空いてしまった時間の間も応援してくださり、残ってくださった読者の皆様に心からのお礼を申し上げます。ありがとうございます。
これからも更新が遅れてしまうと思いますが、応援していただけると嬉しいです。
では、短いと思いますが……
浮遊城アインクラッド第四十層、迷宮区タワー二十三階。
それが今、あたしが居る場所であった。
自分好みの戦闘着がドロップした上に愛刀も珍しいものが立て続けにドロップしたということで有頂天となりノリのままに一人で迷宮区へと脚を踏み入れ、絶賛苦戦を強いられている愚か者とはあたしのことをいうのであろう、とほほ……。
ドンッ!!!!!!
「!?」
“なんだ? さっきの音”
何かが壁にぶつかるような鈍い音が聞こえた後に何かが床に崩れ落ちていく重たい音が聞こえ、あたしは無意識に残りの階段を駆け上がると目の前にある光景に目を見開く。
少し空いてある広場の中、数名の赤と白の戦闘着に身を包んでいる人々がひしめきあっており、各々の武器や盾を構えている人々は苦痛の表情を浮かべており、素早く辺りを見渡してみると壁に衝突して倒れ込んでいる人もいる。どうやら、先ほどの重い音はあの人が壁にぶつかる音だったのだろう。
“純白と
《
大型ギルドは他にもアインクラッド解放軍こと《軍》や《
まー、今はそんな事どうでもいいか……。
“んー、これは助けに入った方がいいのか?”
前に良かれと思って手助けした時に横取りだのなんだといちゃもんをつけられた事があったからあまり気が向かないのだが……だが、こうして様子を見ていると敵が壁に倒れている彼を狙っているように思える。
そこで思い出したのは、今攻略している四十層を徘徊する
「チッ。あのモンスター、《ブリィング》を持ってるのかッ」
ブリィング。
英語で《弱い者いじめ》を意味するその名のとおり、通常のヘイト値とは別に、倒れて動けないプレイヤーやデバフを食らったプレイヤーを狙う事がある。
そして、事があるに該当するのが、あの壁に倒れている男性プレイヤーって事だ。
そこで嫌なイメージが脳内に広がってくる。
のしのしと倒れている男性プレイヤーへと近づき、手に持った金棒を大きく振りかぶり、そのままの勢いで振りかぶる。ドンッと衝動が床を通り伝わり、天井に向かっていくのは淡いブルーのポルゴン破片。
「……あー、嫌な事考えちゃったわー。ほんと、いや」
額に利き手を添え、思い浮かべてしまった嫌なイメージを振り解くように軽く横に振ったあたしはそっと長年の相棒へと手を添える。
"救える命をみすみす見逃すなんて出来ないし……"
「……それにしたくないからね」
目に入る人全てを救いたいなんて傲慢なことは言わない。
自分にそんな才能がないくらいわかってるし、自分では正義のヒーローになれないくらいわかってる。
だが、だからこそ。自分は不恰好でも無様でも格好悪くとも立ち上がり、不器用なりに自分の出来る事を地道にしていくのだ。
それがきっと最善の道に繋がっていると信じて。
それに、倒れている人を見捨てるなんてカッコ悪い姿を幼馴染に見せるわけにはいかない。幼馴染にはいつでもカッコいい自分を見ていてほしいと思っている。まー、カッコいいかどうかは分からないが……。
だがしかし、そんな自分本位で自分勝手なカッコづけのために命をかけようというのだ、あたしは。
そんなあたしはきっととんだ大馬鹿者に違いないだろう。
「さーて、いっちょやりますか」
あたしは身を低くし、右腰にある鞘へと掌を添えると全力で走り出し、今まさに振り下ろそうとしている金槌へと狙いを定め、刀スキルを炸裂させるのだった。
次回の更新は その三 へ
ちょっとしたお知らせです。
何日かかるか、いつからするかはお伝え出来ませんが……章の整理と話の整理をさせていただきたいと思っております。
今しおりをしてくださっている方と多くの読者の方には多大なるご迷惑をおかけすると思いますが、無事に新しい並び替えと章の出来上がりを待っててもらえると嬉しいです。
では、次の回にて会いましょう!