所々、お見苦しい表現などがあるやもしれませんが…最後まで、読んでいただければと思います。では!!
※この話は凄く短いです
4/29〜誤字報告、ありがとうございます!
不意打ちを食らって、陽菜荼と口付けをしている詩乃はゆっくりと唇を外されると…深く深呼吸をして、すぐ目の前にある空のように透き通った蒼い瞳を睨みつける。しかし、それくらいでこの少女のペースを崩すことなど出来るばすもない。
「……私は嫌って言ったのよ、分かってる?」
「でも、して良かったでしょう?」
唇をとんがらせる詩乃に、ニカっと笑ってそんな事を言う陽菜荼を詩乃が両手で突き飛ばす。胸元を突き飛ばされて、後ろによろめきながらも陽菜荼は上機嫌な感じで頬を染めて、恥ずかしがる詩乃をからかう。
「っ。知らないわよ!」
「あははっ!詩乃は恥ずかし屋さんだね〜。そんなに恥ずかしがることなんてないのに〜、あたし達恋人同士なんだからさ」
「っ、そうかもしれないけど…。私には私のペースというものがあるのっ。陽菜荼のペースは、私には早すぎるのよ」
詩乃の鋭い指摘に、陽菜荼は小首をかしげるとまた一歩ずつ、ベッドに縋っている詩乃へと近づく。
「そうかな?」
「そうよ」
「……」
「何よ」
突然無言になって、ギュッと抱きついてくる陽菜荼に詩乃が目をパチパチとさせる。力強く抱きついてくる陽菜荼の身体が小刻みに震えているのに気づいた詩乃が陽菜荼へと問いかける。
「ーー」
「陽菜…荼……?」
陽菜荼は一つ深呼吸をすると、ゆっくりと語り出す。偽りのない本当の気持ちを吐露する陽菜荼の言葉をただ黙って聞く。
「なんかね…凄いスピードで詩乃の事をもっともっと好きになっていってる……。はっきりいって…こんなの初めてだよ。生まれて初めての体験なんだよ…本当に…。
詩乃が浮かべてくれる表情の一つが、あたしに向かって言ってくれる言葉の一つがね。どんなものよりもキラキラ輝いてみえてる…。どれもあたしにとっては大切な宝物なんだよ…、あたしはそんな宝物をもっと増やしていきたいって思ってる…」
「……」
「……でもね、そう思えば思うほど…怖いんだよ…。昔…そうだったからかな?無意識に…人を好きになることを、大切に思うことをセーブしてる気がする…」
「……」
陽菜荼は詩乃の右肩から顔を上げると、焦げ茶色の大きな瞳を見つめる。詩乃から見て、その蒼い瞳は何かを恐れているかのように揺らめいていた。感情の波を立てながら、縋るようにギュッと左腕の服を掴む陽菜荼をただ詩乃は慈愛に満ちた瞳で見ていた。
「…でも、もう…セーブしなくていいんだよね?あたし、詩乃の事を好きにーーもっと大好きになってもいいんだよね?」
「ふ。…もちろんでしょう?私だけこんなに好きなのなんて悔しいじゃない。もっと好きになってもらわないと困るわよ」
にっこりと微笑んで、まるで幼子のように服を掴んでいる陽菜荼の癖っ毛の多い栗色の髪を撫でる詩乃。そんな詩乃をなおも不安げに見つめる陽菜荼。
「っ…詩乃は本当に…、あたしの前からいなくならない?あたしをあんな目で見ない?それがっ、それだけがッ。……とても怖い。怖いんだよ…」
「バカね…そんな事を心配してもしたりないでしょう?そんなに心配しなくても…私は大丈夫よ、私は絶対にあなたの前からいなくならない。嫌って言っても、側に居続けてあげるわ」
「…ん…、ありがとう…詩乃……」
体重を預けて、自分へともたれかかってくる陽菜荼を詩乃は力強く抱きしめる。ゆっくりと背中を撫でると、陽菜荼が甘えてるように身をさらに寄せてくる。
その体勢が何分…何時間続いただろうか。ギシっというベッドが軋む音で、互いに顔を上げた二人はジッと互いを見つめ合う。
「詩乃…」
「陽菜荼…」
そして、互いの名前を呼び合い、自然と唇が磁石のように近づいていく…
「「ん…」」
…互いの気持ちを、好意を相手に伝えるためだけに唇を合わせる。今は目の前にいる人だけに意識を集中していくーー貪るようなキスを数分間した後、ゆっくりと唇を離した陽菜荼は詩乃を見つめながら、胸の中にある誓いを口にする。
「あたし、詩乃のことを守るよ。あの事件から、詩乃を傷つけようとする者から守る」
「なら、私はそんな陽菜荼の力になるわ」
詩乃の言葉に、陽菜荼が小首をかしげるが詩乃が首を横に振る。そんな詩乃を暫く、複雑な表情で見ていた陽菜荼はゆっくりと身体を離す。
「あたしの力?もう充分になってると思うけど?」
「まだなれてないわよ…まだ全然」
「……そう、か。でもね、無理だけはしないでね?」
「それは陽菜荼もでしょ?」
「ん、そうだね。……さて、朝ごはん食べようか?」
「ええ」
その後、二人は楽しく朝ごはんを食べて…病院に行く為の準備をした……
この話の詩乃は気づけないでいたでしょうね。まさか陽菜荼があんなにプレイボーイ?になるなんて…(笑)