sunny place 〜彼女の隣が私の居場所〜   作:律乃

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タイトル通り、遠藤さんたちとの関わりの終わりですが…遠藤さんはこの話の後にもまだ出ます(笑)
彼女たちほど…悪役に適した人はいない!と私は思ってますので(笑)



そして、前の回のヒナタがシノの笑顔に見惚れるところですがーー
私が考えるシノって、あまり笑わない子だった気がするんです。いえ、苦笑いとか…微笑みとか、微かなものは浮かべるが、ちゃんとした笑顔はあまり見たことないかな?って個人的に思いましてーーヒナタがシノの笑顔(ちゃんとした)に惚れる形をとらせていただきました。

幼馴染でも…シノの笑顔(ちゃんとした)を見れるのは、珍しいということでーー


※お気に入り登録・91名ありがとうございます!そして、10というもったいない評価…本当にありがとうございます(礼)

※4/1〜間違えているところを直しました


1章009 遠藤さんと香水さんの衝突

あたしの幼馴染は、父親の顔を覚えてないらしい。

 

それは、幼馴染・詩乃が幼い頃に交通事故にあって、父親を亡くしたからとの事だった。その事故で母親は心を病んでしまい、詩乃の父親との思い出ごと写真や動画を焼いてしまったが、それでも彼女は幸せだろう…。母親に愛情を注がれて、ここまで育てられたのだから…

 

と、幼馴染の話はここまでにして、あたしの話をしよう。このまま、幼馴染の話をしていたら…嫉妬とか嫌な気持ちに心が支配されそうだから…。まぁ、といってもあたしの話もそんなにいい話では無いんだがーー

 

ーーあたしは幼馴染と違い、両親の顔を覚えている。……いや、一人は覚えさせられた…と言うべきか。まぁ、そんなことはどうでもいいだろう。

そんな両親から、あたしが貰ったものは…愛情とかいう暖かいものではない。もっと冷たくて醜い感情だ…その感情をあたしは幼い頃からぶつけられ、育ってきた、主に母親に。

だから…なのかもしれない。幼馴染と彼女の母親が仲睦まじく本や話をしているのを見ると…胸がギュッとなる。

 

ーー何故、あたしの母親はあんな風に接してくれなかったのだろう?

 

朝田家にお邪魔している時に、いつも心に抱いていたあたしの疑問だ。まぁ、そう思ってしまうのもあたしが特殊な生まれ方と、育て方をされたせいだと思い、幼馴染にも周りの人にもそれは問わなかったが……今でもふとした瞬間に思ってしまう。

 

ーーあたしの母親はあたしにとってどういう存在なのか?あたしは母親にとって、どういう存在だったのだろうか?

 

と…

 

まぁ、間違いなく、後者はうっとおしい存在か嫌な過去を思い出させる存在だろう。問わずとも分かる。

だって、母親があたしを見る目は恐怖というか…怯えを常に抱えていたのだから…。

だから、母親が耐えられなくなって、ああいった行動を取ってしまったのは納得してるし、責める気なんであたしにはそもそもないーー

 

ーーでもね、ママ。あたしは信じてたんだよ…あの日、ママが帰ってくるって……

 

 

 

γ

 

 

 

遠藤たちを自宅に招いて、手料理をご馳走した数週間が経ったある日の事。

あたしは写真部の活動によって、幼馴染とは別時間に自宅のマンションへと帰宅した。

 

“今日は…どんな晩御飯かなぁ〜”

 

などと考えながら、二階へと続く階段を登りきり、いよいよ 部屋というところで見知った顔を見つけた。

焦げ茶色のショートヘアに、同色の大きな瞳をかたどるのは黒縁眼鏡だ。どこか儚げな雰囲気を漂わせる少女はどこからどう見ても、あたしの幼馴染こと朝田 詩乃であった。まぁ、幼馴染を見かけるのは不思議ではないだろう、彼女と一緒に暮らしているのだから。だが、しかしーー

 

“ーーなんで?ドアに耳なんて押し付けてるんだ?”

 

「……」

 

幼馴染の不自然な行動に、眉をひそめながら、あたしは詩乃へと近づく。

驚かせないように、静かに声をかける。すると、詩乃は何故か 両目に涙を溜めて、あたしへと抱きついてきた。それを受け止めるように両腕を広げる。

 

「…詩乃?」

「陽菜荼!」

「うおい!?詩乃……?どうした、部屋入んないの?」

 

あたしの問い、詩乃はどこか震えているようにも思える身体を動かして、あたしたちの部屋へを指差した。

 

「知らない人がいる」

「はぁ?」

 

“シラナイヒトガイル?”

 

そんなん嘘だろう…と、詩乃をバカにしたように笑うと、鋭いレーザービームが放たれた。

 

「嘘だと思うなら、陽菜荼も耳をドアに押し当ててみなさいよ。私の言ってることが間違いじゃないって思うわ」

「わかったよ…、そんなに怒鳴らなくてもさぁ…」

 

詩乃に言われるがままに、ドアへと耳を押し当ててみると確かに数人の話し声が聞こえてくる。それに混じり、見知った甲高い声が聞こえ、あたしは怒りから両手を握る。

 

『あはははっ!!』

『これ、JKの部屋っしょ?マジで飾りっ気ないなぁ〜』

『それは言ってはダメですよ〜』

『私たちも思ってるけど、言ってないのに〜』

 

“マジかよ……人の部屋に男連れ込むとか何やっての、あいつら…”

 

あまりの怒りで、プルプルと震える両手をそっと誰かの両手が重ねられる。重ねられた方へ向くと、不安げにあたしを見つめる幼馴染の顔があった。

そんな表情を見ながら、あたしは心でため息を着く…

 

“だから、こんな奴らとはつるむなって言ったのに…”

 

出会った頃から、ずっとあたしが言ってた不安がここに来てから現実のものとなってしまった…

 

“写真部の合間をぬって、あいつらの弱み探しへと精を出しててよかったな…”

 

スクールバッグから愛用しているデシタルカメラを取り出すと、不安そうな詩乃を後ろへと下がらせるとドアへと歩み寄る。

 

「陽菜荼…?」

「……」

 

トントンと強めに叩いたあたしは、ガチャンとドアを開けて、ヅカヅカと奴らがいるであろうリビングへと歩いて行く。

そんなあたしに詩乃は戸惑いを隠せないようだった。

 

「お邪魔しまーす」

「陽菜荼!?」

 

部屋に入ってみると、ガラの悪そうな男性が数人座っていた。部屋に入ってきたあたしを下卑た視線で舐め回すように見てくるのには、流石に鳥肌が立った。なので、徹底的に無視を決め込む。

 

「ヒューヒュー。すげぇ美人じゃん」

「……」

「ねぇねぇ君。なんて名前?

確かぁ〜、詩乃ちゃんか、陽菜荼ちゃんだよね〜。どっちかな〜、あっお兄さん、わかっちゃったかもー。君、詩乃ちゃんの方?」

「……」

「無視はひどいなぁ〜、お兄さんたち好意的に話しかけてるのに〜」

 

そう言って、左手首を掴んでくる男を一瞥すると、不機嫌そうに腕を振って、男の手を離そうとする。

が、やはり 大の大人と女子高校生では力に差が生まれるのであろう。全然、振りほどけなかった。

 

“よりにも寄って…左手か…。利き手なのに…”

 

自分の何も考えずに行ってしまった行動に後悔しつつ、今だに左手首を掴んでくる男へと冷たく低い声を出す。

 

「すみませんが、汚い手で触れないでくれますか?」

「…はぁ?」

 

あたしの声に、周りにいる男たちの表情が険しいものへとなる。だが、手を汚く思うのも感じるのも、事実なので偽る気もこちらとしてみればさらさらない。

なので、あたしはさっきよりも冷たい声で周りに座る人たちへと言い放つ。

 

「聞こえなかったんですか。あたしは離してくれないかって言ったんですけど?

離してくれないなら、警察に電話しますよ。それと、速やかにあたしの部屋から出て行ってくれませんか?お仲間達と一緒に。あっ、ついででいいんで、その子らも一緒にお願いします。正直、うっとおしいんで」

 

あたしの言葉に、遠藤たちを含めた部屋にいる者たちが笑い出す。

 

“何がそんなに面白んだろうな…”

 

こっちは至って、真面目に訴えているのにその態度は余りにも失礼ではないだろうか?

 

「あはははっ、友達を追い出すとか。君って酷い子なんだねー」

 

涙を拭って、そういう人たちにあたしはこれ見よがしにため息をつき、手に持っているデシタルカメラの画面を彼らが見えるように向けた。

 

「……はぁ…、あたしは穏便に済ませようとしてたんですけど。出て行かないなら、仕方ないですね…これ見てください」

「「「ーー」」」

 

そこに映るのはーー何か、白い粉を含んだり吸ったりしている彼らであった。

 

“まぁ、この白い粉は…この反応から察するに。麻薬って、とこか”

 

「おい、どこでそれをーー」

「ーーどこって、あたしよりもあなた達の方がよく知ってるんじゃないんですか?

あっ、そういえば…こういうのもあるんですけど〜、見ます?」

 

デシタルカメラを奪おうとする男たちから逃れるように、遠藤たちの近くへと来たあたしは、彼女らにも同様にある写真を見せる。

 

「「「ーー」」」

 

そこには、彼女らのあられのない姿とこの場にいる男たちの仲間と思える者が映っている。

あたしはその写真を見ながら、ニヤニヤと意地悪い笑みを浮かべる。

そんなあたしに遠藤たちは、苦虫を噛み潰したような顔をするとあたしを睨みつける。だが、あたしはどこ吹く風である。ヒラヒラとカメラを動かしながら、三人組を流しみる。

 

「いけないと思うんだけどなぁー、売春なんてさー。これバレたら、親にも学校にも居られなくなるでしょう?あんたら」

「ッ」

「いやなら、出て行ってくれないかな?ここはあたしと詩乃の家なんだーー

 

ーー決して、あんたらの家なんかじゃない

 

「……行きましょう」

 

遠藤たちが腰を上げて、連れの男たちと共に部屋を出て行くのを見て、心でため息を着く。

 

“……ふぅ〜”

 

なので、遠藤があたしの横を通り過ぎる時に言ったこの一言が妙に気になったーー

 

「ーー……覚えてろよ、香水」

「?」

 

遠藤たちが立ち去った後、詩乃が入ってきた。飛びつくように抱きついてくる詩乃にびっくりしつつも、怖い思いをしたので仕方ないか…と思い直して、ゆっくりと身体を離す。

 

「陽菜荼!!怪我…してない?心配したのよ!」

「大丈夫だよ、こんくらい。手首強く握られたくらいでさー、他は対したことないし」

「手首強く握られたの!?見せて」

「……だから、大丈夫だって…」

 

詩乃がカーペットへ座るように言うので、あたしは呆れたように断るが、それでは彼女の気が済まないらしい。

そのあと、あたしは大人しく彼女の治療を受けた……

 




次はヒナタの過去を書くつもりです

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