あたしは今だ、目の前の状態に思考が追いついてなかった……。
頭が混乱している時はまずは状況整理だ。
今、あたしは半壊しているビルみたいなところにいる……いや、居た。そのフィールドは世紀末をイメージしており……並んでいるビルや建物は半壊していて、割れているガラスから外を見れば、人の血のように気味悪く思うほどに紅い空とその空から降り注いでくる光がガラスに当たり、オレンジや茜色の光に反射して、辺りを照らさなければ…近くにある瓦礫すら見えない。
実際、あたしの視界は暗闇に包まれており–––––
“–––––ん? なんだ? この感触……”
妙な感触を感じる視界にはどうやら何かが覆いかぶさっているのか、何も見えない上になんだか柔らかい……顔に当たるところが小さく上下にする度に呼吸音が聞こえてきて、上下する度に密着する部分から伝わってくるぬくもりは暖かく……どうやら、あたしの他にもう一人、この訳わからない状況に陥っているらしかった。
“ん?”
「な……」
失った記憶を補給する為に状況整理に精を出し、完全放心状態のあたしの耳にもう一人の驚きと羞恥……怒りに満ちた声が聞こえ、顔に当たっている感触が離れていく度に視界が開け………窓、いや穴から差し込む光に目を瞑ったあたしが視界を下げた瞬間、見たのは––––
“な……”
–––––可憐な顔立ちを真っ赤に染め、ケモミミがついたピンクの帽子を羞恥心で震わせ、少し暗めのピンクに色を変えた軍服に身を包んだ小柄な少女……いや、幼女が垂れ目がちな瞳に涙を溜めて、こっちを見下ろしていた。
あたしはこの空間にいたもう一人の存在があの《ピンクの悪魔》と知り、ゆっくりと目を閉じる。"ああ、終わったな…"と。あたしはこれから赤いジャケットに複数の穴を開けられて、HPが尽きたと言うのに…更に追い討ちをかけるように連射されながら…ゲームオーバーとなるのだろう……と想像し、まだ自分の上でプルプルと震えている少女・レンを見上げる。
夕焼けをバックとした砂漠が彼女のトレードマークとなっている"ピンク"に上手い具合に溶け込み、PKことプレイヤーキルを成功させていたことや彼女が登場した大会で活躍する様子を見て…付けられたのが《ピンクの悪魔》。
そして、そんなピンクの悪魔様とあたしは何やらご縁があるそうで……出会い頭にぶつかり、彼女の胸を思いっきり鷲掴みしてしまった時から幾度となく、彼女と鉢合わせれば、押し倒すが胸を触っている気がする…。
その度に激怒する彼女に"何度も自分はあなたと同じ女です"と説明しても、真っ黒に焼けた肌に流し目の蒼い瞳に細長な脚、長い胴体……一見しても二見、三見しても男性プレイヤーと間違われるこの容姿のせいで、今だピンクの悪魔様は今だあたしのことを女性プレイヤーと認めてくれない。
ま、この容姿を見て……誰がすんなり女性と思うか……とあたしも思うので、彼女が悪い訳じゃないのだが………って、そろそろ降りてくれないかなっ!
「……た」
「へ?」
どうにか彼女を自分から下ろそうと試みていると小さな声が聞こえてくる。一ミリ…一ミリ…と動かしていた身体を止め、ピンクの悪魔様を見上げる。
するとそこには愛用の真っピンクに染め上げているアサルトライフルの銃口をこっちに向けているレンの姿があり、あたしは最早鉄板となっているこの展開に苦笑しながら、どうにか逃げ出せる方法はないかと辺りを見渡してみる。
–––––!
すると、何かを吠えながら、トリガーを引こうとしているレンの背中側……穴が空いているところからキラキラと光を放つものが自分たち目掛けて飛んでくるのが見え、目を凝らしてみて…それが銃弾だと気付いた瞬間、あたしは素早く上半身を起こし、目を丸くしているレンを抱きしめると横穴が空いている方に向けて、飛躍していた……。
~2~へと続く…
めっちゃ短くてすいません……(大汗)
こちらもゆったりと書き進めていこうと思います…!