到着しているらしい。

そして、そのフィールドでは夏祭りには定番である。出店が連なっているようだ。例を挙げるならば、射的、たこ焼き、リンゴ飴、かき氷とかだろうか。

流石、現実(リアル)をとことん追求して作られたアインクラッドというべきか。

こういうイベントにも手を抜かない辺り、開発者である茅場晶彦の強いこだわりが垣間見える。

 

「この世界でもあるんだって」

 

だがしかし、この世界に身を投じてから戦闘狂に白車がかかってきているあたしはというと、そういうイベントものは限定商品とかがあるのならば飛びつくのだが、それ以外はあまり行きたいとは思わない。

娯楽の為にそういうイベントを楽しむのならば、少しでも新着で現れているクエストをしたいし、レベルを上げたり、素材集めをしたいと思ってしまう……。

 

だが、それは利己的というものだ。

 

シノが緊張しながらもこうして誘ってくれているのだ。

その日くらいシノに付き合うくらいバチも何も当たりはしないだろう……。

 

"それにあたしもシノと出かけたかったし…"

 

「それでシノはその夏祭りに行きたいって?」

「ええ、駄目かしら?」

 

そんな伺うように、上目遣いで聞かれてしまった暁にはさっきまで思っていた「あたし興味ないから、シノだけで楽しんでなよ」という考えは口が裂けても言えまい。

なので、あたしはあまりの破壊力ににやけそうになる口元へと力を総動員し、普通の形にした後にお誘いへの返答する。

 

「あたしで良ければ、ご一緒させていただきます、お姫様」

 

手を取り、手の甲にキスをしようとした瞬間、その手が勢いよく振り解かれ、続け様に捲し立てるような声が聞こえる。

 

「そういうのいらないからっ」

 

あたしはシュンとしながらもそっぽを向くシノの焦げ茶色の房から見える耳が真っ赤に染まっているのを見て、思わずニヤッとしてしまう。

普段から口数が少ないクールなキャラとして仲間たちに定着しているシノも少しからかうだけでここまで照れてくれるのだ。その様子が普段の彼女とのギャップで可愛いし、その表情を見せてくれるのがあたしの前だけっていうのがとても嬉しい。

 

「なに、ニヤニヤしてるのよ」

「いや、シノって可愛いな〜って思ってね」

 

そう言った瞬間、「なっ…」と顔をさらに真っ赤にさせて、理不尽だと思える強烈なシノパンチが顔面に炸裂したのは想像するまでもなかろう。

 

 

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夏祭り当日。

 

あたしはシノとの待ち合わせ前に前もってお願いしていた衣装を取りにアスナことアッスーの元を訪れていた。

といっても、第76層以下に行けないシステムエラーが起こってからはというと、皆、主街区《アークソフィア》にある宿屋を使っているので、目的の相手に会いに行くのに徒歩何十分もかからない。

 

"それにアッスーはあたしが泊まっている宿屋の住人だからね"

 

そんな事を思いながら、宿屋となっている廊下を進み、アッスーの部屋を数回ノックしてみる。

だが、彼女が部屋にいる様子もノックが開く様子もなく、暫くその場で思案する。

 

"んー、もしかして、下のカフェに朝ごはん食べに行ったのかも…"

 

なら、自分も下に向かうべく、(きびす)を返す。

いつまでも廊下で突っ立っていても邪魔なだけだし、無言で部屋の前で立っていても不審者っぽくて嫌だしな。

そんな事を考えながら、とぼとばと下の階へと続く階段を降りていき、店内を見渡したあたしは6人が座れる机が縦に3列並んでいる中の真ん中の列に腰をかけて、朝ご飯を食べている目的の人物を見つける。

朝ごはんを食べる人々の中でも目立つ白と赤を基調とした騎士服を着用し、腰まで伸びる栗色の髪をさらさらと揺らしながら、優雅にフォークで皿に乗っているパスタを口に含むアッスー目掛けて、人波をかき分けて近づいたあたしはにっこりと笑いながら利き手をひらひらと動かしながら挨拶をする。

 

「アッスー、おはよ〜」

「おはよう、カナちゃん」

 

あたしの声ににっこりと笑いながら、挨拶を返してくれるアッスーの隣に腰掛ける赤いメイド服のようなデザインの戦闘着を着用している少女が不満げな声を漏らすのを聞いて、あたしは苦笑いを浮かべながら彼女達へと挨拶する。

 

「ちょっと、アスナだけ挨拶?」

「ごめんって、リト。わざとじゃないだ」

 

利き手を縦に数回振り"申し訳ない"というジェスチャーをしながら、6人掛けのテーブルに腰掛けている人物へと視線を向ける。

まず、アッスーの横に腰をかけるのは鮮やかなピンクのショートヘアーに同色の瞳を持つ少女・リズベットことリトである。

彼女はこの76層にも《リズベット武具2号店》を出してくれており、あたしも含めて多くの仲間が彼女の店の常連である。あたしに至っては愛刀の一方は彼女に作ってもらったわけだし、武器のメンテナンスは彼女以外には任せられなくなってしまった。

 

「おはよ、リト」

「おはよう、カナタ。あんたにしては早い起床なんじゃない?」

「あはは…ちょっとした用事があってね」

 

ヘラヘラと笑いながら、答えてからアッスーとリトに挟まれるように食事をとっている白いワンピース姿に腰まで伸びた黒髪が特徴的な少女・ユイことユーへと挨拶する。

ユーはキリトことキリ、そしてアッスーの娘である。

そんな彼女はデスゲームを管理しているカーディナルの開発者がプレイヤーのケアすらもシステムに委ねようと、あるプログラムを試作。それのプログラムの名前が《メンタルヘルス・カウンセリングプログラム》、MHCP試作一号、カードネーム《Yui》。つまり、ユーはAIというわけだ。

 

"まー、だからなんだという感じだけどね"

 

AIだから、機械だから、といっても彼女は親友達の娘だ。それにもう彼女はあたしの大切な仲間だ。それだけで彼女を信頼する理由や彼女の為に行動する理由にしては充分だとあたしは思う。

 

「おはよ、ユー」

「おはようございます、

「ユーはリトと違って良い子だね」

「ちょっと、それはどういう事よ!」

 

おお、藪蛇だったか。次に行こう。

 

ぷんぷんと憤怒しているリトの前に腰掛けるのは、黄緑と白を基調とした戦闘着に長い金髪をポニーテールにしている少女・リーファことリーである。

彼女は現実世界では剣道を極めているようで、その腕はVR空間だからといっても衰えはしない。実際、彼女に剣技にはいつも助けられているし、頼りにさせてもらっている。

そんなリーはどうやら現実世界ではキリの義妹(いもうと)との事。時折、キリの事を「お兄ちゃん」と呼んでいる場面を目撃する事がある。仲も良好なようで、一人っ子のあたしからするととても微笑ましく思う。

 

「リー、おはよ」

「おはようございます、カナタさん。カナタさんは朝ごはん、食べました?」

「そういえば、食べてなかったな…。後で食べさせてもらうよ」

 

にっこりと答えてから、リーの横でこちらを見上げている少女へと視線を向ける。

腰まで伸びた緩くウェーブした銀髪に垂れ目がちに開かれた瞳、黒と緑を基調としている戦闘着に身を包む彼女の名前はルクスことルー。

あたしの愛弟子でもある彼女だが、正直剣技を教えることもないくらい強い。教えた事はしっかり次の日には仕上げてくるくらい真面目な彼女の事を頼もしく思いながらもいつか越えられるのではないかと不安に思ったりもする。

 

「おはよ、ルー」

「はい、おはようございます、カナタ様。今日、用事があるのですか?」

「ああ」

「そうなんですか。今日は稽古をつけてもらえるって楽しみにしてたんですが……」

「あー!そうだったね。ごめんね、ルー。この埋め合わせは必ずするから!!」

「良いですよ。カナタ様も用事があるでしょうから。また、暇な時に稽古してください」

 

そう言って、ふわりと柔らかく微笑む愛弟子にあたしは心の中でわんわんと泣いていた。そして噛み締めていた。あたしは本当に優しい愛弟子を持った、と。

 

そのルーの横に腰をかけているのは、茶色の髪を赤い髪留めでツインテールにし、赤と黒を基調とした戦闘着に着用している少女の名前はシリカことシー。

彼女の頭の上で寛ぐふわふわの水色の毛並みに赤い瞳を持つ小竜の名前はピナ。

ピナはシーの使い魔であり、シーはビーストテイマーと呼ばれているようで……あたしもシーとピナの連携にはよく戦闘でお世話になっている。シーはよくもっと強くなってお役に立ちますと言ってくれるが、あたしとしてみれば彼女はもう既に役になっている……ううん、その言葉に適切ではない。戦闘になくてはならない存在である。

 

「シー、おはよ」

「おはようございます、カナタさん。今日は用事があるって言ってましたが、どこかに行かれるんですか?」

「ああ、シノと夏祭りに行くんだ」

「シノンさんとですか……」

 

あれ?なんか一瞬で元気が無くなったような……これはあたしなんかやらかした?

ルーの時も完全に約束を忘れていたし、あたしが忘れているだけでシーとも何か大切な約束を交わしたのかもしれない……。

 

"ルーもだけど、シーにも後でフォローしとこ"

 

と密かに胸に留めながら、改めてアッスーに向き直るとなんの用件で自分のところに顔を出したのか、察していたらしく、ウィンドウを操作してくれており、あたしも彼女から受け取るべくウィンドウを操作する。

 

「カナちゃん。お願いされたもの、もう出来てるよ」

 

そう言って、送られてきた衣装にあたしはウィンドウを消してからもう一度改めてお礼を言う。

 

「あんがと。でも、ごめんね。アッスーも層の攻略とかレベル上げとかで忙しいのに頼んじゃって」

「いいのいいの。カナちゃんにはいつもお世話になってるし、何よりも服作りが好きなの。だから、頼んでもらえて嬉しかったよ」

 

申し訳なさそうに眉を顰めるあたしへと言葉を投げかけるアッスーは本当にそう思っているのだろう。

アッスーの笑顔からは疲れのような負の感情は読み取れない。

あたしは申し訳なさそうな顔を笑顔へとシフトチェンジしてからアッスーと会話を繰り広げる。

 

「そう言ってもらえると嬉しいよ。そういえば、アッスーはキリと行くの?夏祭り」

「うん、キリトくんがたこ焼き食べたいって」

「パパとママと夏祭り、とても楽しみです!」

「そっか、ユーも行くんだね」

 

それもそうか。ユーはキリとアッスーの娘だもんな。

キリも愛娘にねだられたならば、嫌とは言えまい。

というか、話を聞く限りではキリの方が夏祭りに乗り気のようだ。

シノの話を聞いて、一瞬でもレベルアップの事が頭に過ぎってしまったあたしはキリの爪の垢を煎じた方がいいだろうか。否、キリの場合は食い気が強いだけだから……爪の垢を煎じる必要はないか。

 

あたしはユーの頭をなでりなでりと撫でてあげながら、優しく語りかける。

 

「夏祭りの出店は美味しいものや楽しいのが多いから。折角だから、パパにいっぱい甘えたらいいよ」

「はい!」

 

嬉しそうに笑うユーから視線を上げると突き刺さる4人からの視線にあたしはたじろぐ。

 

「いいわね〜。夏祭りに恋人と行ける人は。あたし達なんて行く相手がいないわよ。ねぇ、リーファ?」

「そうですね。………本当はあたしもカナタさんも行きたかったな」

「私もカナタ様と行きたいです、夏祭り」

「………」

 

なんか胸にグサグサ、ナニカが突き刺さる。すごく胃が痛い。

あと、シーの無言が一番心に痛い?!目も若干据わっているように思えるし……本当、後でしっかりフォローしよ。

 

しかし、夏祭りは恋人同士ではないと訪れられないとは記載されてなかったような……

 

「そんなに行きたいなら、4人で行けばいいんじゃーーーー」

「ーーーーはぁ……あんたって馬鹿で鈍感な上に人の話をほんと聞かないわね。あたし達のセリフのどこを聞いたら、そんな言葉が出てくるのよ」

 

何故か責められた。

あと、馬鹿で鈍感は失礼だろ!!

 

頬を膨らませるあたしをチラッと見たリトは小さく嘆息をつくと揶揄うように言葉を投げかけてくる。

 

「まー、いいわ。それよりもシノンとの久しぶりのデートなんでしょ、楽しんできなさいよ」

「久しぶりって事は………いや、あるか」

 

揶揄うように言われたので、思わず売り言葉に買い言葉をしそうになったが、改めて考えてみるとリトの言う通りで久しぶりだったかもしれない。

シノはシノでアッスー達とクエストやレベルアップに取り組んでいたし、あたしはあたしでキリ達と最新のクエストや層の攻略に力を入れていたので……部屋で話す事はあったけど、ゆっくりデートを行う時間は作れなかったように思える。

 

「シノのん、カナちゃんとのデートが楽しみにしているみたいだったから」

「楽しみに?そうかな?」

 

シノパンチを食らった後から数日は至って普通なシノだったように思えるが……しかし、アッスーがそういうのならばそうなのだろう。

 

「そうだよ。だから、カナちゃんは今日一日、シノのんの我儘をしっかり聞いて、エスコートしてあげる事」

「はい、わかりました。アスナ先生」

「うん、よろしい」

 

その後、ひとしきり笑った後にあたしはアスナ達と共に朝ご飯を一緒に取り、彼女達にお礼を言ってから後にした。

その後、自分の部屋に戻ってから用意してもらった衣装へと着替える。そして、姿見に映る自分を見つめた後に眉を八の字にする。

 

「うわー、なんというか……こういうのも似合ってしまう自分が怖い」

 

何を言ってるのか、自分でも分からなくなりながらもそろそろ待ち合わせの時間になりかけているのに気づき、自室から飛び出して、待ち合わせの場所へと急ぐ。

 

 

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待ち合わせの場所には既にシノが到着しており、あたしは振り返るシノの浴衣姿に息を呑みながらも駆け寄る。

 

「シノ、とっても似合ってるね」

 

やっと口にしたあたしの蒼い瞳に映るのは、漆黒の生地に橙と水色の大輪の花が模様があしらわれている浴衣で帯は純白色。

キュッと閉まっている帯の上に乗っかるように膨らんでいる双乳、襟首から覗く後ろの髪の毛を結っている白い首筋と相まって、普段の彼女とは違う妙な色気があり、あたしはただ呆然と彼女を見つめる。

その視線に不安になったのか、シノが整った眉を細めながら、浴衣の袖を握りながら、身を捩る。

 

「そうかしら?派手じゃない?」

「心配する事ないよ。何度でも言うけど、とっても似合ってる。でも、似合いすぎてて、変な虫が寄ってこないか、不安だからしっかり手を繋ごうね」

 

そう言って、左手を差し出すあたしへと自分の右手を添えながら、シノがボソッと何かを呟く。

 

「……………そんなに心配しなくても、私は貴女しか見てないから。他の人に言い寄られても無視するわよ、バカヒナタ」

 

あまりにも小さな声に耳に届く前に掻き消され、あたしはシノを見つめながら尋ねる。

 

「へ?なんか言った?」

「なんでもないわ、鈍感カナタ」

 

鈍感って酷くないか、鈍感って。ってか、なぜ今鈍感?

リト言われたが、あたしの何が鈍感なのだろうか……?

 

首を傾げるあたしの服装を上から下まで見たシノがそう言ってくるのを聞き、あたしも自分の服装を改めて見ながら苦笑する。

 

「そういうヒナタは随分とちゃんとしているのね」

「んー?あー、あたしはこういうのに疎いし、裁縫スキルは上げてないから、アッスーに頼んだけど、何故かこうなっちゃったんだよね…」

 

そう、あたしの今の服装は簡単にいうと書生さんなのだ。

オレンジ色の襟なしのカッターシャツを下に着用し、その上に真っ黒い長着を着込み、その下は灰色の袴という出立ちなのだが、本当なんでこうなってしまったのだろうか。

 

"そういえば、頼みに行った時にアッスーの他にも居たよな…"

 

恐らく、作っていく中でその時に開かれたのであろう女子会で出たアイデアを詰め込んだんだろうな……。

 

"フィリアとかレインとかユウキもあの場には居たし…"

 

4人で和気藹々(わきあいあい)と意見を言っている姿を思い浮かべながら、あたしの姿を見たままで固まっているシノへとポーズを決めて、感想をもらう。

 

「どう?似合ってる?」

 

ニヤリと笑いながら、そう聞くとシノは暫し再度あたしを上から下まで見た後に沈黙し、ボソッとそっぽを向きながら答える。

 

「ええ。似合ってると思うわよ」

 

あっけらかんと言って、会場に歩いていこうとするシノの耳が赤く染まっているのを見て、どうやら気に入ってもらっているようだと安心しながら早足で出店に行こうとするシノの横に並ぶ。

 

二人してとばとばと歩いていると提灯の灯りが左右に灯り始める。

 

赤提灯から漏れ出る淡い光があたしとシノを照らし、薄っすらと土の道を照らす姿は幻想的で、夏祭り特有の非日常感に胸が無意識に高鳴るのに気づく。

 

繋いでいる手をより強く握り締め、シノの歩幅に合わせながら、幻想的な提灯の間をとぼとばと歩いていく。

 

すると、暗かった道の先から淡い光と祭囃子が聞こえ始め、光に近づくにつれ、NPC達の活気づいた呼び込む声が聞こえてくる。

 

「プレイヤー多いね」

 

夏祭り専用のフィールドに着いた最初のあたしの感想はそれだった。

行き交う人々の殆んどはNPCかと思いきや、よくよく見ると攻略戦で知り合った人達やアークソフィアの街中ですれ違ったプレイヤー達が思い思いの浴衣を着込み、出店で買ったのであろうイカ焼きやたこ焼きのような物を頬張っている。

 

「そうね」

 

そう言いながら、既にどの出店から回ろうかとキョロキョロしているシノの手を引き、すぐ近くに聳え立つ綿あめの出店に並んだあたしは困惑している様子のシノへと笑いかける。

 

「折角だから全部回ってみようよ」

「でも」

「いいからいいから。あたしに任せなさい」

 

もともと、この夏祭りでのデートにかかる出費は全部あたしが出そうと思っていたし……キリではないが、あたしも夏祭りの出店に出ているものが現実のものに近いのか、とても気になる。

それに舌を唸らすものがあるならば、今度折角上げている料理スキルの訓練の為に味の再現をしてみてもいいかもしれない。あたしには一から醤油等を自分の舌だけで再現した頼れる料理の先生が居るのだから。

それにキリ達とつるんで、76層やそれ以降のクエストを軒並みクリアし、最新のクエストが更新されれば、そこに足を運んでクリアしたり、最前線で層攻略したりと……常に動き回り、モンスターを狩っている戦闘狂なあたしは無駄にコルがあるのだ。

コルというのは、この世界の通貨で端的にいうとお金である。コルを稼ぐには戦闘フィールドに現れるモンスターを倒す。その他にはクエストを行ったり、生業をするかである。あたし達の仲間で言うと、リト等がその生業に当てはまるだろう。

で、あたしはその中でもフィールドでモンスターを倒す。クエストを行うというのを仲間が呆れるほどに行なっている。

故に、コルが無駄にあるのだ。なので、その無駄にあるコルをこんな風に使うのもアリだと思うのだ。

シノには普段からお世話になっているし、きっとあたしが気づかないだけで寂しい思いをさせてしまっているのように思えるから。

 

「貴女がそこまでいうならお任せするわ」

「あんがとね、シノ」

 

呆れたような顔でそう言いながら、嬉しそうに口角を僅かに上げながら、繋いでいる手へと身を寄せてくるシノと共に綿あめを受け取ったあたしは柔い雰囲気を漂わせているおじさんNPCに"2つ下さい"という意味でピースを作ると次の瞬間、ウィンドウへと綿あめが表示させる。

 

どうやら、この専用フィールドに配置されているNPC達はお客のジェスチャーでも汲み取れるように設定させているようだ。

通常のNPCならば、そのクエストになるように特定のセリフを言わなくては次の段階に進めなかったり、段取りを踏まないといけないのだが……こうもガヤガヤしていると声が聞こえないだろうし、何よりも店の人とジェスチャーでやり取りするっていうのがなんだか夏祭りっぽくて、あたしの口元が綻ぶ。

 

そんな事を考えながら、ウィンドウをタップし、現れた綿あめの一つをシノへと渡し、もう一方へと視線を向ける。

淡くピンクに色づいたふわふわの細く伸びた飴の繊維を巻きつけている割り箸の質感、綿あめのふわふわ感、顔を近づけると漂ってくる甘ったるい香りまでも現実そのものであたしは大きな口を開けるとふわふわの天辺にかぶりつこうとその瞬間ーーーー

 

「はい、ヒナタ」

「へ?」

 

ーーーー真横から差し出される綿あめをマジマジと見つめ、きょとんとするあたしを見て、呆れたようにシノが言う。

 

「貴女が言ったんでしょう?ここにある出店を全部回るって。ここから見てもまだ何十軒もあるみたいだし、その(たび)に二人で食べていたらすぐにお腹いっぱいになるでしょう?」

 

"そういわれてみれば、それもそうか"

 

シノがいう通り、あたしの目から見てもずらっと並んでいる出店は何十軒もあるし……先が見えないところを見るともしかすると何百軒にも及ぶのかもしれない。

その中には金魚すくいや射的、宝探しなど食べ物関係ではないものもあるかもしれないが……それは少数派の方だ。つまり、多数は食べ物関係であるということ。

アバターの体型は変わらないとはいえ、空腹感も満腹感もあるのが、このソードアート・オンラインというデスゲーム。

 

"無限に食べられるわけではないというわけか"

 

シノもだが、あたしも食が細いというわけではないが、あまり食べる方ではない。

つまり、この数の出店を全部(しょく)すには二人で一つの物をシェアするのが丁度いい量なのかもしれない。

 

あたしは口に含みそうになった綿あめをウィンドウへと入れようと試みるとすんなり入り、あたしは驚く。

 

"ここで買った食べ物、ストレージに入るんだ…"

 

だが、《綿あめ》と表記させた欄の下にある賞味期限は普段のものよりも短く。この夏祭りフィールド限定感が一気に増す。

 

「食べないの?」

 

横から差し出されている綿あめをチラッと見て、少し不安そうな声で尋ねてくるシノに一旦考え事を脇に置き、あたしの方に傾けてくれているピンクに染まる雲へとかぶりつく。

 

「食べるよ」

「じゃあ、あ〜ん」

「ん〜〜ーーッ!?」

 

パクッと口に含んだ瞬間、口内の熱で解けていく飴の繊維が舌に触れた瞬間、ダイレクトに脳へと伝わってくるのが甘味で、次に浮かんでくるのは懐かしさであった。

子供の頃に父に連れて行ってもらい、食べさせてもらった綿あめ、あの時の味そのものであった。

 

「美味しい?」

「ん!ん!」

 

目をキラキラさせながら、何度もうなづくあたしにシノはクスっと笑ってから小さく口を開いて、はむと綿あめを咥え込むと一瞬で顔が(ほころ)ぶ。

 

「…美味しい。綿あめ、そのものだわ」

「だよね!口に広がる甘みとかまんまでびっくりしちゃった」

 

そう言いながら、ガブっと大量の綿あめを胃袋に納めていくあたしを見て、シノは呆れたような顔を浮かべる。

 

「そんな食い気張らなくても、ほとんどヒナタが食べるといいわ」

「え?でも、シノも美味しいって言ってたじゃん。食べなよ」

「そんな事言いながら、もう半分以上の綿あめを食べてしまったのはどこの誰でしょうね?」

 

痛いところを突かれ、押し黙るあたしを見て、クスクスと笑うシノは繋いでいる手を引っ張ると次の出店へと歩いていくのだった。

 

その後、あたし達は右の列から向かいの左の列へと行き、その横に並び、向かいへと向かうという動作を繰り返しながら、夏祭りという独特の空気感を、出店で売られている催し物の懐かしさに触れながら、少しノスタルジーになりながらも楽しんでいた。

 

「子供の頃に訪れた夏祭りもこんな感じだったわよね」

 

あと少しになった出店を見つめながら、感傷に浸るシノが食べようと左掌に持った舟器の上に乗っかっている円球状の物を右手に持っている爪楊枝で刺して、口に運ぼうとしているのを横からパクリと奪い、途端シノに行った意地悪を責めるかの如く、口内に広がる熱さに忽ち涙目になり、パクパクと口の中に空気を取り込むあたしにシノは形の良い眉を顰めると心底呆れたとばかりに小さく嘆息する。

 

「はふはふ……ふ〜〜ぅ……ふ〜〜ぅ……」

「もう、さっきのたこ焼きさんでも同じ事してたじゃない」

 

呆れ顔をしているシノは自分が持っている舟器へと視線を落とす。

大きめな焦げ茶色の瞳に映っているのは、天然の木で作られているベージュ色の舟器の上で美味しそうな湯気を立てている円球。その円球の表面は薄橙、鮮やかな黄緑、目を引く赤があり、上部にはドロっとした濃い焦げ茶色が付いており、その上には細い薄橙が湯気に合わせて踊っており、美味しそうな緑色がパラパラと彩りを添えている。

つまり、あたし達はたこ焼きを食べていた。

 

この夏祭りに出されているたこ焼きは見た目も味もあたしが現実に食べた事のあるものであった。

 

口に含み、舌に触れた瞬間に拡がるのは熱さだけではない。

まず、上部にはけでたっぷりと塗られたソースの強いパンチの効いた味、かつおぶしや青のりの味が舌に広がり、その次に食欲をそそる焼き目がついた生地、本来の味が伝わってくるのだ。赤しょうがの酸っぱい味、鰹節で味付けされている生地へと噛みついた時にどろりと口内に流れる生地にまたしても熱さで苦しめられながらもやはり求めてしまうのは、ソースと鰹節風味の生地が織りなす黄金比が素晴らしすぎるからだろう。

 

"まさか、ここまで完成されたたこ焼きが食べられるなんて……"

 

きっとこのフィールドに居るであろう黒を好む相棒へと想いを馳せながら、あたしは心の中で彼とハイタッチしていた。

 

そんなあたしをチラッと見ながら、シノは残っているたこ焼きを爪楊枝で刺して、持ち上げると「ふぅ……ふぅ……」と息を吹きかけ、よく冷ましてからあたしへと差し出す。

 

「でも、最後の一個」

「私は今回の夏祭りでヒナタから沢山のものを貰ったからいいのっ。いいから、早く口を開けなさい」

 

そう言いながら、半ば強引にあたしの口へと最後のたこ焼きを放り込んだシノは申し訳なさそうな顔をしながらたこ焼きをもぐもぐしているあたしを見上げながら、くすくすと笑う。

 

「貴女って本当不思議な人よね。私が食べようとしたら、横から奪って食べたくせに。私があげたものは申し訳なそうに食べるのだもの」

「ほお?」

「ちゃんと口の中にあるものを飲み込んでから喋る事」

 

そう言いながら、歩いているとシノが持っていた舟器がパリンと小さな音を立てて、淡い色のポリゴン片になり、宙へと舞うのを見届けたシノはあたしへと何か言いかけた瞬間、その言葉に被せるようにアナウンスが流れる。

 

『夏祭り専用のフィールドにお集まりのプレイヤーの皆様、もうすぐ花火が打ち上がります。追加された小山フィールドへとお集まりください。繰り返します。夏祭り専用のフィールドにおあーーーー』

 

"ほう、花火とはまた風流な"

 

夏祭りといえば、やはり屋台。そして、夜空に打ち上がる花火がまず思い浮かぶであろう。

 

「花火?」

「打ち上がるみたいだね、見てく?」

 

眉を顰めるシノへと問いかけると彼女は暫く逡巡した後にコクリと首を縦に振る。

そんな彼女と繋いでいる手を強く握りしめ、新たに追加されたという《小山》フィールドを探していると集まっていたプレイヤー達が一方向に向かって歩き出す。

どうやら、彼ら彼女らが向かっている方向に追加されたフィールドがあるみたいだ。

 

「シノ、あっちみたいだよ」

「そう」

 

"?"

 

そっぽを向き、素っ気なくそういう彼女は何かを隠しているように思える。

無意識に左脚の方へと視線を落としているし、先程から彼女の歩くスピードが遅くなっていっているように思える。

これはもしかしなくてもそうだろう。

 

「ヒナタ?」

「シノ」

 

突然、立ち止まるあたしに不思議そうな声をあげる彼女の足元へと跪き、下駄を履いている素足の指が赤くなっているのに気付く。

 

「はぁ……」

 

"夏祭りフィールドだからこういうところもリアルなんだろうけど、作り込みすぎだよね。にしても、ここまで赤くなるまであたしに言わないなんて……シノも困った人だよ"

 

今の中で色々と湧き上がってくる小言をため息で外へと吐き出したあたしは不思議そうなシノに自身の背中を向けると首だけ彼女の方へと向ける。

 

「気づかなくてごめんね、シノ。下駄で長距離歩いたもんね」

「いいえ、私の方こそごめんなさい。ヒナタがせっかく付き合ってくれたのに」

「そんな気にする事ないよ」

 

残念そうな顔で俯くシノの顔を見て、思い出すのはアスナの言葉である。

『カナちゃんは今日一日、シノのんの我儘をしっかり聞いて、エスコートしてあげる事』とアスナ先生からありがたいお言葉を授かったのだ。これを生かざるして、このデートが成功とはいえまい。

 

あたしの背中に乗るのに躊躇しているシノは花火は見たいと思っているが、あたしに迷惑かけてまで見るのはどうかと考えているのだろう。

ならば、ここはあたしがその想いを言葉として引き出すべき役割を引き受けるべきであろう。

 

「シノ」

「なに?」

 

顔だけではなく、彼女の方へと身体ごと向いてから自分の中で穏やかだと思っている声音で彼女へと語りかける。

 

「シノはさ。あたしにおんぶされて、花火を見るのが自分の我儘だって思っているかもしれないけど、それは大きな間違いだよ」

「……え?」

 

目を丸くする彼女に向かって、ニコッと笑ってから言葉を続ける。

 

「あたしが君と、シノと見たいんだよ、花火。だから、これは君の我儘じゃなくてあたしの我儘。

だから、付き合ってもらうよ、強引にでも」

 

そう言いながら、何か言いたそうなシノへと近づいてからお姫様抱っこをするとそのまま歩き出す。

 

「ちょっ、ヒナタ!」

 

人混みとすれ違う度にプレイヤーからの視線を感じ、シノは羞恥心で顔を真っ赤してから構わずに坂道を歩き続けるあたしの襟首をクイクイと引っ張り、止まるように促す。その促している姿が余りにも可愛くて、じっーと見ていると理性が崩壊しそうだったのであたしは彼女から視線を逸らすと構わずに人々が歩いていっている方向へと暫く緩い坂道を歩いていると次の瞬間、森から抜け………目の前に広がるのは、赤提灯から溢れる淡い光が織りなす幻想的な夜景が一望できる場所にぽつんと木製のベンチが置かれており、あたしはそのベンチへとゆっくりシノを座らせてあげながら、周りを見渡す。

 

"見る限りじゃあ、あたしとシノだけがここに居るみたい"

 

つまり、小山の森に入った小道を上がっている途中で個別に用意されたこのフィールドへと案内されるまたは転送させるって感じだろうか。

などと考え事をしているあたしの癖っ毛の多い焦げ茶色の髪へと利き手を置いたシノはなでりなでりと撫でながら、お礼を言う。

 

「ヒナタ、今日は私の我儘聞いてくれてありがとう」

「ーーーー」

 

にっこりと笑いながら、そうお礼を言う彼女があまりもいじらしくて可愛らしくて、あたしは最後の理性の壁が音を出てて崩れていくのを感じながら、自分を見つめる焦げ茶色の瞳をまっすぐ見つめながら、彼女の頬へと左手を添える。

 

「シノ」

「なに?」

 

自分の方を向く彼女の頬へと利き手を添え、僅かに開いている小ぶりの唇に向かって自分の唇を近づけていく。

あたしの行動に一瞬驚いたように動きを止めたシノだが、唇が近づくにつれ、ゆっくりと瞼を閉じ、押し付けられる唇を迎え入れてくれる。

 

「んっ……」

 

くぐもった声がぶるんと潤った唇の隙間から聞こえ、耳朶に届いた瞬間、あたしの理性はもう跡形も無く忘却の彼方へと消え去っていた。

空いた手は背もたれに置き、頬に添えていた掌を後頭部へと添えたあたしは一旦唇を外した後はシノの唇に吸い付くように自分の唇を押し付ける。

自分の唇から伝わってくるぷるっと潤った小ぶりの唇の感触は柔らかく、何十分でも触れ合っていたいと思わせたが……そんなに肺活量があるわけもなく、あたしは数十秒唇を触れさせたら離すを何度か繰り返し、広がってきた唇の隙間へと舌を捻じ込む。

 

「んっ!?」

 

舌を挿入した瞬間、ピクッと肩を震わせてから顔を背けようとするシノへとより一層密着したあたしは逃げようとする彼女の舌へと自分のを重ね合わせる。

互いの唾液が混ざり合い、ぐちゃりとやらしい水音が結合部から流れ出してはあたしをディープキスという行為に没頭させる。

 

「んぁっ……ぁっ……」

 

重なり合った唇の隙間からくぐもった甘い声が漏れ出て、あたしの耳朶に届く度に此処にはシノとあたしの二人しか居ないのだと思い知らさせる。

耳を澄ませれば、ガヤガヤとした喧騒が聞こえているがそれはほんの僅かで、結合部から漏れ出るやらしい水音等で掻き消されているあたしからしてみるとあってないようなものに思えた。

強引に舌を絡まるあたしに抵抗していたシノがゆっくりと抵抗する力を抜き、徐々に自分からも動いてくれるのを感じながら、あたし達はただただ目の前の存在から伝わってくる感触、ぬくもりに求め、強く互いを抱き寄せては、ディープキスに没頭していた。

 

「んっぁ……」

 

苦しくなった一旦外して、またくっつけるを飽きる事なく繰り返すあたしがより一層のめり込んでいく度に受け入れているシノがキュッと長着を握りしめた瞬間、ヒュルルル〜ドンッ!!と大地を震わせる爆音が聞こえ、閉じていた瞳を開けたシノが手を突っ張るが、中途半端で止められる程にあたしの理性が残っているわけもなく、角度を変えながらもディープキスを繰り返し、動かなくなったシノの舌を上に下にと絡めたあたしが満足したように唇を外した頃には夜空には色とりどりの花火が咲き誇っており、あたしはやらかしてしまったと冷や汗を流す。

 

そして、覚悟を決めて、真正面を見るのとそこには不機嫌そうな恋人殿の顔があり、あたしはしょんぼりとする。

 

「……ちょっと。最初の花火、見れなかったんだけど」

「ご、ごめん……」

 

唇を外した瞬間、小言を言われ、あたしは肩を落とすがクスッと笑うシノがチュッと再度キスをしてくれ、トントンと隣に座るようにベンチを叩くのを見て、あたしがそっと座ると左手へと右手を重ねる。

 

「来年もまた夏祭りに来ようね」

「来年と言わずに夏祭りが行われるたびに二人でいきましょう」

 

それは毎年、シノがあたしの隣にいてくれると言う事だろうか。

それはとても魅力的な事だと思った。

だが、それと同時にこの人を必ず現実の世界に帰さないといけないと言う使命感が胸に溢れてくる。

 

隣で打ち上がる花火を見つめる彼女の横顔を盗み見ながら、あたしは胸に溢れてくる暖かい気持ちが漏れ出ないように胸へと自分の掌を添えると繋いでいる手をより強く握りしめ、最後まで花火を見終わったあたしはシノと共に宿屋に戻ったのだった。




というわけで、今年のシノンちゃんの誕生日エピソード、それにてお終いです。
本当は後日談としてR指定の方も書こうと思ったのですが……時間的に間に合いませんでした。
ですが、この話の後日談であるR指定は書き上げたいと思っておりますので……後々お知らせさせていただきます。


さて、ここからは雑談なのですが………遂に来年、2022年にSAO事件があった年を迎えるのですね。
まさか、そんな貴重な年月日に立ちあげるとは……感無量というか……言葉が出てこないくらい感動してます!!!!

今年の10月30日に劇場版『プログレッシブ 星なき夜のアリア』が公開なされますし……ますます、勢いを増していくSAOをこれからも全力で応援したいと思います!!!!



最後の最後までグダグダで申し訳ありません。ここまで読んでいただきありがとうございます(深々とお辞儀)

くどいかもだけど、シノンちゃんハッピーバースデー!!
君が生まれてくれたこの日に感謝を。
そして、来年も君の誕生日をお祝いさせて欲しいです。

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