そんなことより、剣の世界で第7話をお楽しみください。
初の討伐クエストを終えた翌日、俺たちは冒険者ギルドに足を運んでいた。
「よし。こんな感じでいいかな。」
俺は入り口から見て左手にあるパーティメンバー募集用掲示板にパーティメンバー募集のチラシを貼った。昨日の夜にエシリアと相談したのだが、そろそろ新たな仲間を集め、戦力を増やそうという話になったのだ。チラシの内容は、
『どうも、駆け出し冒険者のケンマです。パーティメンバーを募集しています。駆け出し冒険者、上級職の方でも構いません。一緒に魔王討伐を目指しましょう!パーティ加入希望の方は今週末の正午にこの掲示板前のテーブルに来てください。』
というものだ。
「マスター、ちゃんと人来てくれるかなー。」
エシリアは不安そうに言った。
「当日までまだ3日もあるしなんとかなるだろ。」
俺はそう言ったが、掲示板に貼られている大量の募集のチラシを見て少し不安ではあった。
「とりあえず当日まではクエストをこなしてお金を稼ぐぞ。」
俺たちの今の手持ちは24500エギルだ。さすがにこのままではまずいので少しの間だが俺たちはお金を稼ぐことに専念することにした。俺は受付嬢のカリータさんにおすすめのクエストを聞き、いくつかのクエストを並行して行うことにした。
それから俺たちは三日間、クエストの進行に専念した。モンスター討伐の道中で採取クエストを行なったりもした。この3日間は地獄の日々だったが、その成果として俺たちの所持金は135000エギルと、かなりの額になった。さらに俺のステータスも上昇し、新スキルを1つと新アビリティを2つ習得した。
そしてメンバー募集の日がやってきた。
俺たちは早めに昼食を済ませたあと、所定の場所で加入希望者を待った。するとしばらくして、
「すみません。あなたがパーティメンバーを募集しているケンマさんでしょうか?」
黒いローブに身を包んだ少し癖っ毛で金髪の少女が穏やかに微笑みながら俺に話しかけてきた。その瞳は鮮やかな赤色をしていた。
「はい、そうですが。もしかしてメンバー加入希望の方ですか?」
俺は立ち上がり、自分と同じくらいの歳の少女に改まって返事をした。
「はい、そうです。私は駆け出し冒険者の『セレスト・V・クリストバーン』といいます。職業は魔道士です。気軽に『セレス』と呼んでください。」
そう言いうと彼女は軽くお辞儀をした。
「わかりました、セレスさん。ところで、どうしてあなたは俺のパーティを選んだんですか?」
俺は募集した身であるが、どうしても聞きたかった。
「そうですねー。大した理由は無いんですけどねー。強いて言うなら、『直感』でしょうか?」
「直感とは?」
ますます疑問に思った俺はさらに質問した。
「いやー、本当に深い理由は無いんですけど、募集の掲示板を見た時に一番最初に目に止まったんですよ。ですから、これでいいかなーって思いまして…。」
実に安直だ、安直過ぎてグウの音も出ねえ…。しかし、せっかく俺たちのパーティを選んでくれたのだ、入れない理由は無い。俺は深く息を吸った。
「わかりました。…俺と共に戦おう。セレス。」
俺はそう言いながら右手を差し出し握手を求めた。
セレスも右手を差し出し、握手をしようとした。
「こちらこそ、よろしくお願いします、ケンマさー……。」
次の瞬間、彼女はそう言いかけ、突然脱力し、俺に向かって倒れた。俺は慌ててセレスの体を支えた。
「どうした!セレス!大丈夫か⁉︎」
俺は慌ててセレスに確認した。しかし、セレスの返事はない。俺は急いでセレスが息をしているか、耳を傾けて確認する。すると、
「くぅ〜〜〜…。」とセレスの寝息が聞こえた。え?こいつもしかして…。
寝てる⁉︎
よく見ると、セレスはとても穏やかな顔をしながら眠っている。俺はセレスを起こすようにセレスのからだを揺すった。するとセレスはゆっくりと目を開けて、今の状況を理解したのか、顔を赤らめて慌てて俺から離れた。
「わわっ!すみません!私寝てましたよね⁉︎ホントにごめんなさい!迷惑をおかけしました!」
彼女はすごい勢いで何回も頭を下げ、俺に謝った。
「いや、別に気にしてないよ。それより、眠いの?」
俺がそう聞くと、セレスは
「実は…。」
と話を進めた
「私、実はヴァンパイアハーフなんです。」
セレスは少しためらいながらそう言った。
「『ヴァンパイアハーフ』…。確か人間とヴァンパイアのハーフだっけ?」
「はい。私、家を出て、冒険者になったのは三日前なんです。元々の家での生活リズムが治らなくて…。さっきはつい気が緩んで眠ってしまいました。」
ヴァンパイアは日光が弱点だから夜行性なのか。…て、あれ?
「確かヴァンパイアって日光が苦手なんだよね?セレスは大丈夫なの?」
俺は疑問に思ったことをセレスに聞いた。
「はい。わたしは人間とのハーフだからなのか、ヴァンパイアとしての弱点が無いんです。ニンニクも普通に食べれますし、十字架を見ても何もなりません。けど、ヴァンパイア特有の能力も使えなくなっているんですけどね。」
セレスは小さく笑いながら言った。そして、少し下を向きながら言った。
「こんな私ですけど、その…パーティに入れてもらえないでしょうか…。」
セレスはさっきのことを気にしているのか自信がないようだった。俺は迷わず即答した。
「そんなの関係ないさ!改めてよろしく、セレス!」
彼女はその言葉に安心したかのようににっこりと笑い、
「はい!こちらこそよろしくお願いします!」
と大きな声で言った。
こうして俺とエシリアの共に魔王討伐を目指す仲間が増えた。この先、何があるかはわからないけれど、仲間と共にどんな困難も乗り越えよう。俺はそう思ったのであった。
新キャラの名前を考えるのにとても悩みました。学校の友達と何人かで相談して、最終的に出たのが、「ラビリアンローズ・V・ラングレイ」でした。色々とまずいのでVだけいただきました。